あらすじ
一匹の白い蝶がそっと見守るのは、光と影に満ちた人間の世界――。認知症の母とひっそり暮らす男の、遠い夏の秘密。幼い兄弟が、小さな手で犯した闇夜の罪。心通わせた少女のため、少年が口にした淡い約束……。心の奥に押し込めた、冷たい哀しみの風景を、やがて暖かな光が包み込んでいく。すべてが繋がり合うような、儚くも美しい世界を描いた全6章の連作群像劇。第23回山本周五郎賞受賞作。
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Posted by ブクログ
とても面白かったです
短編集と思いきやそれぞれの話の時間軸や登場人物などがつながっている。
途中で風媒花の説明シーンがある。
風媒花は風を媒介して受粉する花らしい。
光媒の花という作品名はまるで次の話次の話と読み進めることによって咲く花(本作)のようだ
解説にもあったが最初は短編のつながりに少し強引さを感じたこともあった
しかし個人的には世の中のつながりは思ってるよりも身近にあってそれぞれが繋がっていてそれぞれに光があるんだというメッセージなのかなと思った
Posted by ブクログ
哀しさと苦しさと辛さと、そして一筋の光が見えるような一冊だった。人生は一色ではなく、どのような色に彩られた人生だったかその最期に見えるだろうか。
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各作品が完成されているのに、全部どこか繋がっていて光はどんな時も見えるはずっていう最終章のメッセージが好きだった。
第一章の美の狂気みたいな気持ち悪い描写が最高においしかったです…
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各章で前章の登場人物が主人公となる構成となっており、6章から成る作品でありながら、繋がりある1つの世界観を感じることのできる連作短編集。
一言で説明すれば、前編3作は哀しいほどに純粋な衝動をテーマにしたイヤミスで、後編3作は家族愛を描いている。
個人的には4作目の「春の蝶」の温まるラストが好きだった。
道尾作品には、いつも主要登場人物の子供に心を持っていかれてしまう。
Posted by ブクログ
これは、どうジャンルわけしたら良いのか…。ミステリ?道尾秀作さんの作品は、これで3作目。でも、初めて「この作家好き!」、とはっきり思った。短いお話なのに、ちゃんとオチがあって、そのオチが怖い!急に意味がわかって、その途端ひゃっ!、と背筋が凍る感じ。しかも、ダラダラと説明もしない。「え!」、と不安になる読者を置き去りに、ストン、とお話は終わりを迎える。そんな短いお話がモザイクのようにつながって、一つの作品になる。見事としか言いようがない。
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陰鬱な雰囲気にぐっと吸い込まれそうでした。
重く、決して明るくはない話が、後半に向かって光が射してくるところがよかった。ラストの章、主人公の心の声に思わず目頭が熱くなる。
この世界は光ったり翳ったりしながら動き、高い場所から見てみれば、全てが流れ繋がり合い、いつも世界は新しいと。
ミステリー要素というより、物悲しい過去を持っていたり、今も心を閉ざしている登場人物の心情描写が繊細で美しく凄い。静謐さ、匂いまで沸き立つよう。
特に印象的だったのは、第1章、第2章、第4章。家族間の悲哀が表現され、そしてあたたかさを感じた。家族(血の繋がり)は困難に直面しても向上させる力がある…と、そう伝わりました。
第1章では、これほど妖しいお話がこんなにも綺麗に描かれることに心打たれました。
隠された真実に、生涯誰にも口を閉ざすことや、時が経ち解決したことが分かり救われることや、生きてれば色々あるなと。
全ての章にでてくる一匹の蝶が見た光景、
花、虫、白い光、花は光を媒体にして咲く。
違う世界に連れてゆかれたのに、最後には自分に返ってきたような物語だった。
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6つの話が少しずつ繋がっていく連作短編。
こちらも道尾秀介といえばこの雰囲気、という感じ。しばらくは胸がズーンと沈むような展開が続きます。
こちらも道尾作品らしく子供が多く出てきますが、だからこそ辛い。しんどい境遇で子供たちがもがいているのが辛い。
笹の茂みや、河原、土手の風景…その空気も伝わってくるような風景の描写がよかったなぁ。
