芦沢央のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
芦沢さんの短編集ということで、イヤミスを欲している気分だったため本作も手に取りました。物事の解釈や見る角度が変わることで、起きた事件の意味が変わる楽しさを味わえるそんな作品だったかなと思います。
本作は6編からなる短編集であり、題材としてはすべてミステリー。アルバイトに興じる大学生のお話から、卵焼きをめぐる親子の物語など、割と日常ミステリーが多めの短編集です。
個人的に1番印象に残ったのは、大学生のアルバイトのお話である、「車止め」です。明らかな闇バイトにのめり込んでしまう主人公が迎える結末と、親友に隠された秘密のどうしようもなさが良い感じに胸糞悪くて、これぞ芦沢さんに求めているものだなと思いました。
比較的簡単に読める作品ですし、ほど良い毒気なのでちょっとスリルを味わいたいなぁという人にはおすすめかなと思います。 -
Posted by ブクログ
12年前、誘拐された少女。そして再び起きた誘拐事件。目の見えぬ少女はなぜ、再び狙われたのか。
冒頭の「間違い誘拐」には一気に引き込まれたものの、二度目の誘拐は途中から少し中弛み。
一度目は善意から始まったものが、思わぬ方向へ転がってしまった事件だったのに対し、二度目は犯人のエゴが全面に出ていて、なかなか共感できない。読み終えてもモヤモヤが残った。
ただ、事件を通して愛子が成長していく姿には、よかったなぁと思える部分も。
江間夫婦は、お互いに「運命の相手」なのだろうけれど、その深い愛情は一歩間違えば狂気にもなり得る。
「誘拐事件の謎」そのものよりも、誰かを思う気持ちが、いつの間にか相手を縛ってしまう怖さが印象に残った作品。 -
Posted by ブクログ
読み進めるごとに状況が悪化していくようなイヤミス作品。さらに前提条件が覆されるようなオチもある。作者が読者に与える前提条件・固定概念のようなものと、実際の物語にはズレがあり、それが物語の中で歪みとなり、いいモヤモヤ感になっていると感じた。
特に「姉のように」はそれが分かりやすく表されていた。
この小説は人間心理の暗部を巧みに書き出してると紹介されてるが、ほぼ全ての主人公たちは、何かしらから逃げるために罪を犯してるのが特徴的。
「絵の中の男」にある一説が、この小説の裏テーマなのでは?とも思う。
「たとえ元がどんなに常識的な人であっても、殺人という常人では越えることのない一線を超えた瞬間は異常だった。その異常さは当人にとって禁忌を犯すほどに切実な動機から来ていたのだろうと憶測できるだけです。」 -
Posted by ブクログ
ネタバレ警察官や元警察官を主人公にしたアンソロジー。
米澤穂信「お見通し」
安楽椅子探偵物のエッセンスが効いたとても短い小説。
方丈貴恵「メゾン・イニシエの怪」
著者の小説はアミュレットホテル以来になるが、都度、特殊な場面設定を作っての謎解きが特徴。
荒木あかね「プライドの隙間」
得意のクローズドサークル。今回は警察署内。
警察官の拳銃自殺の原因と拳銃の捜索が並行して進んでゆく。
松嶋智左「家につく猫」
初読の作家さん。
面白そうな出だしだったが失速してしまった。
長編を読んでみたい。
芦沢 央「コールバック」
こちらも初読の作家さん。
5作の中では最も面白かった。謎の人物の登場から一気にラストまで突き進むスピード感がいい。読後に余韻を残す秀作だと思う。
ぜひほかの小説も読んでみたい。 -
Posted by ブクログ
芦沢さんだし、きっとモヤモヤを残したイヤミスな終わり方をするんだろうな、と読み始めた短編集。
どの短編も、ほんの些細な出来事や選択から始まり、終盤になると一気に畳み掛けてくるような恐怖がある。
「あのときこうしていれば」 「そもそもあれをしなければ」
そんな「たられば」を考えてしまう話が多く、登場人物にも自業自得と言えてしまう部分がある。
最後の「ミモザ」くらい理不尽さと狂気を見せつけられても、やっぱり自分から踏み込んでしまった部分もあるし、なんとも言えない。
怖さはある。嫌な終わり方もする。 でも、求めていた「読み終えても処理に困るようなモヤモヤ」には今一歩及ばず。
ただ、『汚れた手をそこで拭かない』というタイトルはやっぱり秀逸。 手を汚したことよりも、その汚れをどうにかしようとして、さらに別のところまで汚していく。
タイトルを眺めながら五篇を振り返ると、なるほどな、と思わされる一冊だった。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ筆者が怪談を執筆する過程で起こった出来事を記述するモキュメンタリーホラー。
最後にはフィクションであると分かるが、筆者が実際にXにポストしていたりして、実際に起こったことなのかと思ってしまった。それぞれの短編の背後にある関係が見えてくるミステリ的展開から、その内容に背筋がぞっとした。自分は霊的なものは信じていないけど、将来家の購入を検討するときにどうやっても気になってしまうなあと思った。
タイトルである「火のないところに煙は」。立たないと言うことはできなくて、周囲から漂ってきたものや、自分にまとわりついてしまったものも考えると、火がなくても煙は立つ。引いては”非”のないところにも煙は立つと言えるのではないだろうか。そんなどうしようもない理不尽なことを考えてしまった。