【感想・ネタバレ】イラク水滸伝のレビュー

あらすじ

水牛と共に生きる被差別民がもつ“循環共生”の叡智とは?
権力に抗うアウトローや迫害されたマイノリティが逃げ込む
謎の巨大湿地帯〈アフワール〉
―――そこは馬もラクダも戦車も使えず、巨大な軍勢は入れず、境界線もなく、迷路のように水路が入り組み、方角すらわからない地。

中国四大奇書『水滸伝』は、悪政がはびこる宋代に町を追われた豪傑たちが湿地帯に集結し政府軍と戦う物語だが、世界史上には、このようなレジスタンス的な、あるいはアナーキー的な湿地帯がいくつも存在する。
ベトナム戦争時のメコンデルタ、イタリアのベニス、ルーマニアのドナウデルタ……イラクの湿地帯はその中でも最古にして、“現代最後のカオス”だ。

・謎の古代宗教を信奉する“絶対平和主義”のマンダ教徒たち
・フセイン軍に激しく抵抗した「湿地の王」、コミュニストの戦い
・水牛と共に生きる被差別民マアダンの「持続可能な」環境保全の叡智
・妻が二人いる訳とは?衝撃の民族誌的奇習「ゲッサ・ブ・ゲッサ」
・“くさや汁”のようなアフワールのソウルフード「マスムータ」
・イスラム文化を逸脱した自由奔放なマーシュアラブ布をめぐる謎……etc.

想像をはるかに超えた“混沌と迷走”の旅が、今ここに始まる――
中東情勢の裏側と第一級の民族誌的記録が凝縮された
圧巻のノンフィクション大作、ついに誕生!

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感情タグBEST3

Posted by ブクログ

書店で表に一目惚れし購入、絶対に面白い本だと思った。表紙の写真がめちゃくちゃ良かった。

世の中の大概の冒険譚が私が産まれる前の話なのに対し、これはつい最近(な気がする)コロナ禍の時の本というのも親近感がありよかった。

全く検討がつかない土地で何とかしていくのが面白かった、それにより現地の人に対して怒ったり、イラついたしているのも、最初こそなんか嫌だったが、慣れると、その場の臨場感や人々が居る感じ鮮明にし、この物語を面白くしている1つの要素なんだろうなと思った。

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2024年09月18日

Posted by ブクログ

長い本ですが、楽しい。夜のお風呂でイラクを考えるのは楽しい。高野さんの文章がうまい。宋江のように見えてきた。

今を楽しく生きる。やれることをやる。それが水滸伝の好漢たちの心意気だ。彼らはきっと何かやってくれる。あるいは何もしないうちになんとかなる。そう信じて、本書を彼らに捧げたい。

最後がカッコいい

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2024年09月10日

Posted by ブクログ

50代になってもやんちゃな冒険家である高野氏が今回向かったのは、サダムフセインやISなどイスラム過激派の印象が付きまとう、日本人の大半が危険でしかないと思っているであろうイラクである。ただ忘れてはならないのが、この国が原初の文明を生み出した場所であるということだ。
彼はこの旅で、世界でも有数の危険地帯でありながら、世界最古の歴史を持つ国、そして砂漠の印象の強い中東の一国の中の湿地帯(!?)で暮らす人々の謎を解き明かすとのことで、旅の目的からして様々な情報がぶつかり合い混沌に満ちている。案の定旅の道程も複雑かつ困難が溢れ返るもので、綴られる文章も序盤から中盤にかけてカオスそのものであった。

本文に書かれている通り、そもそもイラクという国が大変複雑な国だ。シュメール人によるウル・ウルク・ラガシュといった世界史で誰もが覚えるであろう都市国家による支配から始まり、アッカドやバビロニア、アッシリアといったセム語圏の民族に統治が移り、続いてペルシア時代、イスラム教徒の侵攻、モンゴル遊牧民による破壊を経てオスマン帝国支配下に入る。ササン朝あたりまで農業面で重要視されていたイラク(特に南部)であったが、イスラムとモンゴルの侵攻によってその地盤を破壊され、オスマン帝国時代からは、中心地から地理的に遠かったために辺境として扱われ、支配が行き届いていなかったという。

