アガサ・クリスティーのレビュー一覧
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Posted by ブクログ
イギリスの作家アガサ・クリスティの旅行記『さあ、あなたの暮らしぶりを話して クリスティーのオリエント発掘旅行記(原題:Come, Tell Me How You Live)』を読みました。
『アガサ・クリスティー99の謎』を読んで、もっとアガサ・クリスティのことを知りたくなったんですよね。
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アガサ・クリスティーの夫マックスは著名な考古学者だった。
しばしば夫婦は中東の地へ発掘旅行に出かけ、彼の地で実り多い時を過ごしている。
二人で第二次大戦前に訪れたシリアでの発掘旅行の顛末を、ユーモアと愛情に溢れた筆致で描いた旅行記にして、豊かな生活を送った夫妻の結婚記録。
(解説 深町眞理子)
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1946年(昭和21年)に刊行された作品……アガサ・クリスティ・マローワン名義で出版された、夫マックス・マローワンとの中東発掘旅行記です。
■『テルのうえにすわってた』
■まえがき
■第1章 シリアをさしていざ行かん
■第2章 予備調査の旅
■第3章 ハーブル河とジャフジャーハ河
■第4章 チャガール・バザールでの最初のシーズ
■ 第5章 シーズンの終わり
■第6章 旅の終わり
■第7章 チャガール・バザールでの生活
■第8章 チャガールとブラーク
■第9章 マックの到着
■第10章 ラッカへの道
■第11章 ブラークよさらば
■第12章 エイン・エル・アルース
■エピローグ
■解説 一九三〇年代のオリエント発掘旅行記 深町眞理子
ミステリの女王アガサ・クリスティには、もうひとつ考古学者の妻としての顔があった……14歳年下の考古学者マックス・マローワンと結婚していらい、ほぼ毎年のように彼に従って発掘旅行に出かけていたのである、、、
本書は、そうした発掘現場での暮らしぶりについて語ったもので、愛すべき旅行記であると同時に、実り多かった夫妻の結婚生活をも垣間見せてくれる……アガサ・クリスティの愛情あふれる旅行記。
ミステリ作家アガサ・クリスティではなく、考古学者マックス・マローワン夫人として、フランス支配下のシリアの発掘現場での日々の暮らしぶりを語った作品です……当時の中近東の生活ぶりがユーモアを交えて生き生きと描かれていましたね、、、
衝撃的だったのは、宿泊施設で身体の上を跳ね回る蚤たちや壁を覆うゴキブリ、そして身体だけでなく顔の上までも走り回るネズミ……うーん、これには耐えれそうにないなぁ、、、
眠れないし……トラウマにもなりそうです。
あとは、現地の人たちの命……というか人の死に対する意識についての記述が印象に残りました、、、
一家の面子や威信のための殺人であれば、それはやむを得ないことと考え、罪に問われても刑期は長くないとのこと……宗教の違い、文化の違いという面が大きいと思いますが、その価値観は理解できないなー 現代におけるテロ行為とかも同じような感覚なのかもしれませんね。 -
Posted by ブクログ
ネタバレこの話は個人的にアガサの
そして誰もいなくなったを彷彿させるものがあった
殺人犯を立証できない犯人はわかっているが
それを立証できない事件というのは推理小説では必ず取り上げられる話だと思う
今回は最初と同じ舞台スタイルズ荘で事件が起こるというストーリーになっている
さすがクリスティー最初と最期の舞台を同じ場所にするというのがさすがのセンスだと感じる
ただ最初の時と違って随分とキャラクターも様変わりしていた
ヘスティングスはすでに妻を亡くしていて子供たちも自立している
ただ1人の娘であるジュディスを除いて
ポアロに関しては死期がもうそこまで迫っている状態でありベットで寝たきりの状態
それでも彼の灰色の脳細胞だけは昔と変わらないと彼自身自負していた
今回のストーリーは答えをいってしまうと
殺人者はエルキュールポアロだ。彼が自ら殺人を犯してしまう
これだけでも興味が湧いてくる人と絶対に読みたくない人と別れるだろうけれど
一つ言えるのはポアロが殺した相手こそどうにもできない犯罪者だったということ
犯罪そのものを自分から誘発はするが手はくださない
だから絶対に逮捕されない
そしてヘスティングスは相変わらずのポンコツぶりだけれどそれに拍車がかかっていた
