高野秀行のレビュー一覧
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世界各国の辺境の地を好んで旅する著者のエッセイ、対談などをまとめた一冊です。著者の旅する場所は、もちろん観光地などではなく、危険すぎてあまり外国人が近づきたがらない土地ばかり。ゲリラに同行したり、アヘン中毒になったり、違法に国境を越えたりと、一般常識を逸脱することもしばしば。こんなことしていて、よく生きて帰ってこられるなぁと感心してしまいます。けれどご本人は、旅をすこぶる楽しんでいらっしゃる。タイトルに〝中毒〟とあるとおり、もはや普通の旅では満足できないのでしょうネ。旅には憧れるけれど、できればのんびり温泉にでも浸かっていたいという自分のような凡人には、とてもまねのできないことです。こうした読書を通して疑似体験を楽しんだあと、いつもしみじみ思うのは、あぁ、人生は一度きりなんだなぁということです。
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今回のテーマは「愛」。
うすぐら~い印象になりますね、怪談のテーマが愛だと。そういう印象持つのは、愛っていうハッピーなイメージと同じぐらいに、どろどろした憎しみのイメージがあるからでしょうね。
そんな恋愛したことないですが。
全話通じて、過ぎたるは及ばざるが如し、っていうのが思い浮かびます。なんかもう、気持ち悪いさが酷い。
怪談って、怖さなんだけども、今回は気持ち悪さです。
そういうお話になるきっかけの心の動き自体は、理解できないものではなかったりするので、余計に。
行き過ぎた愛欲の気持ち悪さ。異性・同性・家族・他人問わず。
「犬小屋のこと」が一番怖く。
「ある姉妹」「隣のベッド」で人の心が怖くなる。 -
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「辺境」をこよなく愛する。先進国という「出来上がった場所」にはない意外性と、想像もつかない非常識に出会うワクワク感。ミャンマーのアヘン栽培三角地帯からタイへの帰還後。「ターミナルのそばにはセブン-イレブンがあり、つい2週間前ほど前までは世界の果てみたいなところにいた私は、その過剰としか思えない豊かさに呆然とした。」。そう。そうやねん。日本も、過剰やねんよなー、あまりみんなそう思ってないみたいやけど。
探検部つながり秘境つながりの作家との対談。
また、辺境ノンフィクション本の書評。短い文章から著者の視点の独自性と読ませる力が伝わってくる。次は長編を読んでみよう。 -
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一般に飲酒がタブーであるイスラム教国で、酒を求めて徘徊する紀行文。酒好き、旅好きとしては「イスタンブールのゴールデン街」、「ムスリムの造る幻の銘酒を求めて」といった章題を追っていくだけでもわくわくする。
訪れる国はプロローグも含めて、カタール、パキスタン、アフガニスタン、チュニジア、イラン、マレーシア、トルコ、シリア、ソマリランド〈ソマリア〉、バングラデシュ。
酒に対する筆者の欲求は同じ酒飲みから見ても度を越しているようにも思えるけれど、その執念が生むエネルギーこそが、異国におけるタブーという建前の向こう側を覗くエネルギーになり、そこから垣間見える本音はステレオタイプのイメージを塗り替えてくれる。 -
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私は酒飲みである。休肝日はまだない。
すてき!!あたしこの著者と旅したいーー!!
イスラム圏やインドにいたとき、酒が容易に手に入らないところでは「我慢する」という手段しか知らんかったわ…まだまだ甘いな。
高野さんの執念に敬意を覚える。
どんなところでも人がいるところに酒はあることを学びました。
酒を切り口に、宗教やイスラム圏の生活を知ることができる本。
人って「後ろめたさ」を共有することで、何か深い絆で結ばれるような気がする。
お酒って美味しいのと酔えるのに加えて、「後ろめたさ」を伴うのがいいのかも。
宗教についても、改めて興味が湧いた。
また、本の中に度々登場する森さんの写真がすきです。 -
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なぜか感想をアップしていなかったことに気づき、この機会に再読。高野さん、飲み過ぎでしょ!と突っ込みつつ、やっぱり笑ってしまう。ほんと、酒飲みってこうだよなあ。お酒のため、とりわけうまいお酒のためなら、いそいそと大抵のことは面倒に思わない。他のことにはズボラでも。
表向き飲酒が禁じられているイスラムの国々だが、人々はやっぱりお酒を飲んでいる。高野さんはなんとか地元の人と一緒にワイワイやりたくて、ずいぶん怪しげなところにも足を踏み入れていく。読者も一緒にその場にお邪魔しているような臨場感たっぷりのエピソードを読んでいくうちに、イスラム社会の姿がぼんやり見えてくる。そこが最大の読みどころだろう。
世界のどこでも人々は、その時々で移り変わっていく政治と宗教のあり方に翻弄されないではいられないが、それでも古くから根付いてきたその土地、その民族の文化はしぶとく息づいている。本書を読むとそのことが実感できる。
たいそう面白いと思ったのは、バングラデシュのガイドで仏教徒のバイさんが「仏教では酒を厳しく禁じているのに、どうして私たちは酒を造って飲んでいるのだろう?」とつぶやくくだり。言われてみれば実にそうで、飲酒は五戒の一つ、殺人と並ぶ大罪なのだった。まったく不思議なことで、高野さんも「仏教圏最大の謎」としつつ、次のように書いている。
「イスラム圏には裏表があるが、仏教圏には裏表では済まない曖昧模糊とした複雑な世界が広がっているのであった」
この本は写真がたくさん収められていて、それがとても美しく、味わい深い。表紙に使われている写真も紺色が本当にきれいだ。いい本だなあ。 -
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『謎の独立国家ソマリランド』が非常に面白かったので、そこで「似てる!」と高野氏が評していたブータンを書いた本書にも挑戦。
相変わらず面白い!