もともとシュメールの都市国家からあぶれたアウトサイダーが割拠していた南部湿地帯は、本書で語られるマンダ教徒やユダヤ人、支配してきた王朝から爪弾きされた人々や、カルマト派のような各地で略奪を働く荒くれ者たちといった様々な人々が、理由は様々あれど逃げ込んできて定住してきた場所だった。オスマン帝国時代に辺境として定着したことによってその混沌としたごた混ぜ具合は更に加速し、今度はイギリス統治に反抗する人々や、共産党員まで逃げ込んでくるといった、もはや悪も正義もなく、ただ「従いたくない!」という反骨精神のみを共有した人々が集まってくるようになった。そんなアウトサイダーたちが民族や宗教の垣根を超えて身を寄せ合って生きてきた場所、それがイラク南部の湿地帯【アフワール】なのだ。

こう整理する目的で書いていてもわけがわからなくなりそうになるが、本書の序盤から中盤にかけてはイラクの成り立ちの複雑さや氏族の多様さの解説を丁寧にしてくれている分その情報量は脳みそを押し潰すかのようで、それに現地の治安問題や氏族間のやりとり、公安のマークなど、次から次へと襲いかかる困難な問題の対処や説明が加わってるためにかなり読みづらい。さらに高野氏とシェイフ山田二人が異国人であるために常に多くの人々から監視されている状態で不自由しており、いつもの軽快なユーモアもあまり見られず文章も重苦しいものになっている。毎年水量やルートの変わる湿地帯の作り出す変幻自在の迷路に迷い込んでいるかのようにその文章は混迷を極めている。

極め付けは2度の下見を経て本格的な旅に乗り出そうとしたところでのコロナパンデミックだ。これはもう読んでいるこちらですら、「あーもう終わったな。」と思ってしまうほどに絶望的なもので、高野氏とシェイフ山田の心境は本当に耐え難いほど辛いものだったと思う。ここで正直本を閉じようかな、と思ってしまったくらいだ。

しかしここから先は、カタルシスしか待っていなかったのである。

ソマリランドを超える程の情報量による読みづらさはあるが、終盤は開幕がウソだったかのように気持ちよく楽しく興奮しながら読める。もし序盤で諦めてしまった人がいるとしたら、ぜひもう一度トライしてほしい。3回目の現地入りからは、情報の渦が一気に整理されて収束し、いつもの高野氏の熱気の漲る冒険が戻ってくる。これまでよりも強烈なものとして。読後感はさながらサムペキンパーの映画を見終わったあとのようだ。

分厚い単行本に恐るることなかれ。ゆっくり読んで楽しんでほしい。シェイフ山田のキャッチーでわかりやすいイラスト群も必見だ。

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2025年09月06日

Posted by ブクログ

誰も行かないところへ行き、誰もやらないことをし、誰も書かない本を書く」著者のポリシーに感銘を受けた身として、とても興味深い内容であった。

まず、イラクという日本から見れば常に戦争をしているイメージのある国(実際はそうではない)であること。マイノリティの住む世界最古の文明、メソポタミア文明の興ったティグリス川、ユーフラテス川が舞台であること。

いずれも冒険心をくすぐられるだけでなく、現地民とのリアルなやり取りが読んでいてとても楽しかった。写真も随所に織り交ぜられ、イメージがしやすかった。

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2025年08月12日

Posted by ブクログ

イラクの湿地帯=アフワールについて書かれた本。世界史上にはレジスタンスあるいはアナーキー的な湿地帯が存在するらしく、その中の一つである中国の水滸伝になぞらえ「イラク水滸伝」と題されている。

「湿地帯の恐ろしさは、その境界があいまいなところにある。(…)鈍色の雲が地平線まで垂れ込めた空の下、どこまでも続く湿地とも荒れ地ともつかない土地を走っていると、なんだか世界の始まる前の原初の状態にいるような感覚にとらわれる。」

と書かれてるけど、回想やイラクに関する歴史について脱線が多い序盤は今どこにいるんだっけ?と自身が湿地帯に迷い込んだように感じることがしばしば…翌日とか何時とか、時間経過を示したり示さなかったりするし(ちまちま読み進めたのが悪かったのかも)。

