高野秀行のレビュー一覧
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謎の独立国家ソマリランド
- カート
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試し読み
Posted by ブクログ
ネタバレ2009年と2011年のソマリア--ソマリランド、プントランド、当時の暫定政権が一部を統治していた南部ソマリア--取材旅行をまとめた本。遠慮が無くカネにうるさく氏族を中心に考えるソマリ社会に著者同様に驚き呆れることの連続だった。
本書では主にソマリランドを中心に話が展開する。2度の内戦を経験しながら他のソマリ地域より平和で民主的な「国家」たり得ているソマリランドの歴史と政治体制は興味深い。氏族主義が浸透しているからこそ氏族単位では扱いきれない政治からは距離を置きつつ、氏族の長老たちが政治家たちを監視するシステムは画期的だが合理的だ。本書で幾度も触れるソマリ人の実利を重んじる性分にも合っているのだろう。
プントランドにて著者が半ば本気で海賊行為を立案し試算してみたり、言動や考え方が知らず知らずのうちに“ソマリ化”していたりとクスリと笑える箇所も多数。また、次の表現は本書で特に言い得て妙だと思った。
(前略)私が思うに、国際社会、もっと端的に言えば国連というのは、「高級な
会員制クラブ」みたいなものではないか。
人類普遍の理念に基づいた公平な組織と勘違いされることもあるが、実際には民
主主義とも人権とも直接関係がない。
なにしろ、このクラブは5人の理事の権限がひじょうに強く、理事の一人が反対
すれば、どんな素晴らしい提案も却下されてしまう。そこからして反民主主義的
だ。それに理事の一人である中国自体が人権や民主主義とは無縁だし、会員にも非
民主主義国家がたくさんある。
それはしょうがない。なんせ、第二次大戦の戦勝国によって任意に作られた会員
制クラブなのだから。公平や正義を期すほうが無理である。(後略)
※第7章8
2020年代のソマリ地域--ソマリランド、プントランド、ソマリアはどのようになっているのか、著者には引き続き取材してもらいたい。 -
謎の独立国家ソマリランド
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Posted by ブクログ
'語学の天才まで1億光年'を読んで、すっかり、この著者の作風や破天荒な内容に魅了された。
本作は、この著者の原点とも言うべき、早稲田で過ごした11年間の驚きの生活や、そこに下宿している奇妙な人々の記録である。探検部の後輩からの紹介で、実家からこの下宿に転がり込む。
三畳一間で鍵はない。誰でも自由に出入りする。太っ腹な下宿のおかみさん、司法試験浪人という不動の地位の住人、ドケチも超がつく非日常的な動きをする住人など、世間離れした人物が集う異空間。エピソード形式で綴られていく世界が、ウソ?と思える連続で、読むほどに味わいがでてくる。最後に下宿を出る話になるが、何だかほんのりとしてくるのも、この作者の話法の魔法かも。 -
Posted by ブクログ
雨の日に数時間で一気読みしてしまった。高野さんの人生体験、人生観、モットーといったものが展開されている。
最初から奇人変人だったのかと思いきや、高校まではどこにでもいる品行方正な優等生。早稲田に入って周りの高い才能に気付いてこれと伍していくために奇襲作戦を常にとるようになったとか。そして行き着いたところが、人が行かないところに行き、やらないことをやり、それを面白おかしく書くことがモットーになったという。
彼のモットー10条に沿って話が展開され、どれもこれも面白いが、あとがきで、更に煎じ詰めると、
以下の3点、とりわけ③に尽きると言う。
①とにかくやること
②手段を選ばないこと
③正しいかどうかより面白いかどうかで決めること
この3か条(②は手段の幅にもよるが)は、間違い力でも何でもなく、十分正道なクライテリアだと思う。 -
Posted by ブクログ
最高。なんか、泣ける。
高野秀行氏と言えば、いつも無茶苦茶なことに自ら突っ込んだり時に巻き込まれたりして大変な思いをしつつ、それを面白さに変換しながら、やりたいことをやって、したたかに生きる人だ。
簡単に言えば、自由で柔軟な人。読者は、そこに憧れるんだと思う。ほんとうは私だってこんなふうに生きてみたい、と。
本書は、著者の自伝的一冊で、タカノ青年があるアジア系新聞社"エイジアン"で働くことになった数年の顛末を描いている。スタッフはほとんどがアジア系のメンバーで、著者以上に自由でしたたかで驚くほどいい加減である。そもそも読者にとって高野秀行氏こそがもっとも変で魅力的な生き物であるのだが、この新聞社には、彼を圧倒するパワーと奔放さを持ったさまざまな人々が集まっている。あのタカノ青年が、振り回されっぱなしである。エピソードのすべてが、日本の会社ではあり得ないもので、普通の日本人ならついていけないものばかりだ。だがそこにタカノ青年は魅力を感じ、新聞づくりに奔走する。
タイトルの"アジア新聞屋台村"とは、この新聞社を指すもの。屋台村のように、それぞれの特色を活かしたさまざまの料理を提供する。ある料理が不評ならすぐにやめて別のものを出す。客が少なければ座席を減らすし、増えれば拡張する。自由で柔軟である。
だからこそ発生してしまう、ヘンテコな状況を彼らはどう切り抜けるか?見事と言うほかない無茶苦茶さとしたたかさに、読者は爆笑しながら時に涙することになる。
全六章プラスエピローグからなる本で、もう全編最高におもしろいのだが、とくに第六章の盛り上がりはグッとくる。エピソードの強さに目が行きがちだが、それを生かす著者の筆力があってこそである。渦中にはまり込んで右往左往したあと、それをちゃんと検証し直す冷静さがある。その冷静さこそが、"なんか泣ける"奇妙な味わいを生んでいると思う。