あらすじ
「新書大賞2026」大賞受賞!
人生の変わる場所──。
カウンセリングが、いま社会へとひらかれる。臨床心理学の歴史に打ち立てられた、新たな金字塔。
■精神分析、ユング心理学、認知行動療法、家族療法、人間性心理学──
バラバラに乱立する心理学を俯瞰し、メタな原論が示される。
■身体を動かす、世界を動かす、からだを動かす、視点を動かす、心を揺らす──
カウンセリングは聞くだけじゃない。アクティブに5つの介入がなされる。
■いかに生き延びるか、いかに生きるか──
カウンセリングには二つのゴールがある。生活を守ることと、人生をちゃんと生きること。
「カウンセリングとは、近代の根源的なさみしさのなかで、人が可能な限り、正直に、率直に、ほんとうの話をすることを試み続ける場所である。」──「5章 カウンセリングとは何だったのか──終わりながら考える」より
【目次】
まえがき ふしぎの国のカウンセリング
第1章 カウンセリングとは何か──心に突き当たる
第2章 謎解きとしてのカウンセリング──不幸を解析する
第3章 作戦会議としてのカウンセリング──現実を動かす
第4章 冒険としてのカウンセリング──心を揺らす
第5章 カウンセリングとは何だったのか──終わりながら考える
あとがき 運命と勇気、そして聞いてもらうこと
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Posted by ブクログ
心理学において避けては通れない「カウンセリング」を通して、臨床心理学とはどういったものかを考察した一冊。著者の書籍の中で一番最初に読んだ本だが、他の書籍を読むと結構真面目……失礼、硬めに書いた一冊だったようだ。
新書の中では比較的厚めな本だが、語り口の軽さからするする読めて気付けば読み終えていた。厚さに怯んでいる方は、是非に最初の部分だけでも踏み出してほしい。
『昼間のスターゲイザー』でも触れられていたが、カウンセリングとは臨床心理学の他、占いや巷の相談室でも掲げられている看板であり、身近な一方胡散臭くみられるという弊害も抱えている。そこで世間一般のカウンセリングと臨床のカウンセリングの違いが何かの提起から始まり、臨床のカウンセリングが目指す場所や目的、カウンセリングの終わりなど一連の流れを、著者が診療したクライエントとのカウンセリング(もちろん全て仮名と架空のパッチワーク)を併記しながらこころの動きや実際に起きる事態にも触れながらまとめている。
過去に心理学を専攻したこともあり私は楽しく読めたが、基本単語に関しては多少の解説もあるため、心理学に触れたことがない人も話は飲み込めると思う。
Posted by ブクログ
全体像を知ることができて嬉しかった。具体例は役割を理解するのに非常に有効だった。冒険としてのカウンセリングを私が受けたらどうなるのか、考えると怖くもなる。
Posted by ブクログ
作戦会議としてのカウンセリングと冒険としてのカウンセリング、生存と実存、科学的変化と文学的変化、自己-心-世界モデルなど、カウンセリングの原論を書くという作者の覚悟が伝わるような、徹底して分かりやすい説明に読み入ってしまった。
文章から作者の優しさ、温かさが伝わってきて、初めて新書で「まだ読み終わりたくない!」という気持ちにさせられた。これも作者が終章で語った「終わる」ということなのだろうか、と考えてしまう。
今後、生活や人生のどこかで躓いたとき、戻ってきたいと思える、正にカウンセリングを体現した一冊だった。
Posted by ブクログ
新書大賞2026受賞は伊達じゃなかった。
目に見えないココロを扱うカウンセリングがどういったものなのか、何となくだけどわかるようになる。カウンセリングを生活と人生のどちらに効かせるかで学派が変わってくるというのは、ちゃんと考えてみればそりゃそうという話なんだけど、思ったこともなかった。
また、臨床心理士が人間の心をどう捉えるのか、その一例が書かれているのも面白い。もちろんそこに答えはないんだろうけど、本書のようにモデル化してみると、色々と辻褄が合うなと思う点があった。
例えば、本書に出てくる「スライムと鎧」の話。スライムを表に出すために心を揺らすというのは、人によっては家族や恋人との間で自然とやってきていることで、それを重ねることでスライムが育ち、鎧とのズレが減って生活しやすくなる、というケースもあるんじゃないかと思う。