ポアロは誰が殺人者かヒントを与えていたのに
そこに気が付かなかった
それがかれの美徳なところだとポアロもほめてはいたけれど
最期のポアロに手記は泣ける
最期の最後までかれは友人を思って逝った
きっと若い時に一緒に過ごした時間が本当に彼にとって幸せだったのだろうと思えた
それは小説というよりドラマでデビットスーシェさんが長年演じたポアロから私が感じたことだ
小説もいいけれどぜひドラマも見て欲しい
そうすることでよりこのカーテンという作品に思いを寄せることができると思う -
Posted by ブクログ
ポアロシリーズ長編21巻目。
1942年の作品。
ハヤカワ文庫版を読みました。
今回ポアロの元に依頼された事件は、16年前に起きた殺人事件の真相を調べてほしいというものだった。
高名な画家エイミアスクレイルの娘カーラ・ルマルションは、夫殺害容疑で終身刑となり獄中で亡くなった母のキャロラインクレイルから無実を訴える手紙を受け取った。ポアロは16年前のこの事件の関係者ー五匹の子豚ーすなわち、画家エイミアスクレイルの愛人だったエルサ・グリヤー、エイミアスの親友だったフィリップ・ブレイクとその兄メレディス・ブレイク、キャロラインの妹のアンジェラ・ウォレン、アンジェラの家庭教師だったセシリア・ウィリアムズのうち誰かが真犯人ではないかと推理し、彼らに当時の回想録を書くように依頼する。
今起きている殺人事件ではなく、16年前に起きた過去の事件を調べるというのが特徴的な作品。「絵」が大きなテーマになっている。
そして誰もいなくなった、などでも用いられるマザーグースの童謡「五匹の子豚」が5人の容疑者を表現するのに印象的に使われている。
また、芥川龍之介の「薮の中」風手法で16年前の事件について5人の容疑者それぞれが各自の立場、視点から語っているが、全員本当のことを言っているわけではないのがミソ。
確かにすごくよく練られていて、素晴らしい作品だと思うんだけど、16年前に終わった殺人事件を調べるというストーリーで、被害者も犯人とされた人物も亡くなっているという点で緊張感はない。(第二、第三の殺人が起きる余地がない)
おなじみのキャラは出てこない泣。全体的に暗くシリアスな雰囲気が漂っているので、個人的には明るいヘイスティングス君の語りや、ポアロに振り回されるジャップ警部や強烈なキャラの濃いオールドミスとかが出てきてユーモア要素が入る作品の方が好きなので⭐︎3にしましたw。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ手を下さずに人を殺せるか。
信頼された神父の死は直前に会った女性の死に際の懺悔で決定的なことを聞いてしまったから? 神父が残したリストに書かれた名前の人物が急死している。偶然とは思えない。しかし手口がわからない。まさか本当に魔術なのか? あるいは心にある死への願望を刺激する方法があるのか?
オカルトの流行と科学の発展は表裏一体。新しい発見が技術の革新に繋がり、どんどんと世が変化していく時代、人がオカルト的なものをまだ信じていた時代。この事件はそんな時代を舞台にして、魔術や心理学で人が殺せるか、という謎を解こうとする。
犯人はしゃべりすぎた男。なかなかに歪んだ人物だった。そして殺し方も新しくもなんともない毒殺。謎解きは一瞬。それよりもこの物語の中心は遠隔で殺人が可能かどうかということ。
語り手マーク・イースターブルックと依頼されて一緒に行動するジンジャーの動きにトミーとタペンスを思い出す。 -
Posted by ブクログ
【ポアロ】
1959年クリスティー69歳の作品。
あれ?これポアロシリーズだよね?と読んでる途中に何度も確認してしまうくらい全然ポアロが出てこない。
同じくポアロの出番が少なくて覚えているのは『ホロー荘の殺人』だけど、あれは全員のキャラが濃すぎてポアロの出る幕がなかった。
この作品は真面目な教師と生徒ばかりで地味な展開なので「早くポアロ出てきて!」とポアロの登場を今か今かと待ち望んだけど、結局ポアロが登場したのは最後の方。
ポアロにうんざりしていたのに出版社からの圧力でポアロシリーズを書いていたクリスティーの抵抗だったのかはわからないけど、ポアロ自身はもっと早く出たかったと思う^_^;
待ちに待ったポアロの観察眼鋭い「ある1言」がすごかった。さすがポアロ。さすがクリスティー。
何だかこの表紙に見覚えがあると思ったら、土瓶さんの本棚で見たトマス・H.クックの『夜の記憶』の表紙と似てる!
