あらすじ
「行方不明の兄オリンを探してほしい」突然現れたオーファメイと名乗る若い娘は、私立探偵フィリップ・マーロウにそう告げた。娘のいわくありげな態度に惹かれマーロウは依頼を引き受けるが、調査に赴いた先で、次々死体が……。事件はやがて探偵を欲望渦巻くハリウッドの裏通りへ誘う。『かわいい女』新訳版。
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「誰かの夢が失われたようだね」そして身を屈め彼女の目を閉じてやった。好きだった割にはうろ覚えのチャンドラーを村上春樹版で読み直す。兄を探して欲しいという生真面目な小娘オーファメイの依頼を受け、兄の住んでいたアパートで見つけたアイスピックで首を刺された死体。そこに映画女優やギャング、裏通りの人たちが絡んでいく。チャンドラーが自作の中で最も嫌いと言明するリトルシスターは意外とファンが多い。モノクロ映画のようなゆったりとしたドキドキ感がある。フィリップマーロウの印象が他作品と少し違う。他の作品より登場人物が危険なくらい魅力的なのだ。村上春樹は女性の書き方が生き生きしてて他作と違うと言ってるがまあ、そんなところだ。
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リトル・シスター
(和書)2011年02月02日 20:38
レイモンド チャンドラー 早川書房 2010年12月
村上春樹さんの翻訳しか読んでいないけどフィリップ・マーロウ作品で今まで一番良かった。
読み易く、内容も比較的分かり易い。
登場人物の描写も魅力的で、村上作品への影響も伺えると思う。
本人が翻訳して種明かししているようにも見えて、そういう部分で誠実さも感じる。
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訳者の村上春樹氏があとがきで述べている通り、オーファメイ・クエストが魅力的。もしかしたら訳者の思い入れがそう読ませているのかもしれないけれど。二転、三転する謎解きも読みごたえは十分だと思う。
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村上春樹訳のマーロウシリーズ
訳者もあとがきで書いていますが(「結局誰が誰を殺したのかと訊かれると、急には答えられない」)、とにかく話の筋が分からない。難解。つじつまが合わない。その支離滅裂さ(それでも芯は押さえられている)は病的なものを感じます。
それでも引き込まれる。後半の主人公が適地に乗り込むシーンあたりの描写には、そこから姿勢を正して読んでいただけると感動します。そこだけを読んでも良い。
何が何だか分からない状態のまま読み進めるのは苦痛ですが(そして最後まで分からない)シーンごとの描写は秀逸ですので、良い文章を読みたい方には、他には無い悦楽を味わっていただけるのではないかと思います。
それぐらい、個人的には一番のヒット。
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フィリップ・マーロウ・シリーズ
マーロウの元にやってきた依頼人・オーファメイ・クエスト。行方不明の兄オリンの捜索。オリンの住んでいたアパートの捜索。オリンの部屋を物色するヒックスと名乗る男。捜索中に殺害された管理人クローゼン。クローゼンが電話をかけた相手。ホテルに呼び出されたマーロウの前にあらわれたヒックスの遺体と謎の女。女優メイヴィス・ウェルドとオリンの関係。殺害されたギャング・スピンクの秘密。オリンの遺体発見。マーロウの手に入れた写真とネガの秘密。スティールグレイブの秘密と死。依頼人オーファメイの謎とラガーディー医師の秘密。
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村上春樹もあとがきで書いていますが、誰が誰を殺したのかよくわからん。ですが、マーロウと周りの連中との減らず口のたたき合いや、独特なたとえなんかは相変わらずで、とても楽しめました。むしろそちらに集中していた感じで、チャンドラー節をみっちり味わえたまであります。
チャンドラー自身はあまり気に入っていない作品だったようですが、前に読んだ「高い窓」よりも良かったようにも思いました。最後のどんでん返しなんかは、かなりサービス精神を感じられました。
オーファメイが事務所を出ていったところで、きれいに終わっている感じがしたので、その後の展開はいらなかったかなぁ、と思う一方、最後のやり取りもなかなかに格好良かったので、それはそれでありなのかなぁとも思ったりもします。
他作品と比べてあまり評判が良くないという話でしたが、信じられないくらい個人的には良かったです。この作品を愛している村上春樹の訳だったからこそ、楽しめたのかもしれません。
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チャンドラーの作品のなかでも、評判が悪く、自身も毛嫌いしていたという。確かに、話しが入り込んでいて、結局誰が殺したんだという事になる。
ただし、村上春樹氏が解説で書いていたが、オーファメイクエストの人物描写は見事で、魅力的で、生き生きと描かれており、フィリップ・マーローと共に輝きを放っていた。
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▼マーロウもののなかでも、「とにかく美女にもてまくる」要素満載ですね。ただ、チャンドラーさんが素敵なのは、ただたんにモテるというよりは、
・好感を持たれるけれど。
・基本、利用されまくり、騙されまくり、場合によっては殺されかかる。
・なんだけど、マーロウさんはぶつぶつ言いながらも大まか受け入れていく。