今回は自らの疑問を確かめに、というのではなく、仕事として依頼を受けての旅だったようだ。え~、なになに、生物資源調査…?医薬品や食品を作るための研究開発と。政府の公式プロジェクトで、本格的に始めるための第一弾調査ということらしい。
ご本人も、そんな専門知識もないのに調査なんて!と思いつつも、「雪男、いるらしいですよ」の一言にほだされて行くことしたとかなんとか。
う~む、さすが高野氏。
幸福の国ブータンにも被差別民はおり(政府としては解放されたとしているらしいが)、屠畜を生業とする者がその対象になるらしい。大乗仏教圏ではそういうところが多いのだそうだ。上座部仏教圏(タイやミャンマー)ではそうでもないというから面白い。
ソマリランドでも屠畜業者は差別されていると言っていたから、そのあたりが共通しているというのが興味深い。
昨年(?だったかしら?)来日されたワンチュク国王の記述もあり、「イケメン!」と評しているのがちゃんとイメージできるのでなんだか嬉しかったりして。
で、結局、高野氏の興味の中心、雪男やら未確認生物やらの話に終始し、高山病に苦しめられたり、あちらこちらで現地の人々にお世話になりまくり、珍道中のようになりながらもブータンを満喫(?)しているわけだが、私の読む限り、最後まで依頼された「生物資源調査」なるものはまったくされていないような気がする…。
果たしてこれで大丈夫だったのだろうか??
それとも私の読み込み不足?どっかでやってたっけ?
それにしても高野氏、ブータンのゾンカ語まで喋れるようになっている。
一体、何か国語がおできになるのでしょう? -
Posted by ブクログ
古本で購入。
高野作品3冊目。
自身のブログに寄せられた
「インドの『謎の怪魚 ウモッカ』を探してください!」
というコメントをきっかけに、怪魚ウモッカ調査計画が動き出す!
それは確か。間違いない。
でもこの本のすごいところはそこじゃない。
それは…
ウモッカ目撃地たる「ウモッカタウン」にたどり着けないところなんです。
なぜたどり着けないかは読んでほしいんだが、そんなの本にするか?普通。
結局、現地を歩いたのは高野の相棒のキタ。
高野はキタとのメールのやりとりでウモッカタウンの様子を知る。
そんなドキュメンタリーはなかなかないなぁ…
しかし「看板に偽りあり」と言うべからず。
確かにウモッカの正体を探るべく「格闘」してるし、「インドへの道」が重要ポイントなのである。
ある意味掟破りの冒険ドキュメンタリーだけど、テンポが良くておもしろい。
バカやってるけどこの筆者はすごい、と思わされます。 -
Posted by ブクログ
いや~面白かったです。
ブータンという国のイメージは、あの震災後に日本に来てくれたワンチュク国王の凛とした様子、また龍の国であるという話しなどなどから、大変尊い素晴らしき桃源郷のような国であろうというように思っていた。
そうしたら、高野さん、人口はだいたい八王子と一緒くらいときた。雲の上の素晴らしき国と思っていた所が、急に身近と言うか、下世話な感じがしてきた。
今回の高野さんの表向きのミッションは国家プロジェクトの基礎調査。しかし本当の(!)調査は雪男をはじめとする不思議生物の存在を確認することだ。
いまどきはグーグルマップなどで世界中のどこでも家にいて見られるようになっているのだから、本当の未開の地なんてなく、不思議生物もいない…なんてことはなく、だからこそいるんじゃないか、いや絶対いるよって気持ちになり興奮しつつ読んだ。
あと、ブータンはつい最近まで、いや現在もというべきか、半鎖国国家だという点にも驚いた。 -
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やっぱりこれは空前絶後。だって、未知動物探しに「行ってない」のにこんなに面白く読ませるんだものね。普通なら失敗として葬り去られそうなものだが、転んでも(思いっきりすってーんと転んでる)タダでは起きない、というより、転び方こそが素晴らしい。
とにかくインドに行くまでの準備が周到ですごい。現地の言葉を習得してから行くことが辺境旅の秘訣だと、他の著書でもしばしば触れられているが、なかなか難しいことだと思う。高野さんはいったい何カ国語をしゃべれるのだろうか。
また、準備の過程で調査のために会いに行く人たちが、それぞれに個性的で楽しい。ネットでなんでも調べられちゃうご時世でも、顔を合わせてナマの声を聞くことからわかることを一番大事にしているところがいいなあ。
悲願のインド行きは近々何とかなりそうだと少し前に聞いたが、あれからどうなっているんだろう。「神様より気むずかしい」インド政府には是非オトナの対応をお願いしたいものだ。 -
