あらすじ
三畳一間、家賃月12000円。ワセダのぼろアパート野々村荘に入居した私はケッタイ極まる住人たちと、アイドル性豊かな大家のおばちゃんに翻弄される。一方、私も探検部の仲間と幻覚植物の人体実験をしたり、三味線屋台でひと儲けを企んだり。金と欲のバブル時代も、不況と失望の九〇年代にも気づかず、能天気な日々を過ごしたバカ者たちのおかしくて、ちょっと切ない青春物語。
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三畳一間と言わないまでも、昔ながらの下宿の様子がわかる自伝的作品として、藤子不二雄A『まんが道』や吾妻ひでお『地を這う魚』などがあげられるが、本書にはこれらの作品とはまた違った趣きがありむちゃくちゃに楽しませてもらった。
なにせ登場人物達が面白い。パンの耳を貰ってきて毎朝食べるほど異常なほどケチな上、寝返りをうつ音にすら苦情をいれる「守銭奴」、弁護士目指して熱量MAXで他人に世話を焼いて迷惑をかけまくる「ケンゾウさん」、また探検部関係者では宇宙旅行を本気で提唱し始めたり、チョウセンアサガオをどこかから掻っ払ってきた先輩の「加藤さん」、そして盟友のイシカワやキタといった多種多様な奇人変人たちが集まる野々村荘とはなんなのか、そしてそこに溶け込む高野秀行とはどれほどまでにぶっ飛んでいる(良い意味で)のか、と考えているうちにどんどん次のページをめくってしまう。まさに読む手を止められなくなってしまう。
所々常識的に問題があるのでは?といった場面もあるが、そんな些細なことを気にしていてはこの本を楽しめない。限りなく自由な人たちを自由な気持ちで眺めてみれば良い。気づけば腹を抱えて笑っている自分自身に気づくことであろう。日々の疲れやストレスを吹っ飛ばすのに最適な「読む抗鬱剤」、それが『ワセダ三畳青春記』である。
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めちゃくちゃ面白い。
高野秀行が日本の生活について書くということは、彼の実力が発揮されるアジア・アフリカの辺境エリアとは真逆のステージを書くことになるため、地味な作品となることを予想したところ、それは大きな間違いであった。
浮世離れした高野秀行が居る場所は全て辺境と化すのであり、そこがゴールデントライアングルであろうとソマリランドであろうと日本であろうとも彼の周りでは訳の分からない面白いことが起こり続けるのだ。それどころか生活の話となると内容の濃さが段違いに上がり、高野作品の中でも最高傑作と呼んで差し支えない面白さだ。
私が特に好きなのは「プールへ行こう!」で、区民大会に出て名前を呼ばれるくだりはゲラゲラ笑って読んだ。
終盤にかけてノワール映画を見ているかのようなノスタルジーに襲われ、最後には泣いていた。高野作品で泣かされたのは初めてだ。
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初めて読むノンフィクションだったが、とても面白かった。誰も行ったことのない場所へ行き、誰も書かないような本を書く、という高野さんのモットーが素敵✨
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電車で読んだのが間違いだった。
めちゃオモロイ。いや、どの高野本も基本的にはめちゃオモロイ。
だが今回は親近感の湧いてきやすい日常に焦点を当てているので、より面白おかしさが伝わってくる。笑いが次々と込み上げてきて、ついには目まで達してしまった。マスクを着用していたものの、「それ、そんなに面白いのか?」と周囲から勘ぐられていたに違いない。
面白ければ面白いほど、読み手は話に夢中になってしまう。そう、電車で読んでしまうと乗り過ごしかねない。自分の場合目的地が終点だったが、着いたことにも気づかず居座り続けてしまった…。
学生時代から11年間住まわれていた「野々村荘」での思い出を綴ったエッセイ。(あとがきで知ったが、「野々村荘」は仮名らしい)
居住スペースは何と三畳間という手狭さだが、高野氏が所属されていた早大探検部(他の著書でもお馴染み!)に程近く、家賃も1万2000円と超良心的!(てかそんな好物件聞いたことがない)
他の探検部員も住んでいたため、半ば第二の探検部活動拠点と化していた。
チョウセンアサガオの種を食べ続け、高野氏が「ノイローゼ気味のチンパンジー」に化けた話等、辺境とはまた違う部活動の記録も楽しめる。部やサークルに必ず一人はいる「関わってはいけない先輩」の高野氏だったが、何だかんだで年齢的にはまだ学生(ご卒業後は学生上がり)。たとえ一般的な学生みたいにパッとしなくても(失礼…)、これまた他では味わえない青春特有の輝かしさがあった。
あとどのエピソードにも共通して言えることは、オチが上手い!
