ブレイディみかこのレビュー一覧
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ネタバレ内容もとても面白いのだけど、谷川俊太郎さんの詩が読めたのが何よりも良かった。
「この世とあの世のあわいにあるその世」というものがどこか知っている、と誰もが思うのではないかと感じた。
「ここではない世界で、行ったこともないのになぜか知っている場所」とか、なんとなく懐かしいものが詰まっている。
消費の現代の我々には幽霊になる体力はない、という部分に笑いながら深く頷き、イギリスの若者の「人類は少しずつ体を失っていく途上にあるのだから」というトランスヒューマニズムのポジティブさににやりとしたり。世の中どうなるのでしょうね。
人は、どうなるのでしょうね。
トランスヒューマニズム、その世の生き物なのかな、人の形を必要としないことは私にもとても便利で素敵なことのように感じる。「体がなければ病気も怪我も老いもない。人間が体を持っていることは人間に苦しみしかもたらさない」。
でも、「ぬくもりや体感に対する郷愁をどうするのか、必要なくなるのか」、とプレイディさんも仰っていた。どうやって生まれてどうやって育つんだろう。面白い。
プレイディさんのお母様の予期せぬ遺し物もかわいらしい悪戯好きの少女のようで、私も是非そうなりたい、と強く拳を握ったのでした。 -
Posted by ブクログ
ブルーカラーの底辺層の目線から見せるクソみたいな生活を最高に彩るパンクのエッセイ集
作者のパンク趣味とめんたいビートが文体からも生き生きとしていてその筋の愛好家なら好感を抱くに違いない
またこのエッセイに登場する人物はほとんどが最底辺で無様ではあるがどんな最低な環境下かつ状況でもしぶとくサバイバルしているので、我々日本という国(我が国もだんだん英国に近い貧富の差が開いてるが)に生きている庶民にも妙な感動と共感を覚え明日に向かって生きていく希望を見出せるのである
ただし挫折経験なく悠々自適にエリート街道を歩んだ人間には全く勧められない一作でもある -
Posted by ブクログ
この本の主題は「階級」である。
本文中に書かれているが、貧富の差はいつの時代にも、どの国にもある。
しかし、貧困から抜け出す術がないとしたら、それは「階級」である。
日本でも格差は問題になっているし、それが「階級化」しつつあるようにも思う。
貧しい家庭、養育者がなんらかの問題を抱えている家庭に生まれた子は、十分な学習環境を与えられているとは言いがたい。
逆に言えば、「いい学歴」は本人の「才能と努力」だけで勝ち取ったものではなく、生まれた家の影響が大きいのだ。
イギリスの状況はこんなものではない。
シングルマザー、障害のある親、酒やドラッグへの依存症を抱えた親。
労働党政権のころは、貧困層への手厚い支援があった。
しかし保守党が政権を握って以降、生活保護は縮小され、保育所への支援も打ち切られていく。
そこに移民の問題が加わり、「Broken Britain」と言われるほどの分断が生じている。
筆者はこうしたなかで貧困層の子どもとその親と関わり、手を差し伸べ続けている。
彼女が言うところの「底辺」からの政治へのまなざしは、「政治は何のためにあるのか」ということをわれわれに突きつける。
これが本書のメインテーマであるが、保育園に預ける子をもつ親として、他にも考えさせられることが多かった。
その最たるものが日英の保育環境の比較である。
日本の保育士配置基準は、例えば1歳児では児6人に対して保育士1人なのに対して、イギリスでは3人にひとりである。
歩くのもおぼつかない一歳児になにかあったとき、6人も抱えて走れるのか?と筆者はいう。
言われてみればその通りである。
きわめつけは3歳児で、イギリスでは児童8人に対して保育士ひとりなのに対し、本邦では児童20人に対して保育士ひとりである。
これを聞いたイギリスの保育士は「羊飼いかよ」と言い捨てる。
筆者は筆者で、20人の3歳児をひとりで見なければならないという悪夢にうなされてしまう。
ここまでだと、単なる日本の保育士不足を嘆くだけになるが、本書ではここからさらに踏み込んで考えている。
