あらすじ
刑務所から出所したばかりの大男へら鹿マロイは、八年前に別れた恋人ヴェルマを探して黒人街にやってきた。しかし女は見つからず激情に駆られたマロイは酒場で殺人を犯してしまう。現場に偶然居合わせた私立探偵フィリップ・マーロウは、行方をくらました大男を追って、ロサンジェルスの街を彷徨うが…。マロイの一途な愛は成就するのか?村上春樹の新訳で贈る、チャンドラーの傑作長篇。『さらば、愛しき女よ』改題。
...続きを読む感情タグBEST3
Posted by ブクログ
▼(本文より)私には酒が必要だった。高額の保険が必要だった。休暇が必要だった。郊外の家が必要だった。しかし今のところ私が手にしているのは、上着と帽子と拳銃だけだった。だからそれらを身にまとい、部屋を出た。
▼言い回しの次元でしかないとも言えますが、思わずにやりとしてしまいます。小説というのは、物語というのは、結局は言い回しの次元であると言えます。パチパチ。
▼私立探偵フィリップ・マーロウ長編シリーズ第2作。
①大いなる眠り(The Big Sleep, 1939年)
②さよなら、愛しい人(Farewell, My Lovely, 1940年)
③高い窓(The High Window, 1942年)
④水底の女(The Lady in the Lake, 1943年)
⑤リトル・シスター(The Little Sister, 1949年)
⑥ロング・グッドバイ(The Long Goodbye, 1953年)
⑦プレイバック(Playback, 1958年)
(以下、ネタバレ備忘)
▼マーロウはたまたま、ムース・マロイという乱暴な大男と知り合う。マロイは、「昔たれかに嵌められ」長い獄中生活から出所直後。もともと堅気ではない。ショーガールのヴェルマ、という愛人がいた。獄にいる間、ヴェルマからは音信不通。出獄した今、マロイはヴェルマを探す。ヴェルマを深く愛している。
マーロウは一方で、その直後から。
一見、マロイと無関係に(実は関係が大アリ)依頼された調査が発生。そこから殺人事件に巻き込まれて右往左往する。
結論は、以下。
・マロイの愛人だったヴェルマが、成り上がるために昔、マロイを嵌めて排除した。
・ヴェルマはその後、金持ちと結婚して成り上がった。過去を隠した。
・ヴェルマは出所したマロイが自分を探していることを知る。マロイを再び排除(殺し)たい。
・マーロウはマロイを知り合ったことから、ヴェルマに狙われた。殺されかけた。
・最後は全部マーロウが全てあばききる。マロイは最愛の人・ヴェルマに射殺された。ヴェルマは逮捕される。
Posted by ブクログ
展開が全く読めない
マーロウなんでそっち行くん?なんでそんなことするん?って思いながらずっと読み進めてました
ドントシンクフィールって感じですね
素晴らしい
Posted by ブクログ
村上春樹訳のハードボイルドミステリであるフィリップ・マーロウものの2作目。旧訳のほうは荒々しく削り出した巌を撫でて温度を感じるようのな無駄のない文体だが、今作の新訳のほうは、岩の成分を一つ一つ手で探ってフィリップ・マーロウというキャラクターを浮かび上がらせるような作りになっている。ハードボイルド、という単語から連想するような気取った感じはなく「こういう生き方しかできない」どこまでも不器用でたった一つの美学のみで突き進んでいくマーロウには男として憧れるものを感じる。事件の流れから最後で明かされた真相の読後感もさることながら、マーロウの身に起こる一つ一つの出来事に対してのレスポンスが一番の魅力だろう。ヒーローでもアンチヒーローでもなく、無力で繊細だが、その不屈の美学と飾らなさには凄く共感を覚える。ある種の損な生き方というのは、時に得がたいものなのだ。
