高野秀行のレビュー一覧
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ネタバレ酒を主食とする人々
エチオピアの科学的秘境を旅する
著者:高野秀行
発行:2025年4月7日
本の雑誌社
タイトルは比喩表現ではない。主食のように酒をよく飲む人々、ではなくて、本当に1日3食以上、食事として酒を飲んで生きている人々がエチオピア南部にいる。今回は二つの少数民族が住む村を訪ねるのだが、どちらも小さな子供から老人まで、食事として酒を飲む。ソルガムというイネ科モロコシ属(日本ではコーリャン、モロコシ、カカキビとも)の穀物(世界五大穀物の一つ)を発酵させた酒を飲む。固形物としては、ソルガムで作った団子(みたらし団子ほどの大きさ)と豆を食べるだけ。
早稲田大探検部出身のノンフィクション作家である著者は、生態人類学者・砂野唯の研究書を読んで前々から行きたいと思っていたものの、独特な文化習慣を持つ少数民族の村を個人で訪れるのはハードルが高かった。今回は、TBSの番組から誘われた。ただし、テレビ番組のリポーター役やコーディネーター(スタッフ)としての参加ではなく、作家・高野秀行が訪れるところをカメラが追うという設定でということだった。そのため「では、今から○○に入ります」とかいうリポートしゃべりの類いもない。なお、ガイドなど旅の手配はTBSがしてくれた。
訪れて滞在したのは、南エチオピア州にあるコンソ特別自治区と、その北隣にあるデラシェ特別自治区(ごく最近「ガルドゥラ自治区」に編入)。本命はデラシェだが、その前に〝前菜〟としてコンソ人の村へ。
コンソ人が飲むのは「チャガ」という酒
デラシャ人(地名はデラシェ)は「パルショータ」
どちらもソルガムを発酵させて作るが、製法が違い、前者は3日で出来るのに対し、後者は1月ぐらいかける。
事前の調べでは、
コンソ人は平均で1日2リットル
デラシャ人は5リットルの酒を飲む
チャガの度数は4~5度(ビール並み)、パルショータは最初に出されたものは9~10度ぐらいあるように思えたが、その後出されたものは4~5度の感じ。出す相手や状況によって原酒に加える水の量を変えるようだった。
最初に訪れたコンソ民族の村。朝から晩まで家で酒(チャガ)を飲んでいるのに、外でも飲む。チャガバーでチャガ。同じもの。そして、帰るとまたチャガを家飲みするのだった。
●コンソ人たちが住むマチャロ村へ
ガマイダ家に二泊三日の滞在。
父親の年齢は70歳、母親が55歳だが、どちらも推定であり、本人たちもよく覚えていないという。
子供は22歳の長女、20歳の次女、13歳の三女の3人だと思っていたが、他に男子が3人。独立して別居しているわけではないが、畑の作業小屋に寝て直接畑に行くなどして、あまり家には帰ってこない様子。他の家族も同様。娘たちも父親とはあまり一緒にいたくないような雰囲気。
著者達にとって初めてのチャガタイムは昼食だった。家族はもうとっくに済ませている様子。チャガと一緒に出てきたのは、ソルガムの粉を団子状にこねて、モリンガの葉と一緒に煮込んだ「ダマ」と呼ばれる食べ物。モリンガは、ワサビノキ科で「ワサビノキ」という和名を持つが、アブラナ科のわさびとは無関係。ビタミン、カルシウム、たんぱく質が非常に豊富で、近年は日本でも「スーパーフード」として話題になっている。
案内してくれたチュチュによると、チャガは朝1~2杯、昼1~2杯、夜3~4杯飲むという。1杯で500ミリリットルは優にありそうだから、1日2.5リットル~5リットルの計算になる。
ヒョウタンの上部(細くなったところ)を切った容器に入れ、それを回し飲みする。各人がどれだけ飲んでいるのかよく分からない。
味はすっぱい。ディレクターは「腐ったヨーグルト」の味だと表現。
