高野秀行のレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
表紙の写真がかっこいい。
面白かったが思った以上の分量と読み応えがあり、読み始めると止まらないがそれでも読み終わるまで時間がかかった。
高野さんは相変わらず面白い冒険をやっている。中々知りえないイラクの土地や文化、実際にその地で生活している人たちの様子が詳しく書かれている。イラクに湿地帯があることも初めて知った。
とりあえずやってみる。それでダメならそこで初めて別の方法を考える。といったプリコラージュ的なイラクのアフワール人のやり方もとても興味深かった。
見通しや段取りせず、見切り発車とその場しのぎのやり方は、計画や規則を重視する日本人の方法と全く異なるけれど、そのノリの軽さというか、問題が起きたら対処する対応力の高さと初動の早さは見習いたいと思った。 -
Posted by ブクログ
いつもどおり高野さんの本は面白い
四万十の上流仁淀川でSUPをする前日に読み終えた
旅の相棒、川旅の師匠山田隊長が四万十中村の出身というのもあってなんだか親しみが湧く
高野さんのこれまでの本のように誰もしないことをする感が少し薄いかなあ
有名なチグリス・ユーフラテス川を川旅というのは面白いけれども、こんなとこだったのか!という驚きみたいなのがそれほどではなかった
観光地化する前の街や美しい川、料理の美味しそうな描写は魅力的
発酵食品の文化は日本だけじゃなく世界の村々にある
村上春樹の遠い太鼓を思い出す
あれもトルコだったか?
あちらはワインの描写だったけれども
カブルカは美味しそう
十条のクルド料理店メソポタミアが閉店したのは残念、食べてみたかった
-
Posted by ブクログ
一言で言うと、緩い。だが、ゆる表現の裏に周到な準備がされていることにびっくり。同行者の山田隊長は準備のために移住し、職まで変えているんだから、プロの取り組みには脱帽です。
本編でも書かれているが、困難をいくつも乗り越え山頂を目指す登攀記と違い、川を下る旅は起伏が無く単調になりがちだ。でも、緩い雰囲気をまとった高野さん一行と、流域で出会った人たちの交流が面白い。チグリス・ユーフラテス川流域のクルド人という、なかなか馴染みの無い人たちの交流は、めずらしさとともに人類の普遍性も感じさせてくれる。
一緒に旅をされる山田隊長の自然科学に対する博識エピソードも魅力的で、私もこんな大人になりたい(そんなに歳は違わないけれど…)と憧れる。ちなみに地学の入門本や石の図鑑は積読状態だ。また、パックラフトが4㎏程度しかないというのも驚きだ。昨年、知り合いにファルトボート(折り畳み式のカヌー)をいただいたが、ゆうに20㎏は越える重量で、車に乗せるのも少しおっくうなくらいだ。水を切る感覚は素敵なので、パックラフトを手に入れようかなぁと、迷いが出る。ただし、パックラフトが幼児用のボートと表現されるのに比べ、いただいたファルトボートはシュッとしていてめっぽうカッコイイ。
本書を読み終わってすぐに、高野秀行さんがメソポタミアのボート旅について武田砂鉄さんと語っておられたTBSラジオの『プレ金ナイト』も聴き、いっそう本書が面白く感じられた。 -
Posted by ブクログ
単行本から文庫本発行まで、何故6年もかかったのか分からなかったが、待望の高野秀行納豆本の決定版が遂に発売された。(地域本屋には配架されなかったので)取り寄せ熟読させて貰った。先に、本書と「謎のアジア納豆」の合併解説本と思われた、絵本「世界の納豆をめぐる探検」を読んだ。よって結論を知っていると思っていたが、大きな間違いだった。「納豆世界同時多発説」「納豆=内陸地域の食べ物説」は、確かに詳しく述べられているけど、それだけではなかった。
