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Posted by ブクログ 2024年02月02日
各章で前章の登場人物が主人公となる構成となっており、6章から成る作品でありながら、繋がりある1つの世界観を感じることのできる連作短編集。
一言で説明すれば、前編3作は哀しいほどに純粋な衝動をテーマにしたイヤミスで、後編3作は家族愛を描いている。
個人的には4作目の「春の蝶」の温まるラストが好きだった...続きを読む。
道尾作品には、いつも主要登場人物の子供に心を持っていかれてしまう。
Posted by ブクログ 2023年08月22日
これは、どうジャンルわけしたら良いのか…。ミステリ?道尾秀作さんの作品は、これで3作目。でも、初めて「この作家好き!」、とはっきり思った。短いお話なのに、ちゃんとオチがあって、そのオチが怖い!急に意味がわかって、その途端ひゃっ!、と背筋が凍る感じ。しかも、ダラダラと説明もしない。「え!」、と不安にな...続きを読むる読者を置き去りに、ストン、とお話は終わりを迎える。そんな短いお話がモザイクのようにつながって、一つの作品になる。見事としか言いようがない。
Posted by ブクログ 2023年03月22日
陰鬱な雰囲気にぐっと吸い込まれそうでした。
重く、決して明るくはない話が、後半に向かって光が射してくるところがよかった。ラストの章、主人公の心の声に思わず目頭が熱くなる。
この世界は光ったり翳ったりしながら動き、高い場所から見てみれば、全てが流れ繋がり合い、いつも世界は新しいと。
ミステリー要素とい...続きを読むうより、物悲しい過去を持っていたり、今も心を閉ざしている登場人物の心情描写が繊細で美しく凄い。静謐さ、匂いまで沸き立つよう。
特に印象的だったのは、第1章、第2章、第4章。家族間の悲哀が表現され、そしてあたたかさを感じた。家族(血の繋がり)は困難に直面しても向上させる力がある…と、そう伝わりました。
第1章では、これほど妖しいお話がこんなにも綺麗に描かれることに心打たれました。
隠された真実に、生涯誰にも口を閉ざすことや、時が経ち解決したことが分かり救われることや、生きてれば色々あるなと。
全ての章にでてくる一匹の蝶が見た光景、
花、虫、白い光、花は光を媒体にして咲く。
違う世界に連れてゆかれたのに、最後には自分に返ってきたような物語だった。
Posted by ブクログ 2022年11月28日
切なさ暖かさ溢れる美しい小説でした。平凡な日常の中の忘れられないワンシーン…5編の短編の何処かに自分と接する世界があるんじゃないかと、帯のコメントのように錯覚しました。最後の話…自分が小4時の担任と雰囲気が被っていて、勝手に懐かしんでいました笑
Posted by ブクログ 2022年11月08日
ひらり舞う蝶が人と人を繋ぐかのような連作短編集。この装丁が美しい。
移りゆく季節を感じさせる丁寧な描写。陽光、夕闇が登場人物達を映し出しているかのような表現。
胸が締め付けられるような寂しさや哀しみ、じわりと灯る優しさと温かさを感じて胸がいっぱいに満たされるお話。
前半、不穏と闇がある展開に沈殿しそ...続きを読むうだったんですが、後半はまるで灰色の雲に覆われていた太陽が、光を差し込んで姿を見せるような晴れやかさ。ちょっぴりしんみりはあるんですが。
最後のお話でこれまでの登場人物が少しずつ出てくる繋がり方が何とも良い余韻。決して全てがハッピーエンドではないけれど、ほっと安堵の息が零れる素敵なお話でした。
季節を感じ、何かを思い耽る時、またふと読み返したくなると思います。凄く好き。手に取って良かった。
Posted by ブクログ 2022年09月30日
ドロっとした暗い沼地から、だんだんと光が射し込んでくるような一冊だった。
6話連作短篇集。
3話までは、とてもダークな道尾作品だと覚悟して読んでいたが、少しずつ光に導かれていった。
全ての話に出てくる白い蝶。蝶にしか見えない蝶道というものがあるらしく、ヒラヒラと明るい光の方へ舞っていく。
【春...続きを読むの蝶】【風媒花】が特に良かった。道尾秀介氏の文章は、情景を描いたり、比喩表現が本当に秀逸!