第1章〜第3章
:2018年1月 イラク初訪問
第5章
:2019年5月 アフワール再訪 いよいよ舟造り
第6章
:2019年の秋 舟旅決行が山田隊長の誤診で中止
→ 来春に決行の予定がコロナ禍で中止
2020年10月 マーシュアラブを知る
2022年3月 アフワール再訪
チバーイシュ町周辺でタラーデに
乗る(表紙の写真)

ブリコラージュという単語が何度も出てくるけどその場しのぎかもしれない、でもその試行錯誤で最終目標としていた舟旅に漕ぎ着けたことがすごい。

あとがきにある通り「思いつくかぎり何でもやった」が故のボリュームで、イラクそしてアフワールの魅力が描き出されている。ゲーマルやマスムータを食べてみたいと思うと同時にイラク戦争などイラクの歴史もちゃんと勉強したいと思った。

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2025年08月12日

Posted by ブクログ

イラクのコアな部分だけでなく基本的なことも知れる。イラクについてよく知らなくても楽しく読める本。
恥ずかしながら水滸伝についてほとんど知識が無かったので、調べてみたら、そちらにも少し興味が広がりました。
一度に何度も美味しい本です。

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2025年05月04日

Posted by ブクログ

もっと星を付けたいくらい。
いやぁ、質も量も濃いけど、面白くて一気読みしてしまった。
子供の頃、ロビンソン・クルーソーやスイスのロビンソンを読んだ時のような興奮。あれらはフィクションたけど、これはノンフィクションなのがすごい!

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2025年03月16日

Posted by ブクログ

面白かった!文化人類学、風俗、言語学、スーパーサバイバル術(対人)などなど、多岐にわたって軽快に語られる。
現地のテロやコロナ禍、体調不良など様々な困難に見舞われるけど、凄まじいポジティブさを見せてくれる。タフだなぁ、と思う。
マーシュアラブ布の解明は、ほんとにエキサイティングだったし作者の興奮も伝わってくる。
イラクと日本じゃ完全にアウェーだと思うのに、身内に入ってしまうとすっかり仲良くなるのが筆者の人間力を感じた。
正直イスラム社会の女性への扱いが酷すぎて、特にアフワールでのゲッサブゲッサには到底着いて行けそうにない。それは筆者もそう思っているのだけど、それとその他の考え方は切り離して公平に見ているところが成熟した大人を感じさせる。相手の懐に入った以上、自分たちの価値観は自分の身のうちに収めて相手の世界を先入観なしで公正な目で見ることはなかなかできない。

ノンフィクションなのに、めちゃめちゃ中世ファンタジー読んだ気分にもなる訳のわからない本。(めっちゃ褒めてる。)

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2024年11月16日

Posted by ブクログ

知らない世界の話しを、丁寧にユーモアを交えながら描写しており、厚い本であるが一気に読み切る魅力がある。
アフワールに一度は行ってみたくなった。

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2024年11月12日

Posted by ブクログ

若宮總氏の『イランの地下世界』がめちゃくちゃ面白くてもっとこういうの読みたいなと思ったところ、あとがきというか身元保証人として高野秀行氏が現れて本書を紹介されていたのでまんまと買ってしまった。そしてまんまと楽しませていただいた。
ちなみに購入して表紙をじっと見てからクレイジージャーニーの高野さんだと気づいた。笑

イラクという国だけでもよく知られていないのに、その中のアウトローが集まる南部湿地帯に行くというのは変態中の変態。数多の障害に阻まれながらも、高野氏と山田隊長は驚異的な行動力とコミュニケーション能力を発揮して問題を解決し、達観した視点でわけのわからない経験を面白く提供してくれた。
多角的な視点なのは良いが、話があっちこっちぶっ飛ぶのは読みづらかった。でも面白かったから問題なし。
そしてイラク人(特に湿地帯の人たち)のノリがとにかく愉快。私は船頭のアブー・ハイダル推し。
さらには情勢が不安定なせいで学術的な希少価値まで生じてしまっている。南部湿地帯の不滅をただただ願うのみ。