実際、本書のリアリティのあるカウンセリングのシーンを読んでいて、自分が心を揺らした経験をいくつか思い出した。ああいうスライム同士のぶつかり合いを経験しているかどうかで、意外とスライムと鎧のフィット感も変わったのかもなと思う。
そうやって自分の内側にあるものをそのまま出して、それを誰かに受け止められたり、逆にぶつけ返されたりするのって、年を取るとそうそうできる経験じゃない。だとすると、それをお金を出して、ある程度ガードレールがあるなかでやることが、冒険的なカウンセリングの一つの目的なのかなと思ったりした。
そう考えると、内側のスライムと鎧のズレが大きくて、同じような不具合が人生で繰り返される場合には、冒険的なカウンセリングを受けるのも悪くないのかもしれない。私は自己開示があんまり好きではないので、できれば避けたいけれど。
本書に出てくるハルカさん(仮名)の後半のカウンセリングは、そのピリッとした空気感が伝わってきて、一気に読まされてしまった。カウンセリングという目に見えないものを描き切ったこと自体がまず素晴らしいが、このリアリティのあるカウンセリングのシーンも、本書の白眉だと個人的には思う。
Posted by ブクログ
なぜこんなにも興味のなかった分野の専門書を夢中で読めたのか。
読み進めるにあたり心が開かれるような、生きていながら死んでいる心に出会えたような感覚になった。
生きにくい世の中なのだろう、生存が実存を犠牲にする現代。
実例がおもしろすぎる。本気でやっている人にしか書けない面白さ、カウンセリングというベールを剥がしてくれた一冊。
聞き上手は聞くことが上手い人じゃないということ。
Posted by ブクログ
文句なしの5点満点。これまで読んだ新書で1番面白かった(さすが新書大賞)しスラスラ読めた。それは①文体が自然体②ユーモラスな表現が多々③具体と抽象のバランスがちょうどいい、という3つが要因と感じた。
カウンセリングは敷居が高いものに感じるけど、誰でもやってるという容疑がある前提に立つと、身近なものでもあるからこれだけ評価が高いのだと感じた。もちろん学びや気づきもたくさんあった。
子育てや、仕事における悩みが出てきた際に悩みを構造化して理解することにもつながると思った。
昔観たマットデイモンが出演してたグッドウィルハンティングを観なおしたくなった。確かあれカウンセリングの話だった気がする。
"社会に「主流」しか存在できなくなるとき、その社会は不自由で人工的な密室になります。傍流が「傍流」として、豊かに存在することこそが、自由で、そして自然な社会の条件です。"
これ今年読んだ文章の中でトップクラスに良くてハッとさせられた。
"順番が大切で、自己の世界にまずは適切な対処をする。その上で心の出番がやってくる。心の力を過大評価せず、過小評価もしない。プロのカウンセラーとはふぐを繊細に捌くように、問題を慎重に、丁寧に見定めてどこの問題にどれだけ介入するかを判断できる人。"
カウンセリングをふぐ調理に例えるところユーモラスで良かったなぁ。
"勇気が出るのは、見守られているとき。自立できるのは孤立していないとき。
ついてきてくれるなら行きましょう。
何もしないことに全力を注ぐ。すると、心の底で深いものが動き出す。"
カウンセリングは変化することで、カウンセラーは変化する勇気を与える人なんだなぁ。
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喫茶店で本読んでる時に隣のお客さんが「ポケモンダイパで殿堂入りまでドダイトスに体当たり覚えさせてたwww」と話してて思わず吹き出しそうになったwww
Posted by ブクログ
「カウンセリング」「カウンセラー」って何となくこういうもの。というふわっとした印象が、読み終わった頃には少し輪郭が分かった気がした。
心理学の知識が全く無い自分が読んでも、置いていかれないように、目線を合わせて書いてくれているのをとても感じる。
著者の仕事に対する誇りも伝わってきて、
「カウンセラーってかっこいい、、」って素直に思えた。
Posted by ブクログ
「野の医者は笑う」を読まれてから本作を読むとよりタイトルであるカウンセリングというものについて考え、伝えたいことを感じることができると思う。哲学的思想にも繋がるものだと思っていて、人との対話が冒険となること、過去の脚本をなぞる行為が対話であることに納得感があった。今年ナンパーワンの急に具合が悪くなるの往復所管にも繋がる、より臨床的ではあるが、人間に興味のある方はぜひ読んだ方が良い作品である。
