ブレイディみかこのレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
世界各国の人々が漠然と思っているような、brexit をトランプ現象とイコールとみなす傾向は正しいのだろうかという疑問に答えるべく、著者は文字通り勉強して書いたそうだ。そしてその成果は、米英の違いとして、ストンと腑に落ちた。離脱支持者とMAGA支持者は考え方も社会の階層も違う。トランプ支持者には中流以上も多いが、離脱派は緊縮財政によって生活を脅かされた労働者階級によるエスタブリッシュメントへの反逆、既得権益を持たない者たちの生存権の高らかな主張であり、決して狭量な移民に対する差別主義によるものなどではなかったという。彼女の手にかかると、英国の労働者がとても魅力的に見え、決して学のない煽られやすい愚民などではないことがわかる。すっきりして読め終えた。
-
Posted by ブクログ
ネタバレコロナ後の世界で、あらためて“エンパシーとは?”を考えてみた書。
“エンパシー”という言葉は、本書で初めて聞きました。日本語では“共感”と訳されることが多いそうですが、“共感”には“シンパシー”もあります。その二つは違うのは勿論ですが、一般に“エンパシー”の定義が揺らいでいる様です。というのも、“エンパシー”という言葉が出来たのは、ほんの100年ほど前の事であり、元々はドイツ語であったそうです。
そんな事から、“エンパシーとは”という事が語られていくのですが、“アナーキズム”という言葉も多用されている事には驚きました。“アナーキズム”と言うと、テロと結びつくイメージですが、どうも、ただ“アナーキズム”と言った場合は“=テロ”では無いようですね。もっとも、アナーキズムに関連して出てくる歴史上の人物の名前が、テロリストとして記憶されている人物なので、どうしてもテロのイメージはぬぐえないんですけどね。
それと、“エンパシー”がコロナ禍の頃の話で語られていたのですが、その話は分かりやすかったですね。平時では見向きもされていない人たちが、急にエッセンシャルワーカーとか言われて脚光を浴び、称賛されていく流れは頷くばかりでした。 -
Posted by ブクログ
たくさんの人が読むべき一冊だと思いました
わいなんかあれですよ
まぁまだまだ古い価値観に縛られてるところがあるってことを自覚した上で、フェミニストでありたいと思ってるんでね
それこそ共感しかなかったわけです
エンパシーですよ!
わいの中で「エンパシー」って、みかこさんが輸入した言葉だと思ってるんだけどね
何か?っていうと、「他者の感情や状況を理解し、共感する能力」のことだそうです
差別をなくすにはこれが重要なんよ
まぁ、ムズいけどね
とはいえ、ムズいから無理ーでは一歩も進まないので、そうあることを意識するだけでも世界は変わってくるはずだよね
エグってくる言葉がたくさんありました
めんどくさいからいちいち書かないけども(出た)
みかこさんは最後に生物学におけるクロポトキンの相互扶助論にも言及していて、これがまた良いのよ
「生物は、互いに競争して殺し合うのではなく、助け合う本能を持っているから今日まで生き延びてきた」
うん、そうであると信じよう -
Posted by ブクログ
「尊厳のないところで人は生きられないから」
安定した収入、屋根のある家、水と電気、ガスが普通に使える暮らし。リフレッシュのための外食、旅行、教養を深めるための読書、勉強、映画、音楽。これは贅沢品?
人として、人らしく生きるということは呼吸だけしていればいいということではない。住宅や食料というライフラインの(必要最低限の)保証さえ崩壊しつつあるのは日本でもロンドンでも、たぶんニューヨークやパリでも同じ。
キラキラな暮らしを送る現地YouTuberのVlogには映らないリアル。海外、できれば憧れのイギリスで生活したい、勉強がしたい。この夢は昔から変わらないし、絶対に叶えるつもりだけど、自分はどちらの立場の未来を思い浮かべてたんだろう。
-
Posted by ブクログ
ネタバレ私が子どもの頃、イギリスは超福祉国家で、「ゆりかごから墓場まで」国が面倒を見てくれていた。
しかし、今のイギリスは、それまでもゆるゆると財政はひっ迫していたのだろうけれど、緊縮財政に舵を切って以降、雪崩を打つように社会の様相が激変してしまったらしい。
そもそも緊縮財政を謳って国家が持ち直したという国はあるのだろうか?
日本もイギリスに倣って行政で行っていたことを次々と民営化した。
これで私たちの払う税金が安くなるというのが売りだったけど、当時からそれは嘘だと思っていた。
案の定消費税は値上がりし、民営化されたサービスにお金を払い、利益を生まないサービスは消えて行った。
イギリスも、無料の医療システムはどんどん利用しにくくなる。
緊急を要するはずのがん患者でさえ、予約しても9か月待ち。予約のために行列を作る→予約のための窓口につながる為の予約を取る。
話を聞いてもらうだけで何度もトライし、一からやり直しをさせられ、予約の窓口に回してもらい、話を聞いてもらい、予約の権利を得る。
一日8時間働き、定年まで勤めあげたら悠々自適の老後を送ることができる私たち世代とは違い、ケガをしたり病気をすると一気に転落してしまう不安を抱えながら、何の保証もない雇用を目いっぱいこなしながら働き続ける若い世代。
EU離脱を臨んだ中高齢者に対して、残留を望んだ若い世代。
イギリスで暮らしていけなくなったら、他国へ出稼ぎに行く道を残したかったらしい。
日本も他人ごとではない。
移民に対して直接的に暴力的に敵意をむき出す若い世代。
今現在イギリスにいる移民に対しては、権利を守るべきとする中高年。
パブで飲んだくれるのを無上の喜びとする中高年は減少し、若い人たちは健康志向でパブに行くこともあまりない。
しかし、年齢や世代で細かく分断し、どれがどれより上だとか下だとかマスコミは言うけれど、分断すればするほど困窮するのは庶民たち。
そしてコロナの、ロックダウンが一層彼らを分断し、孤独と困窮が憎悪を生んでいる。
富裕層は困らない。
もともと金持ちは国のサービスなんて必要としていなかったから。
”政府がきっちり財政支出をして、若者たちに巨額の学生ローンを抱えさせたりせず、個人請負業やインターンという無給の仕事をさせたりしないように働き方を改革し、世界中の民間投資家が英国の住宅を買い漁って住宅価格が高騰しないように制度を整え、若者たちが手頃な家賃で住める公営住宅をたくさん立てるなどの、政治・経済的な取り組みで若者を生きやすくしていれば、下の世代が高齢者世代を経済的負担と考えて忌み嫌ったり(中略)、妬みに濁った眼で見ることもなくなるのである”
これ、まったく日本にも言えると思った。