背景は違うけど構図はほぼ同じで、少女の足が浮いていて首吊りを連想するもの。
だけどこの作品にはそんなシーンは全く出てこなかった。何でこの表紙なのか謎( -᷄ω-᷅ )…?? -
Posted by ブクログ
ポアロシリーズ13作め。1936年の作品。
原題は『CARDS ON THE TABLE』。
本文の中では「手の札は開けて置く」と訳されている。
解説によるとこれはブリッジのルールで「攻撃側の一人は持ち札をすべて卓上に表向きにさらし(カーズ・オン・ザ・テーブル)、どの札を出すかは一切パートナーに委ねて、休み(ダミー)としてプレイには参加しない。」
このルール自体がこの作品の事件の基本なので、それとかけたうまいタイトルなのだが、邦題だとピンとこないのが惜しい。
たしかこの話は前に読んだはず、と思いましたが例によって犯人は覚えていないので、後半の二転三転を「あれ、この人が犯人だったけ?」と思いながら楽しみました。
本作で初登場の推理作家オリヴァ夫人のキャラクターがすばらしい。アガサ・クリスティー自身というより、読者が想像するクリスティー像を自らカリカチュアしている感じ。
以下は有名なセリフ。ポアロをベルギー人にしたことを皮肉っております。
107
「ただ一つ、あたしの後悔してることがあるの──それはね、主人公の探偵をフィンランド人にしたことなの。フィンランドのこと、あたし全然知らないでしょ。ところが、フィンランドからよく手紙がきて、その探偵の言動がおかしいだのなんだの言ってくるの。フィンランドじゃあ探偵小説がとても愛読されているのね。冬が長くって、その間は日光がささないからじゃないかと思うわ。ブルガリアやルーマニアじゃあ、探偵小説は読まれないでしょ。あたし、探偵をブルガリア人にしとけばよかったわ」
266
「オリヴァさん、お手柄でしたね。あなたの作品のひょろ長いラプランド人の探偵より、ずっと素晴らしかったですよ」
「フィンランド人ですわ。彼、どうせ馬鹿な探偵ですけど、皆さんに人気があるのよ。」
そしてクリスティー作品によくある2人の女性と1人の男性の構図。アン・メレディスとローダ・ドーズはお互い自分にないものをもっているところに嫉妬もしている。女友達あるあるの関係ですね。
上品で頭が良くて孤独なロリマー夫人も印象的でした。そしてこういうマダムにはつねに優しいポアロ。
234
「生きるのはむずかしいことですよ。わたしの年になったら、わかります。限りない勇気と忍耐が必要なのです。そして、死ぬ時になって、誰もが、“人生にそんな値打ちがあったのかしら”って、疑うんです」
149
「記憶力は貴重な贈り物です。それがあれば過去もけっして過ぎ去ったものになりません──マダム、あなたには過去のことも、目の前に巻物を広げるように開けて、すべての出来事が昨日のようにはっきり映るんじゃございませんか?」
ロリマー夫人がシャイタナ氏と出会ったというエジプトのホテル、ルクソールのウィンター・パレス、検索したら今もありました。エジプトって観光地のイメージが強いんですが、リヴィエラと並ぶようなリゾート地なのですね。
おもしろくて数日で一気読みしてしまいました。アガサ・クリスティーの描く人間模様、登場人物たちの台詞の粋なこと。
コーヒー飲みながらクリスティーを読むってそれだけで幸せを感じます。
以下、引用。
12
ウェセックス・ハウスの鍵煙草入れ展示会であった。
14
シャイタナ氏がアルゼンチン人か、ポルトガル人か、ギリシャ人といった英国人のきらう国籍を持っている人なのかどうか誰にも明らかでなかった。
34
「あたしの天使がもう来るころよ、さあ、一勝負始めない? きっと今夜はつくわよ」
52
「ドクター・ロバーツですよ」オリヴァ夫人がまた断固として言った。「彼、とっても親切なんですもの。人殺しには親切そうなのがよくいるわよ──変装ですよ!」
64
「あたし、いつだって実際に行われた殺人よりも、素敵な殺人を書けるんですよ。あたし、話の筋で苦労したことなんか、ありゃしませんよ。それにあたしの読者は毒薬の方を欲しがりますよ、ナイフより」
106
