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未知の世界に憧れるまま、足掛け29年にわたりモロッコから西アジア・インドを経て中国まで行脚。14世紀における三大陸の諸情勢を活写した紀行文学の最高峰。ナビゲーション:高野秀行。
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Posted by ブクログ
14世紀のイスラム(モロッコ)の旅行家、イブン・バットゥータの大旅行記の。全訳は家島先生が東洋文庫全八巻で訳されているが、師匠に当たる前嶋先生の抄訳となる。(このあたりは高野秀行による前書きに詳細がある)。 モロッコ、エジプト、アラビヤ、黒海周辺、アフガン周辺、インド、アジア、中国(元)と約30...続きを読む年に渡り旅を続けているが、そのヴァイタリティと知的好奇心には脱帽する。 東方見聞録に比べると、こちらのほうが断然読みやすく、面白い。情報の正確性はともかく、前者がガイドブックとすれば、こちらは旅日記である。善きにしろ悪し気にしろ起こった出来事を克明に記しており、読んでいてワクワクするのである。
マルコ・ポーロより50年遅れて生まれたモロッコ出身のイスラム世界の探検家、イブン・バッドゥータの世界周遊記。客人を大切にする一方、異教徒には厳しいイスラム的視点から見た世界は東方見聞録とは一味違うのです。黒死病も真っ盛りで、酷さがわかります。
高野秀行氏がナビゲーションを務める『三大陸周遊記』にやって参りました!彼が手掛けたまえがきはやっぱり面白かった!何ならもっとはっちゃけても良かったくらい。 面白いだけでなく、彼特有のユーモラスな語り口調のおかげで十分良い予習になるし、面白い視点のまま本書に臨める。 著者のイブン・バットゥータは、モ...続きを読むロッコ出身の大旅行家。 22歳の頃聖地メッカ巡礼を目的に故郷を離れたが、やがて世界旅行へと乗り出す。その範囲は北アフリカからユーラシア大陸を横断して中国と、ザッと世界半周は制覇している。 本書は1977年刊の同タイトルに高野氏のナビゲーションを加え、復刊したもの。高野氏曰く原書の4分の1に抄訳されており、担当したのは日本で初めて『アラビアン・ナイト』を翻訳した前嶋信次氏であるとの事。 高野氏が述べているように、同じ旅行記でも『東方見聞録』よりは読みやすいと思う。 (イブン・バットゥータより50年程前に生きた)マルコ・ポーロの『東方見聞録』も、『三大陸周遊記』に引けを取らずスケールが大きい。しかしリアリティに欠けていて拍子抜けする箇所もあり、実際「ジパング」のように訪れてもいない国について「見聞」だけで乗り切ったりしていた。 本書は北ア〜中国の広大な範囲、つまり彼が「実際に」訪れた国々を余すことなく記録してくれているから、一旅ルポとして自然と楽しめる。あとは彼自身が敬虔なムスリムで、旅の行方を「神(アッラー)の思し召し」と捉えているところも、紀行に穏やかな彩りを添えていた。 全体を通して客観的な文章だったけど、下記のように民間伝承っぽい話も紛れていたりする。 イブン・バットゥータを乗せた船が40日以上遭難した時、前方に見覚えのない山が見えた。それを船乗り達は「ルッフ」(巨鳥)だと嘆き、イブン・バットゥータも必死に神に祈りを捧げる。結局「アッラーは絶好の風を送り、反対の方向に船を転じさせ」、彼らはルッフと対峙することはなかった。 この辺とかシンドバッドの巨鳥とクジラ島のエピソードを合わせたみたいで、読んでいて気持ちが浮き立った。40日以上も知らない海上を漂流していたら、幻覚を見てもおかしくない。『東方見聞録』とは違ってまだリアリティがあるし、読者の想像も無理のない範囲で膨らむ。 「いま世界で起きていることは、イスラム教とは関係ない。ただ憎しみを増幅させているだけだ。ほとんどの問題は、他者を尊重しないから起こるんだ」 『パリのすてきなおじさん』という本に書いてあった、現代を生きるムスリム移民の言葉である。本書の旅の節々でそれを思い起こしていた。 例えばメッカの人々は、異教徒も大切にもてなしていた。ダマスクスでは慈善財団が発足されており、同じく異郷の者への生活支援も手厚かったという。道中異教徒の襲来もあったりしたが、彼の目を通した14世紀の世界は不思議と調和が取れているように思った。 旅の大本命だったメッカの優しさに心打たれ、自分も世界の人々と分け隔てなく交流したいと思ったのか。旅が30年も及んだのは、その思いもあったからなんだろうか。 これも無理のない範囲の想像だったらいいな。
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イブン・バットゥータ
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