東浩紀のレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
巻末の付録の「平成という病」がこの本の本質なのだろう。東さんが平成を生きたこれまでに失望し、疲れ、やる気を無くし、それでも令和という時代を迎え、偽りでない希望を見出そうとまた立ち上がりそうな気配だ。
なーんて偉そうなことを言える人間ではないが、この人は本当に素直に自分の失敗だったり不明だったりをきちんと認めている。だから、自分はこの人を信用するのだが、批評家(だった?)なのだから起こったことにしか見付けないのではなく、哲学者(だった、そして今は?)なのだから、これからの日本がどうなるのかまではきちんとわからなくても、どうしていくべきなのかの一つの方向性を教えてほしいと思っている。 -
Posted by ブクログ
“しかしポストモダンの人間は、「意味」への渇望を社交性を通しては満たすことができず、むしろ動物的な欲求に還元することで孤独に満たしている。そこではもはや、小さな物語と大きな非物語のあいだにいかなる繋がりもなく、世界全体はただ即物的に、だれの生にも意味を与えることなく漂っている。意味の動物性への還元、人間性の無意味化、そしてシミュラークルの水準での動物性とデータベースの水準での人間性の解離的な共存。(略)「ポストモダンでは超越性の観念が凋落するとして、ではそこで人間性はどうなってしまうのか」という疑問に対する、現時点での筆者の答えである。(p.140)”
サブカルチャー論でよく名前を聞く本。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ記号論とはなにか。歴史からここまでの新しい言説までをまとめたものである。知を愛するものであれば必読の書である。
この分野はコンピュータ、AIの発展の礎になっているし、そもそもメディアを探究する場合にも必要になるものである。
本書に「ヒトはみな同じ文字を書いている」、「ニューロンリサイクル仮説」を取り上げた箇所がある。ヒトが進化の過程で森で生活していた時期があるとされる。その森での生活でモノを見分けるのに使っていた視覚に関する身体の部位や脳の視覚野。これを文字を読むことに転用しているのではないかということの根拠にしているのである。
グラフィックレコーディングにおいて、文字を書く、絵を描く -
-
-
-
Posted by ブクログ
言葉では伝わらないこと、オンラインでは伝わらないこと、商業ベースじゃないとできないこと、でもスケールを追っててはできないこと、「仲間」となにかを成し遂げることの難しさ、仲間の存在のありがたさ、意図せぬ偶然の必要性、などなどいろんな示唆が詰まった本だった。
この本では著者の仕事の中身である哲学?についてはそこまで深く書かれていなかったけど、日常の仕事とかキャリアにおいて失敗して仲間に支えられて内省して成長して少しずつ前に進んでみたいな過程を振り返るというか考えること自体が哲学なのかもしれないと思った。いろいろ考えている人は深みがあってかっこいいなと思った。
ゲンロンのコンテンツにも触れてみようと -
Posted by ブクログ
異世界もの(転生するとか召喚されるとか、まぁ、その辺の細かいとこはどうでもいい)が雨後の筍みたいになっている理由は、これを読めばわかる。
異世界ものの読者が求めているのは、「小さな物語」という表層が与えてくれる「効率的な感動」「そこそこの面白さ」と、「データベース」に蓄積されている設定の、目先の変わった組み合わせだけだから、量産できるし、既視感満載の作品しかない、ということらしい。
むしろ、既視感ありき、なんだそうな。
なんせ、大事なのは創造じゃなく引用の巧みさだから。
そして、オリジナルとコピーの区別が消滅してるから、原作と言われる作品さえ先行作品の模倣と引用のパッチワーク。
さらに、現実 -
-
Posted by ブクログ
東さんの著書に哲学の誤配というのがあって、興味はあってもまだ読んだことはないのだが、この本でいう誤配とこのゲンロン戦記で度々出てくる誤配は同じなのだろうか気になったので、次は哲学の誤配を読んでみたいと思う。
最後のあとがきで著者がいう様にこれは私小説なのだろう。
だから、まぁ、特に東さんその人に肩入れするわけではないので、途中何を読んでいるのかなという気にもさせられたが、でも話は面白く、他の著書、といってもまだ2冊しか読んでいないけれど、この人は自分の失敗を赤裸々に告白してさらにきちんと謝るべきことは謝っている態度が一貫しているなというのが印象に残る人なので、このゲンロン戦記も同じ印象を持てる -
Posted by ブクログ
ポストモダンの精神構造、社会構造をオタクの文化をもとにして分析した本。
示唆に富んだ内容であり、とても面白かった。東浩紀氏の造語がたびたび登場してくるが、どれも言いたいことを端的に言い表したストレートなネーミングによるもので、難解とは感じない。
20代前半の私からすると文中に挙げられるアニメ・ゲームは馴染みのないものばかりだったが、90年代や2000年代前半の時代を理解する上では参考になった。本書の刊行から約20年が過ぎたわけだが、オタク文化、ひいてはポストモダンも新しい次元に入ったように思われる。この点に関しては新しい著作などで分析してくれることを期待している。