Posted by ブクログ
カウンセリングというものの、理解が少し深まった感じがした。
それというのも、支援している障がいのある人に、心理面接は有効なのか?と思いながら読んでいたからかもしれない。
心に危機が訪れたかもしれない時に、役に立つかもしれない、一つの大事な選択肢になる。
Posted by ブクログ
カウンセリングを受けることを何度も考えたことがあるが、そのたびに敷居の高さに躊躇してきた。
この本で、「カウンセリング」というものが、人の生存や実存(作中の言葉)にどのように機能するかを理解することができた。
ただでさえ人生に行き詰まっている時に、全く得体のしれないものに飛び込むのは、かなり負担に感じるものである。
読み終えて、自分が今後行き詰まったときに、カウンセリングの利用を、選択肢の1つとして現実的に考えられるような思いを抱くことができた。
作中で、4つのユーザーさんのカウンセリングが例として進行していくので、カウンセリングというものの流れがとても理解しやすく、本当に読みやすい。
「カウンセリング」に興味がある人には必読書。
Posted by ブクログ
カウンセリングについての基本的な情報を理解する上で非常におすすめできる一冊だと感じた。
最初の最初にピッタリな感じ!
カウンセリングで取り扱う内容の中には、即座に対処しなければならない生存の問題と時間をかけて対処していく実存の問題とがある。
そして、それぞれには全く異なった対処法があるという思考のフレームを得られたことは、将来カウンセリングとの関わりがあるかどうかに関係なく、日常生活を送る上で有益であり、良い読書体験だった。
Posted by ブクログ
カウンセリングについて、大枠を紹介してある一冊。
この本を読んで、まず思ったことが、専門のカウンセリングに通うことなく、日々を過ごしたいと強く思った。もし通うことになっても、カウンセラーの当たり外れで人生にかなり影響しそうで非常に怖い。
本書は、実際のカウンセリングの話を入れながら、とてもわかりやすく紹介してあり、カウンセリングの世界観をふしぎの国と表現するなど、読みやすさも抜群によかった。
印象的だったのは、冒険としてのカウンセリングだ。この冒険としてのカウンセリングは紙一重だと思った。心の揺さぶりがいい方向に行けばいいが、そうでないと立ち直れなさそう。そこがカウンセラーの腕の見せどころなのかもしれない。
一番心に残ったのは、「何もしないことに全力を注ぐ」ということだった。カウンセラーを終わった人が話をいっぱい聞いてもらったと感じて、カウンセラーが何もしていないように感じられること、それが相談者にとっては一番いいように感じた。
本書をよんで、今後、相談を受けることがあれば、どうせ素人なのでいろいろと思いつくアドバイスするより、黙って辛抱強く相手の話を聞くことに全力を注いでみようと思った。
Posted by ブクログ
【カウンセリングとは何かを理解することで「私とは何か」「心とは何か」を理解する】
・「誰でも出来る」「怪しい」等の印象を持たれがちな「カウンセリング」「カウンセラー」という行為、仕事についてその定義や役割についてとことん追求していく本
・カウンセリングの起源(猿の毛繕い!)、歴史的、アカデミック、社会学、生物などのあらゆる視点と著者の実務経験を組み合わせて「カウンセリングの国」という比喩を用いて、カウンセリングを出来るだけ分かりやすく紐解こうとする試み
・人は、自己と世界の接点における不整合や摩擦を「心」を通じて対処していて、その摩擦が自分で処理できる範囲を超えた時に、生存や実存を脅かす不調となって表れる
・従来はそれが表出する前に、コミュニティ、人と人との繋がり、人の助けを借りながら処理・調整して来れたが、個人化が進んだ現代では自己解決が求められる様になり、その難易度が増している
・その処理・調整の方法は、自己(含むコミュニティ)、医療的、宗教的の3通りに分類出来、カウンセリングは自己の解決を補助するアプローチであると言える
・そのアプローチとは、自己を無意識の内に規定していた自身の過去や物語に向き合い、自己の変化を促していくということ
(自分の為にいい加減に纏めるとこの様な感じだろうか。)