・それでもって、男女のカラダのコトには実はまったくもって及びません。キスがせいぜい。というか、<会話とキス>にこそロマンがある(笑)。
▼原りょうさんを再読したいなと思ったことから、
<マーロウ全部順番に再読して、原りょうさんも順番に再読しようプロジェクト>
が、発動。道半ばです。愉しい。
オモシロかった。相変わらず。
▼あらすじ、と言うことで言うと、翻訳の村上春樹さんも言っているとおり、かなり複雑で分かりにくい。その上、よーく読んでいくと、何か所か破綻している(笑)。
なので、「どういう物語だったのか」ということの、特にミステリの謎解き説得性みたいなものは、チャンドラーの長編はほぼどうでもいいんですが(笑)。
志ん生の落語みたいなもので、多少間違おうがどうだろうが、「節回し」とか「声」とか「言い方」が愉しい。
でも一応備忘しておくと。
・田舎町から田舎臭い垢ぬけない美女が「兄がこの町で行方不明。探してくれ」と依頼。
・探しているうちに次々に死体に遭遇。どうやら組織暴力と薬物からみの事件っぽい。
・そこにハリウッドの芸能界、美人女優も絡んでくる。
~~~以下、キモのネタバレ~~~
●確か、依頼人の女性の<姉>が実は美人女優。隠しているけれど。
●依頼の<兄>は芸能界=暴力団的深みに落剝して、殺されていた。
●そもそも依頼人の<妹=リトル・シスター>も、けっこう悪者で、金のためだったし、なんならほぼ兄を見殺しというか殺しの片棒に近い感じだった。
●マーロウは複雑な真相を最後に暴いて、確か、女優のプライバシーを守り抜いた気がする。
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チャンドラーのほかの作品と同様。ミステリとしてはさほどではない。話が妙にこみいっているわりに、驚きの真相や、ハラハラの展開もない。本書の読み所は、そこじゃない。
疲れている。いつになく、ふてくされて、毒づいて、空虚で。そういう、疲弊したマーロウ=チャンドラーが実に味わい深い。
例えば以下のようなところ。
‘
”ふん、映画スターがなんだ。ベッドを渡り歩く達人というだけじゃないか。おい、もうよせ、マーロウ、今夜のお前はどうかしているぞ。”
(p138)
ハードボイルドだ。村上春樹や、原リョウさんへの影響を与えたのは、「長い別れ」より本書かもしれない。本書の先に、この2人の日本作家を感じた。
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普通なら一行にも満たないような何気ない一場面が、ここまで(くどい程に)表現できるのか、というくらい描かれていて、それが優雅に流れるように読めるのは、著者の力に村上春樹の翻訳の力があるからでしょうか。 内容的にすぱっとした明瞭さが無いのだけど、急がず、ゆっくり味わうミステリーとして堪能しました。女性陣も皆、我が儘なのにそこがとても魅力的です。
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登場人物のつながりが最後までなかなかわからなかった。
さらに、一気に読めなかったため、登場人物の名前が分からなくなり、最後の方はよくわからないまま読み終えてしまった。
一気に読むか、何回か読まないと理解できないのがチャンドラーなのだろう。
次はどうかな?
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兄を探して欲しいという女の言動に「あれ?」と思ったマーロウ。結果として、それは正しかった訳だが。
絡んで複雑になっていく話に、どんどんのめり込んでいった。プロットが素晴らしいなこれは。シリーズで一番ミステリ色が強かったのは、水底の女だと思うが、これは女たちの心情が一番素晴らしかったと思う。
ここで漸く気付いたのだが…シリーズを通して、どんな形にせよ、女の愛がどの作品にも色濃く漂っていて、それが事件に大きな関わりを持っているのが、とても面白い。殺してしまえば、永遠に自分のものになるとか、愛した男でも自分の過去を知っていれば、口封じに殺してしまうとか、愛とは…
そして、美しいと思える表現の数々。私が、所謂"村上主義者"だと言うことを差し引いても、読む価値はあると思う。
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マーロウのもとを訪れた娘は、行方不明の兄を探してほしいと依頼した。
チャンドラーの「可愛い女」の村上春樹訳です。
最後の解説に「結局何があったか人に説明しろといわれると上手くいえない」ってあったけど、まさにその通り。
一応兄の行方不明から始まって、殺人事件がいくつも起こるのだけど、じゃ犯人は動機は、ってなるとよくわからない。つか、印象にのこらない。
マーロウが、妹や女優やそのとりまき(?)らの周りをぐるぐるしてるって感じ。
ま、その辺がクールを気取っていても、そうなりきれないマーロウの可愛さなんだろう。
…当時の風俗を愛で、よくわからんままに振り回されるのがこの小説の在り方のように感じた。
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村上春樹のチャンドラー物、三作目。
解説にもあるとおり、話の辻褄が合わなかったり、読んでいて分かりづらくなるという欠点はあるものの、やっぱり文章がおしゃれ。女性が多く登場するが、だれが一番の食わせ物か、最後まで分からない。ラストに向けてドライブがかかりすぎて空回り感があるのが残念。
(2012.9)
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リトル・シスターとはそういう意味だったのか。マーロウは相変わらずカッコいいけど、誰が誰を殺したのかいまいち分からない。女優2人はすごい美人のような気がする。青豆さんの仕事はここから発想されたのかな?
