【感想・ネタバレ】カウンセリングとは何か 変化するということのレビュー

あらすじ

「新書大賞2026」大賞受賞!

人生の変わる場所──。
カウンセリングが、いま社会へとひらかれる。臨床心理学の歴史に打ち立てられた、新たな金字塔。

■精神分析、ユング心理学、認知行動療法、家族療法、人間性心理学──
バラバラに乱立する心理学を俯瞰し、メタな原論が示される。
■身体を動かす、世界を動かす、からだを動かす、視点を動かす、心を揺らす──
カウンセリングは聞くだけじゃない。アクティブに5つの介入がなされる。
■いかに生き延びるか、いかに生きるか──
カウンセリングには二つのゴールがある。生活を守ることと、人生をちゃんと生きること。

「カウンセリングとは、近代の根源的なさみしさのなかで、人が可能な限り、正直に、率直に、ほんとうの話をすることを試み続ける場所である。」──「5章 カウンセリングとは何だったのか──終わりながら考える」より

【目次】
まえがき ふしぎの国のカウンセリング
第1章 カウンセリングとは何か──心に突き当たる
第2章 謎解きとしてのカウンセリング──不幸を解析する
第3章 作戦会議としてのカウンセリング──現実を動かす
第4章 冒険としてのカウンセリング──心を揺らす
第5章 カウンセリングとは何だったのか──終わりながら考える
あとがき 運命と勇気、そして聞いてもらうこと

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Posted by ブクログ

カウンセリングが目指すことや実際の流れを知ることができた。カウンセリングマインドは、自分の生活でも役立ちそうで、一気に読み進んだ。
カウンセリングは、破局にいる人が生き延びるために手を差し伸べる作業だ。カウンセリングのゴールは、究極的には生存(生き延びること)と実存(よく生きる)にある。前者のためには、環境や身体の面から現状を変えることになり、後者では心の動きを変えることになる。会社や学校でのカウンセリングは前者が中心だろうが、心を変えるカウンセリングは人生の深い悩みから逃れるために重要だ。ここを扱った4章がとても興味深かった。終わりの方にあった、カウンセリングは人生のある時期を終わらせる、というところに、そのポジティブな意味を感じた。
本文中にはたくさんの図書が示されていた。興味があるものをピックアップすると、20冊近くになった。しばらく、この分野の本を読んでみよう。

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2026年04月23日

Posted by ブクログ

カウンセリング。馴染みはなかったけど、新書大賞とかも取り、気になっていたので、読んだ。心に作用するというのは、複雑だし、学ばないとできないことだと思った。
特に冒険としてのカウンセリングは、誤解も生む恐れもあり、難しい。
イメージは作戦会議としてのカウンセリングが、もっていたイメージと近かった。

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2026年04月23日

Posted by ブクログ

評判が良かったので読んでみたが、評判通り大変興味を引かれ、論点の整理の仕方、専門家でない読者への提示の仕方、どれをとっても高いレベルに達している本だと思った。提示された理論を裏付ける具体例も読者の共感を呼ぶものだし、著者自身が言うように、ユーザーひとりひとりの物語は文学的なものだった。最終章の「個人的な物語を生きさせるカウンセリングには、大きすぎる物語に抗する社会的使命がある」という言葉には、彼が今の暴力渦巻く社会という大きな枠組みに対する危機感が感じられるし、その中で壊れやすい個々人の『心』を扱う最前線にいるカウンセラーの喫緊の警告が発せられているように思った。

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2026年04月23日

Posted by ブクログ

カウンセリングの臨場感が伝わる名著。
もともと心理学に興味があったが、どのように考えているのかが、理論過ぎずナラティブ寄りで解説されておりイメージしやすかった。
印象に残ったのはハルカさんの破局の場面。涙が出た。
snsが出現し、AIが出現し、効率化、コスパ重視の世の中で、他人からのオススメに囲まれて生きてる中で、自分の物語を置き去りにしないこと、大事だと思う。
カウンセリングというと、本書でいう「生存のための作戦会議」のイメージだったが、冒険としてのカウンセリング=じぶんという物語の再発見、変化すること が、真に現代人の多くが必要としていることだと感じる。

