ブレイディみかこのレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
いわた書店の1万円選書でチョイスされた本。
貧困家庭で育つ14歳の少女ミアの目線で、子どもが社会から見えない存在にされていく現実を真正面から描いた小説。
本と出会うことで「ここじゃない世界」があると気づく場面が特に印象的でした。また、富裕層でクラスの人気者でもあるウィルとの交流も強く心に残りました。こうした作品はどうしても対立構造になりがちですが、この物語では、立場も性別も違う相手とどうやって対等な関係を築くかが丁寧に描かれていて、その点がとても良かったです。
頼れない大人たちや狭い選択肢など重苦しい物語ではありますが、少しずつミアが前向きになっていく描写もあり、暗いだけではない読後感が -
Posted by ブクログ
ネタバレイギリスで保育士として働いてきたブレイディみかこさんが、保育士ならではの視点でイギリスの社会保障政策をぶった切る。非常に興味深かった。
著者が勤めているのは、貧困層が子どもを預ける託児所。母親がドラッグ依存だったり、次から次に父親のちがう子どもを生んだり。
いわゆる「底辺」の子どもたちや、母親の生活を保育士として見つめながら、おのずと政治に関心を高めていく著者。特にイギリスは、移民が多く(著者自身も移民だ)、状況は複雑だ。移民の方がイギリス人より貧困かというとそうでもなく、今は貧困でも努力して生活水準をあげようとする一方、親の世代からずっと貧困で、国家の福祉(生活保護)に頼り切っており、生活水 -
Posted by ブクログ
難しい言葉ではなく平易な表現をたくさん使ってくれるおかげで、かなりとっつきやすいと思う。それでもなお奥が深い(アナーキック・)エンパシー。読んでる間は少しわかった気になって、でも日常に戻ると自分のものにしたとは言えなくて、かといって全然距離が遠いものでもなくて、本書を通じて自分の中の視座が少しだけ豊かに、エンパシーの輪郭に触れられたような気がする。
特に視点だなあと感じたこと。
コグニティブエンパシーは底から湧きあがるものではなく、頭から時間をかけて理解しておろすもの。トップダウン型。それはスキルであり、後天的な育成・習得が可能なもの。
他者の靴を履いたからと言って自分の靴を見失わない。自分 -
Posted by ブクログ
以前、話題になっていたので存在は知っていたが未読だった。勝手に、小説だと思っていた。
イギリスで子育てをする著者の、ノンフィクション作品。息子はアイルランド人と日本人のハーフで、英国の品のいいカトリック小学校から、元底辺中学校に進学。人種差別や貧困、ジェンダー問題などに直面しながら成長する様子がリアルに描かれていて、とても心に響いた。息子くんの視点で表現される世界の面白さは、俵万智さんの子育て短歌に通じるものを感じる。子どもの視点や発想は、そのままの鮮度で作品になる。そしてタイトルの良さも格別。
英国と日本の教育の違いも、知らないことばかりで面白い。ところ変われば常識もこんなに変わる。しかし英 -
Posted by ブクログ
言わずと知れた大ヒット作品を、今さらながら初読み。これは賞を獲るべくして獲った、と納得。
海外生活のエッセイは数多くあれど、考察の深さと幅広さは、やはり単なるエッセイの枠にはとどまらない。
子どもの進学先選びなど、国は違っても親として悩むポイントは同じだったりするのも興味深いけど、自らが「外国人」の立場で感じる差別、子どもが「ハーフ」(この呼び方は異論もあるだろうが)の立場で感じる差別の違いなど、イギリスに住んだこともなければ行ったことさえない私にも、ある程度リアルに想像できて、ものすごく考えさせられた。
しかし何より、この息子さんが素晴らしい。リアルにこんないい子がいるなんて……! どんな大 -
Posted by ブクログ
作者の目線を通して語られるイギリス社会の有り様はとてもポップに面白く書かれていて読んでて飽きない。それはたくさんのエピソードが合わさった構成だから、というのもあるが、日本とは異なる世界を通じて、時に作者の息子をきっかけにしてたくさんの学びを得られるからかもしれない。
特に印象に残ったのは、「分断とはそのどれか一つを他者にまとわせ、自分の方が上にいるのだと思えるアイデンティティを選んで身にまとうとき起きるものなのかもしれない」の一節だ。
自分の優位な立場に立って、相手を下に見ることが、自分の価値観を相手に押し付けることを意味し、それが分断につながるということだ。
非常に納得である。
相手へのリ -
Posted by ブクログ
いたたまれない物語。
主人公のミアは中学生ぐらいか。
依存症の母親のケア、次の食事、弟の迎え、学校で平然とすること、お金が足りていないこと、、、
そもそも「打つ手がない」と悩むこともできない
生命を維持することが直結する毎日。
その上、ソーシャルワーカーが来ると、ろくな目に遭わない。
偶然手にした「カネコフミコの自伝」
現実から離れるための本だったが、フミコの世界と自分が重なる。
という物語で、主人公ミアの壮絶な環境に胸が苦しくなるが、決して大袈裟ではない現実に気づかされ、惹き込まれます。
自分だったらミアを守るための手は打てたのか。自分が当事者になれるのか。ゾーイと同様、「引き取る」ことは -
Posted by ブクログ
本書を読んで2つのことを考えた。
まず、子供を持つ幸せの一つに、自分以外の視点を通して世界を見ることができる、というものがあるのだろうと思った。子供という無垢な目線でみた世界を楽しめる、というのは親でなければ経験できないものであるだろう。
本書の中ではイギリスという、多民族かつ揺れ動く社会情勢の中で一定の経験を仕切った大人の視点と、当事者として最新のイギリス社会を経験する息子の視点、2つの対比構造が印象的だった。
もう一つは、なんで海外の子が大人びて見えるのだろう、という疑問に対する答えとして、生きる中で受ける「摩擦」の頻度がとにかく多いからだろうと考えた。
日本とイギリスを比較しても、多