「私は首をかしげた。野々村荘お得意の『謎の現象』だ。だがここの現象は私のような凡人には想像しがたい謎を秘めている」(P 167)
「私のような凡人…」というツッコミポイントはさておき、野々村荘の住人は高野氏に引けを取らない変わり者ぞろいだ。
立地的・価格的に変わり種なアパートだから引き寄せやすいのか…?それもあるだろうけど、自分は大家のおばちゃんパワーによるものではないかと睨んでいる。
オープンで寛容、細かいことは気にしない性格。住人同士のトラブルにも仲裁に入り、大体解決へと導くキレ者でもある。会話もいちいちオモロイ。何十年も大家でありながら、築年数や部屋数を把握していないところは何だか好感が持てた。
今ドキこんなにチャーミングなおばちゃんいる?住人たちにとっての「暗闇の提灯」的存在なのも頷けるし、高野氏が11年間ほぼストレスレスで過ごせたのも、彼女の功績が大きいんじゃないかな。
笑いが中心だったけど、終盤はちょっぴりセンチメンタル。ある事情から野々村荘との訣別を果たすからだ。
これまでの野々村荘をめぐるドタバタ劇と毛色が違いすぎて、正直アウェーだった。でも今まで優先してきた野々村荘ライフをふっと手放すことで、ようやく彼も青春の名残から巣立っていったんだな…と、最後はおばちゃん目線になっていた。
電車ではしてやられたが笑、高野本をまた1冊コンプリートした喜びと荘の活気(?)が、自分の中で勢いよく渦巻いている。
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こんなに面白いとは思わず、とりあえず手に取った本だったからびっくり。文章はとても読みやすく、何と言っても自分の今の生活からは違いすぎる内容の日常へ連れて行ってもらえて、とても楽しかった。ちょっと痛いけど憎めない人たちの喜劇を見てるような、そんな気持ちになった。著者の方は、とにかく面白い素敵な人だということが良く分かった。
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野々村荘で起こる「リモート」や「スマホ」が当たり前である現代では味わうことのできない人との出会いが織りなすドラマが沢山の物語でした。最後は青春記に相応しい終わり方でニヤついてしまいました。笑
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'語学の天才まで1億光年'を読んで、すっかり、この著者の作風や破天荒な内容に魅了された。
本作は、この著者の原点とも言うべき、早稲田で過ごした11年間の驚きの生活や、そこに下宿している奇妙な人々の記録である。探検部の後輩からの紹介で、実家からこの下宿に転がり込む。
三畳一間で鍵はない。誰でも自由に出入りする。太っ腹な下宿のおかみさん、司法試験浪人という不動の地位の住人、ドケチも超がつく非日常的な動きをする住人など、世間離れした人物が集う異空間。エピソード形式で綴られていく世界が、ウソ?と思える連続で、読むほどに味わいがでてくる。最後に下宿を出る話になるが、何だかほんのりとしてくるのも、この作者の話法の魔法かも。
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辺境作家、高野氏の青春記。ワセダのたった三畳の部屋に住んだ11年間で起こった日々を綴った一冊である。
高野氏の著書は普段我々が行かないような辺境の地や未開の地などのテーマに気を引かれるが、文章にしたときの面白さが尋常ではない。今回のエッセイではそれ特に際立つ。場面の切り取り方やテンポ、言葉のチョイス…高野氏の著書を支えているのはやはり文章力だ!と感じる一冊であった。
特に最終章の、野々村荘からの旅立ちは懐かしさ、寂しさ、面白さ、なんとも言えない哀愁が美しく感じられて何度も読み直した。人を好きになる複雑な心境をこんなに上手く書ける人がいるのか、と嬉しくなった。
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私も大学時代同環境で生活していたので、最初はタイトルに惹かれて何となく手にした本。でも、読んでみると単なる共感というレベルを超えて話が面白すぎる! 登場人物のキャラ設定と数々の事件を面白可笑しく表現する作者の才能に感服しました。
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高野秀行の『ワセダ三畳半青春期』は何度も読み返したくなる。
今回はプールに行く話が読みたくなって、再読した。
日常を面白く書ける高野秀行は天才だと思う。
探検しなくても面白い話を書けるのではないか?
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高野さんの文章は「粋」である。
その時の情景や人の感情をメタで捉えてるから一人称でも客観的で分かりやすいし読者の心の声を先にツッコんでくれるのでクスってしてしまう。そして無駄な重複表現はなく端的でスマートである。
なので野々村荘の中のトンチキな出来事をまるで天井から眺めているような気分になりワクワクして目が離せない。
しかし最後の6章だけはテイストが異なる。今までさんざん野々村荘をシニカルに面白おかしく書いていたのに急に「私小説」っぽくなる。もっというと「独白」、いや完全に奥様への「ラブレター」である。
このラブレターが沁みる。これまでの放蕩生活の代償として世代や世間から取り残されてしまったせいで、友人の結婚式スピーチで親戚友人をドン引きさせたり平日から公園で三味線弾いてたら地元のヤンキーに憐れに思われたり、資本主義戦争の敗戦兵となった高野さんが最後の生命エネルギーのようなものを搾り出して奮闘する姿を我が事のように応援してしまう。
高野さんの心の中を中心に描くこの章はこれまでのフリが効いていて最後の章に相応しい「粋」な展開でまるで落語の人情話だ。
たまに人生に行き詰まる時に本棚から出して読む本としてまた仕舞い込もうと思う。
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同僚から面白いと教えてもらい読んだ。
自分が高卒ということもあり、
大学生が本当に羨ましいと思った。
登場人物はみんな面白い。
最高でした。
特にチョウセンアサガオは
めちゃくちゃ笑った。
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3畳一間の下宿、神田川の近く、まさにかぐや姫の神田川の世界そのもの
私より5歳下でまだそんな生活あったとは驚く
風呂なし、共同トイレ、共同自炊は普通だったが
その後彼女ができて転居、結婚したの?