山本周五郎受賞作。
Posted by ブクログ 2024年02月19日
光ったり翳ったりしながら動いているこの世界を、わたしもあの蝶のように、高い場所から見てみたい気がした。すべてが流れ、つながり合い、いつも新しいこの世界を。257ページ
Posted by ブクログ 2024年02月18日
どんでん返し系のミステリーでは無かったため、道尾秀介はこんな作品を書くのかと驚いた。短編同士の思いがけない繋がりが、この登場人物はこの後こうしたのか、こういう意図があるのか、と感傷的になったり個人的には1編目がいちばん良かった。
Posted by ブクログ 2024年01月23日
この本の大きなテーマの一つには“人とのつながり“がある。不幸や憎悪を生むのは人間だが、絶望から救ってくれるのも、人間である。六章のうち前半3つで心に黒いものを負った人たちが、後半では人と繋がり合うことで光を持てた。
私は、自分の何気ない言葉、行動で、誰かが光を持てるような存在でありたいと思った。
Posted by ブクログ 2024年01月06日
連作短編集。
最初の話でドキッとして、この手の話が続くのか〜と思っていたが、だんだんに穏やかな方へ流れていくように感じた。
玄侑宗久氏の解説も良く、なるほどと思い読み返してみたくなった。
実は秋の帰省時、新幹線の中での読書本として読み、短編集なのを良いことに途中のままになっていた。
今回、インフルエ...続きを読むンザに罹りやっと続きを読み終えた次第。
やっぱり道尾秀介氏は面白い。
Posted by ブクログ 2023年09月18日
初めて道尾秀介さんの作品を読んだ。短編だったのもあるが、とても読みやすかった。それぞれの話や登場人物が少しずつ絡んでくるのもおもしろかった。情景が浮かんでくる描写が上手だな〜と感じた。
Posted by ブクログ 2023年07月01日
静かな中にちょっとゾワッとする描写だったり、人の心の中の嫌な部分を切り開いて見せるような描写だったりがあって、とても引き込まれた。他の方の感想を見てると、ミステリー要素が少ないことが残念、というような記載があったから、この作者さんの本を読むのが初めてで何の先入観もなく読めて逆に良かったのかも。ミステ...続きを読むリーとしてでなくただの連作の短編集だと思えばとても上質。
Posted by ブクログ 2023年04月12日
優しくて切ないミステリーの連作6話
目次を見たときは章立ての作りだったので、長編だと思って読み始めたら一章ごとに話が分かれていて、でも所々でつながっていて小さな世界の物語なんだと分かった
話自体が短いのもあるけど、とにかく読みやすかった
(「貘の檻」で田舎の描写を読んでいくのに苦戦したので、一話...続きを読む目の森の中の話に少し構えた)
道尾さんの作品は、最後にその仕掛けに気付かされてぞっとするような話が多いイメージだったので、それを期待してはいたけれど、あたたかい気持ちで終われる話もいいなぁと思った
振り切ったコメディから重くて暗い因縁、かと思えば光が差すような優しい話
同じ人の書くミステリーとは思えない振り幅で、もっと色々と読んでみたいと思った
Posted by ブクログ 2023年02月16日
ほの寂しくて、冷たい世界に静かにそっと一筋光が射す。そんな印象の一冊。
暗く、重い内容なのかと思っていたけど、読み進めていくうちにじんわり心の端っこの方から暖かくなる。
春の蝶、風媒花がお気に入り。
花や虫を喩えに使った表現がとても詩的で綺麗だった。
祖父と孫の短編の次の章で、ほんの少しだけ登場...続きを読むした彼が主人公になって、そこの繋がりか!と驚いた。
道尾さんにはいつも驚かされるなぁ。
友からのお勧め本。
自分ではきっと選ばなかった本だと思うので、お勧めして貰えて良かった。
Posted by ブクログ 2022年11月08日
あまり本で泣くことはないのだが、道尾秀介作品は、涙脆くなる。
家族の話に弱い。
どの話も印象的で読みいってしまったが、特に『虫送り』はずっと心臓がバクバクしてたし、『風媒花』は泣いてしまった。最後の終わり方がよかった。
登場人物がリンクしていたり、その後がほんのりわかるのが楽しい。
