村上春樹のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
ネタバレ珍しく小説の(フィクションとして)形式ではなく、実際に会った相手のお話を聞き、それを春樹が脚色をして物語に仕立てあげるといった方式をとっている作品である。
それぞれ己の理想像があり、それを理想像として掲げ、そこに向かって走っていくというのが一種の人生であるのだが、そんな物にきっと意味はなく、それは永遠に回り続けるメリーゴーランドのようである。そんな他人の人生のお話を聞いてみようではないか、無意味で無気力な物語を通じて自分を批評し直そうではないかそういった意味が込められている作品のような気がする。
お気に入りは『プールサイド』そして『ハンティング・ナイフ』である。
人生を50m水泳に例えるのであれば、折り返し地点が存在する。では、その折り返し地点をどこにどのように定めていくかというお話である。
二分割なら自分のためにという部分と他人のためにという部分、2つに分かれるのではないだろうか。その価値観は人それぞれであるが、折り返しを単純な半分というものではなく、自分でセッティングしてみるのも悪くはない。
ハンティングナイフはこれといって同じの概要は難しいのであるが、春樹と出かけ先で会った車椅子少年との会話がなんとも不思議で記憶に残るものである。最後、車椅子少年の夢のお話になる。理解はできないが、ある部分の傷から自分が消えてなくなってしまうそんな儚さを感じた次第である。 -
Posted by ブクログ
語られる物語は歔欷でもなければ希望を持つとかそういった類いのものでもない。他の作品からも分かるように全部がそうとは違うけど、カポーティは隠鬱な書き手だった。ひとりで悩んでしまう様子や人間の愚かな部分を描かれていく。しかし彼のイノセンスと呼ばれる無垢な人物は際立って味がいい
草の竪琴
5人が打ち明ける秘密の数々がイノセンスで、それを共有することで絆という深みが生まれてきている、また一方で人の深さを打ち明けることは負担にもなりうると捕捉される。そこに更にカポーティによる美しい表現が加わり酔えた。終盤、ドリーがラジオでフットボールを聴くシーンがある判事がルールを教える、それを拒むのだ。知る楽しみも知らない愉しみも大切にするドリーらしい「選択」をするのがよかった
最後のドアを閉めろ
ウィルターはいろいろあってアンナと巡り合う、彼は自分の愚かさを知った上での相談をするが物事は見かけ通りなんてことは何一つないのだと言われる
経験は円環。周り回って自分に襲いかかる物語
ミリアム
夫人と不思議な少女ミリアムと会う。彼女は存在しない存在のように描かれ、夫人を付き纏うように幻覚を見ているかのように描かれていた
夜の樹
大学生ケイが電車で変な夫婦に会う。物語は孤独の中 不安を誘っていく
好きなフレーズ引用
妻は私の腕の中で死んだ。最後に私は尋ねた。君は幸福か アイリーン?僕は君を幸福にできただろうか?幸福 幸福 幸福というのが彼女の最後の言葉だった。何とでもとれる。彼女の答えが果たしてイエスだったのか それともただの質問の反復だったのか 私には知るべくもない。もし私に彼女という人間がわかっていたなら その答えは自ずと理解できるはずだ。
しかし夢を見ない人間とは 汗もかかない人間のようなものだ。そういう人間はどんどん毒を内側に溜め込んでいくことになるのさ -
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『パン屋再襲撃』を読んで、僕はしばらくパンのことを考えていた。
もちろん、パンが特別好きだからではない。むしろ僕にとってパンは、朝食として食べるか、食べないか、その程度のものだった。けれどこの短編を読んでいると、パンというものが、単なる食べ物ではなく、人生のどこかに残された小さな借りのように思えてくる。
昔、空腹の勢いでパン屋を襲った男が、もう一度パン屋を襲う。
普通に考えれば、かなり馬鹿げた話だ。
でも人生には、そういう馬鹿げたことがある。
昔の自分がやり残したことを、何年も経ってから別の形でやり直す。自分ではもう忘れたつもりでも、なぜかそれだけが妙に心に引っかかっている。そして、その引っかかりを解消するために、僕たちはときどき奇妙な行動をとる。
この話で面白いのは、そんな重大そうなことが、ものすごく軽い調子で進んでいくところだ。
世界は別に何も変わらない。
パン屋を襲ったところで人生の意味が見つかるわけでもない。
それでも、パンを手に入れることで何かが少しだけ元に戻る。
僕はそこに、村上春樹の小説らしい「人生の穴」のようなものを感じた。
人間は、ときどき自分でも説明できない空白を抱えて生きている。その空白を、恋愛だったり、仕事だったり、お金だったり、あるいは夜中のハンバーガーだったりで埋めようとする。でも、本当に必要なのはもっと単純なものなのかもしれない。
腹が減っているなら、まず何かを食べればいい。
そして、それでもまだ何かが足りないなら、そのときはまた考えればいい。
『パン屋再襲撃』は、そんなことを冗談みたいに教えてくれる話だった。
読み終わったあと、僕は少しだけパンが食べたくなった。
たぶん、それで十分なのだと思う。 -
Posted by ブクログ
主人公が抱える、相手を思う気持ちにとても切なさを感じた。そばにいて何でも話せる関係でありながら、その思いが相手に受け入れられることはない。そのもどかしさや苦しさを読みながら、「恋をしている男性は、みな、このような気持ちなのだろうか」と想像した。
また、この作品では主人公だけでなく、登場人物全員の孤独が描かれていることが印象的だった。人生や置かれている環境はそれぞれ異なるが、どんな人も悩みや孤独を抱えながら生きている。人は誰かとつながりを求めながらも、最後まで完全には分かり合えない孤独な存在なのだということを改めて考えさせられた。恋愛小説であると同時に、人間の本質的な孤独を描いた作品だと感じた。 -
Posted by ブクログ
村上春樹を一冊も読んだことがない。
名前を聞いたことがあるが読んだことない小説家、くらいの認識だが、さすがに読んでおきたいと有名どころをチョイス。
まずは、一言。
描写がことごとく丁寧。一つ一つの動作を省くことなく大事に文字に起こしている。時間の経過や所作、その時の感情を漏らさない。
時に冗長に感じる時もあるが、自分は、今スマホをタップして文字を打っていることを、それ以上の文字数で表現することができない。でも、ここで村上春樹なら思考の部分とか、情景の部分とかを切り取って書くんだろうな〜と、どんな表現をするのかとすごく気になってしまう。
全6冊のうちの1冊目。あらすじまで8分目くらいのところまでかかった。まだまだ謎が多いのだが、伏線を張りまくっている状態だろう1冊目をそういうものだと割り切って、2冊目を読もうと思う。