東畑開人のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
読んで良かった、読めて良かったなと思う一冊。
東畑さんの本を読むのは4冊目です。
毎回本当に読みやすいし、クスリと笑う所が沢山あり、優しく隣で語りかけてくれる口調、文章で読書が苦手な私でも、もっと読みたいと思う…すっかり東畑ファンです。
日常を「晴れの日」とした対極の「雨の日」、問題を抱えている時に、その人にどうケアできるか、ケアする側はどうあるべきか。
ゼリーを一旦引き取ってあげる、そんな表現がとても想像しやすかったです。
フルフルの手からこぼれ落ちそうなゼリーを、私も誰かに一旦受け取ってもらえた時、この問題を自分だけで抱えている訳ではない、と感じた時があったなと思い出しました。
だから?私も無意識に「また聴かせてね」、「少し考えてみるね」とゼリーを一旦受け取ってみる。受け取ることしかできないんだけれど、それでも受け取ろうとしていたんだなぁ…と腑に落ちました。
人を信じる事ができるかどうか、は本当に難しい話ですが、東畑さんが「練習してみて」と提案されているのは本当にその通りだと思いました。
相手が悪い人なのか、ゼリーを受け取ってくれるのか、結局はわからないから、練習だと思ってゼリーを少しでも渡して見るところから始める他ないよなぁ…と。。
ゼリーを受け取ってもらえないことは珍しくないし、そんな時は相手も雨の日なのかもしれないし、、
それでも突然始まるケアに巻き込まれていく中で、ケアする側も、自分からケアしてもらいにいかないといけない。
それは恥ずかしい事でもないし悪い事でもなくて、そんな風に世界は回ってるんだというのが、この本を読んで私の中に残った1番のポイントです。
すぐに甲羅に引きこもりがちですが、頑張って意識的に出てきて、ゼリーを少しずつでも受け取ってもらえる人に巡り会っていくぞ…!と思いました。 -
Posted by ブクログ
ネタバレカウンセリングとは何か 変化するということ
本書は、極力専門用語を排してカウンセリングの歴史や各派閥も概観しつつカウンセリングの神髄を平易に解説するという目的を見事に達成していると思います。
本書を読みながら、シニア向けの大学の講義で心理学があり、カウンセリングを長年行っていた先生の授業で「自分史」を書くというアクティビティがあり、何時間もかけて自分の生い立ちから現在までを書いたことを思い出しました。一人で書いていても結構恥ずかしい思い出や嫌な思い出があり、正直に書くのが難しかったですが、カウンセリングでは、そういったことをカウンセラーと話し合うとのこと。なかなかに技量もいるし精神的にしんどい仕事だなあと改めて感じた次第です。
カウンセリングには大きく分けて緊急事態をなんとか改善するタイプのものと、その人の実在に迫る冒険をするタイプのものがあることや、ちょっとでも間違うと結構取り返しのつかない結果を招くことなど勉強になりました。カウンセリングが必要にならないことが一番ですが、必要になった時に、怪しげなブラックボックスの中に飛び込むよりもある程度内容を知っていることが安心につながると思います。
【目次】
まえがき ふしぎの国のカウンセリング
第1章 カウンセリングとは何か──心に突き当たる
第2章 謎解きとしてのカウンセリング──不幸を解析する
第3章 作戦会議としてのカウンセリング──現実を動かす
第4章 冒険としてのカウンセリング──心を揺らす
第5章 カウンセリングとは何だったのか──終わりながら考える
あとがき 運命と勇気、そして聞いてもらうこと
あとがきの「勇気」について。勇気を出すためには、寄り添って見守る人が必要。勇気は孤独では出せない。
寄り添って見守る、これがカウンセリングの神髄かもしれません。
竹蔵 -
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ネタバレ良かったー。集大成だった。
以下備忘録
恋人に浮気されたとか、職場を解雇されたとか、そういうひどい目にあっているときには時間は切迫しますし、周囲の人間への評価は一変します。
今この瞬間のことしか考えられなくなって、余計に事態を悪くするようなことをしたり、言ったりしてしまう。こういうとき、こころの中の赤ちゃんがギャーと悲鳴を上げている。
