子どもたちの階級闘争――ブロークン・ブリテンの無料託児所から

子どもたちの階級闘争――ブロークン・ブリテンの無料託児所から

2,640円 (税込)

13pt

「わたしの政治への関心は、ぜんぶ託児所からはじまった。」英国の地べたを肌感覚で知り、貧困問題や欧州の政治情勢へのユニークな鑑識眼をもつ書き手として注目を集めた著者が、保育の現場から格差と分断の情景をミクロスコピックに描き出す。2008年に著者が保育士として飛び込んだのは、英国で「平均収入、失業率、疾病率が全国最悪の水準」と言われる地区にある無料の託児所。「底辺託児所」とあだ名されたそこは、貧しいけれど混沌としたエネルギーに溢れ、社会のアナキーな底力を体現していた。この託児所に集まる子どもたちや大人たちの生が輝く瞬間、そして彼らの生活が陰鬱に軋む瞬間を、著者の目は鋭敏に捉える。ときにそれをカラリとしたユーモアで包み、ときに深く問いかける筆に心を揺さぶられる。著者が二度目に同じ託児所に勤めた2015-2016年のスケッチは、経済主義一色の政策が子どもの暮らしを侵蝕している光景であり、グローバルに進む「上と下」「自己と他者」の分断の様相の顕微描写である。移民問題をはじめ、英国とEU圏が抱える重層的な課題が背景に浮かぶ。地べたのポリティクスとは生きることであり、暮らすことだ──在英20年余の保育士ライターが放つ、渾身の一冊。

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子どもたちの階級闘争――ブロークン・ブリテンの無料託児所から のユーザーレビュー

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感情タグBEST3

    Posted by ブクログ

    有名な「ぼくはイエローでホワイトでちょっとブルー」の前日弾で同じくらい傑作です。
    ブレイディみかこさんはロンドンの南のブライトンの底辺託児所で働き、10代の英国人シングルマザーや自国流を貫く外国人専業主婦と放置気味の子どもたちをまっすぐに見つめます。
    生活保護も保育士育成制度も外国人在留資格制度も政

    0
    2025年11月18日

    Posted by ブクログ

    イギリスの底辺保育所で働く著者
    貧しいけれど
    そこはエネルギーに満ち溢れていた
    子どもの暴力 虐待 ドラッグ アルコール 
    多様な人種 文化 価値観
    それでも命が輝いていた

    しかし経済主義一色の政権が
    彼らの生活を蝕んでいく
    グローバルに進む「上と下」
    移民問題 排斥など
    イギリスやEU諸国が抱え

    0
    2025年10月02日

    Posted by ブクログ

    時は2008年。ブレイディみかこ、43歳。なにを思ったか、イギリス・ブライトンの「底辺託児所」で保育士の見習い開始。ここでの経験が、社会の底辺から社会や政治や教育に目が向くようになるきっかけを作る。ブレイディみかこの原点だ。
    本書は、第一部が2015-2016年の雑誌連載、第二部が2008-2010

    0
    2025年05月07日

    Posted by ブクログ

    「地べたから見るポリティクス」が彼女の心情なのだが、それに至ったのは保育園での子どもたち、その家族、スタッフとの数々の出会いだったことが明かされる本。みすず書房の本を読むのは久しぶりで、読めるか最初は少し不安だったが、読んでみるとブレイディさんのなめらかな文体はこの本でも健在で、澱みなく読み進むこと

    0
    2025年02月19日

    Posted by ブクログ

    実際働くとしんどいことだらけなんだろうけど、なぜか眩しい印象の底辺託児所。そしてその時代を懐かしむ切ない緊縮託児所。

    0
    2024年04月19日

    Posted by ブクログ

    この著者はほんとうに偏見のない人なんだな。かと言って、他の人の偏見に鈍感なわけでもない。声高に他人の偏見を糾弾することもなく、ただ差別される人、偏見を受ける人のそばで、同じ痛みを共有している。だからあんなふうに、背景も環境も性格も全く異なる人たちの苦悩やあり様がストンと納得できる、心の琴線に触れる文

    0
    2023年11月23日

    Posted by ブクログ

    この本の主題は「階級」である。
    本文中に書かれているが、貧富の差はいつの時代にも、どの国にもある。
    しかし、貧困から抜け出す術がないとしたら、それは「階級」である。

    日本でも格差は問題になっているし、それが「階級化」しつつあるようにも思う。
    貧しい家庭、養育者がなんらかの問題を抱えている家庭に生ま

    0
    2023年08月14日

    Posted by ブクログ

    地べたで生きてきた人間が、インテリ層にも届く表現力と議論の力を持っているのはとても強いな。
    クレバーでチャーミングな反骨心。著者はそんな印象です。
    著者が連発する「底辺」というのは、外側から見た軽蔑や、あるいは自身のコンプレックスの裏返しなどではなくて、
    実感と、一筋縄ではいかない情なのだと思います

    0
    2022年10月09日

    Posted by ブクログ

    良書。

    まず何をさておいても著者は文章力がすこぶる高いと思います。
    底辺託児所に来る子どもとその親の暮らしは文字通り底辺なのでしょう。
    けれど著者はその描写に同情や憐憫の感情を全く忍ばせません。
    かといって、冷めているわけでも距離を置いているのでもありません。
    保育士としての距離感は保ちつつも、言

    0
    2022年09月02日

    Posted by ブクログ

    事実は小説より奇なり。みたいな本
    障がいや病気や犯罪を、深刻に薄暗く描くのはきまってそれらを身近に体験していない人に多い。

    身近に体験してると、それは只々当たり前の日常で、ブレイディ氏のように面白おかしくも書けて、薄暗い気分にもならない。

    だけどそこにはリアルな人生が書かれていることを知れる。

    0
    2022年07月21日

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