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ハリウッドを舞台にした探偵小説。訳者あとがきでも触れられているが、プロットはかなり入り組んでいて判然としない。初めに登場する不思議な依頼人が怪しいというのは、あまりに古典的だが、むしろこの作品から始まりなのだろうか。
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序盤から依頼人オーファメイの高慢ちきな態度に苛立ちを抑えられず、一体どの辺が「かわいい女」なのさ?と怪訝に思いながら読み進めると、過去作とは毛色の違うピリついた空気が飛び込んで来る。今作のマーロウはどこか投げやりで酷く自嘲的。持ち前のウィットなお喋りにも刺々しさが目立つ。プロットも入り組み過ぎていて流石に読み疲れたが、解説にある通り、著者の精神状態が如実に反映されているならば、そこに強い作家性を感じざるを得ない。村上氏の言う通り、次作への通過儀礼として今作はその出来栄え以上に特別な役割を担っているのかも。
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春樹版チャンドラー三作目。三作も読むと村上春樹の魅力の原点はやはりチャンドラーから来ているのだなと感じた。訳者も言っているが、内容云々ではなくマーロウ節を愉しむべきだと。内容が複雑で些か読むのに時間が掛かってしまった…まあ面白かった^^ 星三つ半。
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お気に入りの私立探偵フィリップ・マーロウシリーズ。
今回のはとても登場人物が多く、話も込み入っていてシリーズの中でも分かりにくい作品でした。
毎回マーロウは損な役回りをさせられていますが、今回も同様、それ以上かもしれないです。何とか探偵免許は剥奪されなかったのと別ルートで報酬もらえたのが救いかな。
それにしても依頼者のオーファメイが気にくわないな。
チャンドラーの作品は男性と女性の書き方に差がありますが、女性の闇を見せられた気がしました。
読後のスッキリ感が薄いですね。
ウイスキーで流し込んで胃袋の底に落としこみたい作品でした。
Posted by ブクログ
いかにもなハードボイルド小説。
雰囲気、文体を楽しむ。表現が回りくどいなんて言うだけ野暮だ。
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memo:
p58
電話に出た彼の声はいささかいらだっていた。とても忙しく、今は診察の途中なのだと彼は言った。忙しく診察中でない医師に、私はいまだ出会ったことがない。
p139
カリフォルニア、百貨店のような州だ。大抵のものは揃っているが、最良のものはない。
p315
セックスの問題を忘れようじゃないか。
p319
ハリウッド抜きにすれば、ロサンジェルスなんてただの通信販売みたいな都市じゃないか。
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「ロング・グッドバイ」よりもシニカルな会話が多く、全体的に鬱々としていて、血が流れすぎている印象。あとマーロウさんが疲れている。事件に関与する人物が沢山いて話が入り組んでいるため、なるべく途中で中断せずに一気に読んだ方が良いと思う。
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ストーリーどうこうよりも、このオーファメイ・クエストというキャラがいい感じ。
マーロウのセリフまわしは、誰がどう訳してもやっぱり洒脱なんだな。
Posted by ブクログ
主な舞台はハリウッドなのだけど、この作品からは土地の愛を感じなかった。それは作者であるチャンドラーが、あるいは主人公であるマーロウが、その両方かがハリウッドを好きではない(むしろ嫌いに思える)からなのだろうが、それがこの作品全体の雰囲気を決定させているように思える。
読んでいて、マーロウがとても居心地が悪そうに感じ、持ち前の「タフさ」もここでは虚勢に思え、やはりこういった類の人間は慣れ親しんだ土地である種の「井の中の蛙」的に、伸び伸びと日々を送るほうが性に合っているのではないか。
この作品はどうも堅苦しく(小難しいとか格式ばっているとか、そういう意味ではなく)、迷いを感じた。しかしだからといってダメな作品かといえばそうではなく、「マーロウもの」としては必要な作品だし、むしろマーロウという男の深さを感じさせてくれた。
ただ、ほかの作品と比べるとやはりというか、読むのはつらかった。