東畑開人のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
自身がカウンセリングに通っているので、非常に興味を惹かれて手に取った。
昔行ってみたが「中断」した時の自分とカウンセラーの噛み合わなさを振り返ったり、今通っているカウンセリングでは、あーあれはカウンセリング全体のこの部分なのかと合点がいったりと気付きをたくさん得られた。
また、専門家でない人にも分かりやすく書かれていた点もよかった。
おそらく読者の中にはカウンセリングに直接関わったことのない人も多くいるであろうが、これは世界や社会の地続きにいる自分と心の話であり、全ての人が多少なりとも心当たりのある話しなのではないかと思う。
誰もが突き当たる心の問題について専門的見地から、一般の人にも分かる -
Posted by ブクログ
分厚い新書。441ページ。
カウンセリングを説明するのに、なんでこんなにページが必要なのか、、
と疑問に思いながらページを開く。
最初の100ページくらいはついていくのがやっと。
著者が実際にカウンセリングした4人の事例が紹介され、一気に惹きこまれた。
もちろん、プライバシーの問題があろうから、その者の会話ではないだろうが、
カウンセラーと患者の緊迫した会話。
これはすごい。迫力、というか、リアル、というか、真に迫る、というか。
人の心の弱さが垣間見える。
それにどうカウンセラーが相対するか。
これは参った。
次、どうなるんだ。
下手なドラマよりも、推理小説よりも面白い。
ななめ読みもできない -
Posted by ブクログ
かなり長かったけど
途中から加速し最後は一気に、という
小説であればよくあるパターン
感想に替えていくつか引用を
『話すことは離すことでもある。過去を物語るのは起きた出来事を現在から引きはがし、過去に置いていくためです。
…
カウンセラーの手助けを借りながら、破局を生き延びる。すると、人生のある時期が終わっていたことに気づく。古い物語がかつてのものになっている。昔から続いていたものが過去形になる。』(P419)
『一人ひとりの心は決して文学を手放さないし、遠くには聞こえないような小さな声で物語を語り続けることをやめません。
…
物語のない人に、僕は出会ったことがない。』(P420)
『 -
Posted by ブクログ
ネタバレいい本だった。
新書の割に厚くて物怖じしていたけれど、読んで良かった。
カウンセリングとは何か?
それは生活を回復するための科学的営みでもあり、人生のある時期を過去にするための文学的営みでもある。
カウンセリングとは、近代の根源的なさみしさの中で、人が可能な限り、正直に、率直に、ほんとうの話をすることを試み続ける場所である。
---以下要約---
・カウンセリングとは何か?という問いそのものを扱う本。技法やマニュアルではなく、カウンセリングを支える思想・姿勢・歴史・臨床経験を立体的に描く。
・カウンセリングは「生活を回復するための科学」と「人生を過去にするための文学」の両面を持つ。
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Posted by ブクログ
ネタバレめちゃくちゃ良かった。
本書は、カウンセリングというものを体系的に整理し、原論を導き出そうというもの。
専門知識が土台にありながらも、社会側(ユーザー側)における位置づけとして整理することで、素人にも読みやすい読み物となっている。
また、架空のユーザーが登場し、実際のカウンセリングの様子をエピソード仕立てで要所要所に配置されていることで、感情移入しやすく、惹きこまれる。
かといってただの小説や物語になっているのではなく、理論も語られていて、読者を引き込む物語と理路整然と整理された論文調のバランスが素晴らしいと感じた。
本人も語られているが、まさに東畑先生の集大成でありその達成感を感じた。
レベ -
Posted by ブクログ
カウンセリングとは、人が人に話をすること。
日常行われていることだが、これが成立しなくなり、エスカレートすると、それは「心の非常時」であり、専門家が必要になる。
と筆者は言っているのだが、そこには連続性があると言っていいのだろうか。
心というものを一括りにした乱暴な議論なのではないのだろうか。あるいは「正常」な部分と「異常」な部分。あるいは「普遍」と「特異」。その他にも分類、分析は様々な形がありそう。
これには、理論的には答えられない。臨床的、実際のカウンセリングに基づいて答えてくれるらしい…
読み進めるもんですね。
「自己」を「ままならないもの」と整理。
「世界」=「外部」と「自己」の間に「 -
Posted by ブクログ
僕は占いのみで生計を立てています。
つまり、本書でいうところの “野の医者” です。
これまでいくつかの東畑先生の著書を読んできましたが、本作も最高に笑わせていただきました。
無職時代の東畑先生が、トヨタ財団研究助成プログラムの支援を勝ち取り、沖縄を舞台にスピリチュアル界隈を縦横無尽に駆け巡る、ワクワクするフィールドワーク冒険譚です。
スピリチュアルのエネルギーは良くも悪くも強力です。
臨床心理士として確固たる信念を持っているはずの先生でさえ、大量の謎のスピリチュアルエネルギーに染め上げられ、ミイラ取りがミイラになってしまいます。
しかし、その包帯の隙間から覗く心理士としての眼を光らせ、 -
Posted by ブクログ
本書を読んで、もっとも衝撃的だったこと。
「人生の脚本は反復される。」
それが面接室で、カウンセラーとの間に「転移」するということ。
たしかにと、思ったこと。
「人は自分の物語が聞かれて初めて、人の物語と共存することができる。」
「古い物語を終わらせないと、人生の次の段階に進めない。」
面接室で展開されるカウンセリングはドラマチックで、形を変えて誰にでも起きうることで、読み進めるのがスリリングでさえあった。
カウンセラーは誠実な人だけれど、全知全能の神ではないし、完璧でもない。また、その必要もない。その意味で、家族と身近な大切な人たちに対して素人にもできることはあると思った。家族の役割