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水牛と共に生きる被差別民がもつ“循環共生”の叡智とは?
権力に抗うアウトローや迫害されたマイノリティが逃げ込む
謎の巨大湿地帯〈アフワール〉
―――そこは馬もラクダも戦車も使えず、巨大な軍勢は入れず、境界線もなく、迷路のように水路が入り組み、方角すらわからない地。
中国四大奇書『水滸伝』は、悪政がはびこる宋代に町を追われた豪傑たちが湿地帯に集結し政府軍と戦う物語だが、世界史上には、このようなレジスタンス的な、あるいはアナーキー的な湿地帯がいくつも存在する。
ベトナム戦争時のメコンデルタ、イタリアのベニス、ルーマニアのドナウデルタ……イラクの湿地帯はその中でも最古にして、“現代最後のカオス”だ。
・謎の古代宗教を信奉する“絶対平和主義”のマンダ教徒たち
・フセイン軍に激しく抵抗した「湿地の王」、コミュニストの戦い
・水牛と共に生きる被差別民マアダンの「持続可能な」環境保全の叡智
・妻が二人いる訳とは?衝撃の民族誌的奇習「ゲッサ・ブ・ゲッサ」
・“くさや汁”のようなアフワールのソウルフード「マスムータ」
・イスラム文化を逸脱した自由奔放なマーシュアラブ布をめぐる謎……etc.
想像をはるかに超えた“混沌と迷走”の旅が、今ここに始まる――
中東情勢の裏側と第一級の民族誌的記録が凝縮された
圧巻のノンフィクション大作、ついに誕生!
※アプリの閲覧環境は最新バージョンのものです。
Posted by ブクログ
高野さんの本を何冊か読んだ共通点は言語を学び文化を学びその土地に順応して文化、生活のレクチャーを受けるので読んでいくうちに現地の皆さんのキャラクターが浮き彫りになって読み終わる頃には名残惜しくなっている事。
冒頭にもあるけどイラクと聞いて「戦争、紛争、」「ヤバめのイスラム教」みたいなイメージしかなかったけど読んで思ったのはやばいのは政治(または宗教絡みの政治)でそこで過ごす人々は活気があってチャーミング、文化もあるが懐に入れば情が厚く手助けもしてくれる。
水路が複雑で地図も書けない湿地帯は古くから社会からあぶれたならず者達が逃げ込む場所にもなっている。中国の水滸伝になぞらえているけど水滸伝の知識1mmもなく読んでおけばもっと楽しめたかなと(目に見える水滸伝要素は地名や人名をなぞらえる程度だけど空気感とか)
フィナーレは2回目の渡航で製作した伝統的な舟、タラーデを水に浮かべ湿地帯を進む。
湿地帯を舟で旅したいと始まった探検だが4年越しに紆余曲折あってやっと叶っており、しかも一緒にイラクで出会った仲間達もいて漠然と高野さんの人生は美しくて素晴らしいなと思った。映画みたい。
湿地帯の水量は年々減り続け、若者は民兵になり水牛を飼うものも減り、シュメールからの伝統的な生活は失われつつあるらしい。人間の生活は大河の様で連綿と流れて行く中で支流が混じり合い上流の水のままではいられないけど湿地帯に豊かな文化があった事がこの本で記録に残ってよかった。
頻繁に出てきたブリコラージュ(ありあわせの道具や材料を寄せ集めて、自分の手で何かを作ったり修繕したりする行為)という言葉。
元々の湿地民、アウトロー、戦争の敗者、ゲリラなど色々な人々が集まった湿地帯のことそのものだし、今回切り取った生活、文化もこれから変化してまた新しい文化になりブリコラージュされていくんだろうなと思った。
Posted by ブクログ
高野氏の今度の冒険はイラクの湿地帯。コロナ禍を挟んで3度に亘るイラクの旅は、船作りの船頭探しから始まる。出会う人々を、宋江など水滸伝の登場人物に当てはめることで、水滸伝を読んでいる読者には各人のキャラがわかりやすく沁みてくる。