どこともなく現れる蝶。
少しずつ光を感じる展開になって、希望がもてる読後感。
Posted by ブクログ
全六章にわたる連作群像劇、それぞれの話が少しずつのつながりを持ちながらもそれぞれの話に独特の空気感を帯びて話が展開されていく。描かれているのは人と人との関係、家族の繋がり。それぞれの章に少しずつの謎を描きながら、それが背景描写と相まって物悲しい雰囲気を根底に置きながらも光に向かって進んでいく展開であった。
一番最初の章はとても悲劇的で、そのような作品が続いていくのかなと思ったが章が進むにつれ段々と光が差し込んでくる。p284物語のラストシーン「光ったり翳ったりしながら進んでいるこの世界を、わたしたちもあの蝶のように、高い場所から見てみたい気がした。」という締めくくりもまさに我々に対しての希望、微かな光の中の希望を見つけられるように日々を大切に、そして前向きに過ごしていく大切さを感じた。我々もこの光があまり見えない世界に、それでもなお小さい時には感じていた光を今一度自分達の力と願いで見出していく姿が必要なのかもしれない。
Posted by ブクログ
各章に、ささやかなトリックがあって、さすが道尾先生。
他の章の登場人物が出てきたのもとてもよかった。
自分の置かれた環境に幸せを感じることが難しい人たちの話。
面白かった!というよりかは、心に沁みる話。
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この後ミステリ的なところに集結していくのかな?と思いながら読みましたが、徐々に各短編の登場人物たちのこの先を祈るような気持ちになっていきました。「春の蝶」、「風媒花」が好きです。
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再読。
6篇の短編から成る連続群像劇。それぞれの登場人物が別の章にも脇役として登場して、また本編とは違った顔を見せてくれます。
6篇のお話の中には辛く悲しいものもありますが、全ての章を読み終えると救いがあるというか希望の光が差したので、随分安心できました。
前回読んだ時には「虫送り」「冬の蝶」が好きだった記憶がありますが、今回は「風媒花」が心に残りました。読むたびにその時の自分の感情や背景によって作品の印象が変わるのは読書の楽しみであり、再読の醍醐味ですね。
Posted by ブクログ
結構好きなタイプの道尾短編集。各話ちょっとずつ繋がり、円環になるような構成。残酷ながらも切なくて温かい話あり。好きなのは、「冬の蝶」、「春の蝶」、「風媒花」。サチは色々あったけど力強く生きている。「虫送り」の兄妹は真実が知れて良かったね。
蝶道って初めて聞いた(Nで言ってたっけ…?)。不思議…
Posted by ブクログ
光ったり翳ったりしながら動いているこの世界を、わたしもあの蝶のように、高い場所から見てみたい気がした。すべてが流れ、つながり合い、いつも新しいこの世界を。257ページ
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どんでん返し系のミステリーでは無かったため、道尾秀介はこんな作品を書くのかと驚いた。短編同士の思いがけない繋がりが、この登場人物はこの後こうしたのか、こういう意図があるのか、と感傷的になったり個人的には1編目がいちばん良かった。
Posted by ブクログ
この本の大きなテーマの一つには“人とのつながり“がある。不幸や憎悪を生むのは人間だが、絶望から救ってくれるのも、人間である。六章のうち前半3つで心に黒いものを負った人たちが、後半では人と繋がり合うことで光を持てた。
私は、自分の何気ない言葉、行動で、誰かが光を持てるような存在でありたいと思った。
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連作短編集。
最初の話でドキッとして、この手の話が続くのか〜と思っていたが、だんだんに穏やかな方へ流れていくように感じた。
玄侑宗久氏の解説も良く、なるほどと思い読み返してみたくなった。
実は秋の帰省時、新幹線の中での読書本として読み、短編集なのを良いことに途中のままになっていた。
今回、インフルエンザに罹りやっと続きを読み終えた次第。
やっぱり道尾秀介氏は面白い。
Posted by ブクログ