Posted by ブクログ
仕事で訪れた酒場で事件に巻き込まれ、これをきっかけに、様々な人々の思惑の繋がりの中に絡め取られていく。主人公はその中を緩急つけながらもがき進んでいくことになります。いったい俺は何を探しているんだろうという疑問を持つ暇もないままに。
行間にある登場人物から発せられるサインと、同じく行間にある主人公の直感とが、事件の真相に向かって読者を進ませてくれます。説明できないけれども分かる必然性が、読者を虜にするのではないかと思います。それだけ登場人物が魅力的に生き生きと描かれていて、目の前で映画を見ているかのようにはっきりと場面が浮かび、感動します。魅力的なセリフの数々。読後にこの世界の余韻に浸るひと時に幸せを感じます。
Posted by ブクログ
大鹿マロイのはなし。マーロウは今度はマロイに友情というかシンパシーを感じる。そうして自分を痛めつけながら色々と無理を通す。はなしの構成という意味でよくできている。
Posted by ブクログ
チャンドラー氏が生み出した名キャラクター「フィリップ・マーロウ」の第二弾。アメリカ的なタフガイの世界観で、良質なハードボイルド・ミステリー。登場人物一人ひとりの個性や独特で洒落た描写が光る。プロットも緩急豊か。
村上春樹氏の訳を読んでいると、チャンドラーから強く影響を受けた結果か村上氏訳だからか、少し回りくどい比喩(誉め言葉)が非常に村上春樹的。
Posted by ブクログ
またしてもどこまでもキザなハードボイルド小説。
私立探偵フィリップ・マーロウのシリーズ。
刑務所から出所したばかりのムース・マロイが
かつての恋人ヴェルマを探してロスのバーを訪れる。
しかしバーは黒人専用店に変わっており、
情報が得られず逆上したマロイは店主を殺害して逃亡。
偶然現場に居合わせ、事件に巻き込まれたマーロウは
警察の依頼でヴェルマの行方を追うことに。
それと同時に舞い込んでくる翡翠のネックレスを巡る謎の依頼。
複雑な人間関係と謎が絡み合う、そんなストーリー。
『ロング・グッドバイ』とはまた違った渋さ。
だが勿論のこと、そのキャラクター性と物語の内容は
今回もコッテリと味が濃い。一筋縄ではいかないのだ。
個人的には村上春樹の翻訳がけっこう自分好みであることに驚いた。
恐らくこの村上春樹の翻訳がハードボイルドさを増しているのは明らか。
今回もマーロウの冷静な観察力と皮肉な語り口に酔いしれることとなった。
Posted by ブクログ
多くのシーンが映像的に、顔を突き合わせて声を交わしたかのように鮮明に思い浮かべることができる
ふとした時に反芻するほど心に残る台詞がある
チャンドラーの本の読後感はいつも、映画を観た後のような浮遊感と少しの感傷に浸れる。染み込んでくる。そんな気持ちで閉じることができて嬉しい。
Posted by ブクログ
大学時代に別訳のを買っていたが、読んでおらず。最近、チャンドラーを春樹訳になったのを気づきそっちを読んでみた。訳者自身が翻訳を楽しんでいるというのもわかるような文章だった。ほかにも訳があるようなので、しばらく読むつもり。
Posted by ブクログ
お酒を飲まずにマーロウを読むのは難しい。飲むと話に靄がかかってしまうから、悩ましい。
自ら謎解きをしながら読むタイプではなくさらさら読むのだけど、記憶に残る「ああ、あれか」で、ほほう、となって読み終わりが爽やか。レッド好きだ。好感の持てるヤツは読者にとってもそうなんだな。なぜかは分からない。やはり瞳の色か。
はー。。。いいスコッチか、マーテル飲みたい(飲んでみたい)。
Posted by ブクログ
