中村航のレビュー一覧
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たっぷりとした甘いシロップに沈んでゆくような恋の話。自分の持てるすべてを使って好きだと伝え合うふたりと、間違いを正せば終わってしまう愛。恋愛に溺れていたときの自分が、そのまま主人公に生まれ変わったようだった。気恥ずかしくて、でも、目を逸らせない。
「恋ってのは、寸止めが一番美しいんだよ」という木戸さんの言葉が、読み終えたあとも胸のなかで光っている。完全には手に入らないからこそ、美しいかたちのままを保てるのかもしれない。
十年前に読んだときは、この本の甘さがもっと身に染みたような気がする。きっとわたしのなかにあった溢れるような熱情は、この十年ですべて燃え尽きたのだろう。すこし寂しい気もするけれ -
Posted by ブクログ
ネタバレ「100回泣くこと」って、彼女が亡くなってから100日間毎晩酩酊しながら泣くって意味か、、、。悲しいな。
最後の196ページの、草原で少年の光景が浮かぶところで、愛する人がいなくなっても、彼女と共に過ごした時間の中で、自分の想像力は彼女の影響を受けていて、彼女との関係はweじゃなくて、その少年(想像物への問いかけ)を介したyouに代わっていくというところは、私自身の身の回りの大事な人が亡くなった時にもこういう想像をするのかな、と考えこんでしまいました。
全体としては、淡々としていて、文節ごとの接続という部分では、ストーリーには入り込みにくかったですが、内容がとてもリアルでこの作者さんのこと -
Posted by ブクログ
ネタバレ人生を彩る料理に乾杯。
7つの個性的な短編が収められている。登場する料理も様々。お酒からお菓子、パン。時代も場所も様々だ。読み終わると美味しい料理を食べた後のように満足している。
柚木麻子「エルゴと不倫鮨」ある程度の年収の男と歳が離れた若い女性が集まる店。そこにやってきた招かれざる客は——。卒乳祝いの女性がパワフルでそこにいる人すべてが巻き込まれていく。世界をひっくり返すようなお客にコロリと順応するのはまた女性たち。疲れ果てた男性たちの顔が目に浮かぶ。
伊吹有喜「夏も近づく」三重県の自然の中に暮らす拓実のところに兄が訳ありの少年を連れてきた。美味しい水と自然の中で育ったものを食べるうちに -
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美味しい料理が縁を結ぶ、7つの物語。
お腹がぐうぐう鳴るくらい美味しそうな料理が出てくる作品ばかりで、その中でも伊吹有喜さんの『夏も近づく』が好みだった。
温かい食卓を通して心の距離が近づく様子を丁寧に描いていたところが素晴らしかったのはもちろん、出てくる料理の美味しそうなこと! たけのこご飯、果肉ごろごろのバレニエ、青竹のコップで食べる素麺ーー。身体の隅々まで染み渡るような滋味あふれる料理が恋しくてたまらなくなる。
テレビやスマートフォンを眺めながらささっと食事を済ますのも悪くはないけれど、目の前の料理の香りと素材本来の味に、もっとじっくり向き合って食事をしようと姿勢を正した。
伊吹有喜さ -
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Posted by ブクログ
勤め先の倒産で失業の憂き目にあった広告デザイナーが、ひょんなことからコピーライターと会社を設立することに!?
熱意と才能が道を切り拓くお仕事小説。
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軽く読めてそれなりにおもしろかったのですが、長編小説の第1章だけで終わってしまったような物足りなさが強い作品でした。
まず、登場人物がアッサリしすぎています。
天津が才能豊かというのはまあいいでしょう。必要なキャラです。事務処理能力に優れた長谷川という存在も ( 端から控えていた設定はどうかと思いますが ) まあよしとしましょう。
けれど、2人を傑物として設定したのなら、それにふさわしい見せ場をも -
Posted by ブクログ
好きな人よりも先に死ぬか後に死ぬか・・・。
「愛する人の死」をテーマにした話を読むたびに妹のことを考えちゃう。
妹は全然元気だけど。我ながら妹離れできてない姉なので苦笑もし妹が死んだら、戸か考えたらすぐ泣けてくる。実際死んじゃったら絶対立ち直れない('_')
結婚って、いつか死によって分かれる時が来るって覚悟することなんだってすごい心に来た・・・。
結婚の時の誓いの言葉、よくよく考えたらすごい深い言葉だわ・・・。
’’健やかなるときも 病めるときも
喜びのときも 悲しみのときも
富めるときも 貧しいときも
これを愛し これを敬い
これを慰め これを助け
死が二人を別つまで -
Posted by ブクログ
主人公はアキオくんという男の子。小学生の時に山の中で聞いたラジオが、中学生や高校生になったときに繋がっていくお話。
最初は、アキオくんの先輩の大ちゃんの目線で物語が始まる。
大ちゃん目線だと、アキオくんはなんか淡々としてるけど優しくて、ミステリアスな印象だった。
アキオくん目線になってから、大ちゃんへの印象とかがなんか微笑ましかった^^
学生時代って、若かった分失敗も多くて、思い出すと苦い気持ちになることもあるけど、
中村航さんの小説だと、不思議とそうならない。
楽しかった部分をきちんと思い出せるし、あと、なんか前を向ける感じがする。
部活を頑張っているところとかグッときたな。結果だけが -
Posted by ブクログ
なんとなく都内の工業大学に合格して入学した鳥山ゆきなは、友達の和美の誘いでTSL、鳥人間コンテストに挑戦するサークルについ入ってしまった。しかし、特にやることもなかったため迷っていると、パイロットチームに入れられてしまった。足漕ぎでプロペラを回して飛ぶ飛行機を飛ばすには、体力が必要で…。
軽い筆致で若い人に人気の有りそうな中村航なので、1ページめを開いたところからいきなり物語は走り始めており、そこに一度乗っかってしまえば、あとは最後まで読み切ってしまう、そういう作品である。
最初はモチベーションも体力もなかったゆきなが、同じくパイロット志望の圭にそそのかされるままロードレーサーの自転車を買