高野さんは、アフリカ納豆を調べるためにイスラム過激派を避けながら3回も取材しているし、お隣の韓国納豆の謎を究めるために3回も取材を敢行している。最後には、それぞれ最高の納豆の味を求めて「納豆菌ワールドカップ」迄開いた。驚いたことに、日本最高と自他共に認める岩手県の「雪納豆」を抑えて優勝したのは韓国チョングッチャンとブータンの納豆だった。つまり世界の納豆は、「香り」「味」「糸引き」「総合評価」共に、日本に引けを取らない(寧ろ上)なのである。今度韓国に行ったら、必ずチョングッチャン鍋は食すと共に、生(セン)チョングッチャンも手に入れて食そうと思う。
アフリカでは基本的に大豆は使わない。パルキアという豆科の樹木になる種子からつくられる。殻は硬いが、臼で潰して加工する。しかも、加工パルキアはアジアでは見られなかった「商品としての流通」も果たしているし、料理のバリエーションはアフリカが遥かに多い。人口的にも、味の質も、アジアよりもアフリカの方が優っていた。
今回、高野さんと共に私も驚いたのは、韓国の代表調味料であるカンジャン(醤油)、テンジャン(味噌)、コチジャン(唐辛子味噌)も「ある程度納豆」だったという事である。いや、本来なら納豆菌から派生してそれらの調味料はできたのであって、納豆菌と麹菌(カビ)を厳密に分けて製造する日本の納豆と味噌醤油の方が特別だったのである。
日本も納豆は、本来は納豆汁、調味料として使われていたのである。アフリカや東南アジアでも、調味料として納豆が加工されてきた。だから、ペースト状にしたり、煎餅にしたりしたのである。
高野さんは、日本では、一万三千年前から大豆の先祖であるつる豆から納豆が作れることを証明した(後に中山誠二氏が学術的に証明)。つまり、大豆から納豆が作られたのではなく、納豆を作るために大豆が加工用につくられたのである。納豆を作るのはかなりめんどくさい。それなのに何故作られたのか。それは「美味しくなるから」と高野さんは仮説を述べる。松木武彦さんも唱えた「認知科学」が、此処で登場する。人類は手間暇かけて「美味しいものを求めて」世界同時多発的に同じものを開発した事が予測される。あゝなんと感動的なことなのか。
日本のように、納豆をご飯にかけて食べるだけ、というのは世界的に少数派である。今度マイ鍋に入れようと固く誓ったし、ペースト状にすれば様々な納豆料理が開発できる気がした。これから日本も世界を真似て、納豆商品のバリエーションは広がるのではないか?
納豆は〈サピエンス納豆〉なのだという事は、そういう事である。 -
Posted by ブクログ
す…すげーとしか言いようがない。まず、私は暑いのが大嫌い、不衛生なのも無理、自然は好きだけどなるべく楽して体感したい…という体たらくのため、筆者たちのような旅は不可能だ。
筆者の高野さんなんて、お腹を下しているのに川下りをしちゃうんだから。下痢→川でパンツ洗う→ボート→下痢というサイクルなのに悲壮感が全くない。
旅(しかも文明の利器が程遠い地)に慣れている高野さんと山田隊長の格好良いことよ。
ちなみに『三人男』の3人目は現地のガイドで、こいつ(レザン)が曲者。
必死にボート漕いでる2人の写真を適当に撮って自分は優雅に水煙草タイムとは。だがそのいい加減さが日本人にはない感じで新鮮だ。高野さんも「レザンがいない方が面白いことが起きる」なんて言っちゃってるのが面白い。
本書はイラストと写真がふんだんに使われており、読んでて飽きない。イラストは山田隊長が描かれているのだが、よくこんなに鮮明なイラストを決して楽ではない旅をしながら書いたと思う。
PKK(クルディスタン労働者党)とトルコ政府の緊迫した関係など政治的な話も多々あったが、なにぶん付き添い入院中の私の頭にはスっと入ってこず。うん、政情不安定な場所もあるってことだねと解釈。
肝心の川下りについては、やはり下った者にしか分からない素晴らしさがあると思う。
川下り中に出会った現地の住民が高野さんたちを歓迎してくれるのが嬉しかった。 -
Posted by ブクログ
高野秀行氏は翻訳の才も優れていた!!