マーロウものの二作目に当たる本作はエンタメ度が高く大変に面白い話だ。マーロウが麻薬漬けにされる件や賭博船への潜入シーンなどを含め、起伏に富む展開は最後まで飽きさせない。また、マーロウが真相を追う過程で彼に手を貸す人物が複数登場するのも大きなポイントとなっている。なかでも密航の橋渡しをするレッドの存在は特に印象深い。ハードボイルド小説や著者のチャンドラーに対して或る種の固定観念を抱いている方へぜひお勧めしたい、そんな一冊である
Posted by ブクログ
すっかりこの文体に魅了されてきてしまった。無駄に細かい情景描写や、このシリーズでなければ許せないようなキザな台詞など、楽しめた。中身はミステリー・サスペンスとしては雑に感じるところもあるが、そんなことはどうでもよくなりますね。賭博船に潜入するあたりが、ちょっと頭に入ってこない部分があったけど、登場人物さえ押さえれば読み易いと感じる。次はどれを読もうかな。
Posted by ブクログ
〈私立探偵フィリップ・マーロウ〉シリーズ第2段。チャンドラー作品は『ロング・グッドバイ』に続き2作目である。相変わらず正義感が強く、かつハードボイルドな主人公マーロウであった。伊坂幸太郎作品に出てくる屈強な殺し屋のような、個性豊かな人物がたくさん出てくるところも読みどころ。マーロウは私立探偵なので、どんなに苦境に立たされても人を殺めることは絶対にしない。そこが非常に好感が持てる。そして何より、独特のシニカルな口調が個人的にとても癖になる。彼のような才能があれば、世の中を上手く渡れるかもしれない。
Posted by ブクログ
初レイモンドチャンドラー。
訳者はあの村上さん!
ハードボイルドな世界観にめくるめくミステリー。
魅力的なマーロウをはじめとするキャラクター達。
読んでいてプリンが食べたくなってしまった。
Posted by ブクログ
フィリップ・マーロウのシリーズ2作目。
1作目でマーロウの癖の強さに慣れたのか
マーロウ節が楽しみになってきました。
この手の「表現の回りくどさ、言い回しのくどさ、長ったらしい文章」は嫌いなんですが、マーロウのキャラクター自体がくどさの極みなので、セリフ以外のくどさも不思議と受け入れられました。
そこは村上春樹氏のうまさなのかな。
ミステリー作品としてはふわっとしていますが、ただただマーロウを堪能するための小説として十分な価値があります。
Posted by ブクログ
今回もやはり途中からよくわからなくなってしまった。
マーロウはなぜあのような暴力を受けなくてはならなかったのか。
なぜ麻薬中毒者の病院に入れられたのか。
最初の方のグレイル夫人とのお酒を飲むシーンが一番印象に残った。。。
Posted by ブクログ
前作よりも更にマーロウが好きなった。
相変わらず個性的な人たちの中で、よく殴られ、よく酒を飲み、そして何だかんだで真相に辿り着く。
この本の醍醐味って、きっと謎解きとかじゃなくて、マーロウがあーだこーだしてるところとか、その雰囲気を楽しむものなんだろうと、改めて感じた。
私は村上春樹訳しか読んだことがないが、気障でちょっと皮肉っぽいマーロウにぴったりだと思った。
Posted by ブクログ
さよなら、愛しい人
著者:レイモンド・チャンドラー
訳者:村上春樹
発行:2011年6月15日(単行本は2009.4)
早川書房(ハヤカワ・ミステリ文庫)
村上訳で読み返すフィリップ・マーロウ。今回は「さらば愛しき女(ひと)よ」の邦題で知られる本作品。やはり昔読んだ文庫本は見つからなかったが、不思議に話は少し覚えていた。最後の真相究明までは無理だったが。