子供には2~4歳で少しずつ慣れさせていき、12~13歳で主食としてチャガを飲むようになる。それまではマラダというノンアルコールのソルガムドリンクを飲む。
夕食の準備を始めたが、母親は豆を茹でながら2種類の塩を入れる。長女はダマ(ソルガム団子)を作る。
なお、朝はコーヒーの葉で出した〝コーヒー茶〟も飲む。
チュチュにチャガバーに行かないかと誘われた。朝から晩まで家で飲んでいるのに、バーまで行って飲むのか?男たちは外で飲みたがるという。村のあちこちにチャガバーがある。飲んでみると、味が違う。より酸っぱい。そして、一般の酒場のようにみんな酔っ払って盛り上がるという雰囲気でもない。
バーから戻ると、夕食だった。ソルガム団子、小豆、そしてチャガ。また飲むのか!とう思い。日本でいうなら、さんざん家でビールを飲み、ビアガーデンへ行って飲み、帰ってまた家でビール、という感じ。
滞在も終わりに近い頃、チャガバー以外のバーがあることに気づいた。長女のアルマズに案内された飲食店には、蜂蜜酒とアラーケという蒸留酒があった。飲んだ感じは、度数が40度ぐらいありそう。客は全員が男性で、アルマズもアラーケは飲まないという。チャガバーとこのバーは、完全に別種のバー。チャガを飲んでいる時にはあれだけ穏やかで礼儀正し人たちが、「一杯おごれ」「俺にも」と騒ぎ出した。
●デラシャ人の村へ
デラシャ人の住むデラシェ自治区へ。
酒を主食とする人たちの本命だが、グローバリゼーションが進み、パルショータではなくチャガを飲む人が増えたという情報などもあり、不安を抱えての移動。自分たちはツーリストではない、普通のデラシャの人たちの生活が見たいと強くリクエストしておいた。それがとんでもない事態を招く。
連れられて行ったのは、ホルテ村のクンバラ家だった。
通訳と称する男性がいて(通訳1)、その友達だという男性は通訳その2。しかし、どちらもあまり英語が話せない。通訳1の父だという男と、その妻がいるが、家にいるその他の人たちは、どういう関係なのかよく分からない。親族でもなさそう。母親はなにか不機嫌。
水はここでも貴重だが、水源までくみにいくのに、女たちが重い土器を背負っていく。ついていこうとすると、止められる。父、母、息子の名前が違う。ニブレットという「できる長女」っぽい人がいるが、孫でここから遠く離れた村に住んでいる、警察官をしているとも言う。もしかして監視している?
パルショータもヒョウタンに入り、朝、昼、午後、晩に1~2杯飲むから、1日に4杯、多いときは6杯飲むと、ここへ連れてきてくれた町役場のアナトフが説明していた。ヒョウタンは1リットルぐらいありあそう。最初飲んだ時は、8~9%ぐらいアルコール度数がありそうだった。
ソルガム団子はコンソのソルガム団子「ダマ」にそっくりだったが、バルバレというタレ(唐辛子と生姜とニンニクを混ぜたもの)があり、これをつけると旨い。
水くみ場に行ってやっと分かった。他の人々はみんな土器ではなくプラスティック製品で水を運んでいる。まんまとやられた。著者達は民俗資料館に住まわされていたのだった。実はこの村はもっと近代的だった。自分たちがいる敷地内だけ19世紀以前のアフリカであり、日光江戸村みたいなものだった。デラシャ人の普通の生活が見たいというリクエストに対し、民俗資料館を住まいに変え、芝居をする人たちを集めて演じさせていたのだった(本物の役者かどうかは書かれていない)。
ニブレットが住む、アルガイ村へ移動することになった。タファセ家。ニブレットはそこの三女(22歳)だった。父は58歳、母は55歳。長男38歳と妻33歳、そしてその子供たちは同居しているが、長男の弟たちや結婚している妹たちは別居。ニブレットは同居だった。
透明な焼酎「アラーケ」は、客人向けで家の者は飲まない。パルシュータは食事でアラーケは酒という扱い?
