村上春樹のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
良さがわかった
川上未映子の絶讃する「眠り」をふくめて、くだらないものからなんでもないものまで数篇はいってゐる。「ゾンビ」はくだらなすぎだが、ぼくは好きだ。やはりここにも男女の不幸のやうなことが書かれてゐる。
「眠り」もやはり眠れない主婦のことがメインといふよりは、結婚生活の不幸みたいなものに別種の軸がある。「我らの時代のフォークロア」も、将来的な不倫を望む彼女、といふ点でなんだか共感できるやうなできないやうな微妙な話を書いてゐる。
意外と乗ってしまへば気楽に読めるので、それはやはすごい技術である。
しかし、ただそれだけだったのだ。
結局のところ、熱心な文学読みにとって村上春樹が賛否両論なのはやはりこの題材だからだらう。こんな男女の話なんてどうでもいいと思へばそれまでなのだし、ぼくも、これは誰かを好きになったことのあるひとしか分からないことなのだと思ふ。
そしてそれが、☆3点の理由なのだ。
以下は↑を書く一年前によんだときの感想だ。いまのぼくは多少なりともこれより好意的だと言っておく。
「TVピープル」
小人のピープルが日常生活にテレビを持ちこむ。その瞬間を僕は目擊するが、しかし周囲は全くそれを感知しない。妻も、会社の同僚も、だ。
知らずに生活に入りこむテレビをたとへた寓話かもしれない。でも、そんなのはどうでもいいことだ。SFとしてもそんなに好きぢゃないし。
妻の生態について、雑誌の位置をずらすと怒る等。妙にリアル。妻の職業は編集者で、僕の仕事は広告だ。これはいつもの村上春樹のパターンだし。 -
Posted by ブクログ
原題はAmerica Fantasticaで、アメリカ万歳とも訳せるようなタイトルだが、書かれた内容を読み進めると、何が何だかわけがわからなくなる。虚実(小説はそもそもフィクションだが)が混沌として、理解が追いつかない。SNSが醸成した世間が、トランプ大統領の登場とともに現実として世界に表出し、著者はそんな現実をシニカルに、いや本気で嘆くさまを本書『虚言の国』に結実したんだと思う。
また、訳書のタイトルにアメリカという固有名詞を出さずに、“ 国 ”と普遍性を持たせたところに訳者の強い思いがうかがえる。
銀行強盗を働いた主人公の男は、その時窓口にいた行員女性を誘拐し、そのまま逃走する。逃走というより、それは旅だ。主人公が銀行強盗を働くに至った背景と、関わる人物たちの物語が並行して語られるロードノベルになっていく。主人公の心にある真実と救いが、周囲の荒唐無稽ともとれる虚言に翻弄されているよう、僕には見えた。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ絵を完成させたことで動き始めた物語なだけあって、完成しない絵の方も大きな意味を持っていることがよく分かった。たぶん「白いスバル・フォレスターの男」は主人公のよからぬ感情の象徴で、「秋川まりえの肖像」はまりえを手に入れたいと望む免色の怖さを表している。前者の未完成は主人公が真っ当な人生を歩むことに繋がり、後者の未完成によってまりえの安全が保たれた。「騎士団長殺し」は焼失することで役目を終えた。最後に主人公によって「白いスバル・フォレスターの男」が未来の「騎士団長殺し」のようになることを危惧しながらもその完成を最終的には望んでいることが示唆されるが、再婚することによって独りで無くなった(=他人と共同生活を送らなければならない運命になった)彼にとって自分のよからぬものを克服することが今後の目標となったという意味だと思われた。
絵の完成具合とストーリーラインがリンクしている構造はとてもおもしろい。ただ『世界の終り』や『ねじまき鳥』でも感じたが、「地下に降りていって何かと戦う」という段階になると物語が単調で退屈になる。中短編だと丁度いいが長編だと長く感じる。