・時々、著者に「この本を書いてくれてありがとう」と思わず言いたくなる本に出合うことがあるが、この本は正にそのひとつ
・カウンセリングという概念をここまで丁寧に言語化してくれたことと、それに触れることで自分自身に対する理解や紐解きのヒントを与えてくれたこと、世界の見え方を変えてくれたことに深く感謝
・著者の読み手、ユーザー(カウンセリングを利用している人) に寄り添った文章はとても読みやすく、400ページを超える大作だがあっという間に読み終わってしまった
・レビュー数の多さなどから、多くの人にこの本が読まれていることを察するに、色んな意味で日本人の底力を感じたりもした
Posted by ブクログ
カウンセリングとは何かという主題を考えつつ、心の機能や心との付き合い方を発見させてくれる本。
全く専門的で無く、分かりやすい為多くの方にお薦めできる。
特に本書で感銘を受けたのが、心は破局を通して良くも悪くも変化するということ。何か自分にとって悪いことが起きた際、それを乗り越えた時心はただ単に回復するだけで無く変化する。この考えによりこの社会を少し生きやすく感じることができた。
それ以外にも心や身体、世界とは何かを示した図や運命とは、また転移についてなど多くの気づきを得ることが出来た。とてもおすすめの本です。
Posted by ブクログ
本書は、カウンセリングという専門的な営みを、専門用語に頼りすぎず、しかし単純化もせずに描き切った一冊です。理論とケーススタディがバランスよく配置されており、読者はカウンセリングの手続きと同時に、その奥にある人間観に触れることができます。
本書は、臨床の実感と学術的な整理の両方から論を組み立てています。まず、カウンセリングを二つの軸で位置づけます。一つは社会の中での位置づけという横軸で、著者はカウンセリングを「心の非常時を扱うテクノロジー」と説明します。もう一つは歴史の中での発生という縦軸で、カウンセリングは人間が自由な個人として生きるようになった近代の副作用――自由と引き換えに背負うことになった孤独と責任――に対処するために生まれてきたテクノロジーだと位置づけられます。
続いて本書は、カウンセリングを利用する人を「ユーザー」と呼び、悩みを①症状の悩み②不適応の悩み③人間関係の悩み④生き方の悩みの四つに分類します。そして「自己―心―世界モデル」という枠組みや、「説明モデル」――なぜその不幸が起きたのか、何をすれば回復するのかを語る物語――という概念を軸に、初回のインテーク面接がどのように進行するかを、時間の流れに沿って具体的に描いていきます。
後半では、カウンセリングの実践を「作戦会議」と「冒険」という二つのモードに分けて論じています。作戦会議とは、現実を整え、生き延びるための実務的な支援です。生活の基盤を立て直したり、当面の問題に対処したりすることに主眼が置かれます。これに対して冒険とは、これまで身につけてきた「鎧」――傷つかないために身につけた対人関係のパターン――を少しずつ緩め、その下にある傷つきやすい自分自身、本書の言葉でいう「スライム」の状態を生き直していく、より深く実存的な営みです。
【目次】
まえがき ふしぎの国のカウンセリング
第1章 カウンセリングとは何か──心に突き当たる
第2章 謎解きとしてのカウンセリング──不幸を解析する
第3章 作戦会議としてのカウンセリング──現実を動かす
第4章 冒険としてのカウンセリング──心を揺らす
第5章 カウンセリングとは何だったのか──終わりながら考える
あとがき 運命と勇気、そして聞いてもらうこと
Posted by ブクログ
友人に薦められて『なんでも見つかる夜に、こころだけが見つからない』を読んだのはもう4年前か。それ以来この著者の本はこの本棚にもいくつか積読してます。本じゃなくても彼の文章には触れていて、例えば新聞の書評委員もやっているんじゃなかったっけ…彼の語りかけるような文体が心地よく感じていました。たまたま知り合いがカウンセリングのオフィスを立ち上げる、ということでちょっとした相談に乗っていたのですが、そもそもカウンセリングのなんたるかが全くわかっていなかったのでまったく力になれなかった、ちょうどそのタイミングで出張先の大学生協で新書売れ行き1位と記されたポップにより本書発見。なんと「新書大賞2026」獲得していたんですね。『カウンセリングとは何か』まさに、それ知りたかったんです!ちょっと遅かったけど。著者のカウンセリング人生の現時点での集大成という書籍なのですが、相変わらずおだやかな言葉で長年の学びと気づきが綴られています。帰りの新幹線で夢中のなって読みました。河合隼雄の位置付けも今さらながらに納得。そして同時にこの本がベストセラーになる現在、という状況についても考えることがいっぱいでした。それはケア、という言葉の氾濫ともシンクロしている状況だと思います。こんな時代、きっと知り合いの開業、うまくいくでしょう。
