国内文学の検索結果
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柚子味噌を買います
個人的な非常時と作家としての日常、男女の関係性の境界、作家と言葉の関係についての物語。 46歳の作家、池田新平の元に叔父から、名古屋で一人暮らしの母親が入院したという電話を受けることから物語は始まります。仕事のスケジュールを考えながら病院へ急ぐ新平は、途中で付き合っている3歳年下の女性作家、北沢美也子に連絡します。物語は、二人の作家の作家としての思考と、母の病気という現実を二重写しのように描いていきます。新平は、冬をテーマにした短編を構想し、美也子はエッセイ集のテーマとタイトルを考えます。作家という職業の特殊性と、誰にも降りかかる可能性のある緊急事態が不思議な緊張と緩和をもって語られます。 【著者】 片岡義男 1939年東京生まれ。文筆家。大学在学中よりライターとして「マンハント」「ミステリマガジン」などの雑誌で活躍。74年「白い波の荒野へ」で小説家としてデビュー。翌年には「スローなブギにしてくれ」で第2回野性時代新人文学賞受賞。小説、評論、エッセイ、翻訳などの執筆活動のほかに写真家としても活躍している。著書に『10セントの意識革命』『彼のオートバイ、彼女の島』『メイン・テーマ』『日本語の外へ』ほか多数。近著に『くわえ煙草とカレーライス』(河出書房新社)、『窓の外を見てください』(講談社)などがある。 -
清水幾太郎さんへの手紙
進歩的文化人として60年安保闘争の指導者であり、その運動を大きく先導する論陣を張り、時には言論活動を超えた闘争の先頭に立って安保反対のリーダーとして活動した社会学者である清水幾太郎。その清水に劇作家の三好十郎が公開質問状の形で1953年『群像』に発表したのが本書である。絶対的な平和なのか反米としての平和なのか、と清水幾太郎およびその向こう側にある平和運動の欺瞞を問うている。 その後、安保闘争を敗北と捉えた清水幾太郎はマルクス主義を批判的に総括し、その立場を「右旋回」させ、のちに核武装による軍事力強化を含んだ戦後批判を唱えるのであった。 -
桜の森の満開の下
昔、鈴鹿峠に山賊がおり、旅人を襲っては金品を奪い、気に入った女がいればすべて自分の妻とした。我が物顔で山を支配する山賊だったが、桜が生い茂る森だけは忌み嫌っていたのだった。そんなある日、旅人を襲い一緒にいた美女を妻として迎えた。その女は山賊に対して物怖じせず、今抱えているすべての妻を殺せ、など様々な命令をするなかで、女は山を降りて都に住みたいと言う。山賊はそれに従いふたりは都に移り住むのだが、女は山賊が殺した生首を並べたり、目玉をくり抜いたりする遊びに興じるのだった。さらに新しい首を要求する女に山賊は参ってしまい、山へ帰ることを決めるのだが……――。 -
泉鏡花 現代語訳集16 卵塔場の天女
【あらすじ】 能役者橘八郎が、久し振りで勤めのため帰郷することとなり、ちょうど京都へ行く用があった私は自然と誘われ、雪国の都を見物しようと、東京から信越線を使って大回りをした。 当地へ着いた晩の九時、すぐに一風呂浴びて、お膳で銚子を一本という、旅では重要なところだが、八郎は私に向かい、…自分を待っていてくれる女があるので、ちょっと顔を見せて来たい…と言う。 八郎がその女、お悦のために、魂に火を点じて、何とか命を消さずに済んだという話を聞いていた私は、ぜひ会ってみたく、彼と連れ立ち、その家である老舗の紅屋へと赴いた。 そこで親しく旧懐を交わしている内、何のきっかけもなかったのに、お悦が、ふと…おひささん…と言い出した。 間もなく知ったが、お久は、生まれてすぐ養女へ遣られた、八郎の実の妹であった― 流派の名を汚すことなく歩んできた能役者としての自負、矜持と激しい求道心、それが元で生じる親類世間との軋轢を、お悦との関係と絡めて織り上げた、一風奇妙な、それでいて爽やかな物語。 【あとがき より】 本書は、明治後期から昭和の初めにかけて活躍した作家、泉鏡花(1873-1939)の作品の現代語訳である。 鏡花の作品世界に満ち溢れる、美妙幽玄な魅力を音に聞き、それを味わってみようと足を踏み入れたものの、特異な文体によって描き出される風景の綺羅のような輝きに目を眩まされ、道半ばで現の世に戻らざるを得なかった人はけっして少なくないだろう。 訳者が目指したのは、現代の一般的読者が、大きな困難を感じることなく、内容を把握しながら読み通すことのできる文章に仕上げることであった… -
泉鏡花 現代語訳集12 照葉狂言
鏡花独特の美しい色彩感覚と、揺れ動く人情とに満ち満ちた、戯曲を思わせる小説の現代語訳。 【あらすじ】 幼くして母を亡くした私の心を慰めてくれたのは、二坪に満たない日陰の庭に大きく育った一本の青楓と、継母のいる向かいの家の、優しい姉上、そしてもう一つ、町の外れの見世物小屋にかかる興行であった。 その入り口には桜の造花を廂に差して、枝々に、「て」「り」「は」と一つひとつ染め抜いた、赤と、白の、たくさんの小提灯を、数え切れないほど吊るして、夕暮にはそれらすべてに灯が入れられた。 毎晩見に行く私の顔を覚えて、ある日、一座の女が、深紅の鹿の子染めのうつくしい座蒲団の上に座らせてくれたが、演目が果てた後、送ってもらって家に帰った私は、我が家の世話をしてくれていた伯母が、警察に捕らえられる光景に遭遇する。 わたしのところへいらっしゃい―と言ってくれる、姉上と女役者の言葉に、私の気持ちが揺れた時、継母の声がしたため、咄嗟に女役者のあたたかい肩掛の下に、小さな私の身体は潜り込んだ。 それから八年、何もかもが変わってしまった故郷へ、その一座の一員として立ち戻った私は、あの青楓のために、懐かしい姉上が不幸な境遇に陥っていることを聞き知ったのであった。 【訳者略歴】 白水 銀雪(しろみ ぎんせつ) 慶應義塾大学大学院博士課程中退(専攻:数学) システムエンジニア・プロジェクトマネージャー・コンサルタントとして、宇宙分野を中心とする科学技術系システム開発に従事 現在、蓼科にて山暮らし