日本で1996年に刊行され、先月めでたく文庫化された『世界が生まれた朝に』。著者ご本人から「(日本に留学していた)弟に」と渡された本書の原本を帰りのフライトで夢中になって読み、帰国後は熱に浮かされたように翻訳されたという。
他者宛の本を勝手に読むところなんかは高野氏らしいが、翻訳スキルは本当に大したものだった。
ワードチョイスは美しく(星空の描写では眼前に大パノラマが広がったり…)、文章表現にはなんの違和感もない!
本当にあの高野氏が訳したの?(普通に失礼) 彼のネームバリューに釣られ取り寄せたのに、読書中は私の知っている高野氏の面影を一切感じ取れなかった。
舞台は、アフリカはコンゴ共和国。
主人公のマンクンクはなんの前兆もなく、そして碧眼で生まれてきたことから、村人たちから奇異の目で見られながら育つ。それでもコンゴの大自然や村の生活に馴染んでいくマンクンクであったが、やがて身の回りの物事に囚われない偉大なる《知》や《力》を追い求めていく。
「おまえ自身の中にうまくいってないことがあれば、ほんとうの意味で世の中とうまくいっているとは言えまい」(P. 34)
自分なりにあらすじをまとめようとしたけど、めちゃ時間がかかりましたわ…
マンクンクの頭の回転力や行動力が常人を逸していたし、そもそも生き方自体捉えどころがないように感じられた。一緒に行動していると、いつの間にか数メートル先を歩いてそうな神がかりっぷりで、彼を思い返す時にはいつもその輪郭が陽炎のようにゆらめいている。
彼が生涯をかけて追い求めた《知》や《力》も人智を超えたものでいまいちイメージがつかなかったから、再読必至な予感もしている…
「マシニ(マンクンクのこと)の国に現れたとき以来ずっとそうであったように、異人の政府はいかなる状況に対しても最終回答を一つしか持っていなかった。力だ」(P. 243)
訳者あとがきでも言及されていたけど、植民地化されていくコンゴのありようが現代日本の「失われた三十年」と大いに重なった。
ほんのわずかな食料や宝飾品でやすやすと自国を明け渡してしまう首長。(契約書が読めないだけでなく、目先の利益に目が眩んだのだろう) 「土地とそこに存在するもの一切を自分たちのものであると宣言しただけ」で領土を手にし、現地民に過酷な労働や処罰を強いる異人たち。
「こうやって侵されていくのだ」と突き付けられたようで、物語と現実両方に怒りが湧いてきた。
今後読む本の中に「力」をテーマにしたものがある。
《知》や《力》の本質は理解しきれなかったけど、それらは人間の幸福のために使われるべきなのは確かだ。あのマンクンクをしても変えられなかった国の危機を、現実世界では一体誰がどのような「力」で対処するのか。
その本の読後には、少しは本質を理解できているといいな。 -
Posted by ブクログ
ネタバレメソポタミアという壮大な歴史を持つ土地を、実際にボートで川を下りながら旅する。その臨場感が、本書の何よりの魅力だった。水の流れに身を任せ、刻々と変わる両岸の景色を眺め、ときには予想もしなかった出来事に巻き込まれる。陸路を移動する旅とはまったく違う、川の上だからこそ味わえる不安や高揚感が、ページをめくるたびに伝わってくる。読んでいるこちらまでボートに同乗し、一緒に川を下っているような気分になった。
そして、「川から世界を見る」という視点も実に新鮮だった。人々が暮らす町や村を陸側から訪れるのではなく、古くから人や文明をつないできた川をたどることで、土地の歴史や人々の生活がこれまでとは違った角度から見えてくる。メソポタミアという言葉から連想する古代文明が、決して遠い昔の話ではなく、現在を生きる人々の暮らしと地続きに感じられるのも面白い。
特に興味深かったのは、トルコ東部のクルド人地域の日常や文化に触れられたことだ。正直なところ、これまでクルド人についてはニュースなどから断片的な情報を得るだけで、あまりポジティブな印象を持っていなかった。しかし、本書を通して彼らの歴史や文化、そこで暮らす人々の姿を知ることで、一面的なイメージだけで物事を判断していたことにも気づかされた。
