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Posted by ブクログ
三畳一間と言わないまでも、昔ながらの下宿の様子がわかる自伝的作品として、藤子不二雄A『まんが道』や吾妻ひでお『地を這う魚』などがあげられるが、本書にはこれらの作品とはまた違った趣きがありむちゃくちゃに楽しませてもらった。
なにせ登場人物達が面白い。パンの耳を貰ってきて毎朝食べるほど異常なほどケチな上、寝返りをうつ音にすら苦情をいれる「守銭奴」、弁護士目指して熱量MAXで他人に世話を焼いて迷惑をかけまくる「ケンゾウさん」、また探検部関係者では宇宙旅行を本気で提唱し始めたり、チョウセンアサガオをどこかから掻っ払ってきた先輩の「加藤さん」、そして盟友のイシカワやキタといった多種多様な奇人変人たちが集まる野々村荘とはなんなのか、そしてそこに溶け込む高野秀行とはどれほどまでにぶっ飛んでいる(良い意味で)のか、と考えているうちにどんどん次のページをめくってしまう。まさに読む手を止められなくなってしまう。
所々常識的に問題があるのでは?といった場面もあるが、そんな些細なことを気にしていてはこの本を楽しめない。限りなく自由な人たちを自由な気持ちで眺めてみれば良い。気づけば腹を抱えて笑っている自分自身に気づくことであろう。日々の疲れやストレスを吹っ飛ばすのに最適な「読む抗鬱剤」、それが『ワセダ三畳青春記』である。
Posted by ブクログ
めちゃくちゃ面白い。
高野秀行が日本の生活について書くということは、彼の実力が発揮されるアジア・アフリカの辺境エリアとは真逆のステージを書くことになるため、地味な作品となることを予想したところ、それは大きな間違いであった。
浮世離れした高野秀行が居る場所は全て辺境と化すのであり、そこがゴールデントライアングルであろうとソマリランドであろうと日本であろうとも彼の周りでは訳の分からない面白いことが起こり続けるのだ。それどころか生活の話となると内容の濃さが段違いに上がり、高野作品の中でも最高傑作と呼んで差し支えない面白さだ。
私が特に好きなのは「プールへ行こう!」で、区民大会に出て名前を呼ばれるくだりはゲラゲラ笑って読んだ。
終盤にかけてノワール映画を見ているかのようなノスタルジーに襲われ、最後には泣いていた。高野作品で泣かされたのは初めてだ。
Posted by ブクログ
電車で読んだのが間違いだった。
めちゃオモロイ。いや、どの高野本も基本的にはめちゃオモロイ。
だが今回は親近感の湧いてきやすい日常に焦点を当てているので、より面白おかしさが伝わってくる。笑いが次々と込み上げてきて、ついには目まで達してしまった。マスクを着用していたものの、「それ、そんなに面白いのか?」と周囲から勘ぐられていたに違いない。
面白ければ面白いほど、読み手は話に夢中になってしまう。そう、電車で読んでしまうと乗り過ごしかねない。自分の場合目的地が終点だったが、着いたことにも気づかず居座り続けてしまった…。
学生時代から11年間住まわれていた「野々村荘」での思い出を綴ったエッセイ。(あとがきで知ったが、「野々村荘」は仮名らしい)
居住スペースは何と三畳間という手狭さだが、高野氏が所属されていた早大探検部(他の著書でもお馴染み!)に程近く、家賃も1万2000円と超良心的!(てかそんな好物件聞いたことがない)
他の探検部員も住んでいたため、半ば第二の探検部活動拠点と化していた。
チョウセンアサガオの種を食べ続け、高野氏が「ノイローゼ気味のチンパンジー」に化けた話等、辺境とはまた違う部活動の記録も楽しめる。部やサークルに必ず一人はいる「関わってはいけない先輩」の高野氏だったが、何だかんだで年齢的にはまだ学生(ご卒業後は学生上がり)。たとえ一般的な学生みたいにパッとしなくても(失礼…)、これまた他では味わえない青春特有の輝かしさがあった。
あとどのエピソードにも共通して言えることは、オチが上手い!
「私は首をかしげた。野々村荘お得意の『謎の現象』だ。だがここの現象は私のような凡人には想像しがたい謎を秘めている」(P 167)
「私のような凡人…」というツッコミポイントはさておき、野々村荘の住人は高野氏に引けを取らない変わり者ぞろいだ。
立地的・価格的に変わり種なアパートだから引き寄せやすいのか…?それもあるだろうけど、自分は大家のおばちゃんパワーによるものではないかと睨んでいる。
オープンで寛容、細かいことは気にしない性格。住人同士のトラブルにも仲裁に入り、大体解決へと導くキレ者でもある。会話もいちいちオモロイ。何十年も大家でありながら、築年数や部屋数を把握していないところは何だか好感が持てた。
今ドキこんなにチャーミングなおばちゃんいる?住人たちにとっての「暗闇の提灯」的存在なのも頷けるし、高野氏が11年間ほぼストレスレスで過ごせたのも、彼女の功績が大きいんじゃないかな。
笑いが中心だったけど、終盤はちょっぴりセンチメンタル。ある事情から野々村荘との訣別を果たすからだ。
これまでの野々村荘をめぐるドタバタ劇と毛色が違いすぎて、正直アウェーだった。でも今まで優先してきた野々村荘ライフをふっと手放すことで、ようやく彼も青春の名残から巣立っていったんだな…と、最後はおばちゃん目線になっていた。
電車ではしてやられたが笑、高野本をまた1冊コンプリートした喜びと荘の活気(?)が、自分の中で勢いよく渦巻いている。
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