ブレイディみかこのレビュー一覧
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社会を信じることか…
前作では、「エンパシー」他人の靴を履いてみること。があり、それを実現、現実化するには、幼少からその価値観に触れること。自然習得が一番なのかなと考えたりする。
でも、現在大人たち世代に、その価値観を新たに育んでもらうことはなかなか難しい。思想とは思っているよりも頑固である。
多くの人の心に「エンパシー」の芽が育つと、他者への寛容度が上がる。それはつまり、社会への寛容が広がることであり、社会を信じることなのではないだろうか…
私は日本の教育しか経験がないから、日英でしか比較できないけど、そういう社会との繋がりのある教育を受けられることは羨ましいと思ってしまう。どこも表裏一体 -
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Posted by ブクログ
ブレイディみかこ、らしく英国の貧困に焦点を当てた小説。
貧困家庭の少女が、金子文子という実在した日本人女性の自伝に書かれている少女と、自分を照らし合わせながら日々を懸命に生きていく話。
主人公の少女がクールで非常にカッコ良い。
本作はフィクションだが、主人公の少女を取り巻く環境はおそらく事実に基づいていることが多いと思われる。
ブレイディさんの貧困をテーマにした本はいつも非常に解像度が高い。
中流階級で生きる人からの、善意や褒める言葉が結果的に貧困階級の人を傷つけてしまうといったような、生きる階級が違うことによる隔たりが巧みに描かれている。
とても面白い小説でお勧め。個人的には黄白青より面 -
Posted by ブクログ
私には政治的見解がありません。いくつになっても、自分の意見を語ることが苦手だし、そもそも意見がない。
成績は良かったしテストはできたし、受験に失敗もしなかった。なのに、なぜなんだろうという長年の疑問にやっと、解決の糸口を見つけた気がした。
今からでも、自分の考えを語れるようになりたい。ブレイディさんの見た、イギリスで必ず出てくるカウンターのような人に。そのためには、知るべきことがたくさんある。
・世間とは、知り合い、近所付き合い、同じ会社など、謎ルールで縛られる人たち。私が社会と信じていたもの。
・シンパシーとは、かわいそうだと同情すること。
エンパシーとは、もっとフラットな気持ちで他人の立 -
Posted by ブクログ
弟を守るために、心を病んだ母親から、そして貧困から逃げずに頑張る中学生ミア。今日の食事にも困る中でも、弟のために頑張る姿が健気ですが傷ましい。
そして青い表紙の本のフミコの自伝とミアの日常が重ねられながら進んでいく物語がハラハラしっぱなしでした。でもいつの場面でも心折れることなく弟のためにまっすぐに全力に頑張るミアは、痛々しくも応援せずにはいられません。何より自分で考え、自分をしっかり持っているミアが羨ましい。
舞台がイギリスとはいえ、これは日本でも現在進行形だと思う。声を上げられない子供たちは今もどこかで闘ってる。
「見ないふりをせずに、言い訳をせずに、何かをしなくてはいけないのは大人たちの -
Posted by ブクログ
残念だけど、ミアもふみの気持ちはわたしには分かることができない。
だけど、ミアは最高にクールだし、強くて弱くて、ミアとも一緒にわたしは生きたい。
自分の価値は自分で決める
これってすごく難しい。
でもそうして生きていきたいし、そこに価値を見出せる人を育てたい。
わたしが育てたい人はそれかも。
そして、違う人を、わかりたい。
ウィルのせりふ、最高。
わからないから知りたい。わかる努力をしたい。だって人間はわからないことをわかるようになりながら、生きていくもんだよね?
そうだよね。そう思う。
わたしもわからないことをわかるようになりながら、生きていきたい -
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【目次】
はじめに
プロローグ:花の命はノー・フューチャー
1.子どもの情景
子どもであるという大罪
ガキどもに告ぐ。こいのぼりを破壊せよ
RISE 出世・アンガー・蜂起
2.地べたからみた社会
石で出来ている
君は「生理貧困,ミー・トゥー!」と言えるか
3.英国という鏡
ヨイトマケとジェイク・バグ
どん底の手前の人々
4.地べたからみた世界
キャピタリズムとは
ウーバーとブラックキャブとブレアの亡霊
歴史とは
5.他者の靴を履いてみること
誰かの靴を履いてみること
エンパシーの達人,金子文子
自分を手離さない
エピローグ:おりません、知りません、わかりません
おわりに -
Posted by ブクログ
ぬるま湯的な生活にいて気楽に手に取って読むと、横っ面を殴られるような衝撃を受ける本。
裕福な人もミドルクラスも、男性だって、理不尽に耐えたり悩み苦しんだり、それぞれの立場で精一杯生きているのだろうとは思う。けれど、女性、それよりも子供が弱い立場にいること、自助の手段も力も持ちにくいことを改めて思い知る。
諦めてしまうことと、別の世界に一歩踏み出せるきっかけを掴むことは本当に紙一重。格差や貧困の問題が取り沙汰される昨今、単なる同情や見て見ぬ振りや気まぐれな慈善行為では解決できないことをどうするのか。なかなかにヘヴィーな内容で読んでいて辛くなるようなところもあるが、多くの人にぜひ読んでほしい一冊。