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2024年10月20日

Posted by ブクログ

サイコーです。
読んでいて、イラクがすきになります。
料理は美味しそうですし、人々は親切ですし、ほんとーに行きたくなりました。
世界最古の一神教、マンダ教や、イラクに湿地帯があるなど、知らない事ばかりです。

戦争がなければ、高度な文明なんで素晴らしい国になっていると思うと本当に残念です。

こういうワクワクできるのは作者さんの力もあるかと思います。

ただ、トイレとシャワー事情を考えるとちょっと行くには勇気がいりますね。

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2024年10月11日

Posted by ブクログ

高野本にハズレなし!謎の独立国家ソマリランド以来の冒険長編!高野さんの真骨頂を味わいましょう!

高野さんの本は、ソマリランドで講談社ノンフィクション大賞を受賞されて以来、デビュー作から語学本までほとんど読破してきました。
イラク水滸伝は、まだ爆弾テロがそこかしこで起こるイラクの、しかもイラク人にも危険だとかよくわからないとされている湿地の民の生活に迫るドキュメンタリー大作です。
と書くと、なんだか堅苦しい本なのかと思ってしまいますが、そこは高野さん。いつも通りの現地の人たちとのドタバタ劇が最初から最後まで続いており、まるでコメディ作品。ところどころで本格的な歴史や文化への考察が挟まれることで、むしろ緩急がついており、高野さんの円熟の域に達した筆力も相まって500ページ近い本でも、思わず一気読みしてしまいました。
この手の本ですと、現地の人は文化や歴史の理解のための道具として観察対象として一歩引いてみたり、あるいは手放しで褒めたりなど、個人に対する向き合い方が薄いな〜と思うこともあるのですが、高野さんの本では、そんなことはありません。常に目の前の人に全力で向き合っているんです。学生の頃、友達とバカなことをやって笑い転げていたときのような空気感を感じます。もはや青春なんですよね。だから、高野本の最後はいつも冒険が終わってしまうことを寂しく感じます。
いち高野ファンとして次の冒険を楽しみに待っていようと思います。

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2024年09月03日

Posted by ブクログ

第34回Bunkamuraドゥマゴ文学賞

イラクの湿地(アフワール)の水面を、古代メソポタミア時代から続く三日月形の舟「タラーデ」で移動したいという高野秀行さんらしい挑戦。
まさに表紙の写真だけど、ネットでも湿地帯の画像を見て幻想的な風景に魅了された。
そしてそれ以上に度肝を抜かれたのがマーシュアラブ布!アガサ・クリスティが収集していたという幻の希少な布でこんなに鮮やかで可愛い布は見たことがないので、本書を読まない人も写真だけは是非検索して見てほしい!モチーフにはそれぞれ意味がある。

タラーデもマーシュアラブ布もエキゾチックで魅力的だけど、イラクの湿地帯という未知な領域に住むマーダンと呼ばれる人たちの文化も読んでいておもしろい。

燃料として水牛の糞を利用するのだけど、パンに直接塗ることもあるのには驚いたし、ゲッサ・ブ・ゲッサ(交換)で従姉妹同士を交換して複数妻を得る仕組みには驚愕。

ゲーマルという水牛や牛の乳から作る濃厚な乳製品はすごく気になる。

湿地帯にはマンダ教徒が多く、洗礼(浸礼)がなんと週1で行われる。

一番おもしろいと思ったのは、段取りや見通しを立てずにとりあえず作業を始めてから考える、というマーダン特有の行き当たりばったりなやり方。
テキトーな舟づくりは笑えた。

高野秀行さんの辺境好きは今更驚かないけど、同行した山田高司さんは世界各地で川めぐりをしてきた探検界のレジェンドらしく、そんな人がいることも驚き。

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2025年12月13日

Posted by ブクログ

まず、イラクが、イラン同様に自分がイメージしていた国と全く違っていたことに無知を思い知った。特にイランとは内向きと外向きが真逆であることやイラク人のホスピタリティ、氏族社会で単独ではどこにも行けないことなどが非常に感慨深かった。
湿地帯の話は内部に入り込まないと知り得ない話で読み応えあり。シュメールからずっと精神、文化、風土が続いてきたことに驚く。日本にも永く続く文化がある。大事なものを失ってしまわない様に意識しなくてはと強く考えさせられた。

