p.160 やはりあの「死ね」は、「I hope you are dead」や「I wish you were dead」に1番近いのかもしれない。というのも、風船はディズニーワールドに似合うからだ。が、いくら色とりどりの風船に描かれた「I hope you are dead」でも、そんなものをフワフワさせられたら、英国では警察に捕まる。
この国でその方面の方が確立されているのは、「人として」とか「恥ずかしい」みたいなセンチメンタルなことではない。そうではなく、レイシズムやヘイトスピーチによって、実際に人が刺されたり、死んだりしてきた歴史があるからだ。ディズニーソングだって、あまり執拗に繰り返されれば、ミッキーマウスの頭をかちわりたくなる人が出てこないとは限らないし、ミッキーマウス軍団の中に突然変異が現れ、「氏ね」から「I will kill you」に転じる人が出てくる可能性もある。
社会主義や宗教には、政府や神といった号令をかける人がいて、「みんなで分け合いましょう」とか「止めるものは貧しい者を助けましょう」と叫ぶ。私は保育園に勤めているが、大人が幼児に最初に教え込まなければならないのは、排泄と「シェアリング」である。英国の保育施設に行くと、保育士が「you must share」と5分おきに叫んでいるのを聞くだろう。つまり、人間と言うものは、本質的に分け合うことが大嫌いなのであり、独り占めしたいと言う本能を持って生まれてくるのだ。そう思えば、キャピタリズムと言うのは、人間の本質に最も忠実な思想である。本能に任せて、生きる人間の社会が「you must share」と叫ぶ。保育士がいなくなった。保育園のように、ANARCHYになるのは当然のことだ。