初めて道尾秀介さんの作品を読んだ。短編だったのもあるが、とても読みやすかった。それぞれの話や登場人物が少しずつ絡んでくるのもおもしろかった。情景が浮かんでくる描写が上手だな〜と感じた。
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静かな中にちょっとゾワッとする描写だったり、人の心の中の嫌な部分を切り開いて見せるような描写だったりがあって、とても引き込まれた。他の方の感想を見てると、ミステリー要素が少ないことが残念、というような記載があったから、この作者さんの本を読むのが初めてで何の先入観もなく読めて逆に良かったのかも。ミステリーとしてでなくただの連作の短編集だと思えばとても上質。
Posted by ブクログ
優しくて切ないミステリーの連作6話
目次を見たときは章立ての作りだったので、長編だと思って読み始めたら一章ごとに話が分かれていて、でも所々でつながっていて小さな世界の物語なんだと分かった
話自体が短いのもあるけど、とにかく読みやすかった
(「貘の檻」で田舎の描写を読んでいくのに苦戦したので、一話目の森の中の話に少し構えた)
道尾さんの作品は、最後にその仕掛けに気付かされてぞっとするような話が多いイメージだったので、それを期待してはいたけれど、あたたかい気持ちで終われる話もいいなぁと思った
振り切ったコメディから重くて暗い因縁、かと思えば光が差すような優しい話
同じ人の書くミステリーとは思えない振り幅で、もっと色々と読んでみたいと思った
Posted by ブクログ
ほの寂しくて、冷たい世界に静かにそっと一筋光が射す。そんな印象の一冊。
暗く、重い内容なのかと思っていたけど、読み進めていくうちにじんわり心の端っこの方から暖かくなる。
春の蝶、風媒花がお気に入り。
花や虫を喩えに使った表現がとても詩的で綺麗だった。
祖父と孫の短編の次の章で、ほんの少しだけ登場した彼が主人公になって、そこの繋がりか!と驚いた。
道尾さんにはいつも驚かされるなぁ。
友からのお勧め本。
自分ではきっと選ばなかった本だと思うので、お勧めして貰えて良かった。
Posted by ブクログ
【隠れ鬼】★★★★☆
中学男子と30歳の甘酸っぱい恋物語。結局最後まで「あの人」の名前を知れなかったのが切ない。
女の雰囲気が幽霊っぽくて、そっち系の話になるのかと思ったら違った。思春期の男の子に手出してモヤモヤさせて、再会したら冷たくするのは酷いでしょ。愛人の息子にイタズラするとか何考えてるか謎だった。
母親の認知描写は読んでて辛い。弁当のバランを食うシーンは、もし自分の母が将来こうなったら...と想像したら悲しくなる。
【虫送り】★★★★☆
かくれんぼで隠れてる間にみんなに帰られて残される陰鬱なスタート。まさか前作に登場したパッと出のキャラが主人公になるとは思わなんだ。妹も虐められてるらしく兄弟揃って境遇が可哀想。
コオロギが採れると嘘ついて、女の子にイタズラするホームレス怖い。まあよく考えたら拍手だけで大量のコオロギ捕獲できるわけないか。コオロギたちが虫かごに入ってくるの想像したら気持ち悪かった。
その後あらわれたホームレスの男も敵か味方か分からず、小学生たちが内心ビクビクしてるのが伝わり緊張感ある。
【冬の蝶】★★★★☆
ホームレス殺しの犯人は前作の兄弟ではないことに驚く。「この世に死んでいい人間なんていない」と言っておきながら、アンタが殺しちゃってるんかい笑
サチがミステリアスで魅力的なキャラで印象に残る。母の男に犯されながらも、平然と日常を送ってる彼女の精神力すごい。あの男が居なかったらピュアなラブストーリーになってたのに...。
強風吹いた時にサチが顔をしかめず、笑っていたのを見て惚れるシーン好き。紙を裏返して自分を内側に閉じ込める、というサチの発想が面白かった。
【春の蝶】★★★☆☆
悲惨な幼少期を過ごしたサチがまともな大人になってホッとした。後味悪い話が続く中で、今作の最後は希望を持てる話。誰が犯人か気になったが、由希の耳聞こえないふり、牧川の自作自演など思わぬ展開に。
今までの話と比べると、うまくまとまりすぎてて薄味な印象。後味悪い展開の方が好き。
【風媒花】★★☆☆☆
母を嫌う理由が結局よく分からなかった。デカい理由があるかと思いきや、父が死んで荒れたのが原因で拍子抜け。母がなにかやらかしたのが原因かと思ってたのに。しかも小さい頃から嫌いになって、大人になるまで引きずるのは長すぎ。お母さんが可哀想だよ...最後和解エンドに向かったのが救いか。
【遠い光】★★☆☆☆