壮大な川を旅する冒険の面白さを味わいながら、自分の知らなかった世界や人々への理解も深まっていく。笑いながら読み進めているうちに、いつの間にか自分まで遥か遠いメソポタミアの川を旅していたような気分になる一冊だった。 -
Posted by ブクログ
早稲田の正門から徒歩たったの5分。路地裏にひっそりと佇む野々村荘、3畳一間、一万二千円。脅威的なやすさ。学生7年目みたいな変態が多い早稲田ながら、思い出すのは8年生のあと再び入学した問題を起こした彼だろう。天才と変人は紙一重であることもまた真なり。これを早稲田は日常として受け入れている。ここが東大、京大、慶応にはない部分であり、なくても全く問題ないと思われている部分であろう。
探検部の所属、数々の無謀かつ行ったことないところにいく、面白いサークルがあるものだが、そこの部員たるや変人集団。まともな会社に就職して云々、ということに興味ある人はいない。本書の執筆者も、クレイジーな生活を振り返り、やっぱりネタだよなと思ったのであろう。三味線を習ったり、麻薬をゲットしようとキノコを手に入れたり、とにかく変な友人と織り成すヘンテコな生活をネタに。早稲田っぽさ、毎日の過ごし方が本当に何もない。虚無と等しい生活から、何かしなければと思わせてくれる大学。やっぱりすごい人が出るのがわかる。村上春樹などもその1人だろうし、変人と隣り合わせの天才は、いたるところにいる。
途中までのバカバカしい早稲田な出来事、そして5章、6章と、彼の人生に転機が訪れる。彼女のことが好きになってしまった、この少年のような話を、33歳ですることの面白さ。そして、普通の人間になっていく。とはいえ、めちゃくちゃ遊んでいたんだろうから、これが初恋みたいな話じゃないことはすぐわかる。当然、死ぬほど遊んでいて、女遊びみたいなものにも飽きている感じも良くわかる。それでも、この人という人が訪れるのは運命だったんだろうか、キタのタロット占いも、適当ながら真実である。 -
Posted by ブクログ
アフリカの冒険は面白い。
砂漠とジャングルの狭間は納豆とボコ・ハラムらイスラム過激派が絡む混沌地帯であり、そこに飛び込めるのは辺境探検家の高野秀行ならではだ。
ブルキナファソの案内人アブドゥルが「クルマ ボロボロ」と日本語で言うのは吹き出したし、ヘラヘラしながら読んでるとナイジェリアの断食する女性に胸にぽっかりと穴が空いたような気分になる。笑いとシリアスの同居はさすがとしか言えない。
韓国編もDMZや田舎の度を越した廃れ具合が非常に興味深かった。
全体を通して言えば、テキトーな葉っぱで納豆がボコボコ出来上がる前作の感動には及ばないかな。
チョングッチャンを食べてみたいけど、どこの韓国料理屋も置いてない! -
Posted by ブクログ
アナクロ、アナログ、アナーキーの3拍子揃ったトリアーナの2人が、現地ガイド(こちらは陸路を車で追っかけてくれる)とともに3人でティグリス=ユーフラテス源流部をパックラフト航行で川下りをする本。1人は山田隊長 (山田高司 1958年生まれ 当時59歳)。1人は筆者。
いつも、人が絶対に行かないような場所に行ってルポにまとめてくれる高野さん。今回もびっくりするような旅でした。
トルコなのだが、クルド語を話すクルド人(クルド良く聞くけど始めて意味を持つ言葉になりました)。イスラム圏なのに女の人が自由にしているエリアもあった。そのアレヴィーはアニミズム(水天地日月)崇拝のような宗教。良くイスラムの中にアリがあるように言われるが、アリーはアレヴィーの聖者で4500年前。イスラムはたかだか1500年前の発祥だそう。
珠江源流の話がおもしろすぎる。隊長の中国三大がっかりやなっていうのが笑えた。
今回は山田隊長がとても面白く、知識や蘊蓄が深すぎたが、"イラク水滸伝"にでてきているらしい。むむ、また読むべき本が増えてしまった。"語学の天才まで1億光年"も読まなくちゃ!
読めれば小学生でも大丈夫だけど、通常は高校から。