「実際をいうと、あたし、正確ということそんなに気にしていないの。すべてに正確な人なんている? いまでは誰もいないんじゃないかしら。たとえば、二十二歳の美しい処女が、窓から海を眺め、可愛がっていたラブラドル犬のボブに、さようならの接吻をした上、ガスの栓をひねって自殺した、という記事が載った時に、その女が二十六歳で、その部屋の窓は海に面していないし、犬はシーリアム・テリヤでボニーというんだと、騒ぎたてる人がいるかしら」
「もっと大切なのは、人をうんと殺すことね。小説が少しだれてきたら、だらっとタワー流させれば引き締まりますよ。誰かが何かを打ち明けようとする──すると、まずその人が殺される。この手はいつもうまくいくわ。これ、あたしのどの小説なもあるのよ」
107
「ただ一つ、あたしの後悔してることがあるの──それはね、主人公の探偵をフィンランド人にしたことなの。フィンランドのこと、あたし全然知らないでしょ。ところが、フィンランドからよく手紙がきて、その探偵の言動がおかしいだのなんだの言ってくるの。フィンランドじゃあ探偵小説がとても愛読されているのね。冬が長くって、その間は日光がささないからじゃないかと思うわ。ブルガリアやルーマニアじゃあ、探偵小説は読まれないでしょ。あたし、探偵をブルガリア人にしとけばよかったわ」
138
「日本の版画が六枚、これは一級品だった。鏡の上には中国の絵二枚、大変立派な鍵煙草入れが五、六個。日本の象牙の根付がこれも五、六個、これは一かたまりに机の上にのっていた。」
139
「たとえばシャーロック・ホームズみたいに、とおっしゃるんでしょう。夜になってもその犬は吠えなかった。これはおかしいぞ!」
149
「記憶力は貴重な贈り物です。それがあれば過去もけっして過ぎ去ったものになりません──マダム、あなたには過去のことも、目の前に巻物を広げるように開けて、すべての出来事が昨日のようにはっきり映るんじゃございませんか?」
152
オリヴァ夫人は小さな二人乗りの自動車の運転台から下りるのに、大骨折りだった。それというのも、第一に現代の自動車製造者が、ハンドルをながら者はみな、すんなりした脚の持ち主ばかりだと考えているからである。それに加えて座席の低いのが流行ときている。そこで、肉付きのいい中年の婦人が運転台に座ると、外へ出るのに身体をあっちへやったり、こっちへやったり、超人的努力をしなければならなくなる。
155
「あたしは犯人の目星、ちゃんとついてるの。あの医者、何ていったっけ、名前は? ロバーツ。そうそう、ロバーツですよ。これ、ウエールズ系の名前ね。あたしはウエールズ人なんて絶対に信用しないの。」
158
「それに、もうひとつ打ち明けて言うと、本当の殺人事件ってあたしの手に負えそうもないの。本の中でいつもこっちの勝手に作りつけてるでしょ。だから本物だと困っちゃうの。」
177
「ああ、あなたが好きになったのよ。きまっているじゃないの。ぜんぜん興味がないのに、親切なことをする男ってあるかしら。あなたが不器量で、にきびでもいっぱいできていたら、こんな所まで来やあしないから」
181
「ドーズさんの故郷はデヴォンシャーだと思いますわ。時々クリームが送られてまいりますから。それを見ると、故郷を思い出すとおっしゃってますもの」
195
「雨、雨では別に怪我もしませんよ」
209
「日本の風土病みたいなもの──買ってきた日本製の髭剃りブラシからうつったのよ。日本人ってよく注意しないのかしら、こわいわねえ。それからあたし、日本製は敬遠してるの」
221
「そんな簡単なわけにはいかないのよ」オリヴァ夫人は言った。「まず考えなきゃあならないでしょ。そして、考えるのは退屈なことよ。それから、筋を立てなきゃあならない。ところが、時々行き詰まっちゃうの。そしてその行き詰まりからどうにも抜け出せそうにないって気になる──でも、しまいに何とかなるの! 書くのってけっして楽じゃあないわ。他のことと同じように、辛い仕事なのよ」
222
「退屈なのはそれを書く時。これで書き終えた、六万語くらいかなと思って、数えてみると、三万語くらいしか書いていないのはしょっちゅうなのよ。そこで、殺人をもう一つふやし、女主人公がもう一度誘拐されることにしなきゃあならない……こんなことって退屈な仕事よ」
234
「生きるのはむずかしいことですよ。わたしの年になったら、わかります。限りない勇気と忍耐が必要なのです。そして、死ぬ時になって、誰もが、“人生にそんな値打ちがあったのかしら”って、疑うんです」
