芦沢央のレビュー一覧
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ネタバレ●感想
タイトルが秀逸。五編あって、一編目は好みだった。夫婦の労り、善良さや賢さが良かった。残される夫が、妻に話したことを後悔し続けないように、死ぬ前に罪悪感の置き場所まで整えていく。「死んでいくから、あなたの気の晴れないものをもっていく」みたいなセリフが良かった。汚れた手を妻がきれいにしてあげた話というか。ミステリー風の良い話。
のこりはすべてタイトル通り、もっと手前で何とかしなよ…って感じ。人間のイヤな、ずるいところを見せられる感じ。
●本概要
第164回直木賞候補作。
ひたひたと忍び寄る恐怖
ぬるりと変容する日常
話題沸騰の「最恐」ミステリ、待望の文庫化。
閉鎖空間に監禁された
デスゲームの参加者のような切迫感。
──彩瀬まる
平穏に夏休みを終えたい小学校教諭、元不倫相手を見返したい料理研究家……
きっかけはほんの些細な秘密だった。
保身や油断、猜疑心や傲慢。
内部から毒に蝕まれ、
気がつけば取返しのつかない場所に立ち尽くしている自分に気づく。
凶器のように研ぎ澄まされた“取扱い注意”の傑作短編集。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ【あらすじ】
①目撃者はいなかった
受注の数を間違えた営業マン葛木修哉は、会社に内緒で(自分で買い取って)処理しようと運送業者に成りすます。その際交通事故を目撃しながらも、自分の不正がバレてしまうため事故の被害者家族に目撃者として詳言してほしいと言われるが拒否する。
数日後、交通事故があった同じ日に近所で不審火があり、犯人を探すため話を聞かせてほしいと警察が葛木の家を訪ねる。アリバイを聞かれ嘘を重ねた葛木は署に来るよう言われ、
「あなたは、自分のためにしか証言できないんですね」と、交通事故の被害者の妻に言われた言葉を思い出す。
②ありがとう、ばあば
子役として活躍しだした9歳の孫娘杏を必死でサポートする祖母の「わたし」と娘との確執。年賀状の写真の杏が太ってるから写真を変えろと娘に強制する祖母と十分かわいい写真だからと拒否する母親。それ以外にも杏の芸能活動や学校のことにも口出しする祖母は「杏が生きがいだから杏の力になれるのが何より嬉しい」と話す。
東尋坊での撮影後のホテル。雪の日にバルコニーに飛んでった名刺を拾おうと祖母が出ると、杏に締め出されて言われる「これでばあばが死んでくれたら年賀状を出さなくてよくなるんだよね。ありがとう、ばあば」
③絵の中の男
家政婦として勤めながら旦那様の趣味の絵画鑑賞、得に浅宮二月の絵にはまった私は、旦那様の紹介で蜷山画廊に勤めながら女性画家(浅宮二月)の家政婦をすることになる。女性画廊は幼い頃に一家皆殺しにあった生き残りで、その悲劇を絵画のモチーフにしていたが(幸せな日々を過ごしていくなかで)やがて描けなくなっていく。二月の34歳のお誕生日のお祝いを二月の息子の猛と私がサプライズですることにし、二月を買い物に連れ出した際に、猛は蝋燭の火事で亡くなってしまう。二月はその後憔悴しながらも地獄絵を描くが、私はイラストレーターである二月の夫の中村恭一からできるだけ家に出入りしないでほしいと言われてしまう。再び描けなくなったことを責められた二月は精神的に追い詰められて夫に斬りかかる。それは検察が提示した動機で、「二月の目の前で衝撃的な死を遂げれば絵の題材になれて彼女の傑作の中で自分がこの世に生きてきた証を残せると恭一は考えたのではないか」と私は考える。二月は自ら逮捕され刑務所にいることで、油絵を描けない状況を望んだのではないか、と。
④姉のように
