高野秀行のレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
高野先生の新著書が出たので楽しみに読みました。面白かった!
「イラク水滸伝」と同じエリアの旅でしたが、川下りと通常の陸路の旅でここまで印象がガラッと変わるとは。。川下りは2人だけでするからか同行者の山田隊長の存在感が前作よりも濃かったです。めちゃめちゃ面白くてチャーミングな方ですね。
そして、探検家?としてのお二方のど根性に脱帽です。わたしなら風邪っぽくてお腹下してる時に川下りはきっとできません。。でも、きっと行った人にしか見れない景色、味わえない食事、触れ合えない人々との交流があるのでしょう。
食事といえば「ガブルガ・ドルマス」がものすごく美味しそうで食べてみたいです。ただ、そんじょそこらでは食べられなさそうな代物ですね。いつか巡り会えたらきっと食べます。その前にまずは駅前にきてるキッチンカーのケバブを食べようかな。 -
Posted by ブクログ
1人のコンゴ人の人生を綴った物語。呪術や非現実的な現象、氏族の伝統への縛りから、アフリカ各国が経験した植民地主義と抵抗の歴史まで、とにかくそういったことに翻弄される主人公の、力と知への探究心が凄かった。そして、無敵だった主人公に「老い」がやってきた時、少し胸が痛くなった。
私の推しである高野秀行氏が、大学時代に作者の弟と知り合いだった関係で、ひょんなことから原稿を読む機会があり、めちゃくちゃ感動してそのまま日本語に訳したのがはじまりだそう。
作者はこの物語を15年かけて書いたという。
こんなスピードで読み進めていいのか、作者に失礼ではないか、と思うが、とにかくページをめくる手が止まらなかった。素晴らしい作品。 -
Posted by ブクログ
謎のアジア納豆に続く納豆シリーズにして完結編?
謎のアジア納豆は高野さんの本を読むようになったきっかけでもあり、昨今の朝食がほぼ納豆めかぶご飯になったきっかけでもあります。
さて、前回から更に範囲を広げて、韓国もありますが題名通りアフリカがメインとなっています。
前回と同じく、色んな国で色々な形で食べられているなと。それ食べてみたい、というものが沢山。
旨味調味料的に使っているのは、味噌や醤油、鰹節や昆布が発達した日本とはまた違いますね。ただ先日水戸の藁納豆を買ってみて、強烈な昆布のような旨味があり、納得しました。
そう、色んな納豆を試すようにもなりました。
茨城物産館にあった、くろまめの塩切納豆というのが非常に良かった。日本にも大豆以外の納豆あるやん、というのと、塩切りも初体験でしたが、粒が大きくふわっとした食感、旨味の強さなど良かったです。
本の話に。アフリカの納豆を追って、持ち帰ってきたものを使って食べ比べ、で終わるかと思いきや、その後の納豆発祥の考察がまた唸る内容でした。確かに、その時代から食べられていてもおかしくないかも…と納豆、いや納得してしまいました。 -
Posted by ブクログ
高野秀行さんの最新作。チグリス・ユーフラテス川を隊長こと山田さんと共に川下りをするという話し。
文明発祥の地の探検ということで、探検道中の出来事はもとより、文明について、プレートテクトニクスによる造山活動について、その地域の弦楽器について、イスラム教の変わった分派について、そしてクルド人の置かれている状況など、話が縦横無尽に飛んでいく。
昔は遭遇した出来事を面白おかしく書いているだけだったが、長年の執筆活動で培った筆力はさすがで、色々と知識や感想を交えながら難ししくはならずに噛み砕いて書く技術はなかなかのものである。特に今回のパートナーの山田さんは自然科学的なものの見方だけでなく、古典にも通じ、川下りのプロであるためこれまで以上に高野さんの旅を豊かなものにしてくれている。
途中コロナがあったからかもしれないが、川下りをした2018年から6年後に再訪して再びの川下りのことまで書かれている。
本書では随所に山田隊長によるわかりやすいイラストが挿入されておりより川下りの様子がわかりやすくなっている。
久しぶりの高野さんの本を堪能できた。 -
謎の独立国家ソマリランド
- カート
-
試し読み
Posted by ブクログ
ネタバレ今更ながら読んだこの本、強烈に面白かった。
ソマリランド、というアフリカの角の旧ソマリア一角にある、「独立国家」に深く入り込んで取材した本。ソマリランドがどのように成り立っているのか、ソマリ人とはどういう人たちなのかが描かれる。
著者の高野秀行さんが徹底して「実感」を通してその国や文化の構造を理解しようとしているのがすごいなと思う。
