村上春樹のレビュー一覧
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ネタバレ村上春樹氏2005年の作品。5篇からなる短篇集。
シュールで微熱的な、得も言われぬ魅力のある作品集だと思います。
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一番のお気に入りはやはり、巻頭を飾る「偶然の旅人」。
ゲイの調律師が、オフの日に郊外のショッピングモールにある喫茶店で読書をしていて、とある主婦と出逢い、すんでのところで一線を越えそうに。勢いを殺すべく、その時点でゲイをカミングアウト。そこでより一層深く互いのことを話し、その女性にも不安や悩みがあることを知る。それをきっかけに、ふと、かつて仲がよかった姉を思い出す。
20歳そこそこでゲイのカミングアウトを切っ掛けに、結婚直前であった姉とは疎遠になってしまった。その虫の -
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村上春樹のエッセイ。私は、村上春樹は小説よりもエッセイの方が好きだ。飄々とした感じの文体で、真面目なのだかふざけているのだか分からないようなことを書いているのが面白い。
特に、小説では絶対に使わないような、見方によってはくだらない「比喩」を多用するとことも好きだ。
■(海外旅行中にホテルから空港に向かう途中、ホテルにパスポートやフライトチケットを忘れたことを、ホテルから250km地点で奥様から指摘されるのだが)隣に座っていた連れが、現実という見過ごすことのできないずた袋の底から、洗い忘れていた二週間前のテニス用靴下を引っぱり出すみたいに、陰惨な疑問をひとつ持ち出してきた。
■しかし災難は、ま -
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村上春樹さんが、お父様が亡くなったことをきっかけに、自分の父親について、そして村上さんとの関係性について、時代背景である戦争について、実際に書きはじめてみることで考えを深めていったエッセイです。台湾出身の高妍さんが担当された表紙と挿絵は、なんだかぼんやりとした思索を静かに呼ぶような絵でした。
村上千秋さんという人が春樹さんのお父様で、京都のお寺・安養寺の次男として誕生します。安養寺の住職が村上さんの祖父ですが、もともとは農家の子だったのが、修行僧として各寺で修業を積み、秀でたところがあったらしく住職として安養寺を引き受けることになったようです。
僕は読む作家を血筋で選ぶことはないので(多く -
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表題作の『パン屋再襲撃』は本の一番最初に収録されている短編だ。
深夜に目を覚ました主人公夫妻は空腹に耐えかねていたのだが、主人公はふと学生時代にパン屋を襲撃したことがあることや、その顛末の釈然としない気持ちを「呪い」と称してを妻に溢す。するとそれを聞いた妻は、呪いを解くために今からパン屋を再襲撃しようと提案する。
なんともまあ、初っ端から村上春樹ワールド全開である。
しかも余計に愉快なのが、なんの計画性もなく話が進行していくこと。東京といえども深夜二時半に開店しているパン屋は見つからず、最終的に妥協してマクドナルドを襲撃することになる。
無論、標的をマクドナルドに変更したのは妻で、主人公は「マ -
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行方不明になっている秋川まりえを探したいと願う主人公だったが、「明日の午前中にかかってくる電話で、誰かが…何かを誘う。それを断ってはならない」との騎士団長のアドバイスに従い、彼は友人雨田政彦と共に、彼の父具彦が入院している療養所に面会に行くことにする。そして雨田政彦が用事で部屋を外した留守に、主人公の前に騎士団長が現れ、「秋川まりえを取り戻したいのであれば、諸君をある場所に送り出す必要がある、そのためには少なからざる犠牲と、厳しい試練とが伴うことになる、具体的には自分を殺せばよい」と言った。(つまり「騎士団長殺し」の画面を再現するということなのか。)
そこから主人公は試練の道を進んでいく、 -
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いよいよ第二部へ。
主人公の画家の周りには何枚かの絵がある。依頼を受けた白髪の紳士免白の絵は寛政し既に依頼主の手元に渡ったが、現在は秋川まりえをモデルにした絵を描いており、また東f北のある町でほんの少し出会っただけなのに妙に印象に残った白いスバル・フォレスターの男を途中まで描いた油絵、そして「騎士団長殺し」。
「騎士団長殺し」を描いた雨田具彦とその弟に関する過去の闇も少しずつ明らかになってくる。それは村上春彦の作品で良く取り上げられる戦争に関連する悲惨な出来事であり、本作でも「騎士団長殺し」を巡る重要なモチーフであることが推測される。
そんなとき、秋川まりえの行方が分からなくなって -
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主人公は白髪の紳士・免色の”肖像画”を完成させたが、それは依頼主の免色もかなり満足の出来栄えだった。
そんなある夜、主人公は家の中で鈴の音が鳴っていることに気付く。意を決してスタジオに行った彼が見たものは『騎士団長殺し』の絵の中の人物、60センチばかりの騎士団長の姿だった。騎士団長は、自分は騎士団長の形体を借りた「イデア」であり、石室に閉じ込められていたが、あの穴から自由になったのだと言う。
また主人公は、ある事情から美しい少女秋川まりえをモデルに肖像画を描くことになる。
「騎士団長殺し」を描いた雨田具彦に起きた戦前のウィーンにおける出来事を巡る事実が徐々に明らかになったり、不思議 -
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「肖像を描いてもらいにきたのだ」、「おまえはそのことをわたしに約束した」と<顔のない男>は言った。何もないものをいったいどのように造形すればいいのだろう?と何もできないうちに、その男の姿は消えてしまう。このように謎めいたプロローグで本作は始まる。
「とても悪いと思うけど、あなたと一緒に暮らすことはこれ以上できそうにない」と、主人公はある日突然妻から切り出される。妻には付き合っている男がいるようだが、特に諍いもなく二、三言のやり取りで離婚を承諾する。(この辺りの淡々としているところは、正に春樹の登場人物)
妻と別れることにした彼は家を出ることにし、愛車の赤いプジョー205に乗って、仕事も放 -