村上春樹のレビュー一覧

  • 大いなる眠り

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    レイモンド・チャンドラーの村上春樹翻訳シリーズ。過去に読んだ「ロング・グッドバイ」、「さよなら、愛しい人」がいずれも素晴らしかっただけに期待していたけれど、期待を裏切らない作品。

    チャンドラーの作品における印象的な主人公である探偵フィリップ・マーロウが初めて登場する作品である本作も、自由に、かつシニカルに動き回る彼の姿を堪能できる。

    依頼人からのさほど複雑ではない依頼を解決するために動き回るうちに、彼の周りで多くの殺人や起こり、そして行方不明になった一人の人間を見つけることが、依頼人にとっての本当に依頼ではないかと気づく。「大いなる眠り(The Big Sleep)」というタイトルは、この行方不明者の行方と、彼を待ち続ける依頼人の二人の姿を暗示する。

    まっとうに面白いハードボイルド小説の極み、長らく未読の「リトル・シスター」もこれを機に再読したい。

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    2017年05月21日
  • 日出る国の工場(新潮文庫)

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    再読。十年ぶりとかじゃないか。かなりくだけたバブル期特有の文章を村上春樹が使うとは… 工場自体はまったくかすりもせず知らないところなので純粋に読めた。きれいな工場いいなあ。小岩井はいったことがあるが、かなりえぐいとこまで取り扱ってて良い。あと結婚式場な… この頃から何が進歩したというのか………

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    2014年07月20日
  • リトル・シスター

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    映画はイマイチのと村上氏のコメントをみたので、逆にどんなものか観てみたい。初めて読んだチャンドラーがこれでよかったのか、と今になって思う。

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    2014年05月15日
  • アンダーグラウンド

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    1995年3月20日に(昨日がちょうど事件から19年目でした)
    オウム真理教による地下鉄サリン事件が東京で発生しました。
    死者は13人、被害者は6300人(本書には3800人)にものぼりました。
    事件当時僕は17歳で、教室で1時限目か2時限目の生物の授業の時に、
    教室に入ってきた先生が興奮しながら「ひどい事件が起こった」
    といって、結局授業にならなかったことを覚えています。
    そのくらい、インパクトの大きな事件で、その後もしばらく
    世間はこの事件とそしてオウム真理教に関する報道にくぎ付けになりました。

    本書は小説家・村上春樹さんが初めて手掛けたノンフィクションで、
    彼がインタビュアーとなって、62人の被害者や関係者に事件のことを
    語ってもらった、777ページに及ぶ大作です。

    その日、何が本当に起こったのか。
    事件の当時、地下鉄駅構内や周辺では具体的にどうだったのかは、
    事件後マスメディアからは語られなかったようです。
    語られるのは、正義の「こちら側」から断罪するように分析され糾弾される
    悪の「あちら側」すなわちオウム真理教だったようです。
    つまり、「こちら側」と「あちら側」を対立させ、相互流通性を欠いたかたちで
    一方的に「あちら側」を責め立てる論調があったようです。
    しかし、そこで著者はあとがき的なところでこう述べています。
    「あちら側」の論理やシステムを徹底的に追求し分析するだけでは
    物足りないのではないか、もちろんそれは大事で有益なことだが、
    それと同じ作業を同時に「こちら側」の論理とシステムに対しても
    平行に行っていくことが必要ではあるまいか、と。
    このあたりについて「どうして?」と思う人は、本書を手に取ってみてください。

    62人のインタビュイー(語り手)から語られることは、
    たとえば同じ地下鉄を利用した人ならば状況は一緒なのですが、
    そのときの対処の方法、感じたことや考えたことは十人十色で違います。
    そして、その違うそれぞれの体験によって、事件当時の様子が多角的で
    部分的にわかるようになっています。
    インタビュイーの方々は、たぶん警察の事情聴取を受けておられるでしょうから、
    語る内容が整っていて、対象化されていますが、
    それは、もしかすると、書き起こし文の編集をした著者によってそう読みやすく
    されたところが大きいのかもしれないです。

    意外に思われるかもしれないですし、不謹慎とさえ誤解されるかもしれないですが、
    インタビュイーのひとたちの人生を交えて語っていることが多いのですごく興味深く、
    面白かったりします。笑えるようなことを言ってる人もいる。
    こういう人もいるんだなぁ、大変な仕事をされているなぁ、
    だとか、そういう感想を持ちながら読むことになります。
    そうはいっても、そのインタビューの大部分であるところは事件の体験なので、
    ぐっと気を引き締めたりしながら読む場面もあるのですが。
    それだけ、本書は被害者の人生の一場面としての事件であり、
    その大きさを語っているでしょう。

    被害による「縮瞳」という症状、
    後遺症とみられるような健忘の症状や疲労のしやすさというものが
    多く告白されていました。

    それで、ここが一つの問題なのですが、
    サリンを撒いた犯行そのものによる被害と、
    その後の社会の無理解からの被害がこの事件にはあると言われていました。
    「もう時間がたっているんだから事件の被害のことは言うな」というような空気、圧力ですとか、
    「あの人はサリン被害者だ」という差別があったようです。
    それはどうなんだ、と思いますよね。
    現代人の冷たさです。
    原爆被爆者を差別するというのもありましたが、
    サリン被害者もはみ出し者扱いをするムラ社会がこの日本の社会なのでしょう。
    なので、本書でも、仮名でインタビューを受けておられる方が多くいらっしゃったようです。