また、自然や...続きを読む生き物が好きなので色んな知識を得られるのが嬉しい(道尾先生、自然がすきなんだろうなぁ)。調べながら読んでしまう。
道尾秀介ブームが来ているのでしばらく漁りたい。
Posted by ブクログ 2022年10月19日
「道尾秀介」の連作短編小説作品『光媒の花』を読みました。
『鬼の跫音』、『龍神の雨』、『球体の蛇』に続き「道尾秀介」作品です。
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第23回(2010年) 山本周五郎賞受賞
認知症の母と暮らす男の、遠い夏の秘密。
幼い兄妹が、小さな手で犯した罪。
心...続きを読むの奥に押し込めた、哀しみに満ちた風景を暖かな光が包み込んでいく。
儚く美しい全6章の連作群像劇。
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第23回山本周五郎賞受賞作、第143回直木三十五賞候補作だし、ちょっと前に読んだ短篇集『鬼の跫音』が面白かったので、期待して読みました、、、
収録されている6つの物語は、それぞれの物語(章)の登場人物が、直前の短編の端役から次の物語の主役に変わる形式で関連性のある連作となっており、最後の物語が最初の物語に繋がり円環をもって終わるという構成になっています。
■第一章 隠れ鬼
■第二章 虫送り
■第三章 冬の蝶
■第四章 春の蝶
■第五章 風媒花
■第六章 遠い光
■解説 玄侑宗久
『第一章 隠れ鬼』は、40歳半ばにして独身の「遠沢印章店」二代目の「正文」が、5年前に認知症を発症した母と二人で暮らしの中で、30年前に起きた事件のことを回想する物語、、、
「正文」には忘れようにも忘れられない過去… それは、中学生の頃に家族で定期的に行っていた長野での別荘での体験だった。
「正文」はそこで東京出身のウッドクラフトの店をしている30歳の女性と出会う… 30年に1度花をつける笹の生茂る森での性体験と、憧れの女性と父と関係を知った衝撃、、、
そして、女性は別荘近くで殺害され、父は殺人の容疑者とされるが、その後、父は自殺する… それから30年後のある日、「正文」は認知症の母が色鉛筆で笹の花の絵と男女を描いているのを知って愕然とする。
母は真実を知っていたのか… ここで、女性を殺害したのは父ではなく、「正文」だったという事実が明かされるという衝撃の展開、、、
このオチには驚きましたね… 過去の罪を思い出しながら、窓の外で隠れ鬼をする少年を眺めている場面で物語は終わります。
『第二章 虫送り』は、「正文」が家から見ていた、児童公園で隠れ鬼をして遊んでいた子どものひとりが、この物語の主人公の兄妹の兄… 父親の会社が倒産し、母親が働きに出て、両親にかまってもらえない小学生の兄妹の哀しい体験を描いた物語、、、
母親の留守中、夜の川べりの土手で虫を採って遊んでいた兄妹は、ある夜、河原で生活しているホームレスの「田沢」に妹が悪戯されそうになり、危ういところで兄が助け出す… その後、兄妹は橋の上からブロック片を「田沢」が生活しているビニールシートで作ったテントに投げ落とし、翌日のニュースで「田沢」が死んだことを知る。
数日後、目撃者がいなかったかを確かめに行く兄妹は、別のホームレスのおじさんに出会い、おじさんは兄妹がしたことを見ていたことを知る… しかし、おじさんは警察に話すつもりはないこと、夢があれば叶えられることなどを諭され、罪を悔いながら家路につく。
哀しいけど、二人は、これからきっと前向きに生きていく… そんな予感のするエンディングでした。
『第三章 冬の蝶』は、前章の続きで、実は「田沢」を殺害したのは、過去の「田沢」の性犯罪を知っていたホームレスのおじさんだったという衝撃的な展開で始まり、彼が中学生の頃に経験した切ない体験を回想する物語、、、
20年以上前、中学生だった彼は、虫捕りの最中に偶然顔を合わせたクラスメイトの「サチ」と出会う… 二人は、放課後の河原でいつも会うようになるが、彼女の貧しく荒んだ生活が徐々に明らかになり、ある日、彼女の家を訪ねた彼は「サチ」が母親の付き合っている男の相手を無理やりさせられているのを偶然のぞき見してしまう。
