村上春樹のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
村上春樹作品は好きだった。過去形なのは、「村上春樹」のマスコミにおける取り上げられ方が異常に感じ、しばらく距離を取っていたからだ。だから、著者の言動、作品の良し悪しに原因は無いが「1984」を最後にしばらく新作は読んでいなかった。
さて、しばらくぶりの村上作品だが、少しがっかりした。不思議な世界に没入するには、読者である私が歳を取りすぎたのか、作者の描く不思議な世界にワクワク感が湧いてこない。BMWの1800CCのモーターサイクルであるとか、シルヴァーのカローラだとか、車内でカセットテープがきけると嬉しいだとかの記述は、あんたは片岡義男さんかと突っ込みたくなる。カセットデッキが載っていたマニュアルシフトのカローラを新車のレクサスに買い替えることが60歳にもなっていない医者である父親にとって何の不思議があるんだ?シロアリの女王に乗っ取らた必然ではなく、ごくフツーの購買行動だろう、という風に。SNSにあふれる自意識ダダ洩れ感が鼻についてしまう。
物語は現在の政治状況としてとらえられなくもない。知らずのうちに境界を越えてしまった我々の社会は、一度大きな犠牲を払わなければ回復しないし、その犠牲は個の内に経験されるだろうと。あるいは作者の意図は異なるかもしれないが、私は現在の底が抜けたか如くの政治状況の隠喩として読ませていただいた。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ冒頭の1行目、「これまでいろんな女性とデートのようなことをしてきたが、正直いって、君みたいな醜い相手は初めてだよ」という男の衝撃的な一言から、一気に物語の世界へ引きずり込まれる。
「えっ、この男は何者…!?」という怒りと困惑を通り越し、主人公の夏帆と一緒に呆然としているうちに、気付けばページをめくる手がまったく止まらなくなっていく。
村上作品としても初の「女性の単独主人公」が描く世界観は、驚くほど読みやすく、すーっと心に染み込んできます。少しの好奇心を道しるべに不思議な運命へと足を踏み入れていく夏帆の姿は、観ているこちらまで勇気をもらえるような、不思議な親近感に満ちています。
日常の隙間からひょっこり現れるファンタジーや、動物たちのミステリアスな存在感……。読み終わったあと、まるで長い夢から覚めたような「心地よくも不思議な余韻」に包まれる一冊です。
ちなみに、表紙に描かれた愛らしい(けれど実物はちょっとリアルで怖い…!?)アリクイの存在も、この物語の謎を深める重要なエッセンス。
ファンタジーや動物が登場する物語が好きな方はもちろん、「最近夢中になれる本に出会えていない」という方にこそ、ぜひ手に取ってほしい傑作!
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Posted by ブクログ
村上春樹作品は、大学の授業で触れた(そのときは読み切れなくて、後で読んだ)『ノルウェイの森』くらいしか読んだことがなく、気になってはいた。
古本屋でデビュー作である本作を見つけて、えいやっと買ってしまった。
『ノルウェイの森』と共通して、つかみどころのない、と言ってしまえばそう感じるのだけど、終わりの方は、過ぎ去っていく青春の苦さと、鬱屈とした清涼感(矛盾した表現かもしれないが)があってよかった。
もう少し読んでみたい。
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あらゆるものは通りすぎる。誰にもそれを捉えることはできない。
僕たちはそんな風にして生きている。
「昼の光に、夜の闇の深さがわかるものか。」 -
Posted by ブクログ
さくっと読めた。ここ最近の村上春樹テンプレともいうべき作品。気がついたら微妙に非日常な世界にまぎれこみ、賢い助言者と不思議な儀式、静かな暴力と寓話的な悪が出てくる。主人公は行って帰ってくる。「ねじまき鳥クロニクル」、「海辺のカフカ」、「1Q84」、「騎士団長殺し」あたりの系譜。決してつまらないわけではないが、ものすごくおもしろいというわけでもなく、順当な作品ではある。
作中に「善き物語には必ず何かしらの有用性がふくまれている」という象徴的なフレーズが出てくるが、はたしてこの作品は「善き物語」なのか否か。それは読むひとによるのだろう。残念ながらぼくは有用性をつかみとることはできなかった。 -
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文章は当たり前だけどいつもの村上春樹節ですごく読みやすい。
アリクイが武蔵境に引っ越せと言うとは、これは一体どんな話なんだ?と始まりましたが、読み終えてもそのまま不思議な感覚、ファンタジー?もしかして、私が挫折した百年の孤独と同じマジックリアリズム系?村上春樹だからスラスラ読めたのですが。
でもシュール路線の笑いが多かったような…。
アリクイ夫婦との会話が人間じみてて可笑しい。アリクイなんだよね君たち笑
好物シロアリをオイル漬けにして瓶詰めにしものを裏ルートで輸入してるって…思わず声出して笑ってしまった。この話、なんなん??笑
猫の名前がスカーレットヨハンソン笑 何故に!