外来で応用していきたいという下心で読み始めたが、プロの手で8年くらいかかることもあると聞き、中途半端なことはしてはいけないなと感じた。

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2026年04月18日

Posted by ブクログ

著者によれば、カウンセリングについては各論の専門書は多々あれど、カウンセリングという行為を包括的、俯瞰的に書いたものというのはなく、「ぶっちゃけカウンセリングって何をするの?」というユーザー目線での問いに答えている著作というものが無いそうなのだ。なぜなら様々な心のトラブル(破局)に対応するために様々な診療方法(学派)があり、また、目指すべき着地点(何をもって治ったと見做すか)が、それらの学派によっても、個々の診療でも、異なった見解が起こり得るからで、一言で説明するのがとても難しいからだ。さらにその様々な学派が、他派のそれぞれの「カウンセリングとは何か」の定義付けについて「それはカウンセリングではない」と批判し合うという歴史を繰り返したことが拍車をかけてきたということらしい。また、専門家のカウンセラーが行うカウンセリングと、お悩み相談や宗教や占い等と何がどう違うのか、目指すべきところは同じだろ?という、包括的にとらえるなら答えるべきこういう素朴な疑問もある。本書は前半かなりの紙幅を割いてこれらに丁寧に説明してから本題に入っていくという、「包括的・俯瞰的」に並々ならぬ情熱と覚悟で臨んでいる。本題は実際に本書を読んでもらうのが一番だが、ざっくり言えば本書でいうカウンセリングは、臨床心理学という学問を修めた専門家のカウンセラーが、ユーザーと対面でアセスメント(ユーザーの心のトラブルの状況を把握し必要なケアを計画する)を行う行為を指している。また、目指すべき着地点については、大きく「生活の問題(生存の破局。会社や学校に行けない、身体レベルの症状)」と「人生の問題(実存の破局。生きている気がしない、どう生きるべきなのか)」の改善に分かれ、本書によれば90年代ころまでは、いわゆる精神分析による後者がメインであったものが、2000年代以降の社会不安の時代の本格的な到来により、実生活に支障をきたすというトラブルが増大したことで勢力図も書き換わっているらしい。前者が認知行動療法とかで呼ばれる療法、後者はいわゆる精神分析とか分析心理学とかで呼ばれている療法で、本書ではこの目指す着地点の異なる2つのカウンセリングについて、どういうユーザーのどういうケースによってこれらがどう使い分けられているのか、使い分けられるべきなのか、章をわけて詳しく解説していく(カウンセラーは著者のように複数の技法を学び、ユーザーの状態に合わせて手法を使い分け統合的なアプローチをとる専門家も多いらしい)。つまりカウンセリングは心のトラブルについてそれを良きように変化させることであるならば、どう変化させるべきなのか、とりあえず破綻している実生活が正常に送れるようにすることが最優先だとしても、もっと根深いその人の根源的な問題を解決すべきなのか、その見立てが最初に行われるということだ。前者ならそれこそ会社での所属部署の配置を検討してもらったり、薬物療法を紹介したりという、心というよりユーザーの外側の環境であったり、物理的な処方も行うわけだが、興味深いのは、生存の破局に対処するために、実存を歪める、封印するということが往々にしてあるということだ。つまり生活のトラブルを巧みに処理するために本心を押し殺すということが起こり得るということだ。そこで後者のカウンセリングが必要になってくるわけだが、これぞまさにザ・カウンセリングという、カウセリングでしか解決しえないその醍醐味を知ることができる。そしてそれをどう終わらせるのか、どう終わらすべきなのか、について、カウンセラーとユーザーは時間をかけて何度も話しあいながら検討していくのだが、その人にとってどういう心の在りようがゴールであるべきなのか、それに対する深い知見こそがカウンセリングという行為の肝なのだろう。終章で著者が「物語」と「勇気」というワードをとりあげるのだが、前者は「人は必ず自分の物語を生きている」ということと、後者は、人が変化するというその時に、それまでどうしても変化できなかったのにある時突然そういう気持ちがユーザーに起こることを指している。これはもうぜひ本書を読んで欲しい。人がみなそれぞれの固有の物語を生きていることと、内発的な感情の在り様は、カウンセリングだけにとどまらない、人間そのものへの深い識見につながっていると思う。

