湊かなえのレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
ドラマ『Nのために』が好き過ぎて、これが、イヤミスの女王湊かなえの作品?と思い、原作を読んでみた。
小説は、ドラマよりイヤミス要素が高い。登場人物の独白、というか、たぶん警察の取り調べに答えてるという設定なのかな?
ドラマを観ていたら、そんなふうには描かれてなかった気がするけど?というようなことがあって(起こった事柄はほぼ変えていないが、それに対しての感想とかが違う。まさにイヤミス)
事件としてはとても単純なんだけれど、その裏には、いろいろな愛の形があり、愛のために動いた、ってことなんだな。
それにしても、この小説を、あの素晴らしく感動的な脚本にした奥寺佐渡子、演出の塚原あゆ子は凄い才能の持ち主であると思う。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ湊かなえ『リバース』レビュー|最後の一行ですべてが反転する衝撃のミステリー【ネタバレあり】
湊かなえの小説『リバース』を読みました。
『告白』『Nのために』『夜行観覧車』など、イヤミス作品で知られる湊かなえですが、『リバース』はその中でもかなり印象に残る一冊でした。
物語の主人公は、どこにでもいそうな平凡なサラリーマン・深瀬和久。
趣味はコーヒー。
そんな深瀬のもとに、ある日突然、恋人の美穂子宛てに一通の告発文が届きます。
そこに書かれていたのは、
「深瀬和久は人殺しだ」
という衝撃的な言葉。
深瀬には、大学時代に親友・広沢由樹を事故で亡くした過去がありました。
そして、その事故には深瀬自身も関わっていた。
そこから深瀬は、広沢の死の真相と、自分たちが隠していた過去に向き合うことになります。
そして最後の最後。
それまで積み上げてきた物語を根底からひっくり返すような真実が明らかになります。
今回はそんな『リバース』について、結末まで完全ネタバレありでレビューします。
⸻
『リバース』の基本情報
項目内容
著者湊かなえ
タイトルリバース
ジャンルミステリー・サスペンス・ヒューマンドラマ
出版社講談社
主人公深瀬和久
中心となる事件大学時代の親友・広沢の事故死
特徴最後の一行による大きなどんでん返し
⸻
あらすじ
主人公の深瀬和久は、事務機器メーカーに勤める平凡なサラリーマン。
特別に仕事ができるわけでもなく、華やかな人生を送っているわけでもありません。
そんな深瀬の唯一ともいえる趣味がコーヒーでした。
行きつけのコーヒー店で、深瀬は越智美穂子という女性と出会います。
やがて二人は恋人になり、深瀬にとって美穂子との時間は、平凡だった人生に訪れた大きな変化でした。
ところがある日、美穂子のもとに一通の告発文が届きます。
「深瀬和久は人殺しだ」
深瀬には、その言葉を聞いて思い当たる過去がありました。
大学時代、ゼミ仲間の浅見、村井、谷原、そして親友の広沢と旅行に行ったときのこと。
そこで広沢が事故によって亡くなっていたのです。
当時、深瀬たちは広沢が飲酒した状態で車を運転していたことを警察などに話していませんでした。
その事実を隠したまま、彼らはそれぞれの人生を歩んでいたのです。
しかし、告発文をきっかけに過去が再び動き始めます。
⸻
ここからネタバレ|『リバース』の結末
ここからは完全にネタバレです。
未読の方は注意してください。
⸻
「人殺し」という告発文の正体
物語の大きな謎の一つが、
「誰が深瀬たちに告発文を送ったのか?」
ということです。
深瀬は当然、広沢の死と関係している人物だと考えます。
広沢の家族なのか。
広沢の知人なのか。
あるいは、事故の真相を知る誰かなのか。
読者も深瀬と一緒になって犯人を探すことになります。
しかし、ここにも湊かなえらしい仕掛けがあります。
告発文を送った人物は、美穂子でした。
しかも、美穂子には深い理由がありました。
⸻
美穂子の正体
実は美穂子は、亡くなった広沢の高校時代の同級生でした。
そして広沢は、美穂子に好意を寄せていた。
つまり深瀬が恋人として付き合っていた女性は、実は広沢と過去につながりのある人物だったのです。
美穂子は広沢の死について調べ、深瀬たちが事故当時に何をしていたのかを知ります。
そこで彼女は、深瀬たちに告発文を送ることになります。
ここまででも十分に衝撃的なのですが、本当の衝撃はその先にあります。
⸻
広沢はなぜ死んだのか?
ここが『リバース』最大のポイントです。
広沢は、単純な飲酒運転事故によって亡くなったわけではありません。
実は深瀬が広沢に渡したコーヒーが、事故の原因につながっていました。
深瀬はコーヒーに蜂蜜を入れるのが好きでした。
そして、その蜂蜜には蕎麦が関係していました。
広沢には蕎麦アレルギーがあったのです。
深瀬はそのことを知りませんでした。
その結果、広沢は蜂蜜によってアレルギー反応を起こし、それが事故につながってしまいます。(ワーケーションと耳読書)
つまり深瀬は、
「広沢を殺そうと思ったわけではない」
どころか、
「広沢を助けようとしてコーヒーを渡した」
にもかかわらず、その行為が結果的に広沢の死につながってしまった。
ここが非常に怖い。
⸻
「人殺し」という言葉の意味が変わる
最初に「深瀬は人殺しだ」と言われたとき、読者は当然、
深瀬は何か重大なことをしたのではないか?
