Posted by ブクログ
2020年08月29日
鼻崎町という景観の良い田舎町を舞台にした、3人の女性の視点で展開される、田舎町の根深い問題にフォーカスした作品。
軽い気持ちで読み始めましたが、それを後悔するくらい女性同士の憧れや嫉妬、妬みなどがリアルに書かれていて、モヤモヤというかゾッとするような時が何度もありました。
鼻崎町で生まれ育った地...続きを読む元民の堂場菜々子、鼻崎町の景観に魅了され都会からやってきた芸術家の星川すみれ、夫の仕事の都合で鼻崎町に移住してきた相場光稀。
それぞれが違う境遇の中で車椅子生活を余儀なくされている人たちへの支援という名目で「クララの翼」というブランドを立ち上げたものの、お互いの考えや思惑により徐々に歯車が狂っていく様がもうリアルすぎて鳥肌が止まりませんでした。
物語を通して事件・事故が幾つか起こるのですが、その1つの出来事に対してそれぞれ3人の異なる視点で描かれる為、お互いがお互いをどう思っているのを理解して読み進める事が出来ます。その結果、お互いの考えが全く一致しないのです。
鼻崎町を魅力ある町として全国に宣伝していこうとするすみれ、対して鼻崎町の住民に嫌気がさし町に何の魅力も感じない菜々子のように、鼻崎町に住む事になった背景が違うが故に考えに差異が生まれ、同じ目標に向かってるように見えて実は真逆の方に進んでいた、と言った狂いが生じるのです。
これが田舎町で根深い、地元民と地元民でない人との問題なんですよね。
湊かなえさんは本当に女性の心情を書くのが上手いと改めて思いました。
女性同士の陰湿さ、ドロドロさ、怖さが3人の心情を通して書かれるので、良い意味で気持ち悪かったです。
男で生まれて良かったと心から思わされる、そんな作品です。
また、ラストはこの物語で起きた事件・事故の真相が光稀の娘である彩也子の日記で語られるのですが、このどんでん返しは何となく察しはしたもの以上のどんでん返しで、これまた鳥肌がヤバかったです。
女性同士の怖さとは違った、純粋で無邪気で感の鋭い子供の怖さにびっくりしました。
この子供も女の子なんですよね…。
やっぱり女性怖いって思いました。男性が女性には敵わないというのがよく分かりました。
知らなくていいこともあります。
女性の裏の顔を深く知る必要はないというのがこの本から得た教訓です。