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2026年04月11日

Posted by ブクログ

カウンセリングとは何か。心が変化するとは何か。

心ってその人を表す最も象徴的な機能で身近なはずなのに、自分でも自分が分からない。
だからこそ、心が傷んで人生を前に進められない事がある。
自己、心、世界。
心とそれ以外の役割を客観的に見る術を教えてもらった。
これは今後、自分を見失いそうな時に一歩客観的に冷静に対処する大きなヒントになったと思う。

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2026年04月10日

Posted by ブクログ


自分が対人支援職として働いていることもあり、関心を持ち本書を手に取ったが、繰り返し問われる「カウンセリングとは何だったのか」というテーマが全体を貫く核心であると感じた。

本書は「心の病」を孤独の悪循環として捉え、理解されにくさが苦しみを増幅させる構造を示している。また、カウンセリングを「心の非常時を扱うテクノロジー」と位置づけ、アセスメントの重要性や、治療者とクライエントが共有する「説明モデル=物語」の意義を丁寧に描いている点が印象的であった。

特に「古い物語を終わらせ、新しい物語を始める」という変化の原理や、終結を通じた心理的変化の捉え方は示唆に富む。理解は変化の十分条件ではないが不可欠な土台であるという指摘は、支援の本質を再認識させるものであった。

臨床心理学を「科学」と「文学」の両面から捉えた良書であり、支援の意味を問い直したい者にとって示唆に富む一冊である。

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2026年04月08日

Posted by ブクログ

1. 幼少期の家族環境と「心の鎧」の形成
社会の影響を色濃く反映した家族の形は、力の弱い子供の心に生涯にわたる影響を与える。親からの愛情の欠落や、愛という名目での支配的な関わりを受けた結果、傷ついた心を守るための防衛機制として、他者への寄生的な依存や対人関係の回避など「分厚い鎧」をまとった大人が形成される。

2. 現代における人間関係の摩擦の必然性
社会は、そうした多様な傷と鎧を抱えた大人たちによって構成されている。家族の形が多様化した現代においては、個人の「鎧の形状(心の凹凸)」も多様化かつ複雑化しているため、それらがうまく噛み合わず、人間関係に不全が生じるのはある意味で不可避な構造である。

3. カウンセリングの役割:「小さな死と再生」
カウンセリングの本質は、人に「変化」をもたらすことである。自己を守り縛り付けていた過去の物語や防衛的なあり方を自ら「終わらせる(小さな死)」ことを支援し、そこからの「再生」のサイクルを繰り返すことによって、人の精神的な成長を促す機能を持つ。

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2026年04月08日

Posted by ブクログ

カウンセリングを「作戦会議」と「冒険」にわけて書いてあり、わかりやすい言葉でスラスラ読めた。
心を揺らし、凍結を溶かす場。
実際の事例のやりとりがとてもリアルで参考になる。

カウンセリングって本当に意味あるの?とどこかで思っていた。
科学やエビデンス(も当然必要だけど)に振り切ったり、いかに短時間で回復・成長するかが重視される社会では個人の物語は置き去りになりがちだ。

でもみんな「個人である自分」を生きて、自分の物語を必要としている。
カウンセリングって、焦点を当てきれずにこぼれ落ちた個人的なものに辻褄を合わせ、生き直そうとする場、なのかもなと。

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2026年04月05日

Posted by ブクログ

臨床心理学、カウンセリングについて、専門知識を体系的に、具体例も交えながら書かれています(それでも難しく感じるところはありましたが。)
素人からすると内容が深くボリューム感ありました。
見えない他人の心と向き合う、臨書心理士という仕事はなんと大変な仕事か!

カウンセリングの始まりから終わり方まで多様な説明もあり、非常に良書でした!

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2026年04月03日

Posted by ブクログ

カウンセリングというと、漠然と「話を聞いてもらうこと」と思ってしまうが、その内実、仕組み、目的、終わり方まで体系的に概説してくれる良書。おそらく、これからカウンセリングを受けたいと思っている人にとっては、目的意識をはっきりさせるという意味で、非常に役に立つのではないだろうか。

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2026年04月03日

Posted by ブクログ

★4.6
めちゃくちゃ良い本でした。
心の動き方をすごく分かりやすく具体的なカウンセリングの事例も出しながら示してくれているので非常に読みやすいです。
その上内容もかなり推敲されたのがわかるほど洗練されていて、現代で問題視されている心の問題と向き合うにはタメになる本だなと感じます。

