芦沢央のレビュー一覧
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この作品を書くにあたり、芦沢さんは他の執筆依頼をすべて断り、ご自身の作風を顧みて「これは修行だった」と語っていました。
きっかけは、直木賞候補となった際の選考委員による講評だったそうです。
その厳しい言葉を受け、作風を一度リセットして臨んだ挑戦作。
芦沢さんの小説といえば、私はいつも「歪みの表現」が魅力だと感じています。
日常の中にあるわずかなねじれや、感情の軋みを描く。その緊張感が、彼女のエンタメ性の核になっていると思うんです。
だからこそ、その「歪みの作家」が、何を削って何を残したのか、とても関心を持って読み始めました。
直木賞の講評を改めて確認すると、たしかにかなり厳しめの意見が並ん -
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将棋の世界のお話。
一章は将棋の世界でもなく芝が主人公。なかなか勝てない焦りが伝わってきて、なんだか読んでいるこっちが不安になってきてしまった。
二章は元々は芝とともに将棋をしていたが、高校生のときに将棋の世界を出て東大から弁護士になった大島が主役。弁護士として働く大島もクライアントとのやり取りで悩むことも。
うーん、難しいなー。あまり将棋を知らないから余計かもしれないけど、この世界は厳しそうだなということが伝わってくる一冊だった。まぁどの世界も厳しいことは絶対あって、それはその人じゃなきゃわからないんだよな、と思ってまさにタイトルだと思った。 -
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物語は将棋の世界。プロ棋士の芝と奨励会を辞めた大島の二つの視点で語られる。視点が入れ替わるのではなく、前半は芝、後半は大島、と2人の目線で同じ時間をなぞるのは新鮮で面白い。
また、2人のキャラクターのイメージを引き立てるためか、前半の芝は純文学のように書かれ、後半の大島はエンタメ小説的に読みやすく書かれている。著者の芦沢央が、『小説に人生を賭ける中で、どうしても挑戦したかった作品です』と言うように、新たな試みに興味がそそられる。
芝の章では詳細な情報は与えられないので、将棋の世界の現実、葛藤、諦め、執着を手探りで感じ取れる。追い詰められた時にこそ、全く突拍子もない想像が頭を支配し狂っていく -
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「火のないところ…」でガッチリ心を掴まれた芦沢作品2冊目は、2015年に内野聖陽さん主演で映画にもなった芦沢央デビュー作。
妻が急逝して以降、男手1つで育てた一人娘 加奈が、学校のベランダから転落死する。
事故か自死か?真相を探るなかで2人のクラスメイトが浮上。最愛の娘を死に追いやった女子生徒へ安藤は復讐を決意する・・・
いじめ絡みで子を喪くした親の復讐劇だと「人間・失格」や「告白」が強く印象に残っていますが、それとはまた違う角度からのアプローチに胸がきゅっと苦しくなります。
ワタシも基本少年少女には性善説を信じたいと思うけど、咲みたいな羊の皮を被ったモンスターも一定数いる訳で…。後味は良 -
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祖母が遺影を撮った〈雨利写真館〉で働くことになった黒子ハナ。祖母の遺言状に隠されていた謎、お客様の12年ぶりの家族遺影の撮影での真実、そしてお客様の妊婦の母と共に写された遺影の謎と向き合っていきます。それと共に自分の中のわだかまりを徐々に消化していく物語でした。
装画から勝手にイメージを膨らませていたのとは全然違っていました。まさか謎解きみたいな感じだとは思いませんでした。
雨利写真館で働く人たちは、それぞれ個性が強いのに、それが合わさるといい具合にバランスがとれていました。
ハナのクイズ好きの祖母、遺影をとるために集まった親子と孫、妊婦の母達の写真、どれもが素敵な写真になったことが伝わ -
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ネタバレ読んでいてどれが誰?どの人が誰の何?と思ってちょっとイライラしたけど、種明かしでなるほど〜となった。
やたら冗長に感じて、このエピソード何のためにあるの、と思うところもあったけど、それも全部この二人の関係性に違和感を持たせるためだったのかな。
友達でこれはやばいだろ、だけならまだしも、親子であってもやばいだろ、の域に達してるから、友達なのか親子なのかって曖昧さを出すのは難しかっただろうな。
しっかりはっきり娘と言われるまでまったく気づかなかったから、分かった瞬間はすごく気持ちよかった。
どいつもこいつも難ありというか、良くない部分を強調させたような人物ばかりで、ずっと暗くて黒い雰囲気が漂う作品 -