近藤史恵のレビュー一覧
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「愛情という名で押しつけられるものは、決して拒むことができないのだ」っていう文章が、やはりこの作品全体を通じて貫かれているテーマだとは思うのですが、やっぱり人って愛情なしではなかなか生き抜いていくこと(いきることではなくて)って難しい一方で、愛情によって傷つきやすいっていうのは人の心も脆さというか儚さのようなものを感じさせますね。
一番印象に残っているのは、自分が瞳子に対して示していた態度や見方が、彼女が巻き込まれたフランス旅行中の事件の犯人である日本人の男二人と同等に位置づけた瞬間ですね。ここまでの発想というか、思いを巡らせる展開は驚きでもありました。読み終わって感動する作品ではありませんし、書籍の表紙にかかれているような推理小説とは違うような印象も受けますが、大学時代の楽しいひと時と仕事に忙殺されはじめるこの年齢の人たちが直面する葛藤とまではいかないけれども、気持ちの揺れ動きのようなものは共感できる部分があるのではないかと思います。
中国神話で登場する四方を守護する聖獣が、青龍、朱雀、白虎、玄武というのは皆さんも聞いたことがあるかと思います。この四聖獣は季節にも対応しているので、それぞれの聖獣の名前を春夏秋冬と掛け合わせると、青春、朱夏、白秋、玄冬となります。
青春の次には、暑くても澄み切るように晴れ渡る夏がくる。夏の異称でもある朱夏の存在を瞳子は気づけなかったのでしょうか?青春だけでは終わらずに、朱夏を向かえ、子どもの成長とともに白秋の季節を迎えて、子どもを育て終えた後の時期である玄冬も、青春を謳歌した仲間達と一緒に生きていたい。この流れに逆らわずにスムースに時代の変化とともに仲間や友人と生きていける自分でいたいな、と朱夏を迎えることなく自分でその道を閉ざしてしまった瞳子のことを考えて思ったのでした。 -
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社会人一年生梶本大介と、大介が働くビルの掃除人キリコのおはなし。2003年実業之日本社から刊行され、2006年に文春文庫へお引越し、これは2018年に実業之日本社へ戻り一部加筆修正されたもの。
時代背景や当時の空気感が感じられる古さは確かにあると思います。お茶くみは女子社員担当なんて昔の話。ただ、いい意味で昔のゆるさも感じられました。発行当時だったらこれをどう思っただろう。但し、この著者なのでゆるいだけでは済まないミステリ込み。
カエルのピクルスがこんなところに出てくるとは思いませんでした。サンリオやポケモンその他たくさんのキャラクターに押されていますが、現在も健在の、実在のマスコットですね。当時そんなに流行してた?それとも著者のお気に入りだったのか?私にとってはピクルスがここに登場するのが一番の謎。 -
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【山之上家事学校】大阪の山の中にある。途中バスで抜けるのに10分かかるトンネルがある。風景のイメージ的には能勢あたりを考えてたけどむしろ異世界というか桃源郷? 庭ではまず鶏に威嚇される。【仲上幸彦】主人公。新聞記者。離婚し一人暮らし中。ひどい生活に妹から家事学校を勧められた。【鈴菜】元妻。家事・育児すべてに無関心だったツケで離婚。娘の理央もあちらに。【家事】〈山之上家事学校〉の花村校長によると《やらなければ生活の質が下がったり、健康状態や社会生活に少しずつ問題が出たりするのに、賃金が発生しない仕事、すべてのことを言います。》p.38。【感想】家事とは生き方そのもの。
■山之上家事学校についての簡単な単語集
【粟山】生徒。人の話を聞く授業で一緒になった男性。三十代。独身。
【岡村】講師。ぽっちゃりして人がよさそう。
【おっぽ】〈山之上家事学校〉の番鶏? もう1羽いる。
【買い物】作りたいものが決まっていたとしても買い物に正解はないのだとか。臨機応変で、無理しない範囲内で。
【家事】山之上家事学校での家事の定義は花村校長によると《やらなければ生活の質が下がったり、健康状態や社会生活に少しずつ問題が出たりするのに、賃金が発生しない仕事、すべてのことを言います。多くが自分自身や、家族が快適で健康に生きるための手助けをすることで、しかし、賃金の発生する労働と比べて、軽視されやすい傾向があります》p.38。
【金石】生徒。人の話を聞く授業で一緒になった男性。三十代。来年子供が生まれる。
【岸本】臨床心理士。
【仁太郎:じんたろう】義弟。和歌子の夫。妻がいないときでも妻の実家でリラックできている(ように見える)。
【猿渡】〈山之上家事学校〉にほぼ同時に入った若い男性。今度大学に入るのと同時に一人暮らしすることになったらしい。仲上と同様2週間の入寮コースを選んだ。どこかひねくれている感じ。というか、家事に労力を使うのは無駄だと考えてるフシがあった。その後学校に戻ってきたときには考え方が変わっていた。《ようやく気づいたんです。生活できていたのは、父の力だけではなかったんだって。外で働いていない母は、父によって生かされているように思っていたけど、本当は、父やぼくが、母によって生かされていたんじゃないかって……》p.158
【白木】生徒。体格も気もいい男性。
【白木保子】幅木デスクの友人。山之上家事学校の生徒だった白木の妻かもしれない。
【鈴菜】元妻。同業である新聞記者。家事・育児をすべて任せきりにしたツケで1年前に離婚。
【鷹栖】生徒。白髪の男性。通称「タカさん」らしい。
【調理】仲上はやろうと思えば多少はできる自信はあるようだ。猿渡はできればやりたくないみたいだ。僕は一人っ子だったのと登山が趣味だったのとで、調理と裁縫と洗濯は一人暮らしで困らない程度にはできるけど、結婚してから数十年間ほとんどしてないです。まあ、手出しされると迷惑だったようですけど。もし連れ合いが先に亡くなったりしたらちゃんとできるでしょうか?