自分が外部環境で苦しんでいるのかそれとも内部環境で苦しんでいるのか 
じゃあどういうところから変えていくべきなのか 
そんな体系的な要素もあり、自分の心と段階的に向き合うこともできます。

買って良かったと思える名著です。

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2026年04月03日

Posted by ブクログ

オススメ本!
大衆向けの新書でありながら、近接領域等との比較や「カウンセリング」と呼ばれるものの分解によって、カウンセリングとは何を変えることで、何ができるのかを明らかにしている。

もちろん東畑先生のバックグラウンドでもある精神分析の話への偏りはややある気がするが、精神分析の知識がなくてもとても分かりやすい。
臨床心理学やカウンセリングは怪しい、効果がないなどと疑問を持たれることもあると感じているが、この本はその信頼を取り戻し、正しい期待を持ってもらうためのきっかけとなるのではないか。

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2026年04月01日

Posted by ブクログ

うーんよかった。わかりやすくまとめていることが良いのかという批判は想像できるけれど、カウンセリングとは何か、という問いにかなり大局的に回答している本。カウンセリングが始まりから終わりまで、何を行われているのか。その営みを解き明かして共有しようという試みが、勇気があって救いがあってすごく良い。カウンセリングで何が行われているか知ることで、読者は物理的な意味でのカウンセリング室で行われていることへの理解とともに、同様の視点を自分の中に持ち合わせることにつながる本だと感じました。
救いを求めること、救いの現場で行われていることを自分の中で持つことは大事なこと。まさに大作と言える一冊でした。

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2026年04月01日

Posted by ブクログ

カウンセリングとは非常時の心を理解すること

とてもロジカルにわかりやすく書かれていて、するする読めた。冒険としてのカウンセリングは読んでいて苦しいところも。心が揺れて破局の危機を乗り越えて、新しい物語に繋がる。

簡単にはできないかもしれないけど、面談の進め方は参考にできそう。

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2026年03月31日

Posted by ブクログ

素人でもカウンセリングとは何か?が分かる。
いや、分かったような気がする。
事例もあり、ユーザーの変化もみれて学べる。
文章は教科書的ではなく、ワクワクするような比喩表現で大変楽しめた

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2026年03月29日

Posted by ブクログ

ネタバレ

わかりやすくて面白い!

人間関係で悩んだ時、自分の感情の背景を落ち着いて深掘りすることはもちろん大事だけれど、相手にも何かあったのかもしれない、自分が思うほど相手はそう思ってない可能性もあると想像したり、視野を広げて俯瞰したりすることも大事だと再認識した。
まいってしまったときほど視野が狭くなるから定期的に読み返したい。

カウンセリングの具体例も書いてあったのでリアルに想像しながら読めたのも良かった。転移の話が特に面白かった。

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2026年03月29日

Posted by ブクログ

カウンセリングってなにをするものなのか?を理路整然と、素人にも分かりやすい表現で教えてくれた。
例えもとても「しっくり」くるし、著者の誠実さが伝わる説明で興味深かった。

作戦会議としてのカウンセリングと冒険としてのカウンセリング。後者はカウンセラーへの負荷も非常に大きく、仕事とはいえ、辛くないのだろうかと心配になる程だった。
それでも「ついてきてくれる」存在がいることが勇気になる。

人生の行き詰まりが全くないと言えば嘘になる。
カウンセリングに頼るほどの状況ではなくても、この本で学んだことをヒントに自分の実存を見つめてみたいと思った。

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2026年03月27日

Posted by ブクログ

新書大賞2026に選ばれた本書。カウンセリング未経験者から、カウンセラーを目指す人まで、幅広い層におすすめしたい一冊。

臨床心理学の歴史や各学派の違いから始まり、カウンリングの空間で何が行われているのか、概念的な話が展開される。そこから著者が実際に出会ったユーザーのケースが紹介される。
そこからまた概念的な話が展開され…と、具体例を差し込みつつ「カウンセリングとは何か」が解かれていく。この構成がとてもよかった。具体例があることで、カウンセリング未経験でも解像度が一気に上がった。


