藤岡陽子のレビュー一覧
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これが藤岡陽子さんのデビュー作なのか。
主人公瑠美のハニキヌキセナイ生き方に、青春の真っ直ぐさと苦味を感じた。苦味は他でもない自分自身の苦い記憶。自分の考えが正しいと信じて権力に媚びないこと、それが自分らしさだと思っていた時期があったから。
瑠美の親友千夏は、包容力満点の看護師にピッタリの女性だった。屈折した正義感あふれる美女遠野も魅力的だった。二人のお子さんがいる佐伯も。
思わぬ展開で幕を閉じたこの物語。なのに読後感が無念や喪失感、哀しみに沈まないのはなぜだろう。
4人の選んだ道、レールがみんな重ならなくても、それぞれが自分の意志で選んでいったからなのかもしれない。
看護師さんを目指すこの話 -
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主人公の可南子と、深澤の、愚直に頑張る姿に背中を押される気持ち。真っ直ぐに努力していてすごい。
私は自分が100%頑張ってることを認めるのが怖い。本当は100%かもしれないけど、結果が伴わなかった時にどうしようもなく落ち込んじゃうのが嫌だから80%だと思い込むようにしてるのかも、と思う。
でも結果なんて出る方が奇跡みたいなものだし、頑張ってることそれ自体がすごいことだからさ、自分を認めてあげたいなと思った。
終わりのために頑張る、頑張るのは終わりがあるから、ってセリフも沁みたな。
読んでいて背筋が伸びたり、
もっと前向きに頑張りたいと思えるようになる、
とても良作でした。 -
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藤野陽子さんは『満天のゴール』に続き2作目
今回は『海とジイ』
山でも空でもなく、海
おじいさんじゃなく、
おじいちゃんでもなく、ジイ
読み進めるにつれ、このタイトルの意図する所がじわじわと心に響いて来る。
三話の物語には、3人のジイの生き方と、そのジイの想いを受け取る人々の心情模様が描かれている。三者三様の生きざまだが、3つのお話がゆるく繋がっているのもまた趣深い。
「海神ーわだつみ」
不登校に悩むひ孫と漁師のジイのお話
二人の最後の約束が胸に迫る。ジイの大きな懐に加え、息子を想う両親それぞれの心中も巧みに描かれていて、まさかの涙腺崩壊。
おいおい、一話目からこんなで大丈夫か・・・笑 -
Posted by ブクログ
藤岡陽子さんは初読みの作家さんだった。
長年看護師としても働かれているという。
『満天のゴール』
高評価も納得のとても素晴らしい作品だった。
僻地医療の問題を扱った医療小説ながら、死生観に強く訴えかけてくる。
舞台は京都丹後の過疎地域にある海生病院。
夫の不貞で一方的に離婚を要求されている奈緒は、息子の涼介を連れ、行くあて無く実家のある丹後地方に戻る。
一時帰省のつもりが涼介はこの地を気に入り、一方で離婚は現実的なものとなっていく。
母の死後、父 耕平との関係に確執がある奈緒だが、ある日耕平が交通事故に遭ったと連絡があり・・・
前半は奈緒の離婚問題が中心で、夫婦間における奈緒の甘えと弱さ -
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ほんとに、藤岡陽子さんの書く小説は、人生に大切なメッセージをそこここに含んでいる。それも、上っ面じゃなくて、肚のなかから出てきた、経験した人にしか話せないようなこと。
主人公の情けなさに最初辟易しそうになるけれど、大丈夫。母は強いのです。
そうそう、看護師と医師の安易なラブストーリーにならないのも、藤岡さんの小説の好きなところ。仄かに良い感じ、くらいでね。
好きな台詞を覚えておくために一つだけここに記録。
トクさんは涼介くんに会えて嬉しかったんだ。罠を作ってる間、きっとワクワクしてたぞ。人が人と関わり続ける限り、相手を想う気持ちがうまれるんだよ。 -
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3編のお話が、チェーンのように繋がる構成となっている。
『海神⋯⋯わだつみ』
真鍋優生は、小学3年生の時から不登校となって1年が経つ。
ある日、父方の曽祖父が危篤だと知らせがあり、父親に代わって母、妹、そして優生の3人は、瀬戸内海に浮かぶ小島へ見舞いに向かった。
港に出迎えてくれたのは百合子叔母さんだけでなく、傍にいよいよ危ないと伝えられていた真鍋清次ジイが立っていた。
この物語の海は、とても荒れていた。
『夕凪⋯⋯ゆうなぎ』
48歳になる看護師の志木は、月島診療所に勤めて21年が経つ。
月島先生が一人だけの小さな診療所なのだが、ある日突然に1ヶ月後に閉院すると伝えられる。
その先生が、閉