【津田】生徒。「子供のためのヘアアレンジ」の授業を一緒に受けた二十代くらいの彫りの深い顔の男性。
【仲上幸彦】主人公の「ぼく」。43歳。新聞記者。家事・育児のすべてを任せきりにしたツケで妻の鈴菜に縁を切られ娘の理央も連れて行かれた。とは言えそれなりにバランス感覚ある社会人。今度大阪に転勤することになった。元妻と娘が大阪で暮らしていることも理由のひとつ。妹に勧められ、娘に恥じない父親で居続けるため〈山之上家事学校〉に入学することにした。2週間の入寮コースを選んだ。
【中島】何度か家事学校に来ているようだ。
【韮と落とし玉子の味噌汁】仲上は食べたことがないと書いてたけど、子供の頃の我が家では定番でした。今、特別食べたいというほどではないけど、美味しかったと思います。
【花村】〈山之上家事学校〉校長。女性。《くれぐれも、ここで得た知識を、誰か……家族でも、知らない誰かでも、別の人がてきていないことや、完璧でないことを責めるために使わないでください。自分自身ができなかったときにも、できないことを責めないでください。もし、そういうことに使うなら、知識や技術は、生活を豊かにすることではなく、貧しくする方に働いてしまいます》p.40。
【幅木】大阪支社のデスク。女性。東京出身だが関西弁になりつつある。仲上とは東京時代からの知り合い。
【堀尾】生徒。男性。2度目のときに一緒になった。場を盛り上げるタイプだがちょっとお調子者でデリカシーに欠ける部分もある。
【前山】講師。女性。漬物関係。
【八代】生徒。「子供のためのヘアアレンジ」の授業を一緒に受けた三十代の男性。
【山之上家事学校】大阪にある。能勢あたりの風景をイメージしてみた。途中抜けるのにバスで10分かかるトンネルがあるそうなので日本っぽくなくそこは異世界? いやむしろ桃源郷? 庭に入るとまず鶏に威嚇される。僕的には鶏には慣れてるのでたぶん平気やなあ。座学は2階で行い、1階で実習するらしい。学校の前にアパートがあり、それが寮として使われる。僕も入ってみたいとか思ったりするけど、ここではまだ、楽しい家事というレベルであり、日常としての家事ではないような気もする。
【理央】娘。元妻の鈴菜が引き取った。アトピーがあるので仲上の汚い部屋に入れることを鈴菜が拒んだ。
【和歌子】妹。子供が2人いる。亮太と茜。夫は仁太郎。家族ぐるみでたびたび実家に行ってるようだ。 -
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近藤史恵さんのデビュー作とのこと。私は近藤史恵さんの作品は癒し系を読むことが多かったので、デビュー作がクローズドサークルものとはびっくりだった。
若者たちが島へ遊びに行き、島に閉じ込められる。そして殺人事件。1人また1人と殺されていく…。という王道中の王道。なんとなーく展開も読めてしまうのだけど、物語に引き込まれました。主人公の野坂あやめが詩人だったいうこともあり、言葉、表現が綺麗に書かれてました。だから「これって殺人事件の話なの?」と思ってしまいました。他にも人間関係のゴタゴタが私には面白かったです。
最後まで引き込まれながら読んでたんだけど、結末がドタバタし過ぎてしまって気持ちがしぼんでしまいました。そこが私は残念に思いました。
最初の『点描 その、ほんのすこしまえ』が大事かな。 -
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日常ミステリーと、歌舞伎初心者への入門書、かつ、誰もが経験する落ち込んだ時に、そっと背中を押してくれるという、盛り沢山な(笑)作品でした!
大好きな、カシワイさんの表紙イラストも素敵でしたね。
先日読んだ近藤さんの歌舞伎シリーズで、積読していたものがあったのでさっそく読みました。印象としては上記に書いている通り、以前のものより歌舞伎の作品部分の説明が詳しく、分かりやすく書かれていたので理解しやすかったです。あと、めちゃくちゃ歌舞伎に興味持つようになりました!
他にもオペラなども出てきて、(私は全くそういうものを見ないので)知らなかったお話しも知れて勉強になりました。
そして、近藤さん作品あるあるですが、寂しさや、ツラい気持ちにそっと寄り添いながら、無理せず先に進んでみたいな、と思わせてくれる優しいお話でした。