貧しさゆえに、生きていくため、食べていくためには、それを許すしかなかったんですよね… うーん、たまらない、、、
胸がつぶれそうになるくらい切ない物語で、彼がクリスマスプレゼントの腕時計をサチに渡したあと、「サチ」が彼の家に贈り物を持ってきた場面は、ホントに泣けましたねぇ… 切ないです。
『第四章 春の蝶』は、前章で将来はどうなっちゃうんだろう… と気になっていた「幸(サチ)」が主人公として登場し、彼女のアパートの隣に住む老人「牧川」宅で発生した空き巣事件と、夫の浮気が原因で離婚し、「牧川」宅に同居し始めた「牧川」の娘と4歳の孫「由希」との交流を描いた物語、、、
「牧川」の娘は父親の財産目当てで同居を始めていたが、空き巣に1千万円以上を盗まれ、娘は父親に詰め寄っていた… 「由希」は、携帯電話で父親が浮気相手と話をしているとは知らず、何気なくその会話を聞いていたが、母親から、その会話内容を問い詰められ、待ち合わせ場所等を母親に話したことがきっかけで浮気が発覚し、その後、父親から「おまえが盗み聞きしたせいだ」と言われたことが原因で耳が聞こえなくなっていた。
しかし、「幸」は、「幸」の働くファミレスでの「由希」の言動をみて、既に耳は聞こえるようになっているが、本人がそれを隠していることに気付く… 「由希」がバックする運送会社のトラックに轢かれかけた際に、「幸」は「由希」に「もう聞こえないふりをしなくてもいい」と叫び、彼女を助け「牧川」に真実を告げる、、、
そして「牧川」からは知らされたのは、空き巣は娘を再教育するための狂言だったこと… 空き巣が入った際に、ひとり留守番をしていた「由希」は、そのことに気付いていたが、耳が聞こえないふりをしていたことから言い出せないでいたのだった。
真実が明るみになることにより、「牧川」一家の雰囲気が少し穏やかになり、将来に光が差してくる… という感じでしたね。
『第五章 風媒花』は、前章で「由希」を轢きかけてしまったトラック運転手で23歳の「亮」が主人公… 小学校の教師をしている3歳上の姉が体調を崩して入院したことがきっかけで、折り合いの悪かった母親と再会し、家族の在り方を見直していく物語、、、
姉は食道のポリープで切除すれば問題ないとのことだったが、体調はなかなか改善せず、父親が膵臓癌でなくなっていることから、「亮」は、姉は食道癌ではないかとの疑いをもつ… 「亮」と母親の折り合いが悪い様子を見て胸を痛めていた姉は、母と姉弟が仲の良かった頃に描いてもらった三人のスケッチとカタツムリを利用して、「亮」の気持ちを変えることに成功する。
家族が、それぞれの立場で思いやることの大切さを感じさせる作品でした。
『第六章 遠い光』は、前章で弟「亮」と母親の折り合いを改善させることに成功した姉が主人公… 彼女は小学校で4年生の担任をしており、そのクラスで心を閉ざしている少女「朝代」が飼い猫に石をぶつける事件を起こし、その顛末を通じて、心を通わして行く物語、、、
実の両親を交通事故で亡くし、叔母に育てられた「朝代」は、叔母が結婚することになり混乱しまっていた… 担任として、「朝代」と一緒に猫の飼い主に謝りに行くが、トラブルは解消されず、逆に飼い主を怒らせていまい、無気力感に苛まれ教師としての自信を失っていくが、「朝代」と一緒に逃げ出してしまった猫を探すうちに信頼回が芽生え、二人で訪れた印鑑屋(第一章の「遠沢印章店」)での出来事により、「朝代」の叔母の結婚に対する気持ちも変わっていく。
「遠沢印章店」での出来事は、「朝代」の勘違いもあったのですが… それは結果オーライですかね、、、
第二章に登場した兄妹の兄もチョイ役で登場して、兄妹の心の闇が晴れたことも示唆されており、明るい未来を予感させる最終章になっていました。
『第三章 冬の蝶』が最も印象に残りましたが、ミステリ的な要素の強い『第一章 隠れ鬼』、『第二章 虫送り』も面白かったですね、、、
「道尾秀介」って、まだまだ作家としては若手なのに、本当に巧いなぁ… と改めて感じた一冊でした。
Posted by ブクログ 2022年08月14日
大好きな声優、斉藤壮馬さんとコラボということで、久しぶりに小説を買いました。
好みで判断しないように内容はほとんど把握しないまま、読み進める。
1章読んで…
なにこれ…!!!怖い!!!!!!!!!!!!!