本作品は、マーロウシリーズの2作目。訳者あとがきにも書いてあるが、マーロウの代表作で、「長いお別れ」「大いなる眠り」とならんでベスト3に上げる人が多い。今回の訳でも470ページほどあり、とても長い。しかし、掛け値なしの傑作。きっかけが、依頼された仕事ではなく、たまたま巻き込まれた殺人事件という設定で、そこに普通に依頼された仕事があって、それと関係があることが分かって、点と点が繫がるという展開だけど、いろいろ出てくるキーパーソンの役割が最初の推測と最後の解明部分とでは大きく違ってくるところが、純粋な推理小説にも近い。マーロウものにしては、少し珍しいかも。
なんと、1940年に刊行された。
(設定)
黒人専用バーの前を通りがかると白人の大男マロイが暴れている。マーロウが覗くと引き込まれ、1杯やるはめに。大男は昔ここで働いていて、一緒に働いていた女を捜していた。分からないと言われ、黒人経営者を殺して逃亡した。
マーロウは、マリオットというジゴロから依頼され、宝石強盗団から宝石を取り戻し(買い戻し)にいく先まで付き合うことに。しかし、マリオットは殺されてしまい、自分も気絶。
マロイを探すため、黒人専用バーがまだ白人でも入れたころの店の所有者(死亡)の妻のところに行ったマーロウ。ボロボロの家だったが、そこには高額な抵当権が設定されていて、持っていたのはマリオットだった。2つの事件が結びついてきた。
***(個人的メモ、ネタ割れ注意!)***
ムース・マロイ(ムショ帰りの大男)
ヴェルマ・ヴァレント(マロイの恋人)
ジェシー・フローリアン(フローリアンズの元経営者の妻)
リンゼイ・マリオット(ジゴロ)
アン・リオーダン(マーロウも知っている元警察署長の娘でライター)
ミセス・グレイル(翡翠のネックレスを強盗された富豪の妻)
ジュール・アムサー(心霊治療)
プランティング(アムサーの用心棒、インディアン)
ソンダボーグ(医師)
レアード・ブルーネット(暗黒街のボス)
ナルティー(77番通り警察)
ランドール(LA中央警察署殺人課)
ジョン・ワックス(ベイ・シティー警察)
ガルブレイス(ヘミングウェイ)(ワックスの部下)
ブレイン(ワックスの部下、体調崩す、マーロウを殴る)
マーロウがフローリアンズの前を通りがかると、白人大男のマロイが暴れている。気になったので覗くと、マロイにつかまり無理矢理2Fのフローリアンズで突き合わさせられる。そこは数年前に黒人専用バーになったが、黒人用心棒をマロイがやっつけ、この店で以前に働いていた恋人のヴァレントの行方を聞いたが知らないと言われ、立腹したマロイは奥のオフィスに入って行って黒人経営者を銃殺して逃亡。
警察に事情を聞かれたマーロウは、ヴェルマ・ヴァレントを探せばマロイも見つかるかもと提案、ではそれを無償でやれと言われる。
マーロウはまず、ある中のフローリアンズ元経営者の妻の家に。店を手放したいきさつなどを聞いたが、過去に店で働いていた芸人たちの写真を見せてくれたにもかかわらず、ヴァレントの写真だけ見せようとしなかったことを見抜く。ピエロの格好をした写真。後にわかったが、マーロウが引き上げた直後にマロイもそこを訪ねたらしい。
マリオットという男から依頼。知り合いの金持ち夫人が翡翠のネックレスなどの宝石を強奪された。2人で自動車移動中に。強盗団は、非常に価値のある翡翠は処分先を探すのが大変だから8千ドル払えば返してやると言ってきたので、一緒に行って欲しいというのが依頼だった。依頼料100ドルを受け取ったマーロウは運転をし、指定の場所に行こうとしたが直前で入り口が狭くなったので車を止めて徒歩で行った。そして車まで引き返すと、マリオットが殺され、自分も殴られて気絶した。預かっていた8千ドルは奪われたが、依頼料の100ドルは無事だった。マーロウは責任を感じて犯人捜しを決意。マリオットの死体を探ると、模造鼈甲の煙草入れの中に3本のロシア煙草があり、別に普通の煙草も持っていることが分かった。