今回も高野氏が驚異的な語学力を屈指し、イラク訛りのアラビア語を身につけ、さらには歌をいくつもマスターし、現地人化していく様子が凄い。さらには、「脳内タイムマシン」と称し、紀元前の時代の湿地帯の姿を鮮やかに想像とともに描写する。世界史で「チグリス川とユーフラテス川で文明は産まれた」ということは習うが、まさにその時代の出来事を、あたかも見てきたかのように書いていて感嘆するのみ。
実際に船大工に作ってもらった船での旅は叶わない。道路と自動車が発達した現代のイラクにおいては、そもそも船で旅をする者などおらず、ましてや外国人がうろついていると不審者として見られてしまうから。とはいえ、せっかく作った船を民族衣装を着て操船して「映える」写真(表紙の写真)を撮って彼の冒険は終わる。
Posted by ブクログ
イラク南東部に広がる湿地帯、アフワール。
シュメール帝国の時代から人が住み、現代においてもマイノリティの人々が逃げ込み暮らしているというちゃんとした地図もない、所謂「よくわからない場所」。
高野秀行はここに、船を作って湿地帯を渡るという夢を叶えるためにやってきた。
通訳すらいない状態で。
考えるより動く。行き当たりばったり。
でもそのぶっつけ本番の行動力が、旅を面白くしている。
こういう人が書く本だからこそ、読んでいてこちらまで冒険している気分になる。
四国地方ほどの広さを持つ大湿地帯は、中央政府の力が及ばない。
政治に左右されない場所だからこそ、シュメール文化がそのまま残っている部分もある。
ここは当然イスラム文化圏でもあるんだけど、本文によると、結構ゆるいらしい。笑
何千年もの文化が混ざり合いながら、独自のペースで生きている人たちに思いを馳せてみる。
Posted by ブクログ
ふと本屋で気になって積読していたのをオーディブルがあるのに気がつき、旅行中車で長旅のお供にオーディブルで聞き出す
高野さんのフィルターで面白イベント満載で書いてるが実際はイラク旅絶対大変だろうこれ
聞いた事もないイラクの湿地帯にすげえ興味湧いたけど行けねえんだろう多分俺の人生では
すごすぎる高野さん
語学力もさることながらコミュ力が桁外れ
現地人にあんなズケズケ言えねえし持ちネタも凄いし尊敬しかない
あと蓄積された前提知識がすごい
何気ない現象の見方が鋭い
ものっ凄いわかりやすいしめっちゃ勉強にもなった
全然アホじゃないのにアホなのが凄い好き
挿し絵や写真関係がオーディブルではわからなかったので絶対に本でも読みます
尊敬です
Posted by ブクログ
本友から随分前に面白いと聞いていた。でも実物は凄く分厚い(500頁弱)し、しかもイラク。ターバンの人達?過激派イスラムの国?位の認識のどうしたってテリトリー外なのだが、高野さんのXを見てこの人の書く本是非読んでみたいと思ったのがきっかけ。
傑作と言って間違いないかと。
読んでるそばから面白くそのエネルギーは最後まで続く。私の知らないイラクのお話が超展開されていた。
探検、探究譚という感じだろうか。
チグリス川とユーフラテス川の交わる大湿原地帯(アフワール)をタラーデ(三日月型の梃子ぎ船)で巡りたい
という最終ゴールに向かって本当に紆余曲折の記録だ。
面白いのは、旅の前の準備からだ。
そして現地の生活に食い込みまくっている。
現地の国民性だろうが常に振り回されて行き当たりばったりになることも多い、というかほとんどがそうだったのだ。
そしてメソポタミア文明やシュメール人など歴史考察も忘れない。
途中からアザールという謎の布の出自を追う展開があるのだがこの辺りは学会などでも発表出来るのではと個人的には思う(あれ高野さん考古学者だった?的な)