カウンセリングを受ける意味はさまざまあるだろうが、一つは全く関係のない他者による介入があると感じた。
心理的に追い詰められていると、時に家族や友人の指摘やアドバイスは突っぱねてしまう。だが全くの他人であり専門家でもあるカウンセラーに言われると、なぜかすなおに受け入れられるケースが紹介されていた。
自分でも分かっているけど認めたくないこと、どうしても一歩が踏み出せないことは、誰しもが持っていて私も気持ちがよく分かる。力点が違うと作用も変わってくるということだろう。

ここ数年、周りでメンタルに不調をきたす友人や同僚が増えた。なぜだろうと常々考えていて、要因として薄々感じていたことが本書で裏付けられた。
社会が豊かではなくなっているからだ。経済的にもメンタル的にも、余裕がなくなってきている。仕事も人生そのものも、求められるものがどんどん高度化して複雑になっている。常にたくさんの情報に晒されて、考えなければいけない問題も山積みになっている。
昭和や平成初期、右肩上がりに日本が豊かになっていった時代には「なんとかなる」で乗り切れたことも、今はどうにもならなくなっている。さまざまなことが自由になってきているはずなのに。

そんな時代だからこそ、藁にもすがる思いでカウンセリングへ行く人は多いだろう。カウンセラーは進むべき方向を示すことはなくても、そばにいて話を聞いてくれる。時間を重ねていくうちに、ユーザーの心に余白が生まれてくる。この人がそばにいて聞いてくれるから、ちょっと勇気を出してみようと思える。
本書でカウンセリングの内情を垣間見れて、私も訪れたくなった。

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2026年03月27日

Posted by ブクログ

著者は、臨床心理学者であり、精神分析や医療人類学を専門とする。
本書では「カウンセリングとは何か」を問い直し、その本質と変化のメカニズムを幅広く解明しようとする試みが展開される。単一の理論を掲げるのではなく、心理学的営みとしてのカウンセリングの核心を、理論・歴史・実践の各側面から問い直していく。カウンセリング行為そのものを哲学的に見つめ直すそのアプローチは示唆に富み、エキサイティングな読書体験を得ることができた。



著者は、カウンセリングを三つの比喩で描き出す。
それは「謎解き」「作戦会議」「冒険」である。著者自身が経験してきたカウンセリング事例を詳らかに振り返りながら、最後に、それらを貫く「終わり」というテーマへと収束させていく。

<謎解きとしてのカウンセリング>

カウンセリングの本質は「話を聞くこと」ではなく、「理解すること」にある。
理解とは、ただ共感的に頷くことではない。カウンセラーは知性を総動員して語り、ユーザーが自らの経験に意味を見いだせるように導く。
「一緒にこの問題を扱っていこう」と思ってもらうところまで持っていくことが、専門職としての仕事である。

つまり、カウンセリングは受動的な傾聴ではない。
人生という難解な物語を共に読み解く、知的で能動的な営みである。

<作戦会議としてのカウンセリング>

カウンセリングには二つのゴールがある。
「生存」と「実存」である。

作戦会議は前者に関わる。
生活を破局から守ること。現実を動かし、生き延びる条件を整えること。

ここで重要なのは、現代のカウンセラーは内面だけを扱う存在ではないという点である。
ユーザーの周囲の人々に働きかけ、環境そのものを調整する。現実を変えるために動く。