現場に通りがかったのは、捜査好きのライター、アン・リオーダン。マーロウを車置き場まで送ってくれた。しかし、彼女は戻り、3本のロシア煙草を抜き取っていた。
彼女はマーロウを訪ね、宝石商をあたって翡翠ネックレス持ち主の金持ち夫人がグレイル夫人であることを教え、抜き取ったロシア煙草をおいていった。
マーロウはマリファナだと思われるその煙草を分解すると、一枚の名刺が中に巻かれていることを突き止める。住所なく電話番号のみ。心霊療法のアムサーの名刺だった。彼はそこに電話をして会いたいというが拒否される。しかし、マリオットの名を上げると6時に来い、住所は言えないので迎えの車をそちらに出すという。
マーロウは再びフローロリアンが住むぼろ家の抵当権所有者を知人に頼んで調べてもらうと、なんとマリオットだった。しかも、不動産価値に比べてかなり高額だった。彼はフローリアンをまたたずね、マリオットとの関係を訪ねると、以前にマリオットの家で働いていた、今も少し面倒を見てもらっている、とのこと。どうやら毎月仕送りをもらっていたらしい。もう仕送りは来ないよと言い残して去った。
グレイス夫人の執事から電話があり、会いたいとのこと。訪ねると、彼女、病気の夫、ライターのアン・リオーダンがいた。グレイス夫人から事件の際の詳細を聞いたが、どうも本当のことを言っていないようだった。そして、彼女はマリオットにポルノ的な写真を撮られているという弱みを握られていた。マリオットはそういうことで金をせびる男だったようだ。
マーロウがオフィスに戻ったのは6時15分前だった。インディアンが迎えに来た。心霊治療のところに連れて行かれた。インディアンにはすっとぼけて「どんな依頼だ?」と言って着手金を要求、100ドル渡されたので車に乗ったのだった。
アムサーが出てきて話をする。マリオットもグレイル夫人も患者として来たことがあるという。ロシア煙草のことを言い、マリオットは強盗とつるんで襲わせているやつだ、お前も一蓮托生だというと照明が落ち、屈強なインディアンに襲われて気絶。持参していたロシア煙草1本も奪われていた。2本はオフィスにあると説明していた。
気が付くと警察官が2人(ヘミングウェイとブレイン)とアムサーと女子事務員。アムサーはマーロウがゆすりに来たと思い連絡、録音した会話を起こした文書を女子事務員に読ませていた。アムサーは去り、2人の警察官がマーロウを車で連れ出してどこかで降ろすので歩いて帰れといった。あるところで降ろされると、マーロウは背後から殴られ気絶。殴ったのはブレインだったことが後に判明。
気が付くと部屋に閉じ込められていた。幻覚を見ている。麻薬を打たれている。倒れそうになりながらも、旨く好きをみて部屋から脱出、建物内を探るとなんとマロイがかくまわれていた。そして、医学博士を自称するソンダボーグの部屋へ。そこは麻薬中毒とアル中を収容する私立施設だった。ソンダボーグは銃でマーロウを押さえ込もうとするがマーロウは先手を打って去る。
マーロウにこれ以上手を出すなと警告していたLA警察のランドールが訪ねてきた。彼は、マリオットは宝石強盗の手先だったが、もう賞味期限のためあの事件を最後に消されることになった、と推測した。そして、マリファナ煙草に心霊療法師の名刺を入れて、捜査でわざと見つかるようにしてメッセージを残そうとしたと。また、ベイ・シティーの警察官は腐敗しまくっていることも。レアード・ブルーネットが街を牛耳っている。市長の金蔓でもある、と。
マリオットがマーロウに連絡した時、すでにマーロウの名刺を持っていたことをランドールは指摘した。後に、その名刺は汚れていて、フローリアンに渡したものであることに気づく。フローリアンが名刺の上に濡れたコップを置いていたことを思い出したから。