Posted by ブクログ
カウンセリングの枠組みを超え、「生きるとは何か」を深く考えさせてくれる一冊。
特に「自己-心-世界モデル」や、生存(作戦会議)と実存(冒険)、科学的変化と文学的変化といった対比構造が非常に明快で腹に落ちる。心の非常時にいる相手を心理学的に理解し、まずは生存を確保するための「作戦会議」を行い、その後に「冒険」へと送り出す。この一連のプロセスは、自分や身近な他者の状況に合わせて、よりよく生きていくための実践的な羅針盤になる。
「聴いてもらうことが勇気を生み出す」という言葉は、小さくても破局に直面したときに、そっと心に携えておきたいお守りのようなメッセージと感じた。
Posted by ブクログ
『カウンセリングとは何か』。サブタイトルに「変化するということ」とあります。
著者の東畑開人さんは、臨床心理学者で、臨床心理士(日本臨床心理士資格認定協会が認定する民間資格)であり公認心理師(心理学の専門知識と技術を用いて人々の心の健康をサポートする日本初の心理職の国家資格)です。
はじめに著者が自ら「カウンセリングは怪しい」というのが一般的な世間の反応、と自虐的に語っているのですが、そこで言われているのが、
①カウンセリングは誰でもやっていることだ。
②カウンセリングは宗教や占いみたいなものだ。
ということで、カウンセリングに疑いを持っている人が多いとしています。
しかし、著者は「実際そうなんですよ。間違っていない。」とあっさり認めています。心はみんな持っていて、心の問題は誰もがそれぞれ生活や人性の中でやりくりしているし、宗教や占いは確かに心の問題を扱っている、と世間の見方を否定しません。
世間からこのように思われている理由として、例えば、「教育カウンセリング」とか「美肌カウンセリング」とか「キャリアカウンセリング」とか、中には「心霊カウンセリング」などというのもあって、「カウンセリング」という言葉が、広く「悩みの相談」という意味で使われていて、それがカウンセリングを曖昧なものにしている、としています。
そこで、カウンセリングについて、専門家からの視点ではなく、カウンセリングを受ける側からの視点で、分かりやすく解説してしれているのが、この本でした。例えば、冷蔵庫とは何かということを説明するとき、専門家からの視点で語ると、コンプレッサーがどうとか、冷媒ガスがどうとかという話になりますが、ユーザーからの視点で語ると、麦茶を美味しく冷やし、肉を保存し、氷を作るもの、という話になると、分かりやすく例えてくれています。
私も仕事のストレスが原因でメンタルを病み心療内科を受診し、処方された薬の服用を続け、通院のたびに医師と症状の改善状態などを話し、回復に努めた経験があります。当時その診察室でのやりとりがカウンセリングだと思っていましたが、この本を読んであれは医学的な治療であり、この本でいうカウンセリングではないことがわかりました。
精神科医は薬物療法を担当し、臨床心理士がカウンセリングを担当する役割分担がされており、カウンセリングとは、「心の問題で苦しんでいる人に対して、心理学的に理解して、それに即して心理学的な介入を行う専門的な営み」であるということでした。
言葉にすると難しく感じますが、この本では、カウンセリングルームで、座り心地の良さそうなソファにカウセラーとカウンセリングの利用者が対面で座り、静かに語り合うという、映画やドラマで見るような著者が実際に行ったカウンセリングの様子が、まるで小説のように描かれています。もちろんプライバシーの問題もあるので一部脚色されてはいますが、難しい問題であるにも関わらず、興味深く読み進めることが出来ました。
途中途中にカウンセリングというものの本質についての解説もあり、それが実際のカウンセリングの様子と並行して書かれていることで、理解しやすい工夫がされていました。
