藤岡陽子のレビュー一覧
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売れないお笑い芸人から介護士になった星矢。特別養護老人ホーム「森あかり」で働きはじめ、介護の仕事の現実に直面していく。
綺麗事だけでは済まされない、介護の現実が物語に反映されています。そのため、楽しいだけの話ではありません。現実の重さにしんどくなるような描写もあります。しかし、そこに微かにでも希望を見出せるような光を灯してくれているのが、藤岡陽子さんらしい作品だなと思いました。
看護師として働いていると、特養ほどではありませんが、介護の仕事も担います。その身体的な負担感はよくわかりますし、命を預かるという重大な責任に押しつぶされそうになる時もあります。星矢が、新人の頃の自分と重なって見え、それも合わせて感慨深い小説でした。 -
Posted by ブクログ
本読んで泣いたのは久しぶりな気がする。
やっぱりわたしは藤岡さんの書く文章が好きだなぁと思った。難しくなく、でも繊細で、切ないとかやるせない中にも希望のような温かいものがある。そう感じる。
第一章は遼賀自身の目線、第二章は遼賀の母親・燈子、第三章が遼賀の同級生矢田泉、第四章は弟の恭平、第五章はまた遼賀目線だけど職場の高那の話がクローズアップされたり過去を探しに行くような話。そしてエピローグは…
病と闘うとは、闘う人を支えるとは、をリアルかつ繊細に、でもやさしく温かく教えてもらった気分。
第五章の終わりのほうを読んでいると、タイトルの「オレンジ」がすごく効いてきて、うってなる。
癌や大病って大抵「どうしてあの人が!?」とか「なんで自分なの」と思ってしまうほど意外なタイミングで訪れる。この物語の遼賀だって、特別な何かがあったわけじゃないのに。だからこそ、後悔がないように日々生きなきゃなと思った。立派なことなんてなくていいから、時々振り返りながら、考えながら、大事に日々を重ねたいなと。
解説に、「人は生きてきたようにしか死んでいけない。」とあって、ハッとした。
P319 人は死んでも、誰かの心を震わせることができる。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ誰かを幸せにすると、必ず幸せは自分に返ってきます。そして自分の家族にも幸せは返ってきます。
遼賀は自然に、周りの人に幸せを与えて生きてきました。
遼賀は癌を患って短い人生になったけれども、遼賀に関わるたくさんの人に無条件の幸せを与えてきたから、みんなの心が荒むことなく、誰かを傷つけることなく、優しさや希望を持って、最後まで共に過ごせたはずです。
遼賀は、いつもの風景に咲く優しい花のような存在。普段は忘れちゃってるけど、本当はずっと心の中にいる。そんな人が近くにいたら、、素敵ですね。
どんなに苦しくて辛い状況でも、人を思いやる人生を送っていれば、幸せな最期を迎えられるのだと、希望をもらいました。 -
Posted by ブクログ
45歳。自分の来し方と行く先を
見つめる。
長年続けてきた服飾デザインの仕事が、突然事業閉鎖に。
女子トークから始まり、軽い内容かと思いきや、主人公水樹の人生は幼少期から甘いものではなかった。
幼い頃、貧しい団地生活の中、同じ団地に住む正浩、信也、悠人の3兄弟とは、家族同然に過ごしてきた。
同級生の憲吾、恩師の遠子との再会をきっかけに、27年間の空白を経て、水樹は信也と再会する。信也のことが好きだという気持ちをしっかりと自覚して。
その再会の場面は描かれず、読者にラストは委ねられる。
結果がどうであれ、
自分の過去、周りの人達の過去、
今の自分、将来の自分、これだけしっかり
深く理解できていたら、それだけで十分だと思った。
藤岡陽子さんの経歴が、生きてきた年月が、小説を作り上げているんだな。
45歳。人生の折り返し地点。自分の人生の終わりも見えてくる。水樹の気持ち、手に取るようにわかる。その歳になって初めて自分の親の気持ちや状況が理解できたりする。
心に強く響いたフレーズ
(記憶を頼りにしてるので正確ではない)
1、人は3つの層からできている。
生まれついた性格、環境で形成される性格、努力して身につけた人格。
2.リレーのバトンは気持ちをつなぐんだ。
3.人にはそれぞれの戦い方があるんだ。
小説として、現在から過去に遡り、また現在に戻る構成が良かった。
登場人物、ひとりひとりの輪郭が際立っていて、ドラマのように情景が浮かんだ。
文学部出身、記者、司法事務、タンザニア留学、看護師、と様々な経験に裏打ちられた。無駄のないリアルな筆致が良い。
今、藤岡陽子さんブームであと4冊積んである。楽しみ。大好きな作家さんだ。