イラクの人達、というよりアフワールの人達の懐深くに食い込んでありのままの生活を記録したドキュメンタリーを見ている様だった。
高野さんの同行者であり探検家の山田さんが描く挿し絵がまたたまらない。
写真も多く優しい文体表記で非常に読みやすいが、読む人を選ぶかもしれない。本を読み慣れていたり、冒険譚を好む人には是非読んで頂きたい。今年読んだ本の中でも最上位ランキングの本。
Posted by ブクログ
ずっと読みたかった本をやっと読めた。
当たり前だけど、ニュースなどで得ていたイラクの情報が自分の中で偏っていたなぁと本書を読んで気付く。
現地に赴き、市井の人達と交流し、長く滞在しないと本当の姿は見えてこないなと改めて感じた。
何より高野さんの行動力や熱意、コミュ力を本当に尊敬する。
そんな高野さんが心折れそうな時に支えになった山田隊長も素晴らしいし、「タラーデに乗ってアフワールを旅したい」という目的を支えるイラクの人達の温かさに感動するし、そんな人たちに対する高野さんの気持ちが文章にこれでもかと表れていて、読んでるだけで旅に参加しているような気がした。
読み終えたあと、表紙の写真が感慨深い。
高野さんも書いているように、コロナ禍という最大のピンチがあったからこそ、アザールと出会い、紆余曲折ありながらも結果的に素晴らしい体験になったのがこの本をより素晴らしいものにしたと思う。
読後YouTubeでシンガーソング船頭のアブー・ハイダルの歌を聴いてから、その素晴らしさに感動して何度も何度も聴いている。
ジャーシム宋江もハイダル君も白くまマーヘルもプーチンもイラクの市井の人みんなが末永く幸せでありますように。
そして、アフワールがいつまで経ってもアフワールで有り続けますように。
Posted by ブクログ
50代になってもやんちゃな冒険家である高野氏が今回向かったのは、サダムフセインやISなどイスラム過激派の印象が付きまとう、日本人の大半が危険でしかないと思っているであろうイラクである。ただ忘れてはならないのが、この国が原初の文明を生み出した場所であるということだ。
彼はこの旅で、世界でも有数の危険地帯でありながら、世界最古の歴史を持つ国、そして砂漠の印象の強い中東の一国の中の湿地帯(!?)で暮らす人々の謎を解き明かすとのことで、旅の目的からして様々な情報がぶつかり合い混沌に満ちている。案の定旅の道程も複雑かつ困難が溢れ返るもので、綴られる文章も序盤から中盤にかけてカオスそのものであった。
本文に書かれている通り、そもそもイラクという国が大変複雑な国だ。シュメール人によるウル・ウルク・ラガシュといった世界史で誰もが覚えるであろう都市国家による支配から始まり、アッカドやバビロニア、アッシリアといったセム語圏の民族に統治が移り、続いてペルシア時代、イスラム教徒の侵攻、モンゴル遊牧民による破壊を経てオスマン帝国支配下に入る。ササン朝あたりまで農業面で重要視されていたイラク(特に南部)であったが、イスラムとモンゴルの侵攻によってその地盤を破壊され、オスマン帝国時代からは、中心地から地理的に遠かったために辺境として扱われ、支配が行き届いていなかったという。
もともとシュメールの都市国家からあぶれたアウトサイダーが割拠していた南部湿地帯は、本書で語られるマンダ教徒やユダヤ人、支配してきた王朝から爪弾きされた人々や、カルマト派のような各地で略奪を働く荒くれ者たちといった様々な人々が、理由は様々あれど逃げ込んできて定住してきた場所だった。オスマン帝国時代に辺境として定着したことによってその混沌としたごた混ぜ具合は更に加速し、今度はイギリス統治に反抗する人々や、共産党員まで逃げ込んでくるといった、もはや悪も正義もなく、ただ「従いたくない!」という反骨精神のみを共有した人々が集まってくるようになった。そんなアウトサイダーたちが民族や宗教の垣根を超えて身を寄せ合って生きてきた場所、それがイラク南部の湿地帯【アフワール】なのだ。
