高野秀行のレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
いつも楽しみにしている高野さんの本。
今回もすごく面白かった。
話の中心は旅先で出会う様々なクルドの人々。
読んでみるまでメソポタミアとクルド人が全然結びついてなかった。
クルド人といっても住む国、宗教、支持政党など様々に違っており、考え方や生活スタイル、言語なども一様ではないことを知った。
川を旅して、キャンプをはって、その土地に暮らす人と触れ合うことで、心からその土地と人をわかろうとする筆者の姿勢は素晴らしいといつも思う。
どうしても日本では問題ばかりがクローズアップされてしまうが、メソポタミアの地で日々暮らすクルドの人との交流を書いた、希少な本だと思う。
-
謎の独立国家ソマリランド
- カート
-
試し読み
Posted by ブクログ
ネタバレノンフィクション作家である高野秀行さんが謎の国家に潜入取材を行った記録を書いたこの本。高野さんは、とある番組で知っていたが初めて著作を読ませていただいた。ソマリランドという国を知ったのはいつであったか、携帯で時間つぶしにWiKiでソマリアのことを調べたのが切っ掛けであった。ソマリア海賊の話などをニュースで聞き、物騒な国なのだと思っていたが本を読んでその民主的な先進性に驚かされる。願わくばこの国家が大国の思惑に左右されることなくその彼らなりの平和を享受してほしいものである。本一つで大陸の謎国家に旅させてくれた高野氏に感謝したい。しかし、カートを噛んでみたいと感じてしまったのは内緒である。
-
Posted by ブクログ
ワセダの三畳間で燻っていた若者が、ひょんなことからアジア系新聞社に関わり、多国籍な仲間たちと新聞作りに振り回されていく自伝的ノンフィクションです。
読んでいてまず感じたのは、“昔のアジア雑居ビルみたいな熱気”でした。台湾人社長、中国人編集者、タイ人記者、怪しいブローカーみたいな人物まで入り乱れていて、新聞社なのにどこか屋台街みたいな胡散臭さがあります。
特に印象に残るのは、みんな理想や夢を語るのに、現実はかなり適当で泥臭いところでした。
原稿は飛ぶし、金もないし、トラブルも絶えない。それでも、不思議と前へ進んでしまう勢いがあり、90年代アジアの雑多なエネルギーがそのまま閉じ込められている感じがあります。
著者らしい“危ない場所ほど面白がってしまう視点”がずっと心地よく、異文化交流というより、“カオスの中で人間同士が雑に繋がっていく面白さ”が残る一冊でした。 -
Posted by ブクログ
当たり前であるが、UMAは発見された途端にUMAではなくなる。UMAには2タイプある。本当に存在するのに発見されないもしくは絶滅してるタイプとそもそも現地の人の心にしか存在しないタイプ。前者はかつてはUMAだったゴリラやオカピなど。後者は永遠にUMAである。
高野作品の未知動物は圧倒的に後者である。にもかかわらず、著者は発見したい気持ちを持って現地に挑む。そこが読み手をワクワクさせる。そしてだんだんと、なぜそのような未知な動物がいると現地の人が信じているのかに興味が湧いてくる。
読み終わって感想を書こうとして、著者のあとがきを読むとここで書こうと思ったことと同じようなことが書いてあって、手が止まる。(^^;;
が、そのまま書いた。 -
Posted by ブクログ
北アフリカから中国まで、3大陸にまたがる大冒険をしたイスラム教徒イブンバットゥータさんの冒険記。中世イスラム世界が豊かに描かれていて、旅行記としてシンプルに面白い。14Cの内容であるが、違和感少なく、読み進めることができる。
現代日本とかけ離れた世界であるから、風俗や生活などの描写はすべて刺激的で面白いのであるが、特にインドでの話が強烈である。「黄金と死の都」と小題が書かれているように、金銀財宝の山と死体の山が隣り合わせの世界であり、とくに残虐さが度を過ぎている。笑える内容では全くないのだが、あまりにもイカレすぎてて、笑ってしまう。
「インドのスルターンは、・・・謙遜、公平であり、貧民を憐れみ、底なしの太っ腹を示しながら、人の血を流すことが何よりも好きである。王宮の門前に殺された人々の横たわっていないことは、まず珍しい。わたくしは、その門前で人を殺し、その屍をさらすさまをいやという程見せられた。ある日、参内しようとすると、わたくしの馬が怯えた。前方を見ると地上に白い塊があった。「何か。あれは」というと、同行の者が「人間の胴体です。三枚に切ってあります。」と答えた。」
「わたくしは、ある大きな学院に宿り、その屋上で眠ったが、深夜、ふと目覚めると、あちこちに人間の皮がぶら下がっているのが見える。」
インド編はずっとこんな調子。バットゥータさんも、これにはさすがに、嫌気がさしたり、落馬しそうなほど驚いたりしている。 -
Posted by ブクログ
ケシの花畑の中で銃を手に持ち満面の笑みを見せる若い兵士たち。
突っ込みどころ満載の表紙である。
「アヘン王国」「潜入記」。
突っ込みどころ満載のタイトルである。
さすが高野秀行。
ミャンマーの北部、中国雲南省と国境を接する山岳地に、アヘンを主力産業とする小さな州がある。