こちらでは、小学校低学年ぐらいまで「カララ」というノンアルを飲んでいる。ソルガム粉からつくる甘酒的なもの、度数は1~2%。ただ、5歳の子(ティアン、長男の子)がおいしそうにヒョウタンから酒(パルシュータ?)をごくごくと飲んではいる。
ずっと酒を主食にしていると、固形物を口にしたくてしょうがなくなる。団子だけではいけない。しかし、そこはじっと我慢。通訳のヨハネスにランチに誘われ、ニブレットとともに飲食店に入った。彼らは平気で肉の炒め物とビール。しかし、著者は我慢、ビールだけにしておいた。一口だけつまんだ炒め物がどれだけ美味しかったか!ニブレットは、家に戻るとパルシュータを口にする。パルシュータを飲まないと食事した感じがしない、と驚かせた。
長男のダンナベは、朝、日が昇ってから夜に日が沈むまで、息子と一緒にずっとソルガムとトウモロコシの畑にいるという。荷物はポリタンク一つと、水が入った2リットルのペットボトル2本、そしてヒョウタンの器だけ。ヒョウタンにパルシュータを注ぎ、水で薄めて飲む。朝から晩まで、パルシュータだけ飲んでいるという。他にはなにも食事を用意していない。
著者はコンソ入りしてから通算して約10日となった時、体調がすばらしくいいと感じた。ここ10年でいちばんと言っていいほど調子がいい。
デラシャ地区で最も大きな病院を訪ね、肝臓や高血圧、糖尿病といった多飲酒の影響について聞いた。院長はアルコールが与えると一般に言われている医学的影響はもちろん知った上で、デラシャ人の健康状態は他よりも良好です、と言った。何も問題ありません、と。著者は、デラシャ人は背が高くて肉厚な人々ばかりだと感じていた。院長は「デラシャの人たちは周辺の民族より体格がいい、筋肉量も多い」と言う。
デラシャの飲酒には何も問題はない、と言い切る博士号を持つ院長と専門医の2人。むしろ、最近になって、グローバリゼーションにより、肉や脂を撮る生活になってから悪化しているという。
もちろん、院長本人もパルショータを飲んでいる、「子供の頃から」とのこと。「生まれたときからですよ」と笑う。
さらに驚いたことに、入院患者の全員がパラショータを病室で飲み、すぐにでも生まれそうなお腹をした妊婦までも飲んでいる。へその緒を伝って胎児にいくのでは?これは生まれる前から飲んでいるのだ、と著者。
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(読書メモ)
パルショータ:ソルガムから作る濁り酒。エチオピア南部のデラシャという民族は栄養の大部分をこの酒から得ている。
ソルガム:イネ科モロコシ属。カカキビ、モロコシ、コーリャンとも。稲、小麦、大麦、トウモロコシと並ぶ世界五大穀物。
テフ(穀物)で作ったインジェラ。エチオピア料理。一般的な食べ物。
コンソ人、デラシャ人:コンソ人は平均で1日2リットル、デラシャ人は5リットルの酒を飲む
コンソの酒は「チャガ」:ソルガムから作るが製法はパルショータと異なる、度数は4~5度
デラシャの酒は「パルショータ」
<まずはコンソへ>
コンソのガイドはチュチュという人物
この人物の出身地でもあるマチャロ村に入る
*高野秀行は世界遺産とか絶景とかいったものに一切興味がない(83P)
(ガマイダ家)
ガマイダ:父、70歳(推定)
グレタ:母、55歳(推定)
アルマズ:長女、22歳
ガサワ:次女、20歳
ネタネット:三女、13歳
他に兄弟が計3人(何処かで寝て直接畑へ行く)
コンソでは子供は2~4歳で少しずつ慣れさせていき、12、3歳で主食としてチャガを飲むようになる。それまではマラダというノンアルコールのソルガムドリンクを飲む
<デラシャ人エリアへ>
民族名はデラシャ、土地はデラシェという。
「デラシェ特別自治区」(ごく最近「ガルドゥラ自治区」に編入)はコンソ自治区の北隣
ギドレの町(村が大きくなった程度の町)へ。町役場に行く。
滞在するところは、ホルテ村。
アナトフ:ギドレ町役場の職員、ホテルや滞在家庭を手配してくれた。
パルショータもヒョウタンに入り、朝、昼、午後、晩に1~2杯飲むから、1日に4杯、多いときは6杯飲むとアナトフの説明。ヒョウタンは1リットルぐらいありあそう。
最初飲んだ時は、8~9%ぐらいアルコール度数がありそう。
(クンバラ家) ホルテ村
ニブレット:女性、賢い、「できる長女」っぽい雰囲気、警察官だという。この家の夫婦の孫だと言うが後にそれも嘘だと判明、アルガイ村に住む
ティグレ・ティナイダ:男性、(英語)通訳1号、この家の息子というが嘘だった
トルネット:男性、(英語)通訳2号、ティグレの友達で別の村の出身と紹介されるが実は娘のイトコだった(娘は裏に住んでいる)
クンバラ・リゼ:ティグレの父とのこと、60代後半~70歳前後?