欧米式の研究やジャーナリズムでは欧州以外の外国文化を「他者」として研究の対象にして外から観察してしまう傾向が強く、それが評価を下すような鼻につく感じがあるけれど、高野さんのスタイルは中に入り込んで、そして、自分たちの知っている感覚の似たものを想定しながら理解をたぐり寄せようとする感じ。そこがとても良かった。
そして、ものすごくわかりづらくなりそうな、ソマリの氏族の感覚を日本の文脈で腹落ちするように工夫された説明が秀逸で面白く、それがソマリ人たちの文化を身近に感じる効果を抜群に挙げているところが素晴らしかった。
ソマリランドの民主主義のユニークかつ合理的な様子、ソマリ社会内の独自の力学で犯罪や損害の賠償がなされている様子、アフリカ諸国への国際支援がどういう効果をもたらしているか、など、中に入ってしっかりと見ないとわからないことが盛りだくさんで、本当に興味深かった。
特に面白すぎると思ったのは、今の独立国家を作った長老の1人が書いた「ソマリランドの憲法の発展」という英語の学位論文は体系的ではあるものの、ソマリの紛争解決の重要な方法「ディヤ」については全く触れられておらず、西欧文明でわかる範囲のことしか書かれていない、ということ。
本のその箇所まで仔細にかつ面白く高野さんの調査によりディヤの機能について理解してきたのに、論文では「西洋文明では理解できない」から書いていない、という。へ?じゃぁ、英語圏の人がこの論文読んだってソマリの憲法、わかったことにならないよね、この繊細さ、巧妙さが、となった。
西洋文明の文脈で理解できる程度に複雑さを排し、簡単に書いている訳で、もうあいつらに言ってもどうせわからんし、と諦めているところが面白いというか、欧米の専門家を助長させてるよなぁ。。現状仕方ないけど、などと思う。
世界は欧米の人たちがわかるように単純化して欧米に合わせて記述されて、そういう英語や欧米の情報だけに頼っていると、世界の豊かさや複雑さは到底わからないのだなと強く思った。
日本語が読めて、高野さんの本が読めて本当に良かったなと思う。
-
Posted by ブクログ
温度、湿度、風、川の音、川の周りの景色、匂い
詳細に、だけどしつこくないさらっとさで描写されていて旅した気分になれた。
美味しい食べ物の話しも盛りだくさんで、
飽きずに読めた。
自分にとって大きな収穫はクルド人についてで、この本を読むとクルド人と言われる人々を取り巻く環境が概ね理解できた。
日本でも問題になっているけど、島国日本人の立場からでは理解し得ないクルド人の成り立ち、歴史的な背景からくる問題がある。
しかもこの本の良いところは、それを伝えようとして書かれているわけでなく、あくまで川旅の中でで会う人々を正確に描写するために必要な説明として書かれているからとてもフラット。
中立の目線で知ることができて勉強になった。 -
Posted by ブクログ
高野さんの本を何冊か読んだ共通点は言語を学び文化を学びその土地に順応して文化、生活のレクチャーを受けるので読んでいくうちに現地の皆さんのキャラクターが浮き彫りになって読み終わる頃には名残惜しくなっている事。
冒頭にもあるけどイラクと聞いて「戦争、紛争、」「ヤバめのイスラム教」みたいなイメージしかなかったけど読んで思ったのはやばいのは政治(または宗教絡みの政治)でそこで過ごす人々は活気があってチャーミング、文化もあるが懐に入れば情が厚く手助けもしてくれる。
水路が複雑で地図も書けない湿地帯は古くから社会からあぶれたならず者達が逃げ込む場所にもなっている。中国の水滸伝になぞらえているけど水滸伝の知識1mmもなく読んでおけばもっと楽しめたかなと(目に見える水滸伝要素は地名や人名をなぞらえる程度だけど空気感とか)
フィナーレは2回目の渡航で製作した伝統的な舟、タラーデを水に浮かべ湿地帯を進む。
湿地帯を舟で旅したいと始まった探検だが4年越しに紆余曲折あってやっと叶っており、しかも一緒にイラクで出会った仲間達もいて漠然と高野さんの人生は美しくて素晴らしいなと思った。映画みたい。
湿地帯の水量は年々減り続け、若者は民兵になり水牛を飼うものも減り、シュメールからの伝統的な生活は失われつつあるらしい。人間の生活は大河の様で連綿と流れて行く中で支流が混じり合い上流の水のままではいられないけど湿地帯に豊かな文化があった事がこの本で記録に残ってよかった。
頻繁に出てきたブリコラージュ(ありあわせの道具や材料を寄せ集めて、自分の手で何かを作ったり修繕したりする行為)という言葉。
元々の湿地民、アウトロー、戦争の敗者、ゲリラなど色々な人々が集まった湿地帯のことそのものだし、今回切り取った生活、文化もこれから変化してまた新しい文化になりブリコラージュされていくんだろうなと思った。