246
「あなたは私の言うこと、おわかりになっていません。私は殺される人のことを言ってはいません。殺す人の心に起こる変化を申しておりますんです。人間を殺せるという心の持ち方について、です」
「戦争では、たしかに、個人的な判断を行使して殺人するのではありません。しかしだからこそ戦争とはもっとも危険なものなのです。戦争では人間は相手を殺すことに正当な理由をつけられます。このように、人間が他人の生死を左右できるという考えに、一度でも取りつかれたものは、もっとも危険な殺人犯人になりかかっているのです──利益のためでなく──思想のために人を殺す──こんな人ははなはだ傲慢な殺人犯人です。そういうひとは全能の神の権能を奪いとったことになります」
248
「手の札は開けて置く(カーズ・オン・ザ・テーブル)。これがこの事件のモットーでしたよ。」
255
「冬になると時々外国に行くほかは大部分ロンドンで暮らしています。外国といっても、リヴィエラとかエジプトとかいった一流の土地です。」
66
「エジプトのホテルでしたよ──たしかルクソールのウィンター・パレスだったかしら」
266
「オリヴァさん、お手柄でしたね。あなたの作品のひょろ長いラプランド人の探偵より、ずっと素晴らしかったですよ」
「フィンランド人ですわ。彼、どうせ馬鹿な探偵ですけど、皆さんに人気があるのよ。」
297
「このポアロっていう人、頭がいいと思う?」
「シャーロック・ホームズみたいには見えないわね」
かくてその日の午後から三時には、ローダ・ドーズとアン・メレディスは、ポアロのきちんと片づいた部屋で、澄ましこんで椅子に腰かけ、古風な形のグラスに注がれたブラックベリーのシロップを、少しずつすすっていた。二人ともブラックベリーは大嫌いだったが、礼儀をわきまえていたので断れなかった。
303
「短剣です、お嬢さん、十二人の人々が、一人の男を指したという短剣ですよ。ワゴンリッツから記念品としてもらったものです」
392
よく指摘されるように『ABC殺人事件』のなかに、本書の予告篇のようなエルキュール・ポアロのせりふが見いだされる。
「四人の人間がブリッジをしていて、それに加わらない一人が煖炉のそばの椅子に座っている。夜更けになって、暖炉のそばの男が死んでいることが発見される。四人の一人が、ダミーになって休んでいるときに、そこにいって彼を殺したが、ほかの三人はゲームに夢中になっていて気づかなかった。ああ、それがあなたにふさわしい犯罪ですよ!四人のうちのだれがやったのか?」
395
ここがブリッジの非常に得意な点だが──攻撃側の一人は持ち札をすべて卓上に表向きにさらし(カーズ・オン・ザ・テーブル)、どの札を出すかは一切パートナーに委ねて、休み(ダミー)としてプレイには参加しない。プレイの段階では、常に四人のうち一人は抜けるわけだ。
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Posted by ブクログ
言わずと知れたアガサ・クリスティーの名作。
中学生の頃、やたらアガサ・クリスティーを読む友人がいた。ある日、彼がこの本を読んでいたことを思い出し(といっても40年以上も前の思い出だが)、読もうと思い立ち手に取る。
1937年に書かれたものだが、僕の思い出とは異なり、色あせることはない。
まず「ナイルに死す」というタイトルが、何とも異国情緒に溢れた響きがあり、いいではないか。
物語は、アフリカの大地をゆったり流れるナイル川のように、さまざまな人々の背景、船上での新たな人間関係、密かな思惑など全てをゆっくり飲み込むかのように流れていく。
太古の文明を築いたエジプトとはそういう場所なのだろうか。
新婚旅行中の美貌の大富豪リネットをナイル川を航行する豪華客船カルナック号の中で殺害したのは一体誰なのか。
複雑なピースを冷静な観察力、分析力で紐解いてくエルキュール・ポアロ。みごとな謎解きにあっぱれ。
500ページを超える大著であるが、不謹慎なるもなかなか殺人が起こらない。実にその描写は251ページになってから。ここまで引っ張るか、というぐらい引っ張る。ここにアガサ・クリスティーの本書に対する力の入れようを感じる。