tetsukichi19さんのレビュー一覧
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小さくて確かな幸せ探しの物語
原田ひ香さん初読の1冊。感想、ひ香さん実は男性作家説。おじさんの心情の悲哀やささやかな楽しみに激しく共感。「本当に何もわかっていないんですねえ」の言葉に同じように「えっ」と思ってしまう自分がいました。どんなに落ち込んでいても「うん、まあ、こういう時は喫茶店だ。」の井之頭五郎ばりの気持ちの切り替え(BGM付)。そして本当に好きなものを前にすると自然に浮かぶ笑み、無意識につぶやく「うまいな」の言葉。自分と重ねながら東京の街を歩いているようでした。「妻はなんだかんだ言って他人」松井の言葉もまた事実なり。
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良くも悪くも吉田タッチは健在
12月湖西線に乗って曇天の夕暮れが湖面に反射するどこかもの寂しい琵琶湖を見たことを思い出しながら、そして日に日に老いていく母のことを思いながら、偶然手にしてしまった本。吉田修一ならば間違いないはずだったが、読み進めるたびにうんざりするような酷い状況の話で、ますます琵琶湖
の心象が悪くなってしまった。滋賀県に罪はないが事件が起きそうな心象をもってしまった。吉田小説の温度感を感じ映像が浮かぶような描写は健在で、ゆえに気が滅入ってしまった(これでも褒めています)。追い詰められていく人。堕ちていく人。 -
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11人の女性との逸話または寓話
吉田修一さんのストーリーテラーぶりにはただただ脱帽。男性視点の11人の女性との逸話または寓話。個人的には作品名含め最後の「最初の妻」の話がよい(というか胸が痛い)。中学1年で最初で最後のデートという設定も初恋ではないが儚くそしてその純粋な思いにくらくらしてしまいました。また、自分勝手な妄想で怒りにふるえてしまう犯罪ストーカー的な「夢の女」も共感する部分あり。「どしゃぶりの女」は何もしない無気力な女ではなくて、実は人には事情があって、それをいちいち言わないのもそれに気づかないのも男と女だなと思ってしまった。