こう整理する目的で書いていてもわけがわからなくなりそうになるが、本書の序盤から中盤にかけてはイラクの成り立ちの複雑さや氏族の多様さの解説を丁寧にしてくれている分その情報量は脳みそを押し潰すかのようで、それに現地の治安問題や氏族間のやりとり、公安のマークなど、次から次へと襲いかかる困難な問題の対処や説明が加わってるためにかなり読みづらい。さらに高野氏とシェイフ山田二人が異国人であるために常に多くの人々から監視されている状態で不自由しており、いつもの軽快なユーモアもあまり見られず文章も重苦しいものになっている。毎年水量やルートの変わる湿地帯の作り出す変幻自在の迷路に迷い込んでいるかのようにその文章は混迷を極めている。
極め付けは2度の下見を経て本格的な旅に乗り出そうとしたところでのコロナパンデミックだ。これはもう読んでいるこちらですら、「あーもう終わったな。」と思ってしまうほどに絶望的なもので、高野氏とシェイフ山田の心境は本当に耐え難いほど辛いものだったと思う。ここで正直本を閉じようかな、と思ってしまったくらいだ。
しかしここから先は、カタルシスしか待っていなかったのである。
ソマリランドを超える程の情報量による読みづらさはあるが、終盤は開幕がウソだったかのように気持ちよく楽しく興奮しながら読める。もし序盤で諦めてしまった人がいるとしたら、ぜひもう一度トライしてほしい。3回目の現地入りからは、情報の渦が一気に整理されて収束し、いつもの高野氏の熱気の漲る冒険が戻ってくる。これまでよりも強烈なものとして。読後感はさながらサムペキンパーの映画を見終わったあとのようだ。
分厚い単行本に恐るることなかれ。ゆっくり読んで楽しんでほしい。シェイフ山田のキャッチーでわかりやすいイラスト群も必見だ。
Posted by ブクログ
イラクの湿地帯=アフワールについて書かれた本。世界史上にはレジスタンスあるいはアナーキー的な湿地帯が存在するらしく、その中の一つである中国の水滸伝になぞらえ「イラク水滸伝」と題されている。
「湿地帯の恐ろしさは、その境界があいまいなところにある。(…)鈍色の雲が地平線まで垂れ込めた空の下、どこまでも続く湿地とも荒れ地ともつかない土地を走っていると、なんだか世界の始まる前の原初の状態にいるような感覚にとらわれる。」
と書かれてるけど、回想やイラクに関する歴史について脱線が多い序盤は今どこにいるんだっけ?と自身が湿地帯に迷い込んだように感じることがしばしば…翌日とか何時とか、時間経過を示したり示さなかったりするし(ちまちま読み進めたのが悪かったのかも)。
第1章〜第3章
:2018年1月 イラク初訪問
第5章
:2019年5月 アフワール再訪 いよいよ舟造り
第6章
:2019年の秋 舟旅決行が山田隊長の誤診で中止
→ 来春に決行の予定がコロナ禍で中止
2020年10月 マーシュアラブを知る
2022年3月 アフワール再訪
チバーイシュ町周辺でタラーデに
乗る(表紙の写真)
ブリコラージュという単語が何度も出てくるけどその場しのぎかもしれない、でもその試行錯誤で最終目標としていた舟旅に漕ぎ着けたことがすごい。
あとがきにある通り「思いつくかぎり何でもやった」が故のボリュームで、イラクそしてアフワールの魅力が描き出されている。ゲーマルやマスムータを食べてみたいと思うと同時にイラク戦争などイラクの歴史もちゃんと勉強したいと思った。
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