私はホラーが苦手です。
サスペンスやミステリーは、先に犯人や展開を確認し安心してか...続きを読むら戻って続きを読むタイプです。
正直、怖すぎて1章読んでyoutube見て、寝かせていました……。(安定の最高壮馬さんでした…!!)
ですが、いや、もったいない!頑張るぞ!!と一念発起し、今度はお昼時に読むことに!(1章は寝る前に読んで全然眠れなかった)
2章もやっぱり怖い…。。
3章…うおおおおおキツイ(エログロ←1章より更にリアル)
4章で…あ!!!!!ようやく!!!明るい感じに!!(歓喜)
以降、安心してして読めました。
本当3章までの雰囲気がずっと続いたらどうしようとハラハラしていたのですが、良かったです。
文章、とにかく綺麗だったな。
登場人物たちが絶妙にクロスオーバーしてるのもめちゃくちゃ好きな感じでした!
言い回しや漢字が難しいところも多くて勉強になりました!!
普段自分の好みだけでは絶対に手に取らない作品だったと思うので、とても良い出会いになったなと感じました。
Posted by ブクログ 2022年05月26日
恍惚の溜息。
読み終わった後の充足感。
とっておきの一冊に出会ってしまった。
空気の澄んだ中秋、少し肌寒くなった風に吹かれながら神社に参拝に来たかのような浄化された気持ちになるのは何故だろう。
参道の砂利道を一歩一歩進むように、ページを1ページずつ捲るごとに自分の中の余計なものが削ぎ落とされてい...続きを読むく。
切なくて、儚くて、美しい。
細く絡み合った人間ドラマに頭の先まで浸かる。
「表現力」という点では個人的な好みとして伊坂幸太郎を上回る人はいないと思っている伊坂信者だけれども、道尾秀介の秀逸な描写はそれに匹敵する。と思う。
普通の人であれば見逃してしまうような、ほんの些細な人間の感情や表情の変化を、絶対に掬い溢すことなくこれでもかと鮮烈に描いてくる。
誰よりも細かい目のザルで"心"を振るい、純粋な気持ちだけを抽出したような純度の高い一文一文は、麗しく、乾いた心に水を与えてくれる。
これが浄化を促すのだろうか。
構成は6つのお話からなる短編集で、一見それぞれの人生を歩んでいるように見える主人公たちが、実は繋がっているというストーリー。
人間として生まれたことを誇りに思え、人間として生きていくことに勇気が持てて、人間も悪くないなと思える、そんなお話。
きっと著者自身が人間が好きで人間の可能性を信じているからこんな物語が書けるのだろう。
道尾秀介ブームの到来です。
Posted by ブクログ 2023年11月05日
第23回山本周五郎賞
6章の短編がそれぞれ少しずつ関わりがある構成はわりと一般的だし、共通して蝶が描かれる点は、『N』で同じ自然現象が描かれていたのと同じパターンだなと感じました。
しかし、それぞれが短い話の中で緊迫感があり、ハラハラしながら没頭して読めておもしろかったです。
胸が苦しくなるような...続きを読む各章の登場人物の日常が続きますが、後半になるにつれて穏やかな雰囲気になり、ハラハラも減っていくので、そのためかラストは物足りなく感じてしまいました。
Posted by ブクログ 2023年05月03日
短編集ですが各章登場人物や設定につながりがあったりして、各章だけではわからない事が後から理解できたりしてさすがの道尾作品でしたが、著者の他作品と比べると伏線回収などミステリー要素がやや少ないかなと感じました。
Posted by ブクログ 2023年03月26日
