東畑開人のレビュー一覧
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野の医者とは何者か?
“癒しに関わり正規の科学から外れている人で、自身が病み、癒されたい人”
大方、このように臨床心理士の著者は定義しています。
“野の医者”を見ることで、臨床心理学はどういう学問か再考してみるというのが、本書のテーマです。
何だかこのように書くと小難しい感じですが、いやいやどうして著者の語りは、めちゃめちゃ面白い。著者の東畑さんは、ご自分のことを“野の学者”と称しています。東畑節さくれつで、「ちょっと真面目にやってください!」とツッコミを入れたくなるぐらい面白い。
場所は沖縄で、著者自らがヒーリング(怪しい治療?!)を受け、実況中継してくれるので説得力があります。な -
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2025.12
今年読んだ本で一番良かったかも
救われる気持ち
まさに読むセラピー
すごい
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P29 体が回復するとき、体は異常な状態から正常な状態に戻ります。折れた骨がつながり、バイキンが体から除去される。そうやって、体が以前の状態に戻ることを、僕らは「回復した」と言います。だけど、心の回復は違う。たとえば、働きすぎて「うつ」になったとき、治療をして元通りになっただけであれば、再び働きすぎてしまうでしょう。心が回復したと言えるには、以前とは違う働き方ができるようになっていないといけません。つまり、これまでとは違う生き方をインストールしなくてはいけない。そうはいっても、どういう -
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人生には晴れの日もあれば、雨の日もある。
健やかなるときもあれば、病めるときもある。
元気な時にはうれしい言葉も。調子が悪い時にはチクチクして聞こえる。
ケアとは、ニーズを満たすこと。それは依存を引き受けること。お世話すること。
晴れの日には、ニーズやこころは分かりやすい。
でも、雨の日にはニーズやこころが分かりにくくなる。
だから、雨の日の心理学が必要。
ほんと、東畑さんの本はじんわりこころに響いてくる。
授業を書籍化したものだけあって、まるで授業を聞いているような気持ちになった。
特に、ケアする人のケアが印象的だった。
育児をしていて、追い込まれていた時期のことを思い出す。
(も -
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いい意味で期待を裏切られた一冊。
「どうやったら日常のなかで相談できるか(もしくは、のれるか)」を知りたくて読み始めたが、そういう実践知みたいなものは、あまり書かれていなかった。
この本で書かれているのは「社会のなかでの、ふつうの相談の位置づけ」専門性が重宝されがちな社会において、専門的でない「ふつうの相談」は軽んじられがちだが、実はそうではない……ということが書いてあるのかなと感じた。
「システムのなかで、どこに相談の受け手がいるのか?」「それぞれの受け手は、何にその行動を規定され、どのような限界があるのか」など、「システムの中における相談」を俯瞰して考えることができ、面白かった。
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なかなか読み込むのはハードだったけれど、読めてよかった。とてもよかった。
認知行動療法が、近代の科学的アプローチとして
突如出てきたのではないということ。
「仄暗い夜明け前の古代からの前史があったというイマジネーションに勇気をもらった。」という東畑さんのあとがき、本当にその通りだなと思った。
力動的なものと認知行動療法、非理性と理性、
より糸のように組み合わさり、すべてのアプローチに二重性があるということ。
これが絡まり合いながら、時期によって濃度を変え営まれる両眼視の視点。
認知行動療法の見方がだいぶ変わった。
聞くことで心を支援する
この営みの途方のなさに疲れたとき、古代から人間っ -
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「白か、黒か」ではなく「白も、黒も」。
私は白か黒か、いつも決着をつけたがる。
そうやって決着をつけることで、しんどい状況に見切りをつけたいからだ。
「そうか、これまでは黒だったからしんどかったのね。大丈夫、これからのわたしは白を選ぶ」
けれども決着をつけたはずなのに、嫌なことが起きたり揺れたりすると、また新たな「白か、黒か」を考える自分がいた。
それはさながらジェットコースターのよう。
白と黒の反転の繰り返し。
そうか、きっと「白か、黒か」ではなかったんだな。
「白『も』、黒『も』」だったんだな。
現実は、真っ白ではない。かといって真っ黒でもない。
白も黒も混じった灰色の世界。
本書 -
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東畑さんのエッセイは面白いっ!こんなに面白く書けるなんてズルいと思うくらいに面白い。
文春への連載記事をまとめた一冊である。
本の内容とは離れるが、この本のあらすじには、1年間の連載のなかで東畑さんが何を考えていたかという「舞台の裏側」が書かれている。
いつか本を書きたいと思う私にとって、この舞台裏は大変学びになるものが多かった。
大きすぎる物語のまえで、脅かされる小さすぎる物語たち。心はどこへ消えたか?それは大きすぎる物語に吹き飛ばされたのである。心はどこで見つかるのか?それはエピソードの中にある。
私もエピソードを書いてみたい。そして迷ったら、この本をまた読み返したいと思った。 -
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夜、ふと目が覚めてしまうときがあります。何もしていないのに頭だけが動き出し、悩みに悩んで眠りを削ってしまう。そんな経験は、誰にでもあるのしょうか。
この本は、そうした「心の揺れ」に補助線を引き、整理していくための視点を与えてくれました。
「僕らの心の傷ついている部分」との向き合い方。働くことが「他者の役に立っている」という実感。さらには「顔を合わせていない時間が長くなるほど、苦手な人のことは余計に苦手になる」という洞察。これらの言葉から、自分の生活や人間関係を振り返り、考えさせてくれました。
本を通じて見えてきたのは、「自分の心とどう付き合うか」という課題でした。
単純に答えが出せるものではな