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2025年11月17日

Posted by ブクログ

この本のおかげで、私は家にいながら、イラク特にアフワールを旅することが出来た。語学の天才まで〜が面白かったので、こちらも読んでみたが、こちらも負けず劣らず異世界タイムスリップをさせてくれた。

読み進めると、ブリコラージュという手法だったり、アーティストの山口晃さん登場だったり、万城目学のヒトコブラクダ層ぜっとを彷彿とさせる遺跡だったり、今まで私が血肉にしてきたキーワードが出てくる、出てくる。分かるよ!知ってるよ!のオンパレード。「あー、この本は、今、出会うべくして出会ったんだなぁ」とご縁を感じてしまった。

楽しい内容だけでなく、学びもあった。
アフワールの婚姻関係についてである。13才で結婚する女の子がいる。40才のおじさんに16才の女の子が嫁ぐ(第二夫人として)。氏族内で奥さんを交換する(本の中では表現が異なる)など、今の日本では考えられない社会がまだある(全部が全部じゃないとしても)よく電車の中吊り広告で、幼い女の子が結婚することを防ごう、というのを目にするが、この本で急に目の当たりになった。「あぁ、本当にあるんだ、そんな世界が」とびっくりしてしまった。嫌悪感を感じた。今は「知る」ということしか出来ない私だった。

最後に、マイナス1は、私がイラクとイラク周辺の歴史や世界情勢に疎く、少し理解が浅い部分があったということ。私の問題である、情けない。勉強しよう。水滸伝も。

あー、旅行したいな。

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2025年09月23日

Posted by ブクログ

壮大な冒険だと思う。イラクに対するイメージも変わったし、もっと歴史や文化を知りたいと思った。イラクで出会った仲間たちはみんなステキな人たちだった。

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2025年05月10日

Posted by ブクログ

500ページ弱のボリュームにちょっと引きましたが、面白かった。
ティグリス・ユーフラテス川の合流地点に湿地帯があるのは知らなかったし、その地域が古代メソポタミアの時代からフセイン政権前後を通じてアナーキーな存在だったとは!そのアフワール=湿地帯に住む人が次々に出て来るがみんな面白い(高野氏の表現が秀逸なのだろうけど)。船づくりの話も面白かったけど、冒頭の船を漕ぐ船頭の姿はかっこいいです。謎の刺繍布を追う旅では古代都市ウルクも訪れるし、鯉の円盤焼きも一度は食べてみたいけど(何度もは....飽きてきつそう)、実際に行くのは高野さんに任せて、本で読んで楽しませてもらいました。

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2025年04月20日

Posted by ブクログ

500ページ近くにもなる長大なノンフィクション。ちょびちょび読んでいたので少々時間がかかりましたが読み終わりました。面白かった!

元々、古代文明好きなのでイラクには興味津々だったのですが昨今の情勢不安の中こんなフリーで行ってしまえる著者先生方の行動力と逞しさにただただ脱帽です。

「イラク」と「水滸伝(読んだことないですが中国のお話だと言う程度の知識はあり)」って一体なんの関係が??と首を捻りつつ読み始めたのですが、水滸伝的な世界がイラクの湿地帯に存在するって話なんですね。水滸伝を知らないわたしでも十分楽しめましたが、読んで知ってたらまた別の楽しみがあったのかな?機会があったら「水滸伝」読んでみたいと思います。

全8章から成りますが、最初はアフワール(イラクの湿地帯のこと)にどうやって入るのか(気軽にツーリストが行ける場所ではない)その過程が書いてあって読んでてジリジリしてたのですが、第5章の舟造りのあたりからめちゃくちゃ楽しくなってきました。ここから読んでもよかったのではないかとも一瞬思いましたが、ここまでで主要な登場人物やその人となり、イラクの人たちの気質が丁寧に描かれてて、それが頭に入ってこその楽しさな気がします。無駄なことは一つもないですね。

