高野秀行のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
辺境作家高野さんの腰痛との闘いというか、オブセッションの記録。1回6,000円の治療院に通い詰めることができるとは三畳の部屋に一人で住んでいるころから比べるとかなり羽振りがよくなったなあ、とはじめのエピソードを読んでまず思った。結婚もしているし。
実はそれは手始めで、その後の高野さんの腰痛治療の道はあちらに行きこちらに行き行先も定まらないまま迷走を続ける。最後は、心療治療にまで行き着き、うつ病の薬を処方されるまでになってしまう。薬の服用は睡眠にまで影響して明らかにおかしいのだが、高野さんは何かをやらないと不安なのかそれでも薬を飲み続ける。アヘンもカートも中毒になるくらいやっていたので薬に抵抗はないのかもしれないが、アヘンやカートに加えて鬱病の薬も加わるとなるとますます体への影響を心配してしまう。それでも腰痛に病名をつけられ、さらに難病(狭窄症や)だと言われると何だか選ばれた人になった気がして満足してしまう気持ちになるのはわかる。自分も整体に行って「固いですね~、こんなに張っている人もなかなかいないですよ~」などと言われるとなんだか自分の行動に納得して、どちらかというといい気分になるのと同じだろう。それにしても、行く先々でこれほど診断や治療方法がバラバラなのは恐れ入る。あるところでは患部には触るべきではないと言われ、別のところではしっかり患部を揉むべきだと言われる。難病とされた狭窄症の診断も他の病院ではあっさりと覆ってしまう。こうなると、やはり整体や鍼灸は代替医療の一部でしかないのかなと思う。
また、治療する側が妙に自信を持っているのも不思議。ただ本書の中にも書かれているが、治療の効果があったものは通い続け、効果がなかったものは黙って来なくなるのだから、治療者側から見ると自分の施術は完ぺきに思えるのかもしれない。きっとそうなんだ。高野さんだって、やめるときは黙って行かなくなっているし。
自分も腰痛持ちで整体にはよく行くが、一時の気持ちよさがあるだけで完治などはもともと期待していない。直立歩行をするようになった人類特有のものなのだから、ずっと付き合っていくんだろうなと思っている。腰痛の痛さにもよるのだろうけれども、我慢できなくなるのであれば、それはヘルニアか何かになったときだろう。そういった自分の感じ方からすると高野さんの治療にかける執着心は一種異様にも感じる。最後には吹っ切れて今ではうまく腰痛とも付き合っているようだけれど。やぶれかぶれで水泳をやるようになってマシになったということだが、やはり心身ともに運動が大事なのかも。
最近、峠さんの『冒険歌手』を読んだが、それまでの経歴は別としてやはり冒険をするような人は人生の判断基準が変わっているといわざるをえないのかもしれない。彼女の人生もかなり特異である。もしくは、逆に冒険がそのあとの人生にぬぐいがたい影響を与えるということなのかもしれない。 -
Posted by ブクログ
高野秀行のフィクションは、基本的に体験に基づくもので、取材して書いたものではないと思う。勿論このままではなく、色んな体験を合わせて一つの物語にしたのだろう。だからフィクションだけど語り手は高野秀行なのね。
『またやぶけの夕焼け』は少年期の物語で、あれも良かったが、青春期の物語はほろ苦さと切なさがいい。朴さんとの恋愛未満の関係は、今どきの青春ものにはない上品な哀感がある。
アジア人の魅力、日本人の特徴もよくわかって、若者に積極的に薦めたくなる。ろくに外国に行ったこともなければ、外国人と深く関わったこともない奴に限って、近隣アジア人を貶めるようなことを言う。そんなつまらない、嫌な大人になる前に、高野秀行を読むべし。世界が広がるよ。 -
Posted by ブクログ
作者の高野秀行が船戸与一のお供でミャンマーを旅したときのエピソードや出来事をおもしろおかしく描いた本である。
当時のミャンマーの政情を徳川幕府と外様大名に見立てて説明し、この旅についてくる情報機関を柳生一族になぞらえたもので、それが題名になっている。
周辺国から非合法にミャンマーに入国した経験が豊富な作者が、真正面から入国し旅している。本書は、作者が周囲の人々の動向をおもしろく描くだけではない。ミャンマーは最貧国ながら識字率が高いという実態を貸し本屋や読書する少女を観察することで示すなど、現地の人々を見る視線に確かなものもある。
故人となった船戸与一の人となりが垣間見れるのも興味深い。高野秀行さが十分楽しめる本である。 -
Posted by ブクログ
感想:ワセダ三畳で有名な高野さんの本。多国籍新聞社ASIANでの日々を綴った濃密な内容。
まず、この多国籍新聞社そのものが魅力的。タイ、台湾、ミャンマー、マレーシアの新聞を発行しているけど、内容はめちゃくちゃ杜撰。システム化なんかされてなくて編集会議すらやらない。でも、毎月ちゃんと発行されて、利益も出ている。
そこで働いてる人達もかなり個性的。子犬的姫的社長の龍さん、敏腕だけど乙女チックな朴さん、インドネシアの大富豪バンバンさんなど、個性豊かな登場人物がたくさん登場する。
その個性的な題材を高野さんの個性的な文章で料理しているのだから、面白くないわけがない。
高野さんの作品に共通することだが、笑える要素がふんだんに盛り込まれてるのに、かなり核心をつく意見や考察がいきなり放り込まれる。このギャップがたまらない。
読み物としても純粋に面白いし、異文化論に興味がある人にとってもおすすめ。 -
Posted by ブクログ
決して地理的、エネルギー資源的に恵まれている訳でもないのに国民が幸福であるという。
本書では、その幸福の理由が国王にあるとらしいと指摘している。全国行脚を行い、国民から絶大な信頼を得ているブータン国王にリーダーシップのあり方を学ぶべきかも知れない。
まず置かれた状況が幸福であるというところからスタートしているのがポイントだろうか。そして目指すビジョンを先進国とは別の軸で定義している。非常にビジョナリーなリーダーだと思う。
また、ブータン国王同様に著者の高野氏も幸福な考え方を持っている様に感じる。どんな辺境に行っても現地の人と交わり、状況を受け入れる姿勢が素晴らしいと感じる。
もしかして、この本はビジネス書なんだろうか。
ビジョンに基づく国家戦略と現場主義を実行するリーダー。そしてその現場レポートにおいても徹底したコミュニケーションに基づく相互理解。
雪男は、現場でのコミュニケーションを促進するみたいなもの。つまり雪男の話題でアイスブレークしている訳だ。