母:同じぐらいの年齢、実際にはこの父母だけこの家の人だった
キト・キタンボ:女性、大阪のおばちゃん的、著者より20キロぐらい重そう
パリトゥ:女性、小柄でせっせと立ち働く
アディス:30代男性、どこの誰だか不明、親族ではなさそう
ソルガム団子はコンソのソルガム団子「ダマ」にそっくりだったが、バルバレというタレ(唐辛子と生姜とニンニクを混ぜたもの)があり、これをつけると旨い。
土器で水を運ぶなんてと思っていたら、水場では他の人々はみんなプラスティック製品で水を運んでいる。まんまとやられた。著者達は民俗資料館に住まわされていた。実はもっと近代的だった。自分たちがいる敷地内だけ19世紀以前のアフリカであり、日光江戸村みたいなものだった。
(タファセ家) アルガイ村
タファセ・デファルシャ:父、58歳
ソイガ・ダムテ:母、55歳
ダンナベ:長男、38歳
ケトナ:長男の妻、33歳
・ベテルヘム:長男夫妻の長男16歳
・マゼル:次子14歳
・マハレット:次々子12歳
・ティアン:娘5歳 ほか3人(計7人)
アシェブル:次男、35歳、子供3人、教師、別居
タレケン:三男、30歳、独身、軍隊、別居
アヤリン:四男、29歳、子供3人、農業、別居
ゼブシ:長女、28歳、既婚、子供2人、別居
シャワレム:次女、25歳、既婚、子供2人、別居
ニブレット:三女、22歳
ムダヤネシ:四女、15歳
ウレタネシ:五女、13歳
プズナシ・プルブラ:父タファセのイトコ、女性、50歳過ぎ、未婚
透明な焼酎「アラーケ」:客人向けで家の者は飲まない。パルシュータは食事でアラーケは酒という扱い?
小学校低学年ぐらいまで「カララ」というノンアルを飲んでいる。ソルガム粉からつくる甘酒的なもの、度数は1~2%。
5歳の子(ティアン)がおいしそうにヒョウタンから酒(パルシュータ?)をごくごくと飲む。
パルショータ:ソルガムから作る濁り酒。エチオピア南部のデラシャという民族は栄養の大部分をこの酒から得ている。
ソルガム:イネ科モロコシ属。カカキビ、モロコシ、コーリャンとも。稲、小麦、大麦、トウモロコシと並ぶ世界五大穀物。
テフ(穀物)で作ったインジェラ。エチオピア料理。
コンソ人、デラシャ人:コンソ人は平均で1日2リットル、デラシャ人は5リットルの酒を飲む
コンソの酒は「チャガ」:ソルガムから作るが製法はパルショータと異なる、度数は4~5度
デラシャの酒は「パルショータ」 -
世界の納豆をめぐる探検
- カート
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試し読み
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外国人から見ると、見慣れた東京の街が異国の「トーキョー」だった。辺境を旅する作家•高野秀行さんがこれまで出会った外国人との邂逅を綴ったエッセイ。
フランス語を教えてくれたシルヴィ先生は『語学の天才まで1億光年』に、盲目のスーダン人マフディさんは『移民の宴』にも登場していた(あちらではアブディンさん)。マフディさんの有能ぶりには舌を巻く。目が見えないハンデの中で、異国の地で暮らす苦労は想像を絶するけど、それを感じさせない明るく陽気なキャラクターで微笑ましい。
「どうして日本人はこんなに英語ができないのか」
「日本人はわかりもしないのにイエスと言う」
先週まで北米出張に出かけていた私には刺さる。
また中国人が日本企業に見切りをつけて外資系企業に転職する「日本離れ」のエピソードも印象に残った。日本も外国人から“選ばれる”国にならないと、豊かにならないのではなかろうか。そんなことを思った。 -
世界の納豆をめぐる探検
- カート
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試し読み
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ミャンマーの辺境•ワ州に世界で初めて長期滞在した経験を持つ辺境ノンフィクション作家の高野秀行さん。その経験を買われたのか、今回は冒険小説作家の船戸与一さんの付き添いとして“合法的に”ミャンマーを訪問。二人は早大探検部の先輩後輩という関係だったのは驚き。
