村上春樹のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
村上春樹がサリンジャー『キャッチャー・イン・ザ・ライ』の新訳を刊行したことを受けて、彼と柴田元幸が二度にわたっておこなった対話を収録しています。さらに巻末には、『キャッチャー』に収録できなかった村上の「訳者解説」、さらに柴田がホールデンに成り代わってハックルベリー・フィンなどとの比較についての考察をおこなっている「Call Me Holden」が収録されています。
本書を読む前は、おそらく柴田がサリンジャーのアメリカ文学上の位置づけについて大きな枠組みを示し、そのつど村上が作家としての感性にもとづく解釈を差し挟んでいくというスタイルで議論が進められているのではないかと思っていたのですが、じっさいに読んでみるとむしろ村上が終始サリンジャー解釈の大きな枠組みを提示し、柴田がサポートにまわっているという印象です。村上が、翻訳についてはともかく、他の作家の作品世界についてこれほど能弁に語るのは意外でしたが、「イノセント」の意味にかんする、おそらくは河合隼雄の心理学に由来をたどることのできるような考えが示されていて、興味深く感じました。
わたくし自身は野崎訳『ライ麦畑でつかまえて』しか読んでいないのでよく理解できないところもありましたが、村上の翻訳についての考え方も率直に語られており、こちらもおもしろく読むことができました。 -
Posted by ブクログ
村上春樹と柴田元幸が、翻訳について語った三回の講演やフォーラムなどをまとめた本です。さらに「海彦山彦」と題された章では、オースターとカーヴァーの短編小説を二人がそれぞれ訳したものが収められています。
第一回は東京大学でおこなわれた柴田の授業に村上が参加したときの記録、第二回は翻訳学校の生徒たちを相手に両者が質問にこたえるというもの、第三回は若手の翻訳者からの質問を二人が受け付けるというかたちになっており、著者である二人の翻訳についての考え方を知ることができるのみならず、翻訳に関心のあるさまざまな水準の受講者たちがいだく疑問にかんしても、興味をもって読むことができました。
村上は彼の文体をかなり意識的に選択しているのかと思っていたのですが、じっさいにはそうではなかったと語られているのは意外に感じられました。村上はこの問題について、自分で使うことばよりもむしろ自分ではけっして使わないことばがあるというところに焦点をあててこたえており、そこにスタイルを形成することについての興味深い考えが含まれているのではないかという気がしています。 -
Posted by ブクログ
オイラにとっての村上春樹は誠実な仕事をする、ストイックなスポーツマンだ。小説を書くということは、体力がいるのだ。たぶん、サラリーマンも一緒だと思う。現場だろうがデスクワークだろうが。物理的に体力が必要というだけではなく、仕事にはいろいろなトラブル、苦難があるしそれを乗り越えていくには強いメンタルが必要だし、それを維持するためにカラダの臨戦態勢を保つという意味だと思う。「アンダーグラウンド」や「約束された場所で」を読んだときに感じたことだ。インタビューの内容はきっとヘビィなものだったろうし、誰に対しても背筋を伸ばしたしっかりした姿勢ができなければ、加害者と被害者の本当の声は拾えなかったんじゃないかな。だからあの二冊には村上春樹の個人的な意見や偏見はなくて事実を事実としてオイラたちに届けてくれたんだと思う。
それからオイラがちょっと不満に思っていた結論のない小説の終わり方についてはこれを読んで少しスッキリした。確かに読み手は何らかの結論を出してくれたほうが楽だし、文句も言いやすい。でもそうするとオイラは考えることをしなくなるし、そもそも読者と分かち合うことを望む村上春樹の求めるところじゃないんだよね。村上春樹は読者に愛をもってくれてるんだなぁ。
安西水丸氏も和田誠氏もいなくなちゃったこれから、装幀はどんなふうになるのかな?