王国では、ない。
そこに、ビルマ国籍を持つ者として中国から国境を越えて潜り込む。
潜入だ。
文字を持たず、ラジオ局も持たないワ州の人たち(ワ人)は、自分たちの住む部落周辺が世界のすべてであるという。
多数民族国家であるミャンマーは、ビルマ人以外の主要少数民族だけでも20以上あり、細かく分類すると120以上にも分けられるらしい。
ビルマ語を知らず、ビルマ人など見たこともないようなワ人ばかりの集落で、著者は7ヵ月を過ごす。
多少の貧富の差はあっても、基本的に自分たちの身の回りにあるもので生活していく暮らし。
特別の宗教はないが、祖先の霊を祀り、年長者を大切にする暮らしは、昔の日本の田舎と同じなのではないか。
にほんでも、昔はたばこ農家があったように、ワ州でアヘンを作っているのは、ただ需要があるからに過ぎないのではないか。
著者はアヘンをそのまま産業にするのではなく、アヘンからモルヒネを精製して主力産業とするよう提言したが、まず「モルヒネ」が伝わらない。
「モルヒネ」の説明のため、「ガン」の患者の苦痛を除去する…というと「ガン」とは何か?と聞かれる。
それでも中国語の文章で提言書を作って提出したが、ミャンマーの政府軍、巨大反政府ゲリラ軍、中国軍、アメリカ政府などの政治的駆け引きの中で、それはどこかに消えてしまった。
今、かの地では、日本の支援によりそばが栽培されているらしい。
言葉もわからず、生活習慣も全くわからないまま潜入した著者は、そこでケシの種をまき、畑の雑草をむしり、ケシの実からアヘンの汁を取る体験をする。
さらには、村人たちと酒を酌み交わし、マラリヤに罹り、シラミに集られ、アヘン中毒にもなる。
頭が良くてアクティブでアホな高野秀行が満喫できる、これは著者の背骨といっていい好著だ。 -
Posted by ブクログ
ミャンマー北部で政府から事実上独立しているワ州の村に半年以上滞在したルポ。
ケシ栽培の作業に参加し、体調不良になったことをきっかけに自らも生アヘンの虜になったという、身を挺した一作。
といってもこれは20世紀末の、「ゴールデントライアングル」という語が生々しかった頃の作品である。
いまでは情勢は大きく変わっており、過去の出来事である。
それでも「ゴールデントライアングル」最盛期(末期)の実情を伝えるもので、歴史的な意義が生まれているようにも見える。
高野氏の他の作品(といっても私が読んだのは一部だが)と比べると真面目である。
真面目というか、「個人的な体験記」にとどまらず「客観的なレポート」であろうともしているような印象。
ワ州に行くために多くの人々の世話になったという恩義もあるだろうし、現に滞在を認めてくれたトップが後に暗殺されたということもあるだろう。
彼らに託された「ワ州の立場を説明してほしい」という望みに応えているということもあるし、他に類書が少ないことからくる使命感もあったのかもしれない。 -
Posted by ブクログ
ネタバレエチオピア南部のデラシャなる民族は子供も大人もパルショータという酒を食事にして暮らしている…という学術書を読んで衝撃を受けた著者が、テレビ企画で念願かなって2023年に現地を訪問したときの旅行記である。
エチオピアといえばインジェラ、私もインジェラとワットなどを中心としたエチオピアの食生活を研究した本は読んだことがあったが、インジェラを食べずお酒だけをメインに暮らしている民族がいるなんて全然知らなかった。
本当に老若男女、妊婦まで一日中酒を飲んで暮らしているというのはびっくりしたが彼らが全く健康であるというのにはさらに驚く。彼らの作る酒が特別身体にいいのかもしれないが、アルコール生活に適応できる人類が存在する!という事実が常識を強烈に揺さぶってくる。
旅行記はヤギの糞が転がってくる寝床で寝たりとか、強烈な体調不良、身体中あらゆる虫にたかられたり外国人をだます原始的「ヤラセ」生活を見せられたりというトラブルの連続。いくら積まれても絶対現地には行きたくないと思ったが、読んでいるぶんにはめちゃくちゃ面白い(笑)。
チャガやパルショータというどぶろく的な酒は一度飲んでみたいと感じた。お酒は普段飲まないけど、酒粕ドロドロにした甘酒が好きで飲むから似たような感じなのかなという漠然とした期待感がある。はじめは酸っぱいらしいけど…どんな味なんだろうな。 -
Posted by ブクログ
ネタバレかなりボリューミーな一冊だった。有名な言語ではなく、一般にはあまり知られていないマイナーな言語を学ぶ著者の姿が印象的で、それぞれの言語に見られる共通点や違いについての考察も興味深かった。
自分自身、大学時代に他学部の語学講座をいくつか受講していたこともあり、語学好きとして共感できる部分が多かった。
また、著者の圧倒的な行動力にも感銘を受けた。自分の興味や探究心に正直に従い、世界を舞台に精力的に行動していく姿は純粋にすごいと思う。周りの同年代が就職や結婚など人生の節目を迎える中で、「自分は何をしているのだろう」と迷う気持ちも綴られていたが、海外で現地の人々と暮らし、多くの人が経験できないような濃密な時間を積み重ねていること自体、むしろ誰にも真似できない価値のある生き方だと感じた。