アフワールの方のブリコラージュな姿勢が見ててとても楽しかったです。我々から見ると無計画に見えても、返って変化や突発的な状況にも対応できるのだな…と感心します。我々は計画的に物事を進めようとするあまり、返って難しく考え過ぎてしまうようになっているのではないか。そんな気がしました。まさに「やった者はやらない者より常にえらい」ですね。こないだ読んだばかりの「凍てつく太陽」の農耕民の文明とは対極にいる方たちのような気がします。

著者の高野先生は他にも辺境を回られた話を書かれているそうなので機会を見つけてまた何か読んでみたいと思います。

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2025年04月09日

Posted by ブクログ

いや〜面白かった。普段ノンフィクションものはあまり読まないのですが、もはやロードムービーの冒険物語でした。おすすめです。

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2025年03月20日

Posted by ブクログ

最近チェックしていなかったので、いつの間にかこんな大作が出ていたとは。
イラクというぼくらからしたら危険なブラックボックスに潜入するとは。最近守りに入っている気がしていたのでとてもうれしいです。
内容もとても充実していて、イラクが少し好きになりました。怖いところである事は変わらないですが。

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2025年03月10日

Posted by ブクログ

ムベンベとかソマリランドとか、とんでもないものを追いかけるノンフィクション作家、高野秀行さんの新著。
分厚い本。分厚すぎる。もしかしたら今回は小説なのか?と思って読み始める。
いや違った。ドキュメンタリー、ノンフィクションだった。
高野さん自身がイラクに行って、船で湿地帯を進む。
船を作る。食事をもてなされる、、、
最初はその国民性の意外性など興味深かった。
・・・でも正直だんだん飽きてきてしまった。
人間のパターンもいろいろあるけど、なんだかんだイラク人、だんだん慣れる。
写真はそれなりにあるが、そんなにイメージを膨らませることができない。
文章だけだとどうしても、、、
後半は惰性。長すぎたのでは? 旅はそれだけ長かったのだろうけど、、、

第1章 バグダード、カオスの洗礼
第2章 イラン国境の水滸伝
第3章 新世紀梁山泊チバーイシュ
第4章 イラク水滸伝六千年 脳内タイムマシンの旅
第5章 「エデンの園」の舟造り
第6章 呪われた水滸伝の旅
第7章 謎のマーシュアラブ布を追え!
第8章 古代より甦りし舟は行く

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2025年03月09日

Posted by ブクログ

イラクの湿地帯に単身乗り込むチャレンジャー探検家の記録。文体にクセがあるけど読みやすい。イラクは砂漠イメージが強いですが、難民が流れ込む湿地帯があり名物料理は鯉だとか。

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2025年01月25日

Posted by ブクログ

砂漠のイメージがあるイラクにこんなところがあるなんて。どんな場所にも、そこで生まれ育った人の生活があるということが伝わってくる。水滸伝を読もうと思った。

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2025年01月07日

Posted by ブクログ

実は長年高野秀行さんの熱烈なファンで、妊娠中もトークショーに行き、その時にお腹にいた子はもう中、そうもう中学生である。

イラクといえば、テレビで観た戦地のイメージしかなかったが、何と大湿地帯があるという。
作者はその地で幻の舟「タラーデ」を作ってもらい、湿地帯を舟で旅する計画を立てる。

高野さんにいつも感心するのは、現地のことばをいち早く覚え、コミュニケーションをとり、現地の人が食べるものを食べてすぐに仲良くなる事。さらに、ただ楽しかった、だけではなく、その土地の伝統や風習、そこに住む人の人物像までを細かく描写していること。

溢れるほどある旅行記や探検記とは全く別物の次元の作品を描く。今回も、イラクという国の人々と暮らしが生き生きと描かれていた。

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2025年01月04日

Posted by ブクログ

まずイラクに湿地帯があったことも知らなかったが、犯罪者や山賊、さらには戦争や紛争、差別などから逃れてきた人など、歴史的に様々な人々が逃げ込んである意味「梁山泊」的なエリアを突撃取材してきた、著者のエネルギーと行動力、タフネスに驚愕する一冊。
あまり知らないイラクの断片を知ることができた。