高野さんらしくユーモラスなエンタメ系ノンフィクションに仕上がっている。ミャンマーを江戸時代の日本に見立て、国軍と情報部を徳川幕府と柳生一族と対比して描いているところは、わかりやすくて面白い。アウンサンスーチーは千姫かよ(笑)
こういった例えは後に『謎の独立国家ソマリランド』や『イラク水滸伝』でも用いられ、いまや高野さん流の表現手法として定着している。
また、奔放で豪快な先輩•船戸与一を若干ディスりながらイジっているのも笑える。取材メモなど一切とらずに、「タイトルさえ閃いたら小説書ける」と宣う船戸さんもやはり大作家なんだなぁと。ホームズが好きという高野さんの意外な趣向も知れてよかった。多様な民族と宗教、そして読書好きな人が多いという意外な一面もあるミャンマー。歴史や国民性など勉強になった。
本書と合わせて読みたい作品達↓
『ビルマ•アヘン王国潜入記』高野秀行
『西南シルクロードは密林に消える』高野秀行
『河畔に標なく』船戸与一
『マヌサーリー』ミンテインカ -
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ネタバレ未来国家ブータン
これで4冊目のブータン本。ちょっと一端のブータンファンの竹蔵であります。
国王のフェローとしてブータンの公務員を務めた令嬢、御手洗珠子さんの「ブータン、これでいいのだ」がとても勉強になる本だったので、世界の珍獣ハンターの高野氏のこの本もとても期待して読みました。
高野氏は優れたエンターテイメント小説家でもありすが、世界の不思議な生き物を追いかける探検家でもありまして、今回は生物多様性の調査を隠れ蓑にした雪男(イエイティ)の探索のルポであります。
ほぼ全編にわたって、ブータンの辺鄙な村のルポルタージュですが、表題にもあるように、氏のブータンに対しての考察(=未来国家)が語られます。
御手洗さんの本が、コンサルタントらしく何故ブータンの統治が優れているか?ブータンにはどんな問題があるのか?ということがわかる本でしたが、高野氏の本書は、自らの体験を元に、日本の平行世界としてあるかもしれないブータンという世界を未来国家と表現していてとても面白い視点だと思いました。
近代史を見ていると、どこの発展途上国も、近代化→富国強兵→経済発展→地域社会・家族の崩壊ととても幸せとは言えない経緯をたどるのに、ブータンは周回遅れのフロントランナーと言われるように別の道を歩んで来ているのか?という疑問に対して、エリート層の聡明さによる「選択肢の狭い導き」があるのでは?と看過しています。とても鋭い指摘だと思います。自由がありすぎることによる悩み、情報がありすぎることによる迷い。
改めて、幸せとは何か?という問いは深くて遠いものがあるなあと思った竹蔵でした。
竹蔵 -
Posted by ブクログ
ネタバレ今までブータンという国がどんな所なのか、殆ど知識がなかったので勉強になった。今はこの本が書かれた頃からだいぶ年月が経っているので、どんな風になっているのか興味がある。
最終章で、殆どの国は欧米の影響を受け、近代化に邁進し、自由、人権、民主主義が推進される。個人の自由は広がるが格差は広がり、治安が悪くなる。環境が大事だ、伝統文化が大切だという頃にはそれは破壊されている…
ブータンはこの道を辿らず、先進国の良い所だけを取り入れて、独自の国を作っている、という考察が印象的だった。ブータンだっていい事ばかりじゃないだろうけど、今の日本を見ていると、ブータンの国のあり方をもう少し参考にしたらいいんじゃないかと思ってしまう。
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Posted by ブクログ
ノンフィクションを書く二人の作家の対談本。ノンフィクション作家の苦労や「あるある」が語られる。
ノンフィクションとニュース、ジャーナリズムの類似点、相違点が語られるところがとても印象に残った。
どちらも事象を観察して出来るだけありのまま伝えるが、やはりそこにはストーリーや所謂「盛り場」が必要で、嘘にならないように、一方で面白くなるように書くことが求められる。綱渡りのような危うさがある。
ノンフィクションはあることが起きるまでの変化を描くことが出来るが、ニュースは起きないと描けない(まだ起きていないことはニュースとしての価値がない)
物書きのマネタイズについて触れられていたり、色んな悲哀を感じられる本。