    安心社会とは、はみ出し者を無視したり迫害したりする排他的な性格を持っています。
    それを信頼社会に移行していこうとする考えももちろんあって、その方が良いよなぁと、
    僕もなんとなく考えていたりします。
    信頼が裏切られた場合に機能する法律、
    一定の道徳感覚・倫理感覚が社会全般で共有されているという信頼の前提があってこそ
    「ムラ社会(安心社会)」後の「信頼の社会」は機能するのでしょう。

    とまぁ、いろいろと考えさせられます。
    オウム真理教の問題は、いまなおはっきりしない部分もあります。
    そんななかで、事件を風化させないための力をもった本です。
    あとがき的な部分はちょっと難しめですが、
    「物語」が必要だ、などと語られる論説に繋がったものですので、
    そういう知識や経験がある人はわかると思います。

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    2025年06月24日
  • 最後の瞬間のすごく大きな変化

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    文庫が出てすぐ買っていたんだけど、あまりにもかけ離れていて、数ページではじき返されてしまった。8年たった今気まぐれに読み始めると、すごく近く感じた。自分も大人になったんだーと風呂で読みながらぼんやりと感じた。

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    2014年03月16日
  • ポートレイト・イン・ジャズ(新潮文庫)

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    ジャズが好き、和田誠さんの絵が好き…で購入したのですが、この本を読んで村上春樹さんの短いエッセイのファンにもなりました! 行間から、「音が聴こえてくる」んです。この本を読んでから聴いたビル・エヴァンズ「My Foolish Heart」、マイルズ・デイヴィス「Four &More」…ああ、村上春樹はこの音をそう表現するのか…と、うっとりしました。まだ聴いていないとっておきの曲がまだまだたくさんあって、考えるだけでわくわく。CD化もされていて、村上さんがエッセイを添えていますが、これも涙もの。ジャズとはどういう音楽か? 村上流のめちゃくちゃ素敵な答えがそこに。これもぜひ読んでみていただきたい名エッセイです♪♪

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    2014年02月22日
  • ロング・グッドバイ

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    レイモンド・チャンドラーの長いお別れ、村上春樹訳。
    まずそのタイトルに惹かれた。ロング・グッドバイ。
    なかなか粋なタイトルである。

    フィリップ・マーロウの織り成す物語に、
    読んでみて大分想像してたものと違っていた。
    いわゆる推理物と呼ばれる、事件が起きて推理していって犯人を暴いていく、
    そんな王道パターンとはどこかズレているような、
    まずもって、人間臭さが全開である。そして何処までもキザな。
    そんなフィリップ・マーロウという男の魅力を存分に味わう、
    読んでいくうちに珈琲を深く味わうような、
    そんな苦味にも似た切なさがそこには広がっていた。

    ハードボイルドとはこういうことなのかもしれない。

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    2025年04月01日
  • 若い読者のための短編小説案内

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    第三の新人と呼ばれる作家たち・・・恥ずかしながら、ほとんど読んだことがなかった。
    代表作といわれるものが一作、読んだことがあるかどうか。
    『翻訳夜話』を楽しく読んだので、この本も読んでみようという気になったのだが・・・なかなか馴染みのない作家の、しかも初めて聞くような作品ばかりで、びっくりした。
    もう少し、本文の引用があるとうれしかったけれど・・・
    読んでいくと、どこか、村上ワールドに重なるような何かをもった作品たちなんだな、と思わされた。
    特に、達者とされる作家(吉行淳之介や丸谷才一)の中に、ぎこちないなにか、ごつごつしたなにかを感じ取る、こだわりのようなものを感じた。

    巻末についている、編集者による読書案内も、丁寧に作られていて、好感が持てた。

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    2014年01月31日
  • 意味がなければスイングはない

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    音楽や美術、映画とかの好みは人それぞれだから、ある意味では本を書くには難しいテーマだと思います。しかしそこは村上氏。いつもの感じで飄々と、愛を込めてときに辛辣に音楽を語ります。この本の面白いところは、村上氏がスガシカオについて語ってるとこ。そこがハイライトだと思います。

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    2014年01月29日
  • 象工場のハッピーエンド(新潮文庫)

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    村上春樹さんはホントのように嘘のお話を書くのが上手い方だなぁ、ということをしみじみ感じ入りました。マイ・スニーカーストーリーなどは「えええ!?嘘でしょ?でもホントかな?」と突っこみながら読んでいたらやはり嘘だったので大笑い。ユーモアの中に知的センスと哲学がさりげなく含まれていて、誰かがそう簡単に真似できるような類のものではないとおもいます。安西水丸さんのイラストにも同じことが言えますね。真似できそうで出来ない、親近感をもたせながらどこかきわめている。そんな感じ。忘れかけていた遠い日の夢を呼び覚ましてくれる、大人のポエム、大人のメルヘン集ともいえる本だと思いました。