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2024年06月12日

Posted by ブクログ

高野氏の著書はアヘン王国に次いで二冊目。
(同じくらいのボリュームかと思いきや、1.5倍の量があったので読むのに少し時間がかかってしまいました)
日本ではいまだレベル4の危険地域でありイメージ的にも危なそうで怖そうでよく分からない国というイラク。その中でもかなり特殊な地域アフワールについて。
アヘン王国同様こうやって無謀にも冒険、探究をし一般読者が読めるようにまとまった報告書は本当に有難い。
歴史や背景、現状をただ伝えるだけでなく、現地で暮らす人々が生きている姿ーーーいま同じ時代に地球という星に共にありながら我々日本人とはまったく違う文化や時間軸ーーーをまざまざと浮かべさせてくれる情報は貴重だと思う。
口絵に参考になる写真が多く作中にも緻密かつ見やすい説明イラストもあり、なんならYouTubeに動画もあがっているので、見慣れない国の見慣れない景色をよりもっと具体的に感じることが出来たのが良かったです。

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2024年06月07日

Posted by ブクログ

世界最古の文明ことメソポタミア文明発祥の地、
ティグリス川とユーフラテス川流域の湿地帯“アフワール”を旅した冒険ノンフィクション。

おそらく多くの日本人にとって危険なイメージを持たれている国イラクに、コロナ禍を挟んで3回も渡航しているバイタリティが凄いし、現地の人と“友達になる”コミュ力にはただただ脱帽。
現地の食文化、宗教観、ライフスタイル、価値観に時に驚かされ、時に考えさせられた。
湿地帯の葦でできた館“ムディーフ”はシンプルな構造でいて豪華絢爛、水牛の乳製品“ゲーマル”も一度で良いから食べてみたくなるくらい美味しそうだ。著者らの冒険を通じて古代文明、シュメール人に思いを馳せるロマンがある。数多くの写真と洗練された“山田隊長”のイラストが差し込まれているおかげで、イメージもしやすい。
また、その場で手に入るありあわせのものでモノづくりをする“ブリコラージュ”は、準備段取りを重視しがちな日本人にはなかなかない発想で、良い気づきになった。
「誰も行かないところへ行き、誰もやらないことをし、誰も書かない本を書く」著者のポリシーが詰まった渾身の一冊。

Bunkamuraドゥマゴ文学賞 受賞(2024年)
植村直己冒険賞 受賞

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2024年09月04日

Posted by ブクログ

辺境ノンフィクション。イラクというと砂漠のイメージがあるが、チグリス・ユーフラテス川の下流は湿地帯となっている。文明の発祥であるシュメール・メソポタミアから続く生活スタイルを引き継いでおり、湿地帯というアクセスの悪さから現代文明から隔絶された状態になっている。情報がほとんど無い地帯に筆者が体当たりで潜入して行く感じが面白い。

装丁は分厚いが紙が厚いだけで読むのに時間はかからない。

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2025年06月16日

Posted by ブクログ

思っていた内容と違って、少し期待外れだった。

チグリス・ユーフラテス川の下流アフワールは、エデンの園のモデルでもあり、人類文明の揺りかごのような広大な湿地帯である。
そこに興味を抱いた著者が、冒険よろしく、探検冒険家の山田氏と一緒に赴く。
で、最後が伝統的な船に乗っているシーンの写真を撮ってもらうところで終わっているので、これが最終目的だったのか。

通訳に頼る旅が多かったし、特に危険なめに会った訳でもない。もちろん苦労はしたはずだが、イラクの人たち(と言うか、イスラムの人たちかな)は、とても親切で、食事を中心に旅人を施してくれることに隠れてしまって、わがままな旅行記にも感じられた。

ただ、あまり馴染みのない中東、特にイラクの歴史が書かれており、それはそれで勉強にはなった。
これから、アフワール地方に行こうと考えている人には、役立つでしょう。

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2024年08月08日

Posted by ブクログ

知らなかったイラクについて知ることが
出来た
行ったこともないし今までテレビなどや
新聞などでイメージが付いていたが
この本の内容とは違っていた
現地に行けばまた違った事が
あるのかも知れないが読みやすく
かかれていて
よかった

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2024年06月09日

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