でも、時間がたつと少しずつこころはDポジションになっていきます。焼けた石が冷えていくのに似ています。
少し先の未来のことが考えられるようになり、過去の自分をふりかえることができます。
すると後先考えない行動は控えることができて、言葉も慎重なものになっていく。 -
Posted by ブクログ
ケアする人向けに書かれてはいるが、ケアされる人が読んでも有益だと思う。この本で学んだこと、知識や情報的な意味でのまとめをしようとすると大変なのでここではしないが、かつて自分がどちらかといえばケアする側だったときや、どちらかといえばケアされる側だったときなどのいろいろな場面について、こういうことが起きていたのか〜と理論的にわかったり、あの人のあの対応はすばらしかったなとわかったりした。
あとがきで述べられていた、「人を信じることができない」という悩み、結局そこだよなと思う。世の中には、人を信じられる人と人を信じられない人の二種類の人間がいるのだろうか? そんな単純な二分ではない? それでも、ここぞという局面で人を信じて頼る行動がとれる人と、とれない人がいる。というか、とれた場合の道すじととれなかった場合の道すじに分岐していく。もしそんな人生すごろくでズルができるのなら、いったんそこでゲームを止めて、信じるルートと信じないルートをそれぞれたどって、どんなゴールに行き着くか見てみたい。
たぶん分岐は一度だけでなく、何度もやり直したり、裏切られてもまた信じるとか、さすがに怪しい救いの手は信じないとか、判断や覚悟や希望や勇気などの力が必要になる。「信じない」と決めてしまうと、そういうことをしなくていいので、省エネという意味では楽なのだ。だからやっぱり、「人を基本的には信じて生きる」には、エネルギーが要るのではないだろうか。それも、持続的に。心身の体力が足りないのかもしれない。じゃあ必要なのは心身の筋トレ? なんだか結局根性論みたいだな。疲れたらすぐ休むことで消耗分の回復はできるけれど、最大HPを上げるにはやはり、地道な経験値稼ぎによるレベル上げをしないといけないのかな。でもそれってなんだろう。疲れたら休む、のほうがとりあえず今はわかりやすい。 -
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本書は、臨床心理士である著者が「カウンセリングとは何か」という根源的な問いに対し、予備知識を持たない初学者に向けて多角的な視点から解説を試みた一冊である。
カウンセリングという名称自体は広く浸透しているものの、その具体的な内容や実像について明確なイメージを持つ者は必ずしも多くないだろう。しかし本書を通読すれば、その歴史的変遷や学術的立場にとどまらず、実際の現場で何が行われ、カウンセラーがどのような思考プロセスでクライエントに向き合っているのかについて、きわめて鮮明な解像度を得ることができる。
構成は平易かつ論理的であり、初学者にとって不可欠な重要概念については、反復によって丁寧な定着が図られている。一般論による概念整理に続き、具象化されたカウンセリングの事例が提示されるという展開の繰り返しが、理解度を確実に押し上げている。
さらに本書の白眉は、単なる知識の伝授にとどまらず、読み手に対して自然と自己の体験や内面に引き寄せて思索させる示唆に富む点にある。読み進める過程で度々読書の手を止め、自身の生を省みることになる読者は少なくないはずだ。
苦境における実効的なオプションとしてカウンセリングを正しく位置づけられたことは、一種の心理的安全性をもたらす。現在進行形で困難に直面している者はもちろんのこと、予防的・長期的な人生の糧として「対話」の効用を知っておきたいすべての人に強く推奨できる傑作である。 -
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カウンセリングとは何か、言葉を尽くしてわかりやすく解説されていた。
私はこれまでカウンセリングとは、「迷える子羊」が「絶対的な先生」からありがたいアドバイスを受けて心が解放されるようなことだと思っていた(それこそ宗教や占いだな)。けれど、カウンセリングにはそこに向き合う2つの心があって、双方の信頼関係を築いていくこと、そして本当のことを話すことが大切なのだと書かれていた。そのことがとても印象に残った。
