「近畿地方〜」と「穢れた〜」を読んでおり、「近畿地方〜」は映画も観ました。
同じ作家さんでまたすぐ映画化すごいな!と思って気になったのと、小さなペーパーバックの装丁が可愛くて購入。
一応モキュメンタリーホラーのテイストかな?
短い文量できれいにまとめられているし、読み進めるうちに話の繋がりが見えてきて、ちゃんとホラー。
お話全体としては充分満足だとは思うのだけど、何だか物足りない気もする。(理由は後述します)
最後のアンケートは、ネタバラシとしてとても親切だし、結局あの5人がどうなったのかというのは第三者的に描かない限り描けないので、その手法としてアンケートというのは面白いと思った。
以下、完全ネタバレ(解釈も含む)
【「呪われた木」について】
元は普通の木だったものが、神社で恐らく御神木として扱われる(お願いごとをされる)ことを繰り返すうちに、本当に力をもった「御神木」になった。
神社が無くなったあとも「御神木」は人の願いを叶える木として存在し続けた。
そのうち、人の不幸を願う人が増えた…のか、「不幸を願ったら叶う」ということを噂する人が増えたのか、「呪いの木」として扱われるようになったことで、「御神木」は「呪いの木」になってしまった。
そして、表記のブレにより「呪いの木」は「呪われた木」になり、幽霊が出るという噂もセットになってしまった。
あくまでも「人がそう扱う、人が人にそれを伝える」ことが、一時は御神木であった木を禍々しいものにしてしまった、というのはホラーあるあるですが、人の業を感じられて好きです。
【杏はどうなったのか】
ここはかなり私自身の解釈が含まれています。
端的に言えば、杏は「呪われた木」の一部になってしまったのかなと。
「呪われた木」の噂は、「あの木は人を食う、そのせいでこの木で首を吊った人がいて、その幽霊が出る」といったもの。
翔太の「お願い」が(ご丁寧に「セミのように」の部分まで)「呪われた木」によって叶えられ、土を掘り、木に登って死んだ杏。
この時点で杏は「呪われた木に出るという、首を吊って死んだ噂の幽霊」にされてしまった。
こうして「人から」与えられた噂の通りに、木はさらに力をつけてしまった。つまり、噂は事実になってしまった。
【なぜ5人は呼ばれたのか】
杏と一緒にいた3人はともかく、残りの2人は杏の死と無関係であり、「死んだ杏の恨み」だとしたら筋違いだと感じる。
だから、5人を呼んだのは杏ではなく、「木」である。これが、上述したように「杏は呪われた木の一部になった」と私が解釈した大きな理由でもある。
「呪われた木は、人を食う」
その噂通りに5人は呼ばれ、首を吊ることになった。
こうして、噂通りの「呪われた木」が完成してしまった。
ここで恐ろしいのは、木が5人に「木と関わりをもった日のこと」を語らせたこと。
それがスマホに記録され、こうして出版され多くの人に広まることにより、多くの人が「呪われた木」のことを知り、また話すだろう。そして中には、噂を確かめようと実際に肝試しをする者も現れるだろう。木はもはや「噂通りに人を殺す」力を持ってしまっているから、被害者は増え続け、それがさらに噂として口伝され、木はより強い力を持ち…というサイクルが始まってしまうのではないか。
しかし、その始まりの元はと言えば「人の噂」である。口は災いの元ですね、と。
こうしてつらつらと書きながら考えてみると、やっぱり短さの割によくできたお話だなと思う。
ではなぜ、私はこのお話に「何だか物足りない気もする」と感じたのか。それはたぶん、このお話が「呪われた木」の「はじまり」だけを描いているからなのかな、と思った。
力を強めた「呪われた木」は、これから多くの人の命を奪い、不幸を振りまくことになるんだろうなあ(呪怨の呪われた家のように!関わるもの全てを!)と予感はさせるものの、読者の想像の域を出ない。
とても品の無い言い方をすると、もっとこの「呪われた木」に関わって死んでゆく人たちの様子を見せてほしい…!という邪な気持ち。
それは、5人の死がものすごくサラッと描かれているからってのもあるかな。いや、最後のアンケートでネタバラシという都合上仕方ないんだけどさ!
もっと怖がったり苦しんだり、呪いから逃れようともがく様を味わいたいのよ。それが、何かこう、木に導かれるままに話して、「じゃあ、さよなら」ってな感じに死んでいく。
ホラーならやっぱり、「死にたくない死にたくない」と無様に逃げ惑ったりとかさあ!自分だけは逃れるために仲間や家族を売ったりとかさあ!死ぬ瞬間はもっと苦しんだりお門違いな相手に恨みをぶつけたりさあ!そういう醜い人間を見たいのよ…と思うのは私だけかもしれませんが!
概ね面白かったのですが、個人的な好みの問題で☆3つとしました。笑