2人でフローリアンの家に行くと、彼女は殺されていた。首の骨を折られたあと、脳をかち割られていた。マーロウはそれがマロイの仕業だと見抜く。ただし、事故っぽい。
マーロウは、ランドールに教えられたのをもとに、ブルーネットの経営する船上カジノに乗り込む。捕まるがブルーネットに会えた。そして、船の警備上の穴を教えてやるかわりに、マロイへの伝言を頼むことができた。
マロイがマーロウを訪ねてきた。マーロウは、マロイがヴェルマの行方を聞き出すために再びフローリアンを訪ね、詰問して揺すぶった時に首の骨を折ってしまったこと、そのあとに頭を割ったことを指摘した。そこに、グレイル夫人が来た。マロイは奥に隠れていた。
グレイル夫人は、実は裏街道を行っていた女だった。それをフローリアンは嗅ぎつけて脅していた。マリオットを通じ、彼女の家の抵当権を高額で押さえ、生活費も出していた。
しかし、マロイが刑務所から出てきて、ヴェルマを探し、マーロウも彼女を探し始めて、ヴェルマは危機感を覚え、マリオットにマーロウを殺すように説得したが、マリオットは鎖が弱いので彼を殺すことにした。そこで、宝石強盗事件をでっち上げ、マーロウに依頼をして殺す機会を作ったが、ヴェルマはマリオットだけを殺してマーロウを殺さなかった。
そんな話をしている時に、マロイが出てきた。なんと、彼女はヴェルマだったのだ。そして、マロイを8年前に警察に売ったのもヴェルマだった。マロイはまだ彼女を愛していたが、彼女は彼を嫌いだったのだ。そして、グレイルと結婚して莫大なお金を手にしていた。グレイル夫人はマロイを撃って逃げた。
マロイは死んだ。そして、3か月後、ヴェルマは歌手に戻って逃げていたが、歌声で見抜かれて逮捕されそうになったので刑事を撃って、自分も撃って自殺した。
腐敗していたベイ・シティーの警察署長は解雇され、刑事の多くは降格。そして、レッドという元警察官が復職した。レッドは、マーロウがカジノ船に乗り込むのを手助けしてくれた好漢だった。
アムサーはとんでもない詐欺師で逃げている。ソンダボーグも行方知れず。
Posted by ブクログ
はじめてのレイモンド.チャンドラー
私立探偵フィリップ・マーロウシリーズ第2弾
村上春樹新訳版
「タフでなければ生きて行けない。」
「優しくなれなければ生きている資格がない」
「さよならをいうのは、少し死ぬことだ」
1940年に書かれたハードボイルドの世界観は
女性蔑視、人種差別表現満載で、今日発表したら
炎上間違いなしかも。
Posted by ブクログ
村上春樹が翻訳したレイモンド・チャンドラーの名作「さよなら、愛しい人(Farewell,My Lovely)」を読みました。
「The Long Goodbye」「Big Sleep」に引き続き3作品目。
フィリップ・マーロウは相変わらず頭が切れて、率直で、男くさくて、女性に対してシビアで、へこたれず、強く、そして孤独です。
そこに首を突っ込むの?という点が普通と違ってドキドキの連続で、案の定痛い目に何度も会います。今回は半殺しのヤク漬けにされかかるなど、ちょっと程々にしておきなよと忠告したくなるぐらい。
あと言葉尻がいちいち面倒くさい。相手に食ってかかるし、皮肉っぽいし。あと、まるで○○のようだと比喩するのは村上春樹が訳しているから?そのせいもあって、そのうちフィリップ・マーロウが「やれやれ」とか言いそうな雰囲気。そういや村上春樹作品の主人公もフィリップ・マーロウ的な人が多い気もします。
そういったぶぶんも全部ひっくるめて、フィリップ・マーロウ作品群の最大の魅力だと思います。
登場人物も多彩。