事件を起こした姉のようにならないために、自分の娘への虐待の衝動を抑えようとする話。姉である三上佐登子34歳は一時期童話作家として活躍したが、夫の転職で生活費が少なくなり子供の教育費のために同じ育児サークルに所属している友人から金品を盗んだ。私、志摩菜穂子28歳は周囲の目を意識して生きていくのだけれども、3才の娘はイヤイヤ期で夫も自分を理解してくれず、精神的に追い込まれていく。姉の事件から半年後、娘を階段から突き落とし殺害したとして私は逮捕される。
⑤許されようとは思いません
諒一が恋人の水絵と共に母の郷里を訪ね、祖母の遺骨を村の寺に納骨しようとする話。祖母は曾祖父を殺し「私は自分の意志で殺しました。許されようとは思いません」と話し、懲役5年の刑を受け獄中で肺癌で亡くなる。水絵は諒一の話を聞き、諒一の祖母は自分の寿命を分かっていたうえに、人を殺して村八分(村八分は共同体の生活行為の内、葬式の世話と火事の対処を除いた一切の交流を絶つこと)から村十分になることで曾祖父と同じ墓に入らないように計画したのではと話す。寺に向かっている母親と相談してから骨は家に持ち帰ることにする。
【感想】
因果応報とはいえ救われない話や、胸の痛む結末が多い短編集。登場人物の気持ちがわからなくもない日常のリアルでそれがまたホラー。競争社会で生きる会社員、祖母と親の板挟みになる子供、より良いものを求められる芸術家、子育てで悩む母親、独特な文化のある村で生きた人、それぞれの苦悩が濃縮して表現されている作品。 -
Posted by ブクログ
小学生の「ライトな日常」と油断させといて、児童虐待など「社会のディープな闇」を突き付けてくる凄まじいミステリー。
天才小学生の水谷くんの洞察力は、自分の子供時代と比べたらまさに「神」、名探偵コナン君を彷彿させるほど!
考えてみたらコナン君は中身が高校生だし、周りには蘭姉ちゃんや灰原、博士など、いざという時に戦力になってくれる最強の仲間がいる。
でも水谷くんは中身も本物の小学生で、完全に孤立無援。ワトソン役の主人公は金魚の糞のようで完全に戦力外……。そんなヒーロー的な姿の裏に、皆の期待を1人で一身に背負っているプレッシャーはどれほどのものだろう?
本作一番の謎は「水谷くん」そのもの。
何となく裕福な家というのはわかるけど家庭環境や親しい友人もあまり語らていないので、案外孤独なのではと感じた。育った環境が鋭い洞察力につながったのか?それとも元々ギフテッドのような存在なのか?どちらにしろ彼自身もまた、誰にも言えない闇を抱えた「ただの子供」だったのかもしれない。
2人にとって「神さま」ってなんだったのだろう?
ラストの2人の「覚悟」の違いに「神さま」という言葉が今も重苦しく胸に残っている。 -
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最後の一行で見方が変わる、というほど変わらなかったかなあ。どの一行だろうと考えてしまうくらいには。
「ゼリーに満たされて」謎の生物との交流がかわいくてほっこり、と思いきやって感じでおもしろかった。最後の怒涛の情報開示で見え方が変わりました。
「人魚の骨を拾いに往く」人魚が題材な段階で嫌な話になるんだろうなと思ってたけど、想像より嫌な終わり方でゾッとしてしまった。そんな再会は望んでないじゃん…。
「次はあんたの番だよ」法月綸太郎シリーズは読んだことないので急に出されてもちょっと話に入り込めなかったな。怪談と刑事物の組み合わせは好きなのでおもしろかったな〜とは思うのですが。手が込んでてすごいなーと。
「ひび割れ」ブラックに勤める人の思考に心当たりがありすぎて嫌な気持ちになりながら読みました(褒めてます)。解像度の高さすごい。ラストそうなるのは当然の帰結ではあるよなと思いました。