孤独や孤立は人を簡単に追い詰めてしまう。こころの非常時に、科学的な知識と専門性をもって寄り添ってくれるカウンセラーの存在がとても頼もしいと感じた。 -
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解説本でもあり、思想本でもあり、物語でもある、そんな多面的な印象を受けた本だった。
著者は文学がお好きなのであろう。
名台詞が散りばめられており心に響く箇所がたくさんあった。
カウンセリングは「作戦会議として」「冒険として」の2段階がある。「作戦」では、まずソーシャル(世界や環境)やバイオロジカル(身体)に介入し「生存」を確保。続いてソマティック(からだ)やコグニティブ(視点)に介入し更に現実を整える。その上でまだ足りないユーザーには「冒険として」のカウンセリングが始まる。これはサイコロジカル(心)への介入で「実存」を見つけることだ。心には鎧とスライムがあり、スライムを出すことが必要。その際に、カウンセラーはユーザーの対人関係の転移によってぶつかり破局し引き出す。そこから新たな世界が始まるとのこと。「実存」をぐちゃぐちゃにしながら「生存」しているユーザーの例を読むと苦しくなった。生活を守ることで人生(心・実存)が死んでしまうことがある。
冒頭のルソーの言葉は、自由な個人になるために必要なのは、ほんとうの話を告白することだというメッセージ。人権概念ができたからこそぶつかったのが心の悩みであるという着地に深く頷いた。日々の小さなことも、「作戦会議としてカウンセリング」を実行し、時に「冒険としてのカウンセリング」が必要なのか自問自答してみたいと思った。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ東畑さんの本2冊目です。ケアする人たちへ寄り添った本。災害で被害に遭われた方々のケアの話が印象的だった。まず最初にケアを必要とする人々のインフラ設備を整えることが第一歩。確かにそうだと思う。その人たちは家や家族を失い、生きるために必死だから、すぐに心理師と話を落ち着いてすることが難しい。だから、トイレ掃除などの避難所の衛生を保つようなことから始める。被災した方々自らが話を聞いてほしいと思えるまで環境づくりに努める。相手が望んでいることでなければ、それは単なる良いおせっかいではなく、ありがた迷惑。
そこのボタンのかけ違いがない、つまり支援を必要とする人のニーズにきちんと応えられるような心理師になりたいと思った。 -
Posted by ブクログ
孤独を見つめる言葉の襞の宝庫
小川洋子さんが小説書きとして洗練してきた感性で投げかけ、東畑開人先生が心理学で培った複眼的な視点で応答するやりとりの中にとても孤独についての襞が見つかる素晴らしい対談だった。良い悪いの二元論的なものではなく、少しずつ少しずつ別の言葉、手触り、繋げ方で孤独を触っていく。その中で交わされる言葉が、例えるなら指間水かきのような、ずっと泳いでいてやっとできるちょっとカッパみたいにのびる手のひれみたいに、小説家、心理士を通してお二方が泳ぎ続けてきた長い時間が故に掬い出された言葉のようで、何度も頷き、発見があった。
鏡リュウジ先生との『昼間のスターゲイザー』でも思ったけど、東畑先生は対話だとより活き活きしているというか、紡ぎ出された言葉、再記述的なちからがより対談者に共鳴するように凄く広がるような印象を受けた。もっと色んな方との対話本を読みたいな。
とにかく素晴らしい対談でした。 -
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仕事と労働という魂の浅瀬におけるミドル・エイジの物語。限界を引き受けることができたときに個性になる。
人生の午後、他者の物語に触れる。
苦さと余裕。
実存・上昇:親になる物語
実存・降下:影を生きる物語
生存・上昇:青年に戻る物語
生存・降下:停滞する物語
ただし、現代は内なる青年性を抱えながら、人生を「創作」し続けないといけない
少年は老い易く 学成り難し
一寸の光陰 軽んずべからず
未だ覚めず 池塘春草の夢
階前の梧葉 已に秋声
◯私の感じていた行き詰まり感の正体は、狭いところに閉じ込められていて、箱をすべて開けてしまった喪失感ではなく、部屋の外には広大な世界があって、そしてそこにはもう手が届かないという無力感があったということです。