へらじかマロイ、美女たち、警察の方々、クセの強いおばちゃんたち、臆病なスケコマシ、占い師、脱法医者、暗黒街のドン、などなど。皆ビビットに表現されており、頭の中で絵が浮かんでくるようです。
一番印象に残っているのは、のちに無残な姿となるアル中のおばちゃんですかね。お酒とラジオだけが私の心の拠り所、同情したくなる境遇の彼女の印象は深く残ってます。
前作Big Sleepでも思ったけど、名推理!と言うのはないです。
フィリップ・マーロウの行動が事件の解決に繋がっていくという流れ。
ストーリーの展開のされ方から、こうなりそうだな、と言う推測はつきますが、後の種明かしで、はあ、なるほどねとなります。読んでるだけではよく推理できないある種の名探偵コナン的な種明かし。まあ推理小説らしいですけどね。
物語では「愛しい人」は死んでしまい、「愛した人」も同じ道を歩んでしまいました。
愛しい人がどうであれ、
愛しい人に何をされようが、
貫く愛というのは素晴らしいものですね。
Posted by ブクログ
チャンドラー作品、二作目(村上春樹訳)。訳者自身がかなり影響を受けているためか、“ハルキっぽさ”というのは“チャンドラーっぽさ”と同一のものなんだなぁ、と読んでてずっと思いました。これは内容を愉しむものではなく雰囲気、またはマーロウという人物の言動、行動、仕草などを愉しむもののようだ。この点もハルキ作品と同じである。
Posted by ブクログ
マーロウが時折見せる「弱さ」が意外で、読みどころの一つ。
事件が大詰めとなり、大ボスとの対決を前にあれこれと考えを巡らせ、くじけそうになるマーロウ。
「私には酒が必要だった。郊外の家が必要だった。しかし今のところ私が手にしているのは、上着と帽子と拳銃だけだ
だからそれらを身にまとい、部屋を出た」(p380)
マッチョ一辺倒ではないからこそ、かっこよさがより際立つし、そんなマーロウを応援したくなる。村上春樹作品はチャンドラーを中心にアメリカ文学をうまく掛け合わせたブレンドウイスキー。そして、こちらは原酒。やっぱり原酒にトライしたいところだ。チャンドラー万歳。
Posted by ブクログ
チャンドラーが残した七冊の長編小説のうち、これで三作を読んだわけだけれど、村上春樹氏の翻訳がいよいよこなれて来て、とても読みやすくなっているように感じた。
「ロング・グッドバイ」も「大いなる眠り」も、やや村上氏にもチャンドラーを翻訳するということへの愛があふれるゆえ気負うところがあったような、僅かなぎこちなさみたいなものを感じたのだけれど、そういうサイドブレーキを引いたまま運転しているような印象が綺麗サッパリなくなっていてとても愉快にこのタフでいかした私立探偵との旅を感じて読み進めることが出来たように思える。
もちろんそれは、この作品そのもののもつクオリティやパワーが他の作品に比べてもやはり高いこともあるのだろうけど。
Posted by ブクログ
マーロウはかっこいいですね、シェイクスピアの言い回しがかっこいいです(シェイクスピア読んだことないんですが)。
今回は伏線がたくさんあり、ミステリアスな内容です。気合入れて読まないと、伏線回収で付いていけなくなります(私です)。
Posted by ブクログ
一作目で挫折しないで大正解。何故なら、正にこんなハードボイルドが読みたかったから。タフガイだけれど、決して完全無欠ではないマーロウ。自身の恐怖心を鼓舞する人間らしさも魅力的。皮肉たっぷりの台詞回しには思わず笑みが溢れてしまう。表現が比喩的過ぎたり、説明が省略され過ぎていて、状況が把握出来ない場面も幾らかあるが、深く考えるのはそれこそ野暮なのか。組織の腐敗は現代の警察小説にも通じており、古典でルーツを探るのもまた一興。邦題を「愛しき女」から「愛しい人」に改題したのは【二人それぞれの愛情】を表すためですかね。