ブレイディみかこのレビュー一覧
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反緊縮政策の有効性や左派の思想史などについて学べる本。
・左派の立場から、勢力を盛り返すために現在の安部政権を上回る経済政策を提案しなければだめだ。そのためには、いままでのような緊縮ではなく、反緊縮政策を提案し、福祉などしかるべきところに再配分をしっかりと行うべきだ。
・WWⅡ前後の左派の歴史を整理、レフトの思想が歩んできた歴史とその総括について。労働者の味方だった左派が、下層の人々を忘れ多様性に焦点を絞るようになってしまったこと。
・メリトクラシー(能力主義)が勃興した結果、下層の人々に対する差別が生まれたこと。「能力が無いのは自己責任」。グローバリズムについていけない人たちが新たな差別階 -
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ネタバレ英国在住、”労働者”階級の夫を持つ著者による書。誇りある英国の”労働者”に対する愛情を感じさせる。研究者による分析を紹介する箇所も、カルチャーの視点を織り交ぜながら描写し生き生きとしたものに感じさせる好著。
印象に残ったのは、”白人”労働者階級の出現は、歴代政権が階級の問題を人種の問題にすり替えた結果発生した、とする点(263ページ以下)。元々移民に接していた労働者階級は移民との共存に慣れていたが、キャメロン政権の国民投票実施決定がパンドラの箱を明けてしまった。入国在留管理庁の設立等、外国人労働者増を目指す日本の将来を考えるにあたっても読んでおくべき。 -
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ネタバレ専門の異なる3氏の鼎談で、主に欧州の政治、社会から日本のそれを分析しつつ、「左派」に対する提言が行われています。以下、要約です。
<ネタバレあり>
若者をして「『ビッグになろう』と考えたらあかんのかな」と言わしめる左派主導の脱成長的な風潮。左派はアイデンティティポリティクスや文化の問題に耽溺し、「下部構造」を忘れてしまったのではないか。
一方、欧州ではドイツあるいはECB主導の緊縮政策に対し反緊縮(緩和的な金融政策と積極的な財政支出)を唱える左派(一部右派)が勃興。例えば英国では、2015年に労働党党首として強硬左派、”オールド・レイバー”のコービン党首が選出され、2年後の総選挙で善戦。か -
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貧困に対する向き合い方は人それぞれ様々だが、それに巻き込まれている人も、積極的に関わっている人も、あるいは傍観している人も、何らかの既成のものの見方にとらわれがちである。本書を読んで、自分もまた、しっかり既成のものの見方に囚われていると実感させられた。それだけ著者のものの見方は、巷に喧伝されるものにも、熱心に社会運動に取り組んでいる人々に共有されているものにもとらわれないもので、なおかつ、確かにそうだなと納得させられるものである。「一億総中流という岩盤のイズム」「ミクロをマクロに持ち込め」「クラウドとグラスルーツの概念」「もっと楽になるための人権」等々、日本社会を分析するための道具をいっぱい提
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良書。「はじめに」に書かれている一文にまずハートを射抜かれた。
「そんなわけで、よく理解できない事柄に出会ったときに人類がせねばならないことを、いまこそわたしもしなければならない、と思った。勉強である。」(p.7)
それまで移民を積極的とまでは言えなくても、近隣住人として受け入れていた(ように見える)労働者階級がなぜブレグジットに賛成票を投じたのか。自分の夫も含めて。そんな著者の切実な問いと答えが本書。
知的にスリリングな謎解きだし、イギリスとアメリカの違いも「欧米」と安易に一括りにするのは控えようとおもうくらいに明確だし、知らなかったイギリスの社会と文化を鮮やかに紹介してくれているし、ネオ -
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イギリスで保育士をしている日本人女性が見た日本。日英の育児比較的な軽いタッチの本かと思いきや、なかなかディープな本だった。ただ、ヨーロッパに住んでいないと、書いてあることに実感がわかないかも知れない。
イギリスと日本の貧困層の違いがとても興味深かった。著者本人曰く、学問が無いそうだが、観察したものや経験からの洞察は鋭い。特になるほどと思ったのは、若者と政治。若年層は選挙に行かないので政治に最も見放されていると著者は考える。また、日本では権利と義務がセットになっていて、義務を果たさないものに権利は無い。英国では権利は国民のもの、義務は国家のもの。日本ではその両方を持つのは国民で、国家と国民の役割 -
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現状の保育園事情からも日本は世界の先進国より随分遅れているし、保育園のみならず、幼児教育のこと、子供の権利のことを真剣に考えられていなかったことにただただ驚く。保育園にただ子供を預けられればいいという話ではない。 実際に自分がいくつも保活で保育園を見学して、狭い、汚い、交通量が多い立地など、小さい子供を預けるのに躊躇する保育園がいくつかあったことを思い出す。しかしどこにも受からなければ、その躊躇したところにも預けざる負えなかったかもしれない。実際にそういうことも起きているのが日本の現状でもある。
本当におかしい。子供は未来なのに。
子供の権利、保育士という命を預かる専門職の待遇改善など早急に -
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昨年は「保育園落ちた‥」のブログや、新規保育園の計画中止のニュースで「待機児童問題」という言葉を何度も聞いた。
だけど「待機児童」の何が問題なのか?本当には分かっていなかった‥問題は、保育そのもの。安心して「保育」を受けられなければ、親は働くことができない。もちろんそれは二人であろうがシングルだろうが、すべての「親」のこと‥。どんな職場であれ必ず「親」がいる。考えてみれば保育の問題は、働く人=この国に暮らすすべての人にとっての問題なのだ。いやいや‥日本、大丈夫だろうか?
この本はこどもが身近にいる、いないに関わらず、行政や政治家には課題図書にしてもらいたいし、なるべく多くの人(特に若者)が読ん -
Posted by ブクログ
イギリス在住の保育士でライターの「フレディみかこ」氏が、2015年・日本滞在時の取材をもとに書いた最新著。友だちに教えてもらって読みました。
的確な日本の現状に対する分析、これからの日本を考える上でもとても示唆的な内容をもった本だと思います。
特に印象に残ったのは、「ミクロ(地べた)」を「マクロ(政治)」に持ち込むという視点。当事者の実態(誰かがきちんと代弁すること含めて)があり、具体的に改善するための政策(政治)が大事であることを改めて考えました。どう伝えられるか、その観点を大事にしたいと思いました。
保育に対するイギリスと日本考え方の違いなどもよくわかりました。一億総中流に関す