物語は各編ごとに登場してた人物が次の編で主人公を務める連作群像短編集
前半の方は殺人が絡んでくるなどやや重めの内容が多く後半はヒューマンドラマに近い救われる内容がメインといった感じ
この転調具合が絶妙
ラスト付近では前半主人公が顔を出す姿もあり
個人的なおすすめは風媒花
あんな感じで書かれると...続きを読む末期患者と思っちゃうよ
Posted by ブクログ 2022年12月31日
一つ一つの短編が登場人物、物語をリレーのように繋いでいく。
各章で出てくる季節を感じさせる昆虫や植物の意味、人間関係の表現が詩的で読んでいて、とても気持ちよかったです。
特に、風媒花のお話はラストの落ちも含めて特におもしろく感じました。
Posted by ブクログ 2022年12月07日
短編集なので期待してなかったのですが、6章のお話が少しづつ繋がり、1つの作品となっているので、読み応えがありました。
道尾さんの作品は切なくて静かなものが多く、派手な展開が起こりませんが、描かれる風景がとてもキレイで、ノスタルジーを感じます。この作品でも「隠れ鬼」「冬の蝶」が私は好きで。
映像化する...続きを読むのであれば、この風景の美しさを観てみたいですね。
Posted by ブクログ 2022年12月05日
花鳥風月で満たされた世界観が美しい… 人との繋がりが心を浄化する連作短編ミステリー #光媒の花
悩み、苦しみ、かなわぬ夢。
人はいろんな軋轢によって苦労することが多いですが、それでも手助けしてくれるのはやっぱり人ですね。本書は花や虫といった自然界を丁寧に描写しながら、人間の絆の美しさを描いた連作...続きを読む短編集です。
登場人物は何処にでもいる人々で、それこそ老若男女で、様々な職業や生活環境で暮らしています。すごく身近で、きっと読者にも愛着がわくキャラクターばかり。そんな彼らの日常や葛藤の中、生き抜く姿を見ていくことで、心が洗われていく作品です。
■隠れ鬼
人には墓場まで持っていく秘密というのがひとつくらいはあるものです。
思い出と現実の陰に潜む秘密があまりにも強烈に表現されていました。
■虫送り
私が子どもの頃は、自分の都合がいいような嘘ばかりついてましたね。
大人になった今思うと、子どもの嘘なんて全部お見通し… 恥ずかしい記憶が懐かしいです。
■冬の蝶
ただただ胸が痛む話でしたが、私は若き二人の未来を応援したいです。
■春の蝶
親の都合を決して子供に押し付けてはいけない。
私も人の親ですが、あらためて教訓として胸に刻みました。
■風媒花
家族の関係は本当に微妙で、少しのきかっけ、環境、年代ごとにも変わっていくものです。久しく話していない父に電話をかけようと思いました。
■遠い光
人生を楽しく歩むことは何故こんなにも難しいのか。誰しもが一度は思い悩むことです。
しかしこの世界はひとりではない。
家族、親子、兄弟、友人、恋人、仕事仲間、師弟、お隣さん、それこそふと出会った人など、様々な人間関係から成り立っている。お互いに手を取り合えば、どんな悩みも多少なりとも浄化され、自然界の草木や虫たちと同じくらい純粋に生命を楽しむことができるのではないでしょうか。
とても読み心地がいい作品でした。
花が咲き始める春に、オープンカフェや河原で読んでみたいですね。
Posted by ブクログ 2022年04月09日
良くも悪くも綺麗な作品でした。
個人的には少し気分が悪くなるぐらい…あからさまな描写ではなく、現実的で想像しやすくて…。
感情が引き込まれるような文章でした。