表題作は映画化で有名だけれども、映画とは人物設定も時代背景もその他諸々も全く違う話。
映画もすごく良かったし、主演をオードリーに据えた時点でああいう風に変えざるを得なかったのはわかる。けど、訳者あとがきにあるように、原作もいいので原作通りの映画を私も見たいですぞ。
【ネタバレっぽい】
化粧室に行くたびにお小遣いをもらうというのは、トイレへ行った際に従業員にチップを渡す習慣が分かっていないと何のこっちゃだよね。タクシー代を多めに渡すようなもので、主人公はいわゆる「いただき女子」、もしくは「エンコー女子」。犯罪者にも関わってしまうところが、お尻が軽くていらっしゃるというか、倫理観がゆるい。
でも、倫理観や貞操観念など、色んなものが破茶滅茶そうなホリーが、たまに発する詩的だったり含蓄のありそうな言葉がハッとさせられるほどいい。
「そうね、それが普通かもしれない。でも私は、普通よりは自然でありたいんだ。」
「四十歳以下でダイアモンドを身につけるのって野暮。(中略)似合うのはきっちり年取った女の人だけ」
「私が明日どこに住んでいるかなんてわかりっこないでしょう。だから住所のかわりに旅行中って印刷させたの」
「野生のものを好きになっては駄目よ。(中略)野生の生き物にいったん心を注いだら、あなたは空を見上げて人生を送ることになる」
「女たるもの、口紅もつけずにその手の手紙を読むわけにはいかない」
表題作以外の短篇三作も、けっこう個性的で面白い。
「花盛りの家」。結婚について考えさせられるというと陳腐すぎるんだけれど、主人公が嫁いだ家がすごいの。両親ではなく婆さんがいるんだけど、この婆さんが怪しげで性格悪くて。それに張り合う主人公もすごい。
「ダイアモンドのギター」。これは男同士の友情がテーマと言っていいんだろうか。それだけではなく主人公の若さへの憧憬と諦念もよく描かれていると思う。少しビターなお話。
「クリスマスの思い出」。少しわかりにくいところもあるけれど、ノスタルジックな気持ちにさせてくれる。最後の一文が最高に泣かせる。
それから訳者あとがきのボリュームたるや! やはりビッグネームな先生が訳すと違いますね。カポーティ作品の解説になっていて、けっこう面白く読みましたよ。
ただ、正直にいうと、あまりスムーズに読み進められなかった。村上文体がそこまで得意ではないせいなのか、カポーティがそこまで好きでないせいなのかは不明なので、もう一冊くらい読んで確かめたい気持ち。