村上春樹のレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
村上春樹の本初めて読んだ。
例えで出てくる音楽とか歌手とか全くピンとは来なかったなあ
かっこ書きが多くてなかなかそういう本を読んでこなかったから慣れるまでに時間がかかったけど面白かった。
遠回しな表現がオシャレでもありつつ、時々煩わしくもありつつって感じだった。
特に好きだったのは独立器官。
それまで器用に生きてきた渡会さんが食事も辞めてしまうほど熱中した女性ってどんな人なんだろう。
それに自分を苦しめるというか死に近づけるためにとった手段が断食ってすごいな、、
そもそも恋煩いで食事が喉を通らなかったのかもしれないけど。
それくらい誰かに夢中になってみたいものだなあ。
食事は取りたいけど。 -
Posted by ブクログ
村上作品において、女性が主人公で、その女性が特殊な任務を帯びたりすることなく、普通の仕事(絵本作家は珍しいにしても)で生計を立てているというのは、これまであまりなかったように思う。
その女性の名前がタイトルの「夏帆」
ありくいの奥さんとかジャガーとか、奇妙な人物(人ではないが)が登場し、理不尽で不可解な出来事に巻き込まれる。
異世界との繋がりはこれまで何度も繰り返し語られてきたし、刃物にまつわるエピソードは騎士団長殺しを思わせる。村上カラー満載なのだが、夏帆の住む世界がそこそこ現実的で、かつ、異世界が現実からそれほど遠くない。夏帆は絵本作家として仕事をしているし、繋がる世界は日本の裏側で、具体性がある上に、井戸の底のような絶対的な隔絶感もない。
結果として、読後に突き放され放り出されてしまうような感覚があまりなかった。多分私は村上春樹作品にその感覚を求めている。
夏帆が絵本作家であるため、彼女が自身の体験に基づいて創作する物語が並行して描かれる。同様の内容を、シチュエーションを変えて繰り返し読むことになるのだが、やがて夏帆の創る物語が彼女の行動に関わってくる。
村上作品としてはマイルドな印象。やや薄味に仕立てられている分、村上作品の圧倒的なリーダビリティもやや薄め‥かもしれない。
母親が読んでいた本は高慢と偏見なんだ‥ -
Posted by ブクログ
信者だから読んだし、最も読み慣れている文体だし、村上春樹シグニチャーのモチーフ メガ盛りなのですが……。
それでもやっぱりキビシイ…となってしまいました。村上春樹の小説の醍醐味って一見全く関連がなさそうに思える現実/メタファーの世界の 境目がなくなったり互いに影響し合ったりするところだと思うのだけれど、今作は「創作」自体も一つのテーマになっているため、途中 夏帆の現実と創作が並走する。同じ話を二度聞かされているように感じてしまった。
あとは、夏帆という主人公に魅力を感じなかったし、その夏帆の世界の物語でシロアリの女王に取り憑かれる母親つら…ってなってしまいました。わたしはずっと親切な小児科医であるところの父親や能天気な新小岩の叔父さんの方が疑わしいと思っていたし、母親の犯した多くの過ちを正すのは娘の仕事じゃないし、むしろ母親のもつれをほどくのは父親の責務だという気がした。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ村上春樹が「ウィスキー」をテーマに、アイラ島とアイルランドに旅行した紀行録。日本から遠く離れた国での新鮮な体験を、著者の親しみやすい文体で書いた作品。
本作からは、特に自己充足的な人生の魅力を学んだ。SNSに載せるため、流行っているスポットに行くため、という昨今のよくある旅行理由ではなく、純粋に自分がやりたいから、気になるからという内発的な動機がどれほど尊いか。
それを痛感する作品だった。
現代では、旅先の有名なスポットや店を事前に調べ、評価が高い店にいき、滞りなく旅を終えることが、一つの目標になっているような気がする。本作は、それに比べるとオールドスクールな旅である(シンプルに時代的な差異もあるだろうが)。
宿も決めずに到着し、良さげな宿を現地で見つける。そこに宿泊し、近くの良さげなパブでビールを飲み、マスターに近くのおすすめレストランを聞き込みする。そんな不確定な旅程からしか生まれない旅情というものがあるのではないか?
そう思わせてくれる。
土地の人に聞く話や食文化、インターネットには載りづらいローカルな情報こそが、実はたびの勝ちに直結しているのではないか (インターネットの情報をなぞるだけなら、インターネットサーフィンで十分だ)。
著者がアイラ島でラフロイグ、ボウモアの両雄の話を聞いて書いた文章も印象的であった。
ボウモアは、「変わらない」伝統を守り続け、現在でも人の手で非効率なウィスキー造りを実践している。一方、ラフロイグは、時代に合わせて美味しいウィスキーを作ることを目指しており、コンピューター管理などを積極的に取り入れる進取の気性がわれわれの伝統であると。こういった「新しいもの」と「変わらないもの」のどちらが良いかという議論はいつも湧き起こるものだ。しかし、ラフロイグのオーナーが言うように、それは単なる「個性の違い」に過ぎないのかもしれない。
また、旅行に限らず、日常の全てに当てはまることだが、「工夫して組み立てる
ということがどれだけ楽しい営みか。著者は旅行の食事に、ワインを頼むか、アイリッシュウィスキーを頼むか、アイリッシュコーヒーを頼むか。そういったことを、とにかくいちいち律儀に悩んでいた。
このような、日常を組み立てる営みこそ、日々を向上させる発見につながるし、その人のこだわりということになっていくのだろう。
アイラ島、そしてアイルランドのどちらも豊かで厳しい自然、そこに暮らす人々の美学に触れることができる島なのだろう。そういった旅行は、自己内省的な気づきを与えてくれる。
「旅行というのはいいものだなと、そういうときにあらためて思う。人の心にしか残らないもの、だからこそ何よりも貴重なものを、旅は僕らに与えてくれる。その時に気づかなくても、後でそれと知ることになるものを。もしそうでなかったら、いったい誰が旅行なんかするだろう?」