高野秀行のレビュー一覧
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ネタバレ編集者さんの思惑では「オンリーワンを目指す人々のための指南書」という地点から始まっているはずなのだけれど、そこは高野さんだからありきたりな内容にはならない。持論が面白かった。
高野さんがこれまで体験した面白い出会いや出来事、それらに繋がるまでの過程が書かれているが、やはり誰もやってないことをしているという感が強い。真似しようとしてもここには辿り着けないんじゃないだろうか。ご自身を普通の人間と仰るけれども、全然普通じゃない。いい意味で。
大学の非常勤講師をやっているとき、学生が授業に癒しを感じているらしいという話があったが、読者としてもそうかもしれない。知らない土地と人のことを聞いていて単純に面白いというのもあるけれど、高野さん本人やその出会った人たちには「人生何とかなるかも」と思わせてくれるエネルギーがある。小さなことで悩んでいるなと気づかせてくれたりもする。
本来みんながオンリーワンなのだけれど、悩む人にはぴったりの本かもしれない。 -
Posted by ブクログ
高野さん6冊目。
高野さんの本は海外に行ってアレコレ面白いことをする者がほとんどだけど、今回は海外から日本に来た外国人と高野さんが関わった中でのお話。
やはり”ヘン”な人は“ヘン”な人と縁があるのだなぁと、高野さん流の外国人との交流を笑いながら楽しく読ませていただいた。
この中に、高野さんが大学を無事7年生で卒業できるキッカケとなったエマニュエル・ドンガラさんも出てくる。高野さんが訳した(卒論にもなった)この方の著作も読みたいなとカチカチ調べていたら、メルカリでドンガラさんの名前で検索すると「ジョニー・マッド・ドッグ」という映画のDVDが出てくる。これは大学の平和についての授業で、先生が映画好きなのか毎回内容に関連しそうな映画を紹介してくれるのだが、実際の内容と日本版の予告があまりにも乖離していて先生が苦言を呈していたものだったので記憶に残っているものだった。どうやらこの映画の原作は未翻訳ふだがドンガラさんの著作らしい。自分にも意外なところで縁があったのだなあと感じた。本の内容とは全然関係ないが笑 -
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高野秀行氏がナビゲーションを務める『三大陸周遊記』にやって参りました!彼が手掛けたまえがきはやっぱり面白かった!何ならもっとはっちゃけても良かったくらい。
面白いだけでなく、彼特有のユーモラスな語り口調のおかげで十分良い予習になるし、面白い視点のまま本書に臨める。
著者のイブン・バットゥータは、モロッコ出身の大旅行家。
22歳の頃聖地メッカ巡礼を目的に故郷を離れたが、やがて世界旅行へと乗り出す。その範囲は北アフリカからユーラシア大陸を横断して中国と、ザッと世界半周は制覇している。
本書は1977年刊の同タイトルに高野氏のナビゲーションを加え、復刊したもの。高野氏曰く原書の4分の1に抄訳されており、担当したのは日本で初めて『アラビアン・ナイト』を翻訳した前嶋信次氏であるとの事。
高野氏が述べているように、同じ旅行記でも『東方見聞録』よりは読みやすいと思う。
(イブン・バットゥータより50年程前に生きた)マルコ・ポーロの『東方見聞録』も、『三大陸周遊記』に引けを取らずスケールが大きい。しかしリアリティに欠けていて拍子抜けする箇所もあり、実際「ジパング」のように訪れてもいない国について「見聞」だけで乗り切ったりしていた。
本書は北ア〜中国の広大な範囲、つまり彼が「実際に」訪れた国々を余すことなく記録してくれているから、一旅ルポとして自然と楽しめる。あとは彼自身が敬虔なムスリムで、旅の行方を「神(アッラー)の思し召し」と捉えているところも、紀行に穏やかな彩りを添えていた。
全体を通して客観的な文章だったけど、下記のように民間伝承っぽい話も紛れていたりする。
イブン・バットゥータを乗せた船が40日以上遭難した時、前方に見覚えのない山が見えた。それを船乗り達は「ルッフ」(巨鳥)だと嘆き、イブン・バットゥータも必死に神に祈りを捧げる。結局「アッラーは絶好の風を送り、反対の方向に船を転じさせ」、彼らはルッフと対峙することはなかった。
この辺とかシンドバッドの巨鳥とクジラ島のエピソードを合わせたみたいで、読んでいて気持ちが浮き立った。40日以上も知らない海上を漂流していたら、幻覚を見てもおかしくない。『東方見聞録』とは違ってまだリアリティがあるし、読者の想像も無理のない範囲で膨らむ。
「いま世界で起きていることは、イスラム教とは関係ない。ただ憎しみを増幅させているだけだ。ほとんどの問題は、他者を尊重しないから起こるんだ」
『パリのすてきなおじさん』という本に書いてあった、現代を生きるムスリム移民の言葉である。本書の旅の節々でそれを思い起こしていた。
例えばメッカの人々は、異教徒も大切にもてなしていた。ダマスクスでは慈善財団が発足されており、同じく異郷の者への生活支援も手厚かったという。道中異教徒の襲来もあったりしたが、彼の目を通した14世紀の世界は不思議と調和が取れているように思った。
旅の大本命だったメッカの優しさに心打たれ、自分も世界の人々と分け隔てなく交流したいと思ったのか。旅が30年も及んだのは、その思いもあったからなんだろうか。
これも無理のない範囲の想像だったらいいな。 -
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世界最古の文明ことメソポタミア文明発祥の地、
ティグリス川とユーフラテス川流域の湿地帯“アフワール”を旅した冒険ノンフィクション。
おそらく多くの日本人にとって危険なイメージを持たれている国イラクに、コロナ禍を挟んで3回も渡航しているバイタリティが凄いし、現地の人と“友達になる”コミュ力にはただただ脱帽。
現地の食文化、宗教観、ライフスタイル、価値観に時に驚かされ、時に考えさせられた。
湿地帯の葦でできた館“ムディーフ”はシンプルな構造でいて豪華絢爛、水牛の乳製品“ゲーマル”も一度で良いから食べてみたくなるくらい美味しそうだ。著者らの冒険を通じて古代文明、シュメール人に思いを馳せるロマンがある。数多くの写真と洗練された“山田隊長”のイラストが差し込まれているおかげで、イメージもしやすい。
また、その場で手に入るありあわせのものでモノづくりをする“ブリコラージュ”は、準備段取りを重視しがちな日本人にはなかなかない発想で、良い気づきになった。
「誰も行かないところへ行き、誰もやらないことをし、誰も書かない本を書く」著者のポリシーが詰まった渾身の一冊。
Bunkamuraドゥマゴ文学賞 受賞(2024年)
植村直己冒険賞 受賞