シロアリの女王は正欲が強い設定笑 まじかよ!
守護天使!?!?!?
しかもBMWの大型二気筒モーターサイクルに乗ってる守護天使!?!?!?
特別な武器アイスピックの持ち手がまるで腎臓だというアピールもやたするけど、とくに意味はなかった!笑
でもねぇ、私が一番好きなのは新小岩の叔父さん。
寅さんを気取ってるこのおじさんの発言が結構好き。足立ナンバーのロールスロイスをそんなのお笑いかよ!って馬鹿にして。武蔵境を文明の果つるところと馬鹿にして。地域偏見すごいのです。それなのに、
「善き物語とは必ず何かしらの有用性を含んでいる」なんて本質を語り出す。
村上春樹作品は、好きとか嫌いとか抜きに、本好きにとってイベントですからね、次作も楽しみにしております!
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Posted by ブクログ
ネタバレ2026/09/23 - 2026/09/26
再読、なはずなのでぼんやり鼠とビールを飲むところは覚えていたが、具体的にどんな話だったか忘れていたので、今回読み直してみてよかった。
序盤の文章を引用する。
p13-l2
もしもあなたが芸術や文学を求めているならギリシャ人の書いたものを読めばいい。真の芸術が生み出されるためには奴隷制度が必要不可欠だからだ。古代ギリシャ人がそうであったように、奴隷が畑を耕し、食事を作り、船を漕ぎ、そしてその間に市民は地中海の太陽の下で詩作に耽り、数学に取り組む。芸術とはそういうものだ。
ここは前回読んだ時にも非常に印象に残っていた。10年以上前に読んだが、この文章を読んで、「ふーん、じゃあAIが台頭すれば私たち人間は芸術や文学に時間を割けるようになるのか」と思った。
実際にAIが普及した今、「AIを使えているのか、AIに使わされているのか」という疑問は尽きないが、なんとなく当時は希望的にこの文章を捉えたことを覚えている。
今回読んでいて、時代背景がいまいち読めない、というのがあった。今読むとあり得ないのだが、村上春樹のバックボーンから田舎の学生の私は「アメリカの話なんだな」と思っていた。どこをどう読んだんだ、という感じだが、全然日本の東京と地元が舞台だった。(と解釈しているがあってる?)
なんとなく、自分が東京に住んでみた経験や、大人になったことでこの小説への理解度がぐんと上がった気がする。と、同時にこんな淡くて曖昧な関係性や、ゆらゆらと足元が揺らぎ続ける柳のような感覚、時の流れ方を感じたことがないため、作品に入りきれない自分もいた。
人と人とが溶けて消える切なさや、言葉にするには野暮な部分、というのを「死」以外で感じて生きてきたことがないため、こういうふうに世界を見ている人もいるんだ、という追体験のような感覚で読み進めることになった。
それは経験の違いだけでなく、私自身が「言葉にしても伝わらなかったとしても、それでも言葉を尽くすことが人間関係の基本」だと思っているからかもしれない。
この本はまた、もう少し大人になったら読みたいな、と考えている。
p157-l13
彼の墓碑には遺言に従って、ニーチェの次のような言葉が引用されている。
「昼の光に、夜の闇の深さがわかるものか。」
多分、まだ昼寄りなのだと思う。