そして、回復とは「元に戻ること」ではない。
成功した作戦会議の先にあるのは、以前と同じ生活ではなく、新しい生き方の開始である。

<冒険としてのカウンセリング>

しかし、生存だけでは人は生ききれない。

生き延びるために、心の一部を切り捨ててきた人がいる。
その結果、死んだ部分を抱えたまま生活している。
それは「贅沢な悩み」などではなく、切実な苦しみである。

心は防衛によって守られる。
だがその防衛が過剰になると、鎧のように硬化し、世界と自己を拒絶する。

冒険とは、その鎧を内側から揺らす営みである。
そこに隙間が生まれると、形の定まらない、生々しい「スライムの心」が姿を現す。

このプロセスを支えるのが、カウンセラーとの高頻度・長期的な対話である。
心を揺らすのは他者であり、他者に慣れることで鎧は緩む。

やがてユーザーは、愛や憎しみ、嫉妬や依存といった感情をカウンセラーに向ける。
これが転移である。

心の歴史とは、「どの関係で傷つき、どの関係で救われたか」の集積である。
人生の脚本は反復される。
転移を通じて、その脚本が目の前で再演される。

カウンセラーはそれを引き受け、否定せず、率直に語り合う。
その苦しい作業を経て、今まで生きられなかった心の部分が再発達する。

カウンセリングは破局を避ける営みではない。
あえて破局に踏みとどまり、それを生き延びることで、古い自分が死に、新しい自分が生まれる。

「ちゃんと生きる」とは、何度も小さく死に、その都度生まれ直すことなのである。

<「終わり」の意義>

毎回の面接の終わりには、必ず孤立の痛みがある。
しかし同時に、会っていない時間に「つながっている」という体験もある。

実は、本質的な変化は面接時間内ではなく、面接と面接の間に起こる。

カウンセリングとは孤立との戦いでもある。
終わりを「見捨てられること」ではなく「自立」として経験できるとき、カウンセラーの存在は内面化される。

別れの場面では、人生の脚本が再び反復されやすい。
だからこそ「終わりたい」という気持ちを話し合うことが重要になる。

古い物語を終わらせること。
古い自分を喪失すること。
小さく死ぬこと。

これが最も難しい。

人は古い脚本に執着する。そこには恐れと渇望があるからだ。
だが過去の誰かとの心理的な別れを経験しなければ、新しい物語は始まらない。

話すことは、離すことでもある。
過去を現在から引きはがし、過去形にする営みである。

<結論―カウンセリングとは何か>

著者は最終的にこう位置づける。

カウンセリングとは、
生活を回復するための科学的営みであり、
人生のある時期を過去にするための文学的営みである。

そしてそれは、近代の根源的な孤独の中で、
人が可能な限り正直に、率直に、本当の話をすることを試み続ける場所なのである。


驚かされたのは、カウンセリングという営みの射程の広さ。カウンセラーとは「話を聞き、助言する人」という漠然としたイメージを持っていた。しかし本書が描き出す現場は、そんな穏やかなものではない。そこには、知性も胆力も、そして人間としての覚悟も求められる、きわめて緊張感の高い仕事の姿があった。

「古い物語を終わらせる」というテーマは、カウンセリングに駆け込むほどの危機にある人だけの話ではないだろう。誰もが多かれ少なかれ、過去の脚本に執着する。苦しくても、慣れ親しんだ物語は安心を与える。しかし、それに留まり続ければ、新しい章は始まらない。

「人はひとりで生まれて、ひとりで死ぬ」。
小津安二郎が数々の映画作品で描き続けたテーマだ。人は根源的に孤独である。しかし、その孤独に耐えるためには他者が必要だという逆説。本書はまさにその地点を掘り下げている。

自分自身、「古い物語」に執着して捨てきれなかった経験と、そこに残る後悔をいくつも思い出す。やはり、苦しくとも手放すことを選ぶべきなのだ。それは孤独でさみしい決断かもしれないが、そうすることで新たなステージが開けるのではないかという希望がある。

読後に残るのは、静かな覚悟である。
『人は何度も小さく死に、その都度生まれ直す。』
その営みを引き受けることこそが、変化するということなのだと、本書は改めて教えてくれた。

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2026年04月13日

Posted by ブクログ

カウンセリングとは何か、まさに知りたかった。ただ話を聞くことなのか。傾聴の本などもあるが、この本でカウンセリングを概観できて、かつカウンセラーがカウンセリングでしていることの実際を少しわかることができたように思う。
加えて例としてのエピソードを読み進めることで、自分自身に深く響くものがあった。

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2026年04月24日

Posted by ブクログ

カウンセリングについて小難しい内容が書いてあるのだろうと推測していましたが、実際はシンプル細分化されており読みやすかったです。
カウンセリングはメンタル不調の方に向けて改善させる、それくらいの内容で考えていました。しかし実際は万人に対して必要な対処法であり、過去から未来への成長の考えが興味深かったです。

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2026年04月12日

Posted by ブクログ

カウンセリングの原論を描く試み

カウンセリングの本質は
変化するということ。

カウンセリングにやってきた人が変化する。

それを筆者は「不思議の国の魔法のようだ」と感じていたそう。でもその魔法は個別の文脈に分断され、全体が見渡せなくなっている。

原論が失われている。

そこで日々臨床を行う筆者が、具体から原論を導き出す思想の冒険に出る。そんな本。

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2026年04月09日

Posted by ブクログ

臨床心理学を体系的に、具体例を取り入れながらわかりやすくカウンセリングとは何かを説明してくれていて、専門知識がなくともわかりやすく体験できました。はじめ方から終わり方までユーザーの人生の脚本を体系化されていた本でした。

