道尾秀介のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
全編残すことなく全てのシーンが暗くて冷たくて異様。シンプルかつ無駄のない文章で描かれる底気味悪い6つのストーリー。
最後は毎回どんでん返し。予想できてしまうところも多かったけどそれでも満足できる面白さでした。
鬼という言葉の語源は「隠(オヌ)」、つまり目に見えない存在を指す言葉だそうで、語源の通り人間の中に潜む見えない狂気、悪意、醜さ満載のストーリー。見えないものの恐ろしさ、見えないが故の薄気味悪さ。ゾワゾワさせられました。
まさにこの短編集全部に共通するテーマがずばり綴られていたので作中文の引用を。
…ケモノは、べつに珍しいものではない。昔もいまも、誰の胸にだって棲みついているものなのだ -
Posted by ブクログ
ネタバレ初めから読み返して伏線を回収していきたいと思う作品。
登場人物同志の細かい心理描写が過去の出来事、体験に対する直感的な共感であることが多かった。
飛躍してしまうようだが、
「他人の過去の出来事に触れる時、似た体験をしていて心情がわかる事と、その人自身に寄り添うことのどちらが大切なのか」
と読書中に考えてしまった。実際に、夏都は最後まで智弥の気持ちを菅沼先生の体験に投影することで理解していたようだが納得はしていない様子で、人との間の愛情をただ信じることでしか寄り添うことができていなかった。
だが、分からなくたって愛していたいと思うのではないか。分からないからこそそばにいて、いつか過去に触れて -
Posted by ブクログ
最初から最後まで、全く展開が読めない(^ ^; 乱暴な言い方をお許しいただければ、「プロットをちゃんと考えずに取りあえず書き始めて、キャラが勝手に動いてくのを追っかけて一作にしました」みたいな、余談の許されなさ(^ ^; もちろん、そんなことはなく、きちんと計算され尽くしている訳で(^ ^ 最後の最後になって「壮大な釈迦の掌」に驚かされる。
登場人物は、みな「漫画っぽい」感じで、それがドタバタと大きなうねりに巻き込まれ、取り込まれ、ハラハラドキドキなかなかなサスペンス感(^ ^ この辺はRPG感と言うか(^ ^
とにかく菅沼先生がいい味出してる(^ ^ 世間からずれまくった数学バカ...か -
Posted by ブクログ
ネタバレ零細な釣り堀とそれがある街を舞台に、個性の強い人々がそれぞれの思惑に翻弄される物語
(簡潔に説明するのが難しい作品…)
文庫版は最初のページに
登場人物が描かれたタロットカードがあり、序盤各人の登場シーンはそれを見ながらなんとなくの人物像をイメージできた
読み終わった後にもう一度タロットカードを見ると、絵の細かいところの意味も分かっておもしろい
登場人物たちの
忘れられない記憶や、邪な狙い、不安や懸念、期待などが目線を変えて語られるので
読者としては俯瞰して状況を把握するかたちになる
彼らの思いが絶妙にすれ違って、思いがけないかたちで噛み合ってしまったりするのが楽しくて仕方なかった
あと