FM番組で青木さやかの紹介で読んでみた
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野々村荘に住む世間とは隔絶されたぶっ飛んだ方々のエピソードは大いに笑えました。
その一方で作者の高野さんが抱いた仲間が真人間へとなって去っていく時の不安や寂しさは自身も同じ様な体験をしてきた為、懐かしいあの頃の何とも言えない感情を思い起こさせてくれました。
青春という名の現実逃避は最高なんですよね。
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こういうの大好きなんです、としか言いようがない。自分もこうありたかった、ちょっと間違えればこうなっていた、いや、実際にかなり近くなっていたかも。著者のような行動力がなかっただけ。
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先日、早稲田界隈を散策した。高田馬場から早大キャンバスへ。どういうわけか神楽坂まで行ってしまった。野々村荘はどこにあったのだろう。家賃1万2千円の3畳間。時は90年代。バブルがはじけ不況が始まる。失われた30年に入るとき。…未亡人の気のいいおばちゃん。勝手に他人の部屋の電話に出る司法浪人ケンゾウさん。腐ったものを調理して異臭を放つ”守銭奴”。風呂には行かずにプールで済ませる著者。自由人でその日を楽しむ。面白おかしく描かれた青春期。将来への不安もきっとあっただろう。去っていった人のその後の人生も気になる。
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めちゃくちゃに面白い。少し昔の話ではあるが、早稲田生の日々の日常が見れる。それにしてもこれぞ大学生って感じで、堕落した生活は読んでいると逆に元気が出てきた。
やりたいことをやるという精神、行動力は全然自分なんかよりすごくて素直にかっこいいなとも思った。
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こら面白い。
アパート3畳間の青春期。
住人の奇人変人もさることながら、大家のお婆ちゃんがいい。
素晴らしすぎる。
高野サンの本は2冊めだが、一気にファンになってしまった。
他も読まにゃなるまい。
オススメ。
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以前働いていた職場で私のことを娘のように良くしてくれていた部長が突然、「これおもしろいよ」と言って貸してくれた一冊。入社した時は、まさか会社の部長と本の貸し借りをする未来があるなんて想像もしていなかった。実際に読むと本当に面白かったし、「あ〜、部長好きそうだなー」と思った。ボロボロになっていたカバーがどんなに読んでいたかを物語っていた。
その部長は本当に運悪く、コロナが流行り始める前に次の職場も決めず退職することに。私が定期面談で「仕事が楽しいと思えないんです」と悩みを打ち明けた時に「分かる、俺もなんだよね」と共感していた部長は私にとって貴重な味方で、第2の父のようだった。
しばらくは連絡が取れていたものの、このあいだ久しぶりにLINEで部長を探したら、アカウントが消えてしまっていた。元気にしているだろうか。
いつか連絡を取れることがあるならば、共に働いていた時の感謝をしっかり伝えたい。
この本を見てそんなことを思った。
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早稲田にある家賃1万円強のアパートでの11年での生活を振り返った本。
今の自分は、このアパートを出た時の高野さんよりもついに年を重ねているのだと思うと、しみじみ。。
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なかなか良い。
著者を中心に個性的な人達と繰り広げられる楽しいエピソード。
どのお話も嘘くさくなくて、現実の臭いがしていい。
続編が出るなら、是非読みたい。
Posted by ブクログ
著者が早稲田学生時代から10年間住んだアパートでの出来事が描かれた自伝的小説。
狭く古く家賃が安いアパートの住人は変わり者ばかり。よくそんなところに住むな……と若干引きながら読んだ。引きながらも、森見登美彦小説に出てくるような学生って本当にいるんだなと感動した。自分にはできないけど、こういう生活をした経験っていいなと思う。
友達とバカなことをしたり住人の面白おかしさだったりのエピソードを読んでいたはずなのに、最後はなんだか感動してエモい気分になってしまった。すごい人だ。
Posted by ブクログ
電車で読んでいて思わず笑いそうになった。
どのエピソードも嘘のようだけど、これはエッセイだから多分本当の話。
変な住人たちのシュールな姿が面白い。
自分のルールに則った正義を守る、熱血でお節介なケンゾウさん。金だけでなく、時間もケチる守銭奴。天然だけど強い大家のおばちゃん。
こんな人たち、隣にいたら対応に困りそうだけど(おばちゃんは面白くていいかも)、話題には困らないだろうなぁ。