Posted by ブクログ
2013年09月11日
なぜか感想をアップしていなかったことに気づき、この機会に再読。高野さん、飲み過ぎでしょ!と突っ込みつつ、やっぱり笑ってしまう。ほんと、酒飲みってこうだよなあ。お酒のため、とりわけうまいお酒のためなら、いそいそと大抵のことは面倒に思わない。他のことにはズボラでも。
表向き飲酒が禁じられているイスラム...続きを読むの国々だが、人々はやっぱりお酒を飲んでいる。高野さんはなんとか地元の人と一緒にワイワイやりたくて、ずいぶん怪しげなところにも足を踏み入れていく。読者も一緒にその場にお邪魔しているような臨場感たっぷりのエピソードを読んでいくうちに、イスラム社会の姿がぼんやり見えてくる。そこが最大の読みどころだろう。
世界のどこでも人々は、その時々で移り変わっていく政治と宗教のあり方に翻弄されないではいられないが、それでも古くから根付いてきたその土地、その民族の文化はしぶとく息づいている。本書を読むとそのことが実感できる。
たいそう面白いと思ったのは、バングラデシュのガイドで仏教徒のバイさんが「仏教では酒を厳しく禁じているのに、どうして私たちは酒を造って飲んでいるのだろう?」とつぶやくくだり。言われてみれば実にそうで、飲酒は五戒の一つ、殺人と並ぶ大罪なのだった。まったく不思議なことで、高野さんも「仏教圏最大の謎」としつつ、次のように書いている。
「イスラム圏には裏表があるが、仏教圏には裏表では済まない曖昧模糊とした複雑な世界が広がっているのであった」
この本は写真がたくさん収められていて、それがとても美しく、味わい深い。表紙に使われている写真も紺色が本当にきれいだ。いい本だなあ。