ここに書かれていたのは、「お悩み相談」にあるような、ある程度パターン化した相談内容に、用意していたそれらしい言葉で相談者を安心させたり、ポジティブ思考にさせたりして終える、いわゆる「お悩み相談」的なものの解説ではありませんでした。
心には、平常時の心と非常時の心があって、問題となるのは心が非常時のときですが、一般市民が常識に基づいて心を理解し、対処しようとするのに対して、専門家であるカウンセラーは心の非常時についての学問を背景として、話を理解し、対処する、という違いがあるということです。
臨床心理士あるいは公認心理師によるカウンセリングとは、時間や日数をかけて何度も聴取を繰り返し、心理学的な知識や技術を活用しながら、心理学的に介入し、相談者の生活に関わり、場合によっては人生にも関わる作業であることが分かりました。
最後に、カウンセリングとは、人が可能な限り、正直に、率直に、本当の話をする試みを続けながら、生活を回復するために心を変化させる科学的営みであり、人生のある時期を過去の物語にするための文学的営みである、と結論付けたことには、とても納得感がありました。
Posted by ブクログ
カウンセリングに2年ほど通っています。頭の中を整理したかったのもありますが、この本を読んで、私は過去の物語を終わらせたかったのだと気づきました。
専門的な用語もわかりやすく説明されていて、カウンセリングについて理解を深めることができました。これから先も、何かあったときにまた立ち返りたいと思える本です。
Posted by ブクログ
実は1年くらい前に読んでいたが、「再読だけが創造的な読書術である」を読んで、再読してみた。
最初はカウンセリングの歴史や学術的な部分で門外漢の私には読み進めにくかったが、実際のカウンセリング部分〜カウンセリングを終わるということは自分にもよくあることに感じられて、敷居が高いと感じがちなカウンセリングが身近に思えた。
人生は古い脚本が登場人物を替えて繰り返されるという内容がまさに今の自分の課題であり、特に興味深く読んだ。
古い脚本で古い物語を終わらせるのには難しく、痛みが伴う。それを乗り越える為には他者のつながりが必要だ。それを担うのがカウンセリングだという。
技術じゃないと思っていたけど、目的は同じでも色々なアプローチがあって経験を積んでアプローチ方法のバリエーションも増えて行く。これは自分の仕事でも当てはまるので想像がつく。何もせずにただ聞いてくれるだけということの裏に隠されたカウンセリングの深さを少しだけ覗くことができた気がする。
Posted by ブクログ
だれでもカウンセリングに触れられるように至極丁寧に書かれていた。世界-心-自己モデルやカウンセリングのフレームワークなどの説明によって、"見えないものを扱う不思議な行為"という印象から近づきやすいものにしてくれた。個人の好みの問題だが、全体的に説明がミクロ過ぎているなと感じてしまった…が、筆者の仕事(人)に対する考え方、心の取り扱い方がとても丁寧なのがすてきだなと思った。
Posted by ブクログ
歴史や概念、各宗派の位置付け、実際のカウンセリング方法についての本。まず、カウンセリングは、素人には解決できないような事態に対して行われると理解した。おもしろかった。
特に方法が面白かったのでここに私の解釈を記す。生きていくのに必要なカウンセリングと、人生について考えるカウンセリングがある。基本的には1番最初に長めに時間を取って状況を把握、問題の根幹を探りどのようにカウンセリングをするか話し合う。そこで緊急性や、頼れる人や心の余裕などのリソースがどのくらいあるのかチェックする。もちろんカウンセリングでできる範囲であるかを確認する。投薬は必要か?等。
生活に支障をきたしている場合、まずは生きていく環境を整える。そして2週に1度くらいのペースで、実験的に、どのような方法であれば感情をコントロールできるのか模索する。周りに助けてくれる人がいれば頼る手助けをする。それによってリソースが増えたりする。ここでは、先輩と気が合わない若者のカウンセリングの実例が出てきて、親の支えもありつつ筋トレがはまった。眠れるようにするなど生きる環境を整えてから自分の心と向き合う感じ。若者はその後、上司の人間らしさにも触れ、少しずつ仕事への自信もつけていった。