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    2014年01月23日
  • 日出る国の工場(新潮文庫)

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    1980年代の話なんでかなり古いんだけど、読み物としてはかなり面白いです。
    製品の話聞いてわけがわからないので「うなずきトリオ」になっちゃうとか……。

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    2013年12月01日
  • 村上朝日堂の逆襲(新潮文庫)

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    これもなかなか面白かったけど、「村上朝日堂はいかにして鍛えられたか」の方が面白かったかな。本著を書いてから15年近くたって、言葉の選び方なんかがさらに成熟していたように感じる。

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    2013年08月23日
  • 翻訳夜話2 サリンジャー戦記

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    村上春樹が翻訳について熱く語る「翻訳夜話」シリーズ2作目

    本書はJ・D・サリンジャー『キャッチャー・イン・ザ・ライ』の翻訳について語ります

    青春小説の古典として親しまれている名作を村上春樹がどのように新訳に挑んだのか?

    その想いが尋常では無いほどよくわかります。

    なので、村上春樹が解説するキャッチャー・イン・ザ・ライの副読本としても読める内容です。

    しかし、村上春樹さんって翻訳が大好きなんですね。

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    2013年08月02日
  • ポートレイト・イン・ジャズ(新潮文庫)

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    ジャズの入門書としてよいかも。
    もちろんジャズをそれなりに聴いてからでも、そういう聴き方があるのかと参考になる。
    ジャズ批評家の書いた偏見丸出しの文章にはない、知性と文章力と余裕がある。

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    2013年06月17日
  • 日出る国の工場(新潮文庫)

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    バブル前の7つの工場見学の模様を安西水丸さんのイラストを交え伝える本。村上春樹の筆力に脱帽でした。話の内容も今読んでもあたらしかったです。

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    2013年05月03日
  • 村上朝日堂超短篇小説 夜のくもざる(新潮文庫)

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    大体の話が、
    「えっ、その続きは、、?!」
    と思わせる終わり方だけど、
    嫌な終わり方ではない。

    個人的に、村上春樹の文章は
    デトックス効果があるみたい。
    心地よい。

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    2013年04月12日
  • 象工場のハッピーエンド(新潮文庫)

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    ネタバレ

    発売からかなりの年月が経ってしまってるから
    タイムリーでなくノスタルジーになってしまうけど
    1つ1つの言葉から生まれる世界観が楽しかった。

    とても単純だったけど、シンプルで心が中心にあった
    昔の優しい日本のクリスマスもほんとよかったなぁって
    あったかいキモチに包まれたり。

    日常の一端から生まれた非日常の匂いがよかった。

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    2013年07月23日
  • 村上朝日堂はいかにして鍛えられたか(新潮文庫)

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    「フェア」かどうか、が村上春樹の行動規範のようである。本エッセイになかに何度もそのキーワードがでてくる。基本的には肩肘はらないゆるいエッセイだけど、村上春樹の主張は伝わってくる。通勤電車での読書にうってつけ。

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    2013年02月21日
  • TVピープル

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    ネタバレ

    6話の短編。

    いくつか挙げると、
    「TVピープル」は身近なところに忍び寄る謎の生命体の話。彼もTVピープルになってしまったのだろうか・・・。
    「我らの時代のフォークロア」は時代のせいなのか交わることのない彼と彼女。彼に残されたのは脱力感や無力感であり、そんな終わり方がよかった。”深い哀しみにはいつもいささかの滑稽さが含まれている。”
    「ゾンビ」は短すぎる世にも奇妙な物語。短い。でも、最後の一文がここまでが序章であり、この後に続く長さを物語っていておもしろい。
    「眠り」は眠れなくなる女の話。不可解な現状にありながら日常を生きていくことによる自分の変化。心理描写が上手いです。ただ、どうにも結末がよくわからない。彼女は何に揺らされているのだろうか。

    どれも自分の立っている場所がわからなくなるような不安定さを感じさせる謎の多い奇妙な話ばかりです。

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    2026年08月28日
  • 翻訳夜話2 サリンジャー戦記

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    『キャッチャー・イン・ザ・ライ』を訳した時のことなどを両氏があれこれ語っている内容ですが、
    これは一粒で何度もおいしいような本ですね。

    『キャッチャー』の巻末に理由あって載せられなかった訳者解説は読む価値があるし、
    サリンジャーという人物にまつわる話もおもしろいし、
    翻訳の奥深さを感じさせてくれる内容だし、
    アメリカ文学の解説としても分かりやすい。

    家に眠ってる米文学本でもぼちぼち読んでいこうと思いました。
    『キャッチャー』の原書と野崎訳の『ライ麦畑でつかまえて』も家に眠ってるので、
    時間があれば読み比べてみようかな~。
    時間があれば、ですがね。

    バルトは「作者の死」なんて言ってますが、
    文学についてあれこれ言うのは、それはそれで楽しいことですよね。

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    2013年01月25日