湊かなえのレビュー一覧
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「死」を見たい2人の女子高生がそれぞれ老人ホームと小児病棟へ。
彼女たちの残酷な本心が、誰も言わないけどみんなの本心なのではと思うくらい共感できた。
小さなズレからなんとなく距離ができてしまった2人。この辺りが女子高生のリアルを感じた。
手の傷や小説の盗作、冤罪事件、花火大会。
たくさんの伏線が気持ちよく繋がる。
2人が何度もニアミスしそうになるのを乗り越えて、ちゃんと予想通りに繋がって(初めからイヤミスだろうなと思いながら読んでいたので、いつどんな酷いことが起こるかと覚悟していたが)感動すら覚えたのに、やっぱり最後は落とされた。
蛇足ととるか、湊かなえならではの展開と捉えるか。
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始めは雪絵が異国の地トンガで何かを追い求める物語かと思っていたが想像を裏切られた。
島国トンガの陽気な雰囲気を感じられる描写が多く今まで国名しか知らなかったトンガに少し興味が湧いた。
1章の"楽園"では他の章に比べ前向きな話でトンガの文化に触れたり一人で旅する様子は読んでいて楽しかった。それに加え毬絵が探し求めていた楽園の圧巻の描写や主人公は雪絵ではなく毬絵だったことのどんでん返しなどもあり1番好きな章だった。
2章の"約束"では毬絵より前にトンガで暮らし教師をしていた理恵子目線で話が進む。在住期間が毬絵よりも長くより詳しくトンガの文化に触れることは -
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ネタバレやっぱりあの事件を連想させる…?
痛ましい事件の裏で、犯人はあんな心情・信念をもって犯行に及んでいた可能性も考えさせられて深い一作だった。
フィクションとノンフィクションの2部構成なのも、作品として秀逸だった。
ただ終盤、対象を清水元大臣にした心情が浅く描かれていたり、恋愛に発展したり、、、と駆け足で終わってしまった感が否めないと感じた。
本作を通じて、世の中で起きている事件の数々は自分たちの正義感に則ってしか良し悪しを判断できていないけど、それは結局表面的なものでしかなく、見えてこない思いがたくさんあるかもしれず、そこに目を向ける価値もあるのかもしれないと思った。
読者のほとんどは暁を -
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常人であれば考えもしない人間を標本にするという発想に惹かれ読み始めました。
本作はミステリの要素を抜きにしても殺人記録を綴った手記のクオリティが高いので楽しめます。そこにミステリの要素が加わり話がニ転三転するので真実は?真犯人は?となりページから目を離せなくなります。
私は小説を読む時、読んだ文字をなるべく鮮明に頭の中で映像化しようとイメージしますが、少年たちを蝶に見立てて標本を製作する描写に対しては想像力のなさに助けられ、頭の中で部分的なイメージ図はできても完成図はイメージできませんでした。
行為自体は狂気的、非人道的で到底容認できるようなものではありませんが一方で、映像化した際、人間の標 -
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『暁星』を読んでいて、子どもの頃に親が“謙遜”のつもりで私のことをけなしていた記憶がふっと思い出されました。あの感じ、やっぱり嫌だったなあ…と。でも今自分が親になってみると、無意識のうちに同じようなことをしてしまっている瞬間があるのかもしれない、と考えさせられました。
作中のお母さんたちの「こうあるべき」という雰囲気や、褒めることに対する周りの目もすごくリアルで、読んでいて胸がチクリ。私自身も、子どもが自慢できる存在でないと親の態度が変わるような空気の中で育ったな…と重なるところがあって、いろいろと思い返しました。
そしてもうひとつ印象に残ったのが、宗教にまつわる子どもたちの苦しさ。あの実 -
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いわゆるイヤミスと呼ばれるジャンルの作品。
まぁ、確かに後味は良いものではないのだが……
深瀬和久は平凡なサラリーマン。
近所にある『クローバーコーヒー』に通うことが唯一の楽しみ。
そんな穏やかな生活が、越智美穂子との出会いにより華やぎ始める。
ある日、彼女のもとへ『深瀬和久は人殺しだ』と書かれた告発文が届く。
深瀬は懊脳する。遂にあのことを打ち明ける時が来たのか、と。
流石イヤミスの女王という評判から期待が高まりすぎたのかもしれない。
話の軸となるのは主人公・深瀬を含む大学のゼミで同期だった面々との
高原の別荘で過ごした一夜。この時起こった出来事が主軸となっている。
誰が怪文書を送った