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東京から沖縄まで、インド再入国を神様に祈願しながら自転車で走破した旅を、日記と写真でつづったもの。まあ、高野さんにとっては軽めのトライではあるけれど、結構なペースで走ってるんだよね。ムベンベ探索を共にした野々山さんの言葉「俺は好きなことしかしないけど、好きなことは必ずしも楽なことじゃない」は実に名言で、これもまた「楽しいけどラクじゃない」旅だ。
行く先々で待ち受ける知り合いの方々や、民宿のおばちゃんたちなんかとのやりとりも、さらっと書かれていて楽しい。基本的に一人でする旅だからこその味わいなんだなあと思う。高野さんの旅は、集団でする探検行の場合でも「一人で」という感じがする。そこがいい。ご本人は「集団行動が死ぬほど苦手」とどこかで書いてらしたけど。
各地で出会う、名のある、また名もない社や祠。田舎では神様も仏様も一緒くたで、これぞ日本人と高野さんは思う。まったくそうだよね。それと、南下していくとどんどん東南アジア的な風景に出会うというのにも、なるほどなあと思った。
沖縄までのはずが、勢い余って波照間島にまで行っちゃう。普通ならここで「ああ、遠くまで来たなあ」と感じるところだが、高野さんは違うのだ。
「『あー、どこか遠くへ行きたいなあ』長い旅が終わったというより、やっと旅のとば口にたどり着いたという感じがするのだ。 だってこの先には台湾、東南アジア、南太平洋……と無限の世界が広がっているのだから。」
さすがだ。自分も一緒に世界へと広がっている海原を眺めているような気にさせてくれるとてもいいラストだった。 -
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著者自ら「最高の『バカ度』を誇る」「バカ最長不倒距離」という本書。文庫版あとがきの「今後これを上回るバカな本は書けないだろう。少なくとも、そう願いたいところだ」に笑ってしまった。
ついに朝日読書欄にも登場し、認知度がぐっと高まった高野さん。我が事のようにヨロコバシイ気持ちになりながらも、こんな変な本も書いてるんだよ~んと、これとか「アヘン王国潜入記」とか引っ張り出してきたくなったりする、妙なファン心理なのであった。
この文庫版は何と言っても解説が素晴らしい!井原美紀さんの鋭い観察力と洞察力に恐れ入る。辺境の旅を好む体質について述べられているくだりにはたいそう納得した。
「探検家と普通の人との違いは、その瞬間を怯えながら、苦しみながらも、どこかで(これはおいしい)と喜び、快楽にもだえてしまうところにあるのだと思う」
探検家に必要なのは「タフなサービス精神」「懲りない体質」「健康的で忘れっぽい心」「旅を最初から最後まで遂行するための繊細で緻密な頭脳と、多少のことがあってもびくともしない大ざっぱな神経」「内股の皮が厚いこと」。これはまったく高野さんのことだよね。内股のことは知らんけど。
井原さんが初対面の時の高野さんについて書いているところで思わず膝をうった。私が三月のトークショーで間近に見たときの印象が、その通りちゃんと言葉になっていた。
「地面から5センチ浮いているように飄々と歩くその姿は、冒険ヤローというよりは仙人のようだった。眼鏡の奥からの知的な瞳、穏やかな話し方といい、学者といってもいい」「この地上に縛られるもの(家のローン、口うるさい妻、言うことを聞かない子供など)もなにもないような感じで、哲学的にも身軽そうだった」 -
Posted by ブクログ
「辺境の旅はゾウにかぎる」の文庫版。文庫化にあたって編集し直されているというので読むことにした。うんうん、やっぱり面白い。高野さんの書くものを好きになった人は、さかのぼって色々読みたくなるだろうから、文庫になって読みやすくなるのはとてもいい。
デビュー作「幻獣ムベンベを追え!」が最近増刷になったそうだ。最初の二年ほどはまったく売れなかったらしいが、ちゃーんと生き残ってる。当然と言えば当然だとしても、なんだか自分のことのように嬉しかったりする。
増刷と言えば、「謎の独立国家ソマリランド」も三刷が決定したそうだ。いやあ素晴らしい。あの分厚さや価格、決して一般的ではない内容からしてこれは快挙では? 少し前からあちこちの雑誌に書評やインタビューが載り、日経新聞、読売新聞、週刊文春、と来てあとはいよいよ朝日新聞読書欄しかない!と思っていたら、ついに、今度の日曜日に掲載されるそうだ。おお、誰が評者なの?中島岳志さんかな、ひょっとして三浦しをんちゃんだったりして。ちゃんと読んでくれてる?などと、ファンとしては気の揉めること揉めること。日曜日が楽しみだ。
(追記)
ふと気になって朝日の書評委員を確かめたら、中島岳志さんは去年だった。今年角幡唯介さんが入ってるので、まあ、角幡さんかな。