カウンセリングとは何か――
ネタバレ含む↓

ユーザーが変化して行くこと。人生の脚本で現実を動かし、心を動かし、孤立から自立して行くこととあり、とても共感出来ました。

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2026年04月04日

Posted by ブクログ

筆者の野心「カウンセリングの全体を見せる」
は、きっと果たせていると思います。
冒険者のマップのごとく、カウンセリングの始まりから終わりまでに起きることを
見せてくれました。 楽しかった。感謝。

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2026年04月04日

Posted by ブクログ

カウンセリングとは
・自分の過去を小さく死んで新しく生まれ直すことの繰り返し。
・冒険としてのカウンセリングは心を揺らすこと。鎧から滲み出たスライムの形を知ること。

過去の役割・脚本を繰り返すことはよくありその中に自分の特性が表れる

人は孤独だけどカウンセリングによって依存先を増やすことでもある

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2026年04月03日

Posted by ブクログ

実際に行われたカウンセリングをもとに書かれて、臨場感があり、引き込まれた。
相談者の怒り、悲しみを受け止め止めるカウンセラーという職業は生半可な覚悟ではなれないと思った。

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2026年03月30日

Posted by ブクログ

「心が変わる」という奇跡の正体を解き明かす旅

自分の心の輪郭が少しだけ柔らかく
そして強くなったような
深い静寂と納得感の中で読み終えました!



「カウンセリングとは何か…」
このあまりにも根源的で
かつ答えの出ない問いに対して
著者は20年越しの謎解きの総決算として
真っ向から挑んでいます

すべての人の心に備わっている「死と再生のメカニズム」を「変化」のプロセスを通して
丁寧に紐解いています



私もここ数年…
カウンセリングの技法を学んできたので
めちゃくちゃ勉強になりました!
専門用語は極力使わずに平易な言葉を使いながら
分かりやすく解説されていて
現場や相談者のことを想像しながら読みました



「どうして心は変わるの?」
その問いの先にあるのは
効率や成果を求める現代社会の
論理とは異なる、もっと泥臭くてけれど圧倒的に
人間的な営みでした

私たちが誰かの話に耳を傾けるとき…
あるいは、自分自身の内面と深く向き合うとき…
そこでは一体何が起きているのか…

専門的な知見に基づきながらも
読者の心に直接語りかけてくるような
平易で温かな文体は
まるで自分自身がカウンセリングを受けているかのような感覚さえ覚えました



30年読み継がれる本にするべく
書かれたという言葉通り
この本は対人援助に関わる人はもちろん
自分という人間を理解しより健やかに生きたいと願うすべての人にとっての「心の地図」になるはずです!

「変化する」ということは
過去の自分を一度手放し
新しい自分へと生まれ変わること!

その痛みを伴うプロセスに寄り添い
共に歩むことの尊さを
改めて深く教わりました!!

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2026年03月28日

Posted by ブクログ

カウンセリングというのは、奥が深くなかなか面談を数年続けても完結しないというところが特に印象深かった。また、話を聞いてもらっていると相手に怒りや寂しさ、怒りなどの感情があたかも過去に傷つけられた相手のように移入する場合があることが分かった。

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2026年04月20日

Posted by ブクログ

ネタバレ

面白かったです。わかりやすい。わかりやすさはそれだけで安心できるし、きっと著者からカウンセリングを受ける人たちもこれだけ説明されていれば安心の中で治療ができそうです。ただずっと考え続けてしまう部分も残りました。言葉の使い方が唐突な部分がいくつかあり、そのほとんどは5章以降。なんとなくわかるけど、それ以上にはわからないとなってしまう。あとがきでは、さらに説明してくれているんだけど、やっぱりわかりきらない。著者の解釈や著者の言葉が急に多くなった気がして、だからこそわかりやすさを感じるんだけど…。カウンセリングの原理や全体像として、そしてカウンセリングとは何か?という回答として、この本を振り返ってみると、著者の個別性がチラつきモヤモヤが残り続けます。

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2026年04月08日

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