18世紀後半のビスマルク体制から第一次世界大戦後のヴェルサイユ・ワシントン体制までの国際情勢を中心に書かれた概説書。
ドイツ帝国の宰相ビスマルクは、宿敵フランスを孤立させるとともにヨーロッパにおける戦争を防止するため、ドイツを中心とする一元的で複雑な外交関係の蜘蛛の巣を作り上げた。
しかし、ビス
...続きを読むマルクに引導を渡した若き新皇帝ヴィルヘルム2世は大英帝国への挑戦を決意し、独英関係の対立関係が深刻化したことが第一次大戦の要因となった。
第一次世界大戦は、ロシア革命を引き起こし、初の社会主義国であるソビエト連邦を誕生させた。
大戦の主戦場になったヨーロッパ諸国は、新たな戦争の形態である総力戦を戦い、長期持久戦を耐え凌ぐ中で、大きく疲弊していった。
戦局の行方に決定的な影響を与えたのはアメリカの参戦だった。理想主義的な新国際秩序を提唱するウィルソン大統領の判断により大軍を欧州戦線に派遣したアメリカは、国際経済の面でも英仏をはじめとする連合側諸国を支援し、前世紀の覇権国であったイギリスの地位ととって変わることになった。
パリ講和会議で自らの描いた理想主義を実現しようと意気込んだウィルソンであったが、その構想は英仏日などの列強が画策した旧時代の秘密外交によって否定され、強硬的な対独包囲網の性格を持つヴェルサイユ体制が形成された。
「民族自決」のスローガンに期待を込め、列強に奪われた諸権益の奪還をねらった中国の目論見も、列強からはまんまと黙殺された。
パリ講和会議で大きな不満を残した米・中は、その穴を埋めるためにワシントンで国際協調路線に沿ったアジア太平洋方面の新秩序を作るために、軍縮会議を開催した。
ワシントン体制は、第一次世界大戦で中国・太平洋方面で著しく勢力を強めた日本を抑止するための対日封じ込め戦略に基づいて形成され、のちにアジア太平洋方面の覇権をめぐって勃発する日米戦争の序曲ともなったのであった。