少女が両親の離婚と向き合う話なのは分かったが、主人公の葛藤がよく見えず、結局何がいいたいかよく分からない作品だった。
これまでの気味悪い話と違って、風媒花とこの作品だけはハッピー寄りな話で浮いてる。最初から最後まで気味悪さを通して欲しかった。
Posted by ブクログ
各短編で、少しずつ繋がりがあります。鬱展開があり、短編ごとの読後感はイヤな感じが残ります。また、どうせ鬱展開になるのだろうと構えてしまい、肩透かしをくらう事も。
短編集としては纏まりがあって良いですが、鬱展開が合わなかったので。。。
Posted by ブクログ
2010年第23回山本周五郎賞
そして2010年直木賞候補作
その後2011年「月と蟹」で直木賞
連作短編6編
作品紹介では連作群像劇としている
それぞれ犯罪に関わっていく者達だから群像劇でも良いのかな
道尾さんの作品には、子供の中の秘めやか憎悪を描いているものがあり、少年達の純真無垢だけでない心情を読むのは好きだ
第一章 隠れ鬼
認知症となった母を苦しめていた父親の自殺
息子が封印していた事件の真相
第ニ章 虫送り
毎夜両親不在の時間に川辺に虫取りに行く兄妹
許せなかったホームレスへの復讐とその真相
第三章 冬の蝶
貧困の少女が隠していた母の男の所為
少年は守りきれない
第四章 春の蝶
両親の不仲のストレスで聴力をなくした少女
家庭を守るための嘘
第五章 風媒体
姉の入院で母との確執を解いていく弟
第六章 遠い光
母親の再婚に不安を持つ少女
その不安の真意に寄り添う女性教師
蝶が光源をたどり物語を一つにまとめる
といった趣向かな
好きな方の道尾さんだけど
罪に対する気持ちがあっさり
というか本人達は納得済みという感じ
がもの足りないかな
Posted by ブクログ
6つの短編集
ハンコ屋、橋のエピソードなど所々で繋がりがある。光ったり翳ったりしながら動いているこの世界を蝶を通して表現している。
第1章隠れ鬼
ハンコ屋さん、認知症の母。中学生の時の回顧、愛と憎悪は紙一重。
第2章虫送り
小学生の兄弟、橋のエピソード。良いホームレスと悪いホームレス。
第3章冬の蝶
2に出てきた良いホームレスさんの中学生の時の話。淡い青春、毒親。
第4章春の蝶
3に出てきた女の子が大人になってからの話。耳が聞こえなくなってしまった女の子、お爺さんの家に泥棒。
第5章風媒花
父をなくした家族の話。息子目線、姉の入院、母と仲直り
第6章
5で出てきた姉の小学生教師としての話。
Posted by ブクログ
第23回山本周五郎賞
6章の短編がそれぞれ少しずつ関わりがある構成はわりと一般的だし、共通して蝶が描かれる点は、『N』で同じ自然現象が描かれていたのと同じパターンだなと感じました。
しかし、それぞれが短い話の中で緊迫感があり、ハラハラしながら没頭して読めておもしろかったです。
胸が苦しくなるような各章の登場人物の日常が続きますが、後半になるにつれて穏やかな雰囲気になり、ハラハラも減っていくので、そのためかラストは物足りなく感じてしまいました。
Posted by ブクログ
道尾秀介さんの作品は、特別大好きという訳でもないのに、なぜか手に取ってしまうから不思議だ。これが道尾秀介さんワールドなのか。そんな感じで本作もセレクト。
最初の3話までは暗いというか重いというか、正直読み始めたことを後悔してしまったほど。暗く残酷な表現に、読んでいてズーンと落ち込んだ。だが4話目からは徐々に希望の光が見え始め、最終話の6話で完全に救われた。そんな感じの短編集だった。
そういう感じだったから、個人的には5話6話がホッとできて良かったかな。そして道尾秀介さんの描く「女の先生」はとても良い雰囲気だ。迷いながらも前を向く女性をうまく表現していたと思う。
本作に関してもバッチリ好みという訳でもなかったが、もう少し同作者の作品を読んでみたくなった。やはり不思議な魅力を持った作者だ。
Posted by ブクログ
短編集ですが各章登場人物や設定につながりがあったりして、各章だけではわからない事が後から理解できたりしてさすがの道尾作品でしたが、著者の他作品と比べると伏線回収などミステリー要素がやや少ないかなと感じました。
Posted by ブクログ
物語は各編ごとに登場してた人物が次の編で主人公を務める連作群像短編集
前半の方は殺人が絡んでくるなどやや重めの内容が多く後半はヒューマンドラマに近い救われる内容がメインといった感じ
この転調具合が絶妙
ラスト付近では前半主人公が顔を出す姿もあり
個人的なおすすめは風媒花
あんな感じで書かれると末期患者と思っちゃうよ