人生について考えるとき、同じく最初に方向性を決めた上で1週間に一度、自分の頭に浮かんだことを吐き出し合うというカウンセリングを実施する。ここでは、正直でいるということが大事。それによって自分の本当に考えてることを吐き出し、それを客観的にみてもらうことができる。トラウマがどこにあるのか等。ここでは、優秀だが、心の防衛のために心になんらかの壁を作り自分を保っている女性に対してのカウンセリングが取り上げられた。人を無能と思ってしまうことや人のためにと自分を抑えてしまう、期待へのプレッシャーが大きすぎることが課題。無能な父親、後押しするがあと一歩のところで努力を無駄にする母親がトラウマであった。カウンセリングを通して、それまでは人のために生きていたが自分が1番でいいと考えられるようになった。自由にしてみる、背負いすぎない、正直に話すということができるようになっていった。これは、8年続いたカウンセリング。
カウンセリングを俯瞰で見て体系づけた上で、このように時系列で方法を追っていた。
共感できることが多くあった。そして、人に自分の本心を伝えると考えると相当勇気が必要だと思った。
カウンセリングには、冷たいように感じる事務的な面と先生にも人間らしさがあるという二面性がある。そこに、お金を払って適度な距離感を保ってくれるプロに助けを求める意義があるのかもと思った。依存せず、孤独に寄り添い、だけど孤独に正面から向き合っていく方法を一緒に考える存在。私は相談された相手が近いと共感して共鳴する感じになってしまうが、共感というより客観視してるのがプロだと思った。
Posted by ブクログ
具体的な事例をとおして、どのように心が変わっていくのか、少し体験できた気がする。カウンセリングは長い時間を掛けて、心と向き合い、破局することで新しい人生を進みだすことなんだと分かった。
Posted by ブクログ
カウンセリングを受けようか悩んでいたので、理解を深められてよかった。
私の場合、生存というよりは実存に関わる問題だと感じ、カウンセラーを選ぶのが難しそうだと思った。
でも解決したいと思っているのは本当だから、カウンセリングも一つの手段だよなあ、どうしようかな。
ーーー
以下抜粋
生き延びるとは今現在を切り抜けることでもあるけど、同時に現在を過去にすることでもあります。そのとき、僕らは文学的に自分の過去と現在をつなぎ、自分の小さな歴史を手にします。これが作戦会議でも、冒険でも行われている。
カウンセリングとは何か。
それは生活を回復するための科学的営みでもあり、人生のある時期を過去にするための文学的営みでもある。
ちゃんと生きるとは、ときどき死んで、その都度新しく生まれることです。
Posted by ブクログ
心を変えるのではなく、環境を変える。最も印象に残った言葉です。私たちはどうしても心にアプローチしてしまいます。ですが、それは本人にとってとても辛いこと。しかしながら、環境を変えることは他者にはできません。本書の最後にある、何もしないことという意味が少し輪郭を帯びてわかったような気がしました。
Posted by ブクログ
周囲でメンタルを病んでしまった人、また、過去にメンタルを病んだことがある人がいるので、「こころ」の問題にはずっと関心があった。
こころってなんだろう?こころを修復していくためにはどういうプロセスを経ていくんだろう?という素朴な疑問が解消された。おもしろかった。
こころは、自己ー心ー世界の図式のように「自己」と「世界」を調整する役割を持っていて...という話が面白かった。
また、最終章の東畑先生の言葉がとても印象に残っている。
「だとするならば、個人的な物語を生きることを可能にしようとするカウンセリングには、大きすぎる物語の暴力に抗するための社会的使命があるはずです。」
社会の大きな力によって、個人のものがたりは踏みにじられてしまうことが多い。
そういった個人のものがたりを紡ぐサポートをするのがカウンセリング。
私が持つ夢のこととも重なる話で、印象に残った。
Posted by ブクログ
具体的なカウンセリングの手法と具体事例を知ることによって、カウンセリングは精神疾患を持った人が如何にそのことと向き合っていくのか知ることが出来た。
そのことがもっと広義の意味で、人生に悩んだり行き詰まったりしているひとへヒントになりうる内容だとも思った。
Posted by ブクログ
カウンセリングとは、といった内容が手法、実例をもとに書かれる。実例が真に迫る内容で良かった。何かに終わり、とピリオドを打つのは何事も難しいんだな、と思った。