日英の保育園、両方を体験した筆者からすると、日本などアジア圏の子どもは圧倒的にお利口で、おとなしいのだそうだ。
一例として、タンバリンの演奏が挙げられている。
日本の幼児は、先生が見せるお手本の通りにタンバリンを叩くことができる。
イギリスではこうはいかない。
先生のお手本の裏打ちをする感じで、ずらして叩く子。
そもそもタンバリンを叩かず、側面の円盤?を鳴らすあまのじゃく。
こんな具合で、まずまともな演奏にはならない。
しかし考えてみたいのは、「どちらがより『芸術』の本質に近いのか」ということだ。
それはイギリスの方なんだろうな、と思う。
先生のお手本の通りに叩きました、なんて芸術性のかけらもない。
第一、みんなが好き勝手に叩いている方が楽しそうだし、ホンモノの才能というのはそういう環境から生まれてくるのではないか。
決断力。創造性。ディベートする力。
どれも、日本人に欠けているとよく言われるものだ。
だが、「いい子であること」「お利口にすること」を過度に礼賛する環境で、こうしたものを育むことができるのだろうか。
ひとりの保育士があまりにも多くの幼児を見なければならないことが、こうした慣行を正当化することにつながっていないだろうか。
「お利口」だから手薄な保育士配置基準でいいのか、はたまた保育士不足が「いい子」を生んでいるのか。
鶏が先か、卵が先か、というような話だ。
こうした問題意識を抱く一方で、集団生活に支障をきたすようなキャラクターに育つのも困る。
はたして、自分は娘にどんな子に育ってほしいのだろうか、と考えてしまった。
だが、間違いなく言えることは、幼児教育はその国を写す鏡であり、その子の将来のみならず国民性をも規定するほどの影響力がある、ということだ。
本当にいろいろな読み方ができる、奥行きのある本だった。 -
Posted by ブクログ
ネタバレブレイディみかこさんと鴻上尚史さんの対談ふたつ。
「世間と社会」「エンパシーとシンパシー」など、学びがありました。面白い対談だった…もっとお話聞いていたい。。
日本人は、自分の周りの「世間」は関わりがあるとして考えられるけど、それより外の「社会」はそうではないから自分に関係ないものとして捉えてしまう、みたいな説はすごく腑に落ちました。政治の話が出来ないのもこれなんだな。
政治の話してると「意識高い系」と揶揄されるのほんと意味分からないけど、うちらにはどうも出来ないこと言ってるwwwみたいなのもあるかも。歴史的に、民主主義を自力で勝ち取ってないというのもこの傾向を大きくしてると思います。大正デモクラシーは違うし、戦後民主主義はアメリカがくれたやつ。我々はほっといたら大日本帝国みたいな全体主義に近付いてしまいがち……ほら、今も。
エンパシーとシンパシー、機会平等と結果平等。この説明もわかりやすかったです。
ブレイディさんの「本当に経済を悪くすれば、お上は民を治めやすくなる」はゾッとするけど真理です…「貧すれば鈍す」だから。「国民が政治に関心無い方がありがたい(=やりやすいので)」みたいな発言した政治家もいることですし。
あと、ちょっと前の対談なので、日本の良いところは安全だということが挙げられてます。現在はそれすら危うくなっているので、ますます、何とかならなくなってる……。 -
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隣人とは 多様性とは 共同体と
隣人とは 多様性とは 共同体とは について前作以上に考えさせられる作品である。昨今 少子化対策としていみんの大量受け入れの話が何度も出ている。著者のような考えを持った人ばかりであれば、それほど顕著な問題も起きないとは思うが、多くの人々 原住民にとって どうなんだろうか?
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語り口がいい
イギリスにおける中学生の子育ての状況を、平易な語り口で描きあげている。楽しい話、面白い話、興味深い話、そして深刻な話もあるのだが、妙に力を入れたりせず日常会話的な語り方でかきあげているところが実いよい。