• 地面師たち
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    詐欺の話もここまで大きくなると

    Netflixが見れないのでYoutubeの映像を断続的に繋げて、それでも恐ろしい話だと興味をもった1冊。拓海が話すと綾野剛が、後藤が話すとピエール瀧が、ハリソンが話すと豊悦が浮ぶのはしかたがないにしても、積水ハウスの事件が本当にあったとは言え、犯行者側の視点でここまで描けるのは凄いと思った。なによりも資金と計画の決定権をもちながら、決して舞台の表にでてこないハリソンの周到性。人格はサイコパスなのに紳士然とした出で立ちと邪気のない笑顔で人に近づく。とても小説の話だけのようには思えないリアリティ。

    #怖い #ダーク

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    2025年11月02日
  • 喫茶おじさん
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    小さくて確かな幸せ探しの物語

    原田ひ香さん初読の1冊。感想、ひ香さん実は男性作家説。おじさんの心情の悲哀やささやかな楽しみに激しく共感。「本当に何もわかっていないんですねえ」の言葉に同じように「えっ」と思ってしまう自分がいました。どんなに落ち込んでいても「うん、まあ、こういう時は喫茶店だ。」の井之頭五郎ばりの気持ちの切り替え(BGM付)。そして本当に好きなものを前にすると自然に浮かぶ笑み、無意識につぶやく「うまいな」の言葉。自分と重ねながら東京の街を歩いているようでした。「妻はなんだかんだ言って他人」松井の言葉もまた事実なり。

    #ほのぼの #癒やされる #切ない

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    2025年03月24日
  • 湖の女たち(新潮文庫)
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    良くも悪くも吉田タッチは健在

    12月湖西線に乗って曇天の夕暮れが湖面に反射するどこかもの寂しい琵琶湖を見たことを思い出しながら、そして日に日に老いていく母のことを思いながら、偶然手にしてしまった本。吉田修一ならば間違いないはずだったが、読み進めるたびにうんざりするような酷い状況の話で、ますます琵琶湖
    の心象が悪くなってしまった。滋賀県に罪はないが事件が起きそうな心象をもってしまった。吉田小説の温度感を感じ映像が浮かぶような描写は健在で、ゆえに気が滅入ってしまった(これでも褒めています)。追い詰められていく人。堕ちていく人。

    #怖い #ドロドロ #ダーク

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    2025年01月07日
  • 女たちは二度遊ぶ
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    11人の女性との逸話または寓話

    吉田修一さんのストーリーテラーぶりにはただただ脱帽。男性視点の11人の女性との逸話または寓話。個人的には作品名含め最後の「最初の妻」の話がよい(というか胸が痛い)。中学1年で最初で最後のデートという設定も初恋ではないが儚くそしてその純粋な思いにくらくらしてしまいました。また、自分勝手な妄想で怒りにふるえてしまう犯罪ストーカー的な「夢の女」も共感する部分あり。「どしゃぶりの女」は何もしない無気力な女ではなくて、実は人には事情があって、それをいちいち言わないのもそれに気づかないのも男と女だなと思ってしまった。

    #切ない #じれったい

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    2024年11月07日
  • 女のいない男たち
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    「エレベーター音楽」とは?

    「喪失感」が色濃くなり円熟期をむかえた村上春樹の短編6作品。「女のいない・・・」というわりに努力しなくても女の人とかかわり、時に深く交わってしまう村上ワールド。歌詞が全部知りたくなる、そしてあるあるのイエスタデイ、思春期特有のいけないことをしてしまう話のシェエラザード、ねじまき鳥クロニクルのような夢のような不思議な展開の木野が印象に残った。そして書き下ろしの表題作では、パーシー・フェイス「夏の日の恋」を聴きながら読みました。一角獣は茗荷谷にいます。

    #深い #シュール #ダーク

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    2024年04月25日