と考えます。
ところが読み進めていくと、深瀬は広沢を殺そうとした人間ではありません。
むしろ、広沢のことを大切に思っていた。
それでも結果として、深瀬が渡したコーヒーが広沢の死につながってしまった。
ここで「殺人」という言葉の意味が非常に曖昧になります。
故意ではない。
しかし、自分の行動が人の死につながった。
では、自分は無罪なのか。
それとも罪があるのか。
この問いを読者に突きつけてくるのが『リバース』の面白さだと思います。
⸻
一番怖いのは「悪意のない行動」
個人的に、この作品で一番怖かったのはここです。
普通のミステリーなら、
「犯人には殺す動機があった」
という構造が多いと思います。
しかし『リバース』では違います。
誰かを傷つけようとしたわけではない行動が、取り返しのつかない結果を生んでしまう。
深瀬は悪人ではありません。
むしろ、かなり気の弱い普通の人間です。
だからこそ怖い。
自分だって、何気ない行動によって誰かの人生を変えてしまう可能性がある。
そう考えると、単なるミステリー以上に生々しい作品に感じました。
⸻
「広沢」という人物が最後まで謎なのも面白い
もう一つ印象的だったのが、広沢という人物です。
深瀬にとって広沢は親友。
しかし、読者が知る広沢は、ほとんどすべてが「残された人間の記憶」を通したものです。
深瀬から見た広沢。
浅見から見た広沢。
村井から見た広沢。
谷原から見た広沢。
美穂子から見た広沢。
それぞれの中に、それぞれの「広沢」が存在しています。
そして物語が進むほど、
「本当の広沢はどんな人間だったのか?」
という疑問が生まれてきます。
人間は、自分の知っている相手のすべてを知っているわけではない。
このテーマも『リバース』の重要な部分だと思います。
⸻
タイトル「リバース」の意味
そして、タイトルの『リバース』も非常に秀逸です。
「Reverse」には、
逆転・反転・逆戻り
といった意味があります。
この作品では、物語の終盤に入ってから、それまで見ていた出来事の意味が次々と反転していきます。
「深瀬は被害者なのか?」
↓
「深瀬にも罪があるのでは?」
「広沢はどんな人間だったのか?」
↓
「自分たちが知っていた広沢は、本当の広沢なのか?」
そして最後には、
それまで読者が信じていた物語そのものが反転する。
まさに『リバース』というタイトルがぴったりです。
⸻
最後の一行が怖すぎる
そして、この作品について語るなら、やはり最後の一行です。
『リバース』は、最後の最後に非常に強烈な事実を突きつけて終わります。
それまでの物語を読んできた読者に、
「あなたは今まで何を読んでいたのか?」
と問い返してくるような結末です。
個人的には、このラストによって作品全体の印象が大きく変わりました。
読み終わった直後に、
「えっ、そういうこと?」
となり、頭の中で最初から物語を振り返りたくなります。
いわゆる「最後の一行で全部ひっくり返るタイプ」のミステリーが好きな人には、かなり刺さると思います。
⸻
『リバース』を読んで感じたこと
『リバース』は、単純な犯人探しのミステリーではありません。
むしろ、
「人は、自分の知らないところで誰かを傷つけているのではないか」
という、人間関係の怖さを描いた作品だと感じました。
特に印象的なのが、
「悪意がなければ罪はないのか?」
という部分。
深瀬には殺意なんてありません。
それでも広沢の死に自分が関係していることを知り、長い間苦しみ続けます。
一方で、他の登場人物たちもそれぞれ広沢の死に対して複雑な感情を抱えています。
誰か一人だけが「悪い」という単純な話ではありません。
だからこそ読後感が重い。
そして、湊かなえらしい「イヤミス」感があります。
⸻
個人的な評価
ストーリー ★★★★★
過去の事故と現在の事件が徐々につながっていく構成が非常に面白いです。
ミステリー ★★★★★
犯人探しだけではなく、「そもそも何が真実なのか?」というところまで考えさせられます。
どんでん返し ★★★★★
やはり最後。
この作品の最大の魅力です。
読みやすさ ★★★★☆
文章は比較的読みやすく、物語もテンポよく進みます。
読後感 ★★★☆☆
面白いのですが、決して爽やかな読後感ではありません。
むしろ、
「人間って怖いな……」
という気持ちが残ります。
⸻
まとめ|『リバース』は「最後の一行」を味わうための小説
湊かなえの『リバース』は、
「最後まで読んで初めて完成するミステリー」
だと思います。
物語の途中では、広沢の死の真相、告発文の犯人、深瀬たちの過去など、さまざまな謎が提示されます。
しかし、最後まで読み終わると、それまで読んできた出来事の意味が少しずつ変わっていく。
そして、
「あれ?最初から読み直したら、もっと違う意味に見えるんじゃないか?」
と思わせられる。
これが『リバース』の最大の魅力です。
特におすすめしたいのは、
* どんでん返しのあるミステリーが好き
* 湊かなえ作品が好き
* 人間心理を描いた作品が好き
* 「最後の一行」が強烈な小説を読みたい
* 読後にいろいろ考えさせられる作品が好き
という人。
逆に、スッキリ爽快なミステリーを期待すると、少し重く感じるかもしれません。
個人的には、
「面白かった」というより、「読後にずっと考えさせられた小説」
という印象が強い作品でした。
そして何より、
タイトルが『リバース』なのが本当にうまい。
最後まで読んだあとにタイトルを見ると、
「なるほど、そういう意味だったのか」